隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 冥の水底
評価:
朱川 湊人
講談社
¥ 1,944
(2014-10-29)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 冥の水底 / 朱川湊人(講談社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

医者である市原玲人は、友人の平松光恵に、

首から上だけが狼のいわゆる「狼男」の死体写真を見せられる。

彼女はその写真と大切な取材手帳を市原に託し、忽然と姿を消した。

時は20年遡る。阿巳雄山の奥に、特殊能力を持つ「マガチ」とよばれる人々が暮らしていた。

マガチの青年シズクは、初恋の少女を忘れられず、彼女を追って東京で暮らし始めるが……。

一途な純粋さが胸を抉る、一気読み必至の、純愛ホラー巨編。

 

 

 

(感想)

 

特殊能力を持つ異形の存在「マガチ」の一族は人間の世界に紛れ、

その能力に気づかれぬように暮らしている。

しかしマガチの少年が人間の女の子に恋をして・・・という純愛ホラー。

2段組でかなりのボリュームでしたが、

恋愛・ホラー・サスペンスといろんな要素の詰まった作品でした。

 

ネット上では「切ない」という感想を多く見かけましたが、

私はちょっと引いた・・・かな?

初恋の女の子を美化しすぎで、ここまで長い間思い続けるのは怖い。

これが人間じゃない人(人間じゃないんだから「人」っていうのもおかしいけど)だから切なく美しく思えるのかもしれないけど、

もしこれが人間だったら相当ヤバイ人。

そう思ってしまったら私はもうだめでした。これ、別の意味のホラーでしょ。

 

私が朱川さんに求めてるものは、こういうのではないです。

| comments(0) | trackbacks(0) | 16:07 | category:    朱川湊人 |
# 彼方の友へ
評価:
伊吹 有喜
実業之日本社
¥ 1,836
(2017-11-17)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 彼方の友へ / 伊吹有喜(実業之日本社)

  

 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。
「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。
そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――
戦前、戦中、戦後という激動の時代に、
出版の世界で生きる波津子とそのまわりの人々を、
あたたかく、生き生きとした筆致で描く、著者の圧倒的飛躍作。

 

 

(感想)

 

健気で純粋な女の子が主人公。

大好きな雑誌を作る編集部で生き生きと生きているけど、戦争が世の中に暗い影を落とし・・・・って

まるで朝ドラみたいなストーリーでした。

 

戦争時代を描いているというだけで、

「人が死ぬんだな」「暗い展開になりそうだな」と思いがちですが、

この作品はそれを描きつつも、暗い・つらいだけではありません。

そんな時代にも美しいものを愛し、きらめきを失わない、

若い女の子のたちのきらきらが作中を明るく照らしています。

乙女のパワー、すさまじきww

こういう輝きのある作品、嫌いじゃないです。

でも回収しきれてない、

別になくてもいいような無駄な伏線が多すぎるのは気になります。

削る部分・しっかり書き込む部分・・・その選択と処理が荒いんですよね。

直木賞候補になってたようですが、これじゃあ受賞はさせられません。

 

作中に登場する少女向け雑誌は「恋愛」に絡む要素はあえて避けて作られています。

登場人物たちの恋心もさわやかに淡くしか描かれていません。

なのになぜか美蘭さんと有賀主筆のあの場面だけはなんだか妙に生々しく、

作中で気持ち悪いほど浮いていて・・・。

バランスの悪さを感じました。

 

悪くはないのにな〜。あと一歩のところで残念な印象の残る作品でした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:50 | category:    伊吹有喜 |
# キラキラ共和国
評価:
小川 糸
幻冬舎
¥ 1,512
(2017-10-25)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 キラキラ共和国 / 小川糸(幻冬舎)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

ツバキ文具店は、今日も大繁盛です。

夫からの詫び状、憧れの文豪からの葉書、大切な人への最後の手紙…。

伝えたい思い、聞きたかった言葉、承ります。

『ツバキ文具店』待望の続編。

 

 

(感想)

 

「ツバキ文具店」の続編。

読み始めてすぐにわかるので書いちゃいますが、

ポッポちゃんはQPちゃんのお父さんと結婚しました。

今作は3人が少しづつ「家族」になっていくまでの物語です。

なので前作に比べると代書仕事の描写は少なく、

家族以外の鎌倉の人たち(バーバラ婦人・男爵・パンティーなど)の出番も控えめでした。

 

薄っぺらさが気になった前作に比べれば、人の心は丁寧に描かれてると思います。

家族に焦点を当て、前作よりまとまった印象も受けました。

特にほっこりのんびりな世界観の中でひときわ違う輝きを見せる

レディー・ババのどぎつい存在感がたまりません。

レディー・ババと守景家の3人の関係はどうなっていくんだろう・・・。

このままで済まされるわけないですよね?

続編、期待してます。

| comments(0) | trackbacks(0) | 16:03 | category:    小川糸 |
# 探してるものはそう遠くはないのかもしれない

JUGEMテーマ:エッセイ

 

 探してるようなものはそう遠くはないのかもしれない / 新井見枝香(秀和システム)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

 

某有名書店のカリスマ書店員による初エッセイ。

「書店員が書いた心温まる本屋の話」ではなく、

37歳、独身、彼氏なし、そんな女のおかしくてちょっぴり痛いお話。

「会社員に向いてない」「結婚に向いてない」日常のエピソードが満載。

 

 

 

(感想)

 

新井見枝香さんは某有名書店にお勤めのカリスマ書店員です。

数か月前に「セブンルール」という番組でこの人を知り、興味を持ちました。

2014年から独自に選考する「新井賞」なるものを設立し、

芥川賞・直木賞と同日に発表してるらしく、

その過去の受賞作のラインナップが良かったのでこちらのエッセイも購入してみました。

 

カリスマ書店員が書いたからといって、書評本ではありません。

あくまで37歳の独身女性の日常を綴ったエッセイです。

まじめな話題は一切なく、とにかく「読者を笑わせたい!」という思いが伝わってきます。

とにっかく明るいです。

さすが多くの本を読んできただけあって、

この方は「面白い文章とはなにか」を知ってる。

それを書くスキルも持っている。

・・・でも、いくら有名な書店員さんだとしても所詮は素人さん。

「面白いでしょ」「私、カリスマなんだよ」感が気になるといえば気になります。

 

作中に何度もジェーン・スーさんの話題が出てきて、帯を書いてるのもジェーンさん。

こういうタイプの女性がジェーンさんを好きなのは当然。納得。

でも、ジェーンさんのエッセイに感じる「激しい共感」はこの本には感じません。

爆笑度もジェーン本よりは低め。

ここがプロと素人の違いなんだな、と。

 

けど、「新井賞」の受賞作はどれもいい作品なので、

この賞を今度も注目していきたいです。

(この機会に未読の受賞作も何冊か読みました☆彡)

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:11 | category: 作家名 あ行 |
# ツバキ文具店
評価:
小川 糸
幻冬舎
¥ 1,512
(2016-04-21)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ツバキ文具店 / 小川糸(幻冬舎)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

言いたかった ありがとう。言えなかった ごめんなさい。
家族、親友、恋人⋯⋯。
大切に想ってっているからこそ、伝わらない、伝えられなかった想いがある。
鎌倉の山のふもとにある、
小さな古い文房具屋さん「ツバキ文具店」。
店先では、主人の鳩子が、手紙の代書を請け負います。
『食堂かたつむり』の著者が描く、鎌倉を舞台した物語。

 

 

 

(感想)

 

ほんわかとあたたかい気持ちにさせる小説・・・

おそらく著者はそういうものを書きたかったのでしょう。

鎌倉に実在するお店や美味しいものも登場し、

鎌倉のガイドブック的な役目も果たしてます。

こういう小説ってある特定のタイプの女性にはすごくウケるんでしょうね。

深いことを考えなければそこそこ楽しめる作品ではあると思います。

 

けど、「雰囲気だけ」なんだよな〜。

代書の依頼をしに来る人々にはそれぞれ深い理由があるはずなのに、

そこをまったく描いてないから読んでる方は消化不良。

著者が描きたいのは、「お客さん」ではなく

「主人公(鳩子)」の暮らしだからこうなるのだろうけど、

あまりにあっさりしすぎてて、人間や心の描写が少なすぎる。

先代と鳩子の関係も描き切れていません。

依頼人の心の奥底を深く理解しなければ代書屋さんなんてできるはずがない。

手紙供養の焚火で食べ物を焼いて食べる鳩子さん・・・代書屋としてありえんでしょう。

 

薄っぺらさを「鎌倉ってお洒落でしょ」「こういう暮らし、いいでしょ」ってごまかしてるような・・・。

たしかに表面的には素敵ではあるんだけど、人の心の本質はまったく描かれてない作品。

雰囲気は好きなだけに残念でなりません。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:50 | category:    小川糸 |
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