# 初恋温泉
2007.02.05 Monday

初恋温泉
吉田 修一
●初恋温泉/吉田修一
●集英社
●1365円
●評価 ☆☆☆☆
突然妻に別れ話を切り出され、とまどう夫。
雪の一軒宿の謎めいたカップル。
初めて恋人と温泉旅館に泊まる高校生。
熱海・青荷・黒川ほか、
日常を少し離れた温泉宿

(感想)
妻に離婚話を切り出された翌日、高級温泉を訪れる夫婦(熱海・蓬來)。
山奥の旅館に婚前旅行にやってくるおしゃべりなカップル(青森・青荷温泉)。
妻に出張だと嘘をついて、愛人との京都不倫旅行へ向う男(京都・祇園畑中)。
旅行の前日に妻と喧嘩をしてしまい、一人でリゾートホテルにやってくる男(那須・二期倶楽部)。
恋人とのはじめての旅行に舞い上がる高校生(黒川・南城苑)
温泉

うおおお〜


緑の装丁はよ〜くみると温泉の写真で、
はつきりそれとわかるようなデザインじゃないのが素敵

はっきりと「湯の写真」だったら引く人も多数だろうから

舞台となるそれぞれの宿はどうやら実在するようです

何気に検索してみたら、5つの旅館ともきちんとHPが存在していて、
しかも全部いい旅館

吉田修一さん・・・たぶんここ全部行ったんだよー

いいな〜、羨ましいよぅ

温泉

彼らは温泉で日常の問題に向き合う。
離婚、夫婦けんか、不倫・・・。
これらの難しい問題にも、
どうやら温泉は柔軟な考えを導きだしてくれるようだ。
心のリフレシッュ?ってやつかな。
リウマチや婦人病はもちろんだけど、
温泉の目に見えない効能・・・それは「心に効く」こと。
よく温泉の入り口に効能を書いた看板のようなものがあるけれど、
あれに書いてもいいくらい立派な効能じゃないですかね

どのお話も明確な結論がなく、
行く末は読者の想像に任せるようなかんじで締められている。
お風呂からあがっても体のほてりがすぐには消えないのと似たよな余韻を残してくれる。
この本を読んで、温泉がますます好きになりました

最後に本編と関係ないけど、
サービス業に従事する人間として覚えておきたいこと。
それは「高級旅館のいいところ」が語られる場面。
しっかりした旅館というのは、到着してから帰るまで嫌な思いをしなくていい。
たとえばお茶

苦情をいうほどのことでもないが、ちょっと気になることがない。
そのちょっとの気になることもなしに時間を過ごすために高い金を払うんだ。
・・・勉強になりますね、これ。
料理の味や豪華さなんかより肝心なことって基本的なことなんですね
