隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 砂上
評価:
桜木 紫乃
KADOKAWA
¥ 1,620
(2017-09-29)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 砂上 / 桜木紫乃(角川書店)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

冬の北海道・江別。

柊令央は、ビストロ勤務で得る数万円の月収と、元夫から振り込まれる慰謝料で細々と暮らしていた。

いつか作家になりたい。

そう思ってきたものの、夢に近づく日はこないまま、気づけば四十代に突入していた。

ある日、令央の前に一人の編集者が現れる。

「あなた今後、なにがしたいんですか」。

責めるように問う小川乙三との出会いを機に、令央は母が墓場へと持っていったある秘密を書く決心をする・・・。

 

 

 

(感想)

 

どんよりと乾いた空気の漂う作品でした。

 

「つまらない」「読んででつらい」などあまりいい評価は聞こえてこないけど私は嫌いじゃない。

嫌いじゃない、というか、私も主人公と一緒で就職氷河期を経験し、

きちんとした就職ができなかったクチなので、

40代で身に染みる「人生の厳しさ」がグサリと刺さって共感できたんですよね。

"ゆらゆらと生きてきたつけが回ってきた"って表現はまさにその通り。

決して目をそらすことのできない現実を突きつけられたような感じ。

編集者が主人公に「主体性がない」と指摘される場面も、読んでてキツかったし(;´・ω・)

 

珠子さん、めっちゃ怖かった〜。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:42 | category:    桜木紫乃 |
# 婚約迷走中 パンとスープとネコ日和

JUGEMテーマ:小説全般

 

 婚約迷走中 パンとスープとネコ日和 / 群ようこ(角川春樹事務所)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

いつでも婚約破棄する準備あり。

滋味深いスープと美味しいサンドイッチのお店をマイペースで営むアキコと相棒のしまちゃん。

仕事熱心なしまちゃんだが、婚約者・シオちゃんには、つれない態度…。

ロングセラー「パンとスープとネコ日和」待望の第4弾!

 

 

 

(感想)

 

大きなことは起こらず、ただ日々の暮らしを綴っているだけ。
穏やかな日々のかけがえのなさをしみじみと感じさせてくれるこのシリーズも今作で第4弾。

いつもほんわか癒されていました、今回はうーーーん・・・。

結婚が決まって幸せいっぱいのはずのしまちゃんがずーっとイライラプンプンしてます。

婚約者のシオちゃんはどう対応していいかわからずおろおろしてるし、

アキコさんもしおちゃんの顔色をうかがってばかりで、作品全体がどんよりいや〜な雰囲気。

今回はまったく癒されませんでした。

しおちゃんがふわふわきらきらの「THE・女の子」じゃないのは知ってるし、

そこがしまちゃんのいいところだとは思うけど、これではあまりにもかわいくない。

しまちゃんに「じゃあ、なんで結婚するの?」って疑問でいっぱい!!

 

また続編はあると思うけど、次はいつもの雰囲気に戻ることを期待します。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:00 | category:    群ようこ |
# 湖畔の愛
評価:
町田 康
新潮社
¥ 1,620
(2018-03-22)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 湖畔の愛 / 町田康(新潮社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

ようこそ、九界湖ホテルへ。

創業100年を迎えた老舗ホテルの雇われ支配人の新町、

フロントの美女あっちゃん、雑用係スカ爺のもとにやってくるのは――。

自分もなく他人もなく、生も死もなく、ただ笑いだけがそこにあった。

響きわたる話芸に笑い死に寸前! 天変地異を呼びおこす笑劇恋愛小説。

 

 

 

(感想)

 

少し前に読んだ「生の肯定」があまりに町田ワールドすぎたのに対し、

これは町田作品にしてはソフトな部類。

町田康初心者に「最初の一冊目」としてお勧めするのに適した一冊だといえます。

 

まったくw 町田さんが「恋愛小説」を書くとこうなるのね〜。

恋愛小説を読んだときに抱くドキドキや胸キュンはまったく感じない。

けど、町田さんにそういうの、求めてないからなぁ。

展開・言葉のチョイスに何度声を出して笑ったことかww

笑えて、言い回しの巧みさに「うおお!」って感動できる・・・これが町田康ですよね?w

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:18 | category:    町田康 |
# ねこ町駅前商店街日々便り

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ねこ町駅前商店街日々便り / 柴田よしき(祥伝社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

赤字ローカル線の終点・根古万知。

駅前は、わずか八店舗ほどが細々と営業するシャッター商店街である。

数年前、猫の町「ねこまち」としてブームになりかけたこともあったが、

それも一時のこと、以来、ジリ貧状態だ。

離婚を機に、そんな町に戻ったラーメン店の娘・愛美は、

緑色の大きな目と灰色の毛が愛らしい拾い猫を飼うことになった。

ノンちゃんと名付けたその猫が、ひょんなことから一日猫駅長を務めると駅は再ブレイク、商店街にも観光客が訪れる。

愛美は久しぶりに賑わう光景を見て、今度こそ、元気いっぱいだった頃の根古万知を取り戻したいと動き出すが…。

 

 

 

(感想)

 

読みやすいんだけど、ちょっと出来過ぎかな〜。

私も過疎った田舎町に住んでるからわかる。

町おこしがこんなにスイスイうまくいくはずがない。

どこから来たのかわからない不思議な猫だとかUFOだとか

非現実的というかファンタジー的な要素もあり、リアリティは感じません。

 

「猫の駅長」「シャッターの絵を描く」「空き店舗を貸し出す」・・・

これらはどっかで聞いたことのある既出の町おこし。

こんなじゃなく、もっと作者オリジナルの新しい町おこし案を見せてもらえれば

面白さもずいぶん違っていた気がします。

「実話の小説家」じゃないのに、既出の町おこし案を使うのはちょっとずるいです。

| comments(0) | trackbacks(0) | 16:00 | category:    柴田よしき |
# 騙し絵の牙
評価:
塩田 武士
KADOKAWA
¥ 1,728
(2017-08-31)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 騙し絵の牙 /塩田武士(KADOKAWA)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆☆

 

大手出版社で雑誌編集長を務める速水。

誰もが彼の言動に惹かれてしまう魅力的な男だ。

ある夜、上司から廃刊を匂わされたことをきっかけに、

彼の異常なほどの“執念”が浮かび上がってきて…。

斜陽の一途を辿る出版界で牙を剥いた男が、業界全体にメスを入れる!

 

 

(感想)

 

大泉洋から「映像化されたら僕が主演できそうな小説ない?」と長年言い続けられてきた編集者が

「もう私が作ります!」と塩田武士さんに依頼したことにより生まれた企画モノだそうです。

すごいですね、アテ書きの小説なんて聞いたことがありませんw

そんな経緯で書かれた作品なので、表紙はもちろん大泉の写真。

本の中に紛れる写真もすべて大泉w

会話の面白さといいテンポといい、たしかにまんま大泉洋ですwwあははw

このたび映画化も決まり、無事に大泉さんへオファーも来たそうです。

ここでまったく違う俳優が主演したら笑うけど、そうならなくてよかったよかったw

 

本作は2018年の本屋大賞ノミネート作品ですが、やっぱり本屋大賞って侮れない。

めっちゃ面白かったです。

私は本屋大賞に絶対的な信頼を感じています。

 

終盤、それまでに抱いていた作品のカラーがまったく変わる真実が浮かび上がります。

「これが"騙し絵の牙”かっ!!」と驚かされたんですけど、

そこに至るまでだってサラリーマンの熱い思いや悲哀を感じて十分面白い。

面白さも何層にも重なった作品と言えるのではないでしょうか。

 

いつも図書館利用ばかりで、本を買わずに申し訳ありません。

そんな私が言う権利はないのかもしれないけど、

この作品で描かれていた出版界(紙の媒体)が置かれている危機的な状況は本好きとしては悲しい限りです。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:30 | category:    塩田武士 |
# 夜更けの川に落葉は流れて

JUGEMテーマ:小説全般

 

 夜更けの川に落葉は流れて / 西村賢太(講談社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆☆

 

5歳で家を出て自給自足の生活を始めた北町貫多。

憬れだった築地市場での仕事を得るも、たった一日でそれを失うことになった顛末を描く「寿司乞食」。
齢23、24。すべてに無気力で受動的だった貫多を、

やや向日的な世界へ引き戻したのは、

梁木野佳穂という女性だった――表題作「夜更けの川に落葉は流れて」。
長いこと後ろ髪を引かれる思いでいた“あの店”。

貫多と店主の20数年にも及ぶ蟠りは、ある深夜不穏な最高潮を迎える――「青痰麺」。
これまで仔細には書かれなかった20代前半の北町貫多を、

哀切でいて軽妙、諧謔味と暴力性を併せ持った筆致で鮮やかに描いた、

著者の原点を炙り出す傑作作品集。

 

 

 

(感想)

 

ぐあー、もう最強に面白かったです。

「最低」「クソ」、こんな言葉が誉め言葉になる最低最高の私小説!!

なかでも「青痰麺」はサイテーでしょう。クソ野郎の極みでしょう。

これは今までの貫多の愚行の中でもいちばん笑ったかもしれません。

だってww

大きな賞を取って有名人になった影響がこんなところに・・・・腹抱えて笑うしかないでしょ。

一体どこまでが実話なんだろう。最低すぎて怖いですw

で、クソすぎるのに文章が抜群にうまいっていうのがなんともww

 

サイテーだけど人間臭くて憎めない。

笑える一方で不快にもなるんだけど、また読んじゃうんだろうな。

そんなクセになる作家なんだよなぁ。

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:59 | category:    西村賢太 |
# 毒母ですが、なにか
評価:
山口 恵以子
新潮社
¥ 1,620
(2017-10-20)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 毒母ですが、なにか / 山口恵以子(新潮社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

16歳で両親を亡くしたりつ子は、

逆境と屈辱を闘争心に変え、次々と目標を実現してきた。

東大合格、名家御曹司との結婚、双子誕生。

それでも婚家で蔑まれる彼女が次なる目標に定めたのは子どもたちに最高の教育を与えること。

名門お受験塾で闘志を刺激され、

わが子の超難関校合格を夢見てひとり暴走しはじめた彼女を待つ皮肉な運命とは―。

幸せを求めて猛進する女のブラックコメディ。

 

 

 

(感想)

 

コメディタッチに書いてあるけど、娘さんからしてみれば壮絶地獄。

愛情って、お互いのバランスが保たれてないと暴力になっちゃうんですよね・・・・。

てかここまでくるとこれは娘への愛情ではなく、母親自身のためでしかない。

何があっても最後まで変わることなく、

最終的に開き直っちゃったのはある意味すごかったです。

こういう人には何言ってもわかんないんだろうな。

りつ子の暴走は笑えるっちゃあ笑える。

でも、こんな母親って実際にいそうで・・・怖いねぇ。

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:34 | category:    山口恵以子 |
# 嘘 Love Lies
評価:
村山 由佳
新潮社
¥ 1,944
(2017-12-26)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 嘘 Love Lies / 村山由佳(新潮社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆☆

 

刀根秀俊、美月、亮介、陽菜乃は仲のいい友達グループだった。

中学2年の夏にあの事件が起こるまでは――

恐怖、怒り、後悔、そして絶望。

生涯拭えぬ過ちとトラウマを抱えたまま、各々の人生を歩んでいた4人。

求め合う体と秘めたる想いが、さらなる苦悩を呼び、

暴力の行き着く果てに究極の愛が生まれる。

著者渾身の恋愛長編。

 

 

(感想)

 

最近の村山由佳さんは激しい大人の恋愛を描いたエロ系作品が多かったし、

この作品の表紙もちょっときわどい感じ。

またその路線かな〜と思ってたけど今回は違いました!

中学生の淡い初恋を描くのかと思いきや、ある事件を境にヤクザが絡んできて

フィルムノアールの香りのする危険な展開に・・・・。

純粋な中学生だったからこそ突っ走ってしまった・・・・それが切なく、

淡い初恋が一生モンの究極の愛になっていく様がもう・・・(ノД`)

とにかく読ませる力のある作品です。

530ページもあるのにたった1日で読みました。

ほんと面白かった。私の中では村山由佳の最高傑作。

実写化してくれ!そして刀根くん役は絶対に長瀬智也で頼む!

 

(村山由佳さんへリクエスト)

美月と真帆ちゃんのお父さんの話もぜひ読みたいです。

スピンオフを期待しています。

| comments(0) | trackbacks(0) | 13:54 | category:    村山由佳 |
# 屍人荘の殺人
評価:
今村 昌弘
東京創元社
¥ 1,400
(2017-10-12)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 屍人荘の殺人 / 今村昌弘(東京創元社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆☆

 

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、

曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、

同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。
合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、

想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。
緊張と混乱の一夜が明け――。
究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか!?

 

 

 

(感想)

 

なにこれww すっごいww

読了してすぐに「この人の他の作品も読みたい」と思って調べたら、

これがデビュー作なんですね!

『このミステリーがすごい!2018年版』第1位

『週刊文春』ミステリーベスト第1位
『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位・・・とデビュー作で前代未聞の3冠。

本屋大賞にもノミネートされてたし・・・いやー、すごい人が出てきましたなぁ。

 

普通の推理ミステリーだと思って読み始めたのですが、事態は思わぬ方向に。

そして物語の中心になると思っていた人物が序盤であっけなく退場するという驚き。

推理物に〇〇〇を登場させるなんてよく考えたなww

発想力とぶっとび度がすさまじいです。

B級・ライトノベル的な若い感覚もあるけど、

この発想力はそんな程度の枠には収まるもんじゃない。

デビュー作ということもあり、荒さもたしかに目立ちますが、

この調子で奇想天外なものを書いてくれれば、

唯一無二の相当面白い作家になってくれるんじゃないかな〜。

今後も追いかけたい作家発見。

ビギナーズラックにならないことを祈ります!!

 

まぁ・・・

正直、トリックの種明かしを読んでもよくわかんなかったんだけどw

(私がバカなだけかもしれないけど)

でもそれも気にならないくらい度肝を抜かれた作品です。

| comments(0) | trackbacks(0) | 12:58 | category:    今村昌弘 |
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