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今夜は心だけ抱いて / 唯川恵(朝日新聞社)
個人的な評価 ☆☆
17歳の女子高校生の娘と47歳のバツイチの母親がある日、
ビルのエレベータが急直下事故に巻き込まれ、ふたりの心は入れ替わってしまう。
……若いカラダと熟れたココロ、熟れたカラダと若いココロ、
さて女はどっちで恋を始めるのでしょう?
(感想)
2人の人間の心が入れ替ってしまうというお話は、
これまで数多く発表されてきたけど、
これは入れ替った10代と40代の母娘のそれぞれの恋愛と性に重きを置いた作品。
2人の親子関係や歩み寄りを丁寧に綴るのがテーマではありません。
女性心理を描くのが得意な唯川さんらしい「入れ替りもの」と言えるでしょうね。
しかし、この母親、気持ち悪かったな。
経験があるから我慢できないのかもしれないけど、
娘の肉体を大切にしてないように感じられるのがどうも不快でなりません。
性体験があるかどうかもわからない娘の体を預かっておいて、
吉岡さんや須加さんとああいうことをする母親がいますか?
これには思いっきり引きました。
この不快感が、私のこの作品への全体的な評価を思いっきり下げました。
一方で娘の方は、深尾さんと大人の恋を育んでいく。
両者の対象的な恋模様が面白かったです。
「大人たちは愛の言葉の代わりに、胸の奥にある引き出しを開け、
その中にしまい込んでいたものを少しずつ見せてゆくものらしい」 という一文は素敵だったなぁ。
この場面で深尾さんが話した子供時代のやんちゃなエピソードにも大人の女はキュンとする。
恋のはじまりの淡い時間・・・この場面は何度も読み返してしまいました。