隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 咳をしても一人と一匹

JUGEMテーマ:エッセイ

 

 

 咳をしても一人と一匹 / 群ようこ(角川書店)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆☆

 

遡ること20年前、マンションの片隅で保護した子ネコ、それが「しい」との出会いだった。

小さな体ながらも隣室の飼い猫(オス)に襲いかかったり、

外ネコとも渡り合ったり…そんな最強の“女王様”も、今や立派な老齢猫に。

自称・“世界一、飼い猫に叱られている飼い主”の著者が贈る、笑いあり怒りありの日々の記録。

 

 

 

(感想)

 

ただ延々と飼い猫との日々の攻防が描かれるエッセイ集。

似たような争いの繰り返しで、猫に興味のない人にはたぶんつまらない。

けど猫好きさんは「わかるわわかる」とニヤニヤして楽しめる本だと思います。

かわいくって、微笑ましくって、二人のやり取りに何度吹き出したことかわかりません。

 

しいちゃんの鳴き声だけでも、

「にゃあ」「にゃー」「んー」「うー」「うわぁー」「うえー」

「わー」「いやーっ」「うわあああ」「きええー」「ふにゃああ」

「ぎゃあ」「みー」「きゃーっ」「ぐふー」「ぎえー」「ぎゃああ」

「あーっ」「にゃあん」「ぎー」「あーん」「ぎいい」「

「きえええええ」「わあああああ」・・・・などなど、

ここには書ききれないほどのレパートリーがあり、そこに愛情の深さを感じました。

嬉しい声・怒ってる声・・・気持ちをちゃんと聞き分けようとしてるのが伝わります。

下僕扱いされてもかわいい、睡眠不足になってもかわいい。

これは猫好きにしかわからない愛の境地なんでしょうね。

 

実は私も春から猫を飼う予定です。

この本を読み、これほどの愛を持って下僕に徹せられるかな?

睡眠不足、大丈夫かな?

・・・と、今までは考えてこなかった不安に襲われたこともたしか。

でも、感情のある生き物相手なんだからいいことも、悪いことも受け入れる。

群さんとしいちゃんのように、一緒に笑ったり喧嘩したりして生きていきたい。

その思いはさらに強くなったのでした。

今の時期にこの本を読んでおいてよかったです!

 

・・・それにしても19年間一度の外泊もせず猫と一緒にいるとは・・・。

驚いた以上に、その下僕ぶりに尊敬の念すら覚えます。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:58 | category:    群ようこ |
# 終わった人
評価:
内館 牧子
講談社
¥ 3,708
(2015-09-17)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 終わった人 / 内館牧子(講談社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。

仕事一筋だった彼は途方に暮れた。妻は夫との旅行などに乗り気ではない。

「まだ俺は成仏していない。どんな仕事でもいいから働きたい」と職探しをするが、

取り立てて特技もない定年後の男に職などそうない。

生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?

ある人物との出会いが、彼の運命の歯車を回す―。

 

 

 

(感想)

 

読みやすい文章で、ほぼ一気読みでした。

定年退職した人に対して「終わった人」って・・・なかなか凄い言葉だけど、

年齢だけで勝手に終わらせられてしまうには今の65歳は若すぎる。

「まだ俺は成仏していない」、そう思ってあきらめきれない気持ちはよくわかります。

だけど、こんな風に仕事に恋にチャンスが舞い込んでくるのはすごく稀な話で、

所詮おとぎ話だよねという印象はぬぐえません。

ファンタジーとしては面白かったけど、

定年後の人生を考えるにあたって、参考になる小説ではありません。

 

現実をしっかりと見ていて、冷静にはっきりとものを言う娘が気持ちよかったです。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:10 | category: 作家名 あ行 |
# ある男
評価:
平野 啓一郎
文藝春秋
¥ 1,728
(2018-09-28)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ある男 / 平野啓一朗(文藝春秋)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。

長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、

「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。

ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。

悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。

 

 

 

(感想)

 

相変わらず平野さんの頭の良さが際立ち、ずっしりと重たい作品でしたが、

ミステリー的な要素もある分、わりとサクサクと読めました。

 

「殺人犯の息子」であるとか「在日三世」であるとかは、

その人を愛してしまえば関係ない!といいたいところだけど、

最初から知ってたらこの愛ははじまっていたかな・・・なんて考えてしまう自分がいます。

当人にしてみれば自分では選び取ったわけではない、けど逃れられない苦悩。

個人としてのその人を愛するってどういうことなんだろうと深く考えさせられます。

平野さんの「分人主義」にも通じるものがあるテーマでした。

 

大祐と美涼は再会してどんな話をしたんだろう。

城戸の妻に最後に降りかかったある疑惑は・・・。

そのへんをちゃんと描いていないのが「大人の小説」ですよね〜。

40代の大人の男女だからこそ、グレーなままぼかしておきたい関係ってあるある。

城戸が美涼に対してあえて鈍感な態度を貫いたのもそういうことだし、

美涼だってそれはわかってる。

その程度の「心の秘密」は既婚者でも、おじさんおばさんでも、許されるんじゃないかなぁ。

なーんて甘っちょろいこと考えてる私は彼らと同世代だったりするのですがw

| comments(0) | trackbacks(0) | 10:54 | category:    平野啓一郎 |
# 生きるとか死ぬとか父親とか

JUGEMテーマ:エッセイ

 

 生きるとか死ぬとか父親とか / ジェーン・スー(新潮社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

20年前に母が他界、気づけば父80歳、私は40代半ば。

いまだに家族は増えていない。

会えばギクシャク、一時は絶縁寸前までいった父と娘だけれども、

いま父の人生を聞いておかなかれば、一生後悔する――。

戦時中に生まれ、戦後社会に出て必死で働いた父。

母との出会い、他の女性の影、全財産の喪失……。

父の人生と心情に迫る、普通にして特別な家族の物語。

 

 

 

(感想)

 

これまでの同性として共感できる痛快なエッセイとは一味違い、

哀愁の漂うような生々しいエッセイでした。

 

これまでの著作を読み、

ジェーンさんはお父さんとあまりうまくいってないイメージがあったけどぜーんぜん違う。

お母さんが生きていらしたころは、

お母さんという緩衝材があるからこそ成り立っていたような関係に思えます。

が、二人きりになって、お父さんに対する責任もぜーんぶジェーンさんの肩にかかってきて・・・。

父一人・子一人。お互いがお互いしかいないんだから、

何があってもその絆は決して切っちゃいけない・・・理屈はわかる。

けど、もし私がこの人の娘で、二人きりの家族なら?と考えると私なら耐えられないです。

とても面倒見切れません。

でもジェーンさんは決して見捨てない、逃げ出さない。

それが義務や責任感なのではなく、ちゃんとお父さんに愛情を持ってのことだと伝わってくるから心に刺さる。

こういう経験がジェーンさんという人を作ったのだな、と、これを読んでわかりました。

 

P103「絶対に切れる刀は抜いたほうが負け」

P169「結婚は、その人が死ぬほど好きだった記憶と、お金があれば続く」

この2箇所は印象深かった。いつまでも記憶に残りそう。

 

 

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:22 | category:    ジェーン・スー |
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