隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
<< March 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
# 生の肯定
評価:
町田 康
毎日新聞出版
¥ 1,728
(2017-12-20)

JUGEMテーマ:小説全般

  

 生の肯定 / 町田康(毎日新聞出版)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

世界を睥睨し超然と生きるはずだった。
数多の苦難に襲われ、死に場所を求めて彷徨った。
余はいま、人々の温もりの中で生きようとしている。
普通の人生を求めて――『どつぼ超然』(2010)、
『この世のメドレー』(2012)につづく圧巻のシリーズ完結編。

 

 

(感想)

 

途中からもうなにがなんだかわかんなくなってしまいました。

しかも読み終えた後にシリーズものの完結編だと知り・・・ww

 

おっさんが美術館へ行こうとする・・・それだけの話のはずなんです。

でもそこは町田作品、そう簡単に目的地にたどり着けるわけがない。

すっちゃかめっちゃかで何が何だかわかりませんww

とにかく「町田ワールドがすぎる」というか・・・カオス!!

好きな人は好き、わかんない人にはわかんない、独特の世界。

しかも今回は「好きな方の人間」のはずの私でもわかんないというハイレベルさで、

これは私がシリーズの前2作を読んでないのが原因とかそういう問題ではない気がします。

けど、全然ついていけてないんだけど、

それでもやっぱり独特の表現や比喩は楽しいんですよね〜。

つまり、これはじっくりと味わう作品というよりは、

このセンスと感覚をこの場限りのつもりで楽しむ作品なんだと理解しました。

 

難しい感想なんていらない、そういうことです。

 

| comments(0) | trackbacks(0) | 08:31 | category:    町田康 |
# 源氏物語 上

JUGEMテーマ:小説全般

 

 源氏物語 上 / 角田光代(訳)(河出書房新書)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆☆

 

恋に生き、切なさに、嫉妬に、美しさに涙する――
日本文学最大の傑作が、明瞭な完全新訳で甦る。
<原文に沿いながらも現代的な自然な訳文で、

もっとも読みやすく美しい角田訳の誕生。
上巻には、第一帖「桐壺」から第二十一帖「少女」まで、たっぷり二十一帖分を収録! >

 

 

 

(感想)

 

この本を読むことは、私にとって大きなチャレンジでした。

大好きな作家・角田さんが訳してくれなければ、

歴史小説が苦手な私が源氏物語を読むなんて絶対絶対ない。

しかも上巻ですら680ページ近くもあるんですよ・・・。

もう現物見ただけで気持ちが萎えます(>_<)

でも、角田さん自身が「『源氏』を訳し終わると小説が変わるからと言われ、楽しみにしている」とおっしゃっていたので、

好きな作家がそこまで言ってるなら、

それを読まないという選択肢はありえないな〜、と。

私も読書人生をかけるくらいの気持ちで一大決心して取り掛かりました。

 

私だけでなく、おそらくこの本にチャレンジほとんどの方が

「挑む」姿勢でこの本にとりかかると思います。

でもね、読了した今だから言えるのですが、

そこまで構える必要はありません。

思った以上に読みやすいです!

これは普段から自分の文章に個性を出さず、

シンプルで読みやすい文章を書くことを心がけている角田さんの仕事だからこそ。

会話も現代的なので理解できるし、

作中に登場する大量の和歌などもすべて現代語に訳されているので、

苦労することなく読み進めることができます。

各章にそれぞれ人物相関図があるのもすごく助かりました!

ただし、たくさんの女性が登場するので誰が誰なのかがわからなくなることもあるかもしれません。

時が流れるとともにそれぞれの立場や役職なども変化するので、

自分なりの相関図をいうかメモも取りながら読んでいくことをおすすめします。

 

とんでもない女好きなのになぜか憎めない光君。

光君を巡る女性同士のギスギスした心理描写もあるのかと思いきや、

そういった「角田色」はあまり感じず、さらりとしてました。

だから読者はしょーもない浮気男の光君にも特に不快感を抱くこともなくw

この時代、相手の顔を見る前に、

その評判を聞いただけで恋が始まるというのもすごいですね。

こんなに女好きの話なのにギラギラした下品さがないのは、

デートを重ねることもなく、

ほぼ手紙のやり取りだけで愛を育み、

不細工も年増も見捨てず、

一度関係を持った女は一生面倒見る責任感と包容力があるからかなぁ。

ひたすら男性を待ち続ける女性たちの忍耐強さもこの時代ならではなのでしょうねぇ。

 

さて、続く中巻も楽しみですが私には一抹の不安が・・・。

中巻が発売されるのが2018年の11月予定。

下巻にいたってはその一年後の2019年の11月予定ということで、

それまで人間関係などをしっかり覚えていられるか不安でしかたありません。

面白かったのに1年後に続きが放送される頃には内容をほぼ忘れてた

NHKドラマ「精霊の守り人」状態になりそうで怖いです。(結局、1年目しか見なかった)

680ページというこのボリュームでは

「中巻が出るけど詳細忘れちゃったから上巻を再読しよう」とはいきませんww

自分のメモや源氏物語関連のサイトなどをながめて、中巻発売まで忘れないようにしなきゃなりませんね。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:30 | category:    角田光代 |
# ホワイトラビット

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ホワイトラビット / 伊坂幸太郎(新潮社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆☆

 

仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。

SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。

息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、

事態は思わぬ方向に転がっていく――。

・・・あの泥棒も登場します。

 

 

 

感想)

 

相変わらず小気味が良く、スタイリッシュな作品でした。

田舎者の私はちょっとこそばゆく感じる独特のおしゃれ感も健在ですww

小さな伏線がたくさん散りばめられ、

最終的にはすべてのパーツがきれいに1つにおさまる気持ち良さはたまらない!

さらに時系列をも飛び越えて、面白いけど気を抜けない緊張感もあります。

伊坂さんの作品は作者名を伏せて読んだとしても誰が書いたかわかるほど個性があり、

確固たる伊坂ワールドを構築していると思います。

 

けど、いい意味で「伊坂さんすぎる」のが逆に面白みがないかなぁ。

面白いし、さすがだとは思うけど、新鮮味はないんですよね。

この感想にしたって、

別の伊坂作品でも書いたことあるようなこと書いてる気がしますもん。

贅沢なこと言ってるのは重々承知ですが、もう少し何か新しい伊坂さんが見てみたい。

そろそろこの手法だけでは飽き始めてる読者も私だけではないでしょう。

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:12 | category:    伊坂幸太郎 |
# 劇場
評価:
又吉 直樹
新潮社
¥ 1,404
(2017-05-11)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 劇場 / 又吉直樹(新潮社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆


演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。
夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った――。
夢と現実のはざまでもがきながら、

かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。

 

 

(感想)

 

前作同様、世間も私もどうしても

「あの又吉が書いた作品」という色眼鏡で見てしまいます。

それを申し訳なく思いつつも止められない。

もともとが有名人でよく知ってる人なだけに公正な評価の難しい作家です。

 

前作でも感じたことですが、世界観にやはり「又吉だなー」と感じます。

前作はお笑いの世界を描き、今回は劇団員の話なのですが、

漂うめんどくささ・理屈っぽさ・認められないもどかしさ・孤独感・・・

これらはまさに又吉ワールド。

自分を貫くためには何かを犠牲にしなきゃいけないという展開になっていくのも、

どちらの作品にも共通していますね。

 

でも視点の面白さはさすが芸人!

「ネタか?」というエピソードがいくつか散りばめられていて笑えました。

| comments(0) | trackbacks(0) | 13:25 | category:    又吉直樹 |
# さらさら流る
評価:
柚木 麻子
双葉社
¥ 1,512
(2017-08-17)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 さらさら流る / 柚木麻子(双葉社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

28歳の井出菫は、かつて恋人に撮影を許したヌード写真が、

ネットにアップされていることを偶然発見する。

なぜ6年も前の写真が出回るのか。

苦しみの中、菫は当時の恋人・光晴との付き合いを思い起こす。

初めて意識したのは、二人して渋谷から暗渠を辿って帰った夜だった…。

 

 

 

(感想)

 

冒頭は大学のサークル仲間の男女が、

真夜中に東京の暗渠をたどって帰宅する場面を描きます。

このあたりはこれから何かが始まる期待感があり、本当に素敵です。

しかし・・・・。

タイトルにも清涼感を感じたし、

読み始めたころはみずみずしい恋愛小説なのかな〜と思ってたけどとんでもない!!

まさかの真逆!リベンジポルノで地獄に落とされる女性の物語でしたぁ・・・。

けど、苦い経験をした女性を応援する作品でもなければ、

ネット社会の怖さに警笛を鳴らしてるとも言い難く、

作者の意図がうまく読み取れない作品という印象です。

 

今はいつでも誰でも気軽に写真を撮れて、それをネットにアップして、

知人はもちろん世界中のまったく知らない人たちともその写真を共有できる時代。

あまりに気軽すぎてネットの怖さってついつい忘れがちだけど、

あらためて怖いなと感じました。一般人でも写真一枚で人生狂っちゃうのね・・・。

でも、主人公に素直に同情はできません。

被害者なのかもしれないけど、そんな写真を撮らせるなんて自業自得でしょって思っちゃう。

 

主人公には親友(美術教師)がいて、彼女の助けによって主人公は前向きになっていきます。

この親友の存在がどれほど大きかったか!

そしてこの親友の素敵さよ!

だけどなんだかな〜。

少しネタバレになっちゃいますけど、

彼女の絵のヌードモデルをやることによって主人公が立ち直っていくって展開が私にはまったく意味不明。

いくら親友でも、作品が完成すればみんなにみられるヌードでしょ?

逆に傷を深くしちゃいそうで怖いし、そんな立ち直り方は気持ち悪いと思うのですが・・・。

 

でもいちばん気持ち悪いのは、写真を拡散させた犯人。

なんなんだろ、あの人。人としてサイテー。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:10 | category:    柚木麻子 |
# 意識のリボン
評価:
綿矢 りさ
集英社
¥ 1,404
(2017-12-05)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 意識のリボン / 綿矢りさ(集英社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

母親を亡くした二十代の「私」は、

「絶対に長生きするからね」と父に誓ったのに、交通事故に遭ってしまう。

激痛の嵐の中、目を開けると二メートルほど下に自分の身体を見下ろしていて……。 
表題作ほか、姉妹、妻、母親――様々な女たちの視線から世界を切り取り、 
人生を肯定するあたたかさを感じさせる。著者新境地の全八編の短編集。
 

 

 

 

(感想)

 

これは非常に難解でした。

ストーリーもあるようでないようななので、小説というよりエッセイ?

いやっ、エッセイとも言い難く、

頭の中に浮かんだとりとめのない事柄をまとめた感じ?

哲学的な要素も感じ、

これまでの綿矢さんの作品と比べるとかなり異色の作品といえると思います。

 

いちばん共感できたのは表題作の「意識のリボン」だけど、

全体としてみるとこの作品は自分には合いませんでした。

・・・・綿矢さんのいい意味での「毒」は好きなんだけどなぁ。

| comments(0) | trackbacks(0) | 12:54 | category:    綿矢りさ |
# 三千枚の金貨(上)(下)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 三千枚の金貨(上)(下) / 宮本輝(光文社)

 

 個人的な評価 (上) ☆☆☆

        (下) ☆☆☆

 

新進文具メーカー役員の斉木光生は、

五年前に入院したとき、末期ガンの患者から不思議な話を聞かされた。

和歌山県の山にある桜の巨樹。その根元に三千枚の金貨を埋めたという。

「みつけたら、あんたにあげるよ」と言われた記憶が蘇り、

会社の仲間の宇都木、川岸の二人に話をするが、

別の怪しい男たちも金貨を探していることに気づく。

金貨は本当に存在するのか!?

四十代の男たちの、心躍る「人生の選択」。

生きることを実感する大作。

 

 

 

(感想)

 

この作品のあらすじを一言で言うとすると、

「桜の木の下に眠る金貨を探すお話」になっちゃうんだろうけど、

ほんとに重要なのはそこではない気がします。

「男はいくつになっても子供」

まさにそんな少年のような冒険心に突き動かされた中年男たち。

この経験によって、彼らがお金よりも大切なものを得ることは間違いなく、

お金やモノではなく、精神的な豊かさの価値を教えてくれる作品でした。

この結末に納得できない読者さんも多いと思いますが、

結論を焦らない大人ならではの余裕は素敵です。

彼らは少年の心を今も持ちながらも、

様々な経験を経ている分、やっぱりしっかり大人の男なんですよね〜。

その証拠に彼らを取り巻くキーワードを一つずつ見ていくと、

質のいい文房具・蕎麦・コーヒー・ゴルフ・骨董品・シルクロード一人旅・・・・・などなど

大人にならないとその本当の意味での良さがわからないようなものばかり!

物語はこれらを描く場面がやたらと多いので、話はなかなか進みません。

私も読んでるうちは「本筋と関係ないじゃん」と若干イライラもしました。

しかし読後に改めて考えてみると、いいものに触れる経験をして、

精神的な豊かさを磨いていく彼らの姿を描くのがこの作品の本当のテーマだということならば、

脱線が多いのも仕方ないのかなと納得です。

単純に「金貨探しの物語」と受け取るか、

「精神の豊かさを描く作品」と受け取るかで、評価は大いにわかれる作品だと思います。

 

| comments(0) | trackbacks(0) | 12:15 | category:    宮本輝 |
Categories
Archives
Profile
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
にほんブログ村
にほんブログ村 本ブログへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
Search this site
Sponsored Links