隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 今夜は心だけ抱いて

JUGEMテーマ:小説全般

 

 今夜は心だけ抱いて / 唯川恵(朝日新聞社)

 

 個人的な評価 ☆☆

 

17歳の女子高校生の娘と47歳のバツイチの母親がある日、

ビルのエレベータが急直下事故に巻き込まれ、ふたりの心は入れ替わってしまう。

……若いカラダと熟れたココロ、熟れたカラダと若いココロ、

さて女はどっちで恋を始めるのでしょう?

 

 

 

 

(感想)

 

2人の人間の心が入れ替ってしまうというお話は、

これまで数多く発表されてきたけど、

これは入れ替った10代と40代の母娘のそれぞれの恋愛と性に重きを置いた作品。

2人の親子関係や歩み寄りを丁寧に綴るのがテーマではありません。

女性心理を描くのが得意な唯川さんらしい「入れ替りもの」と言えるでしょうね。

 

しかし、この母親、気持ち悪かったな。

経験があるから我慢できないのかもしれないけど、

娘の肉体を大切にしてないように感じられるのがどうも不快でなりません。

性体験があるかどうかもわからない娘の体を預かっておいて、

吉岡さんや須加さんとああいうことをする母親がいますか?

これには思いっきり引きました。

この不快感が、私のこの作品への全体的な評価を思いっきり下げました。

一方で娘の方は、深尾さんと大人の恋を育んでいく。

両者の対象的な恋模様が面白かったです。

 

「大人たちは愛の言葉の代わりに、胸の奥にある引き出しを開け、

その中にしまい込んでいたものを少しずつ見せてゆくものらしい」 という一文は素敵だったなぁ。

この場面で深尾さんが話した子供時代のやんちゃなエピソードにも大人の女はキュンとする

恋のはじまりの淡い時間・・・この場面は何度も読み返してしまいました。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:22 | category:    唯川恵 |
# 三十光年の星たち(上)(下)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 十光年の星たち(上)(下) / 宮本輝(毎日新聞社)

 

 個人的な評価 (上) ☆☆☆☆☆

        (下) ☆☆☆☆☆

 

京都に住む三十歳の坪木仁志は、職を失い、

恋人に捨てられ、明日の生活もままならない。親に勘当され、

金貸しの佐伯平蔵から借りた八十万円の借金を返せるあてもない。

そんな坪木に佐伯はある提案をする。

それは、借金返済の代わりに坪木を車の運転手として雇い、

返済の滞る人びとのもとへ「取り立て」に出かけるというものだった…。

 

 

 

(感想)

 

上下巻あわせての感想になります。

 

宮本輝さんの作品で描かれるものは古臭いし、

道徳みたいで説教くさくとらえる人もいるかもしれません。

けど、「心の在り方」をじっくりと考えさせられます。

この、心の奥底に触れる感じがたまらなく好き!

私は人の心が丁寧に描かれた小説が本当に好きなんだな、と改めて感じました。

 

自分自身で考える「自分」というのは誰の中にもあって、

それに徹底してこだわるのが自分らしい生き方だと思うのも決して間違いではないけど、

仁志のように人に周囲によって導かれて、進むべき道筋が見えてくる人もいる。

大事なのは、人の言葉を素直に受け止める心の柔軟性で、

人に流されてみるのも案外悪くないものです。

人生において、「人との出会い」ほど大きなものもないのかもしれません。

 

若い人はもちろんだけど、

佐伯のように「人を育てる」世代・立場になってきている大人の人にも読んでほしい作品です。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:08 | category:    宮本輝 |
# ランチタイム・ブルー

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ランチタイム・ブルー / 永井するみ(集英社)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

29歳。独り暮らし。恋も仕事も行き先不明!?

駆け出しのインテリア・コーディネーター知鶴の日常は

ささやかな事件と隣り合わせ。

 

 

 

(感想)

 

30歳を目前にし、人生に焦るはじめてる女性・庄野知鶴。

思い切ってインテリアコーディネーターを目指して再就職。

知鶴の日常に起きるミステリーと、

少しずつ成長していく知鶴の姿を描く連作短編です。

カテゴリーとしては、ミステリーと恋愛小説のミックスのような感じかな?

 

読者のミスリードを誘うような書き方をしてる部分も多く、

「あ!そっちか!!」と意外なオチに驚かされたりww

けど、だいたいは特に感情を揺さぶられることなく淡々と読めました。

 

特に好きなのは「ウィークエンド・ハウス」。

普段は仕事をバリバリこなす上司の広瀬さんの

かわいらしさが垣間見られた章です。

しかし、その後の章では広瀬さんとあの男性が

どうなるかにはまったく触れずに終わっちゃったのは残念。

全体的に広瀬さんのエピソードがもっと多ければ、もっと面白くなったはず!

続編もありそうな終わり方だったので、

「もしするみさんが生きてたら・・・」なんて考えても仕方のないことを考えてしまいました。

| comments(0) | trackbacks(0) | 12:10 | category:    永井するみ |
# 夜行
評価:
森見 登美彦
小学館
¥ 1,512
(2016-10-25)

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 夜行 / 森見登美彦(小学館)

 

 個人的な評価 ☆☆☆

 

私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。
十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、

長谷川さんは突然姿を消した。
十年ぶりに鞍馬に集まったのは、

おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。
夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。
私たちは全員、

岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ傑作。

 

 

 

(感想)

 

森見さんの作品は日本(京都)らしい和のテイストでありながらも、

煌びやかでPOPできらきらはめちゃめちゃ楽しい印象です。

ですが今回は180度違って、漆黒の闇を思わせるダークで怪しげな作品。

ゆるめのホラーといっても言ってもいいでしょう。

今までとはまったく違う世界観に驚かされました。

 

昔の仲間が久しぶりに集まり、

それぞれが体験した不思議な出来事を語る・・・という流れなのだけど、

最後のオチには圧巻だったわりに、

仲間たちの語る不思議体験の部分はおさまりが悪くもやもやが残ります。

雰囲気はいいのに、

もっと味わい深い余韻が残るような読後感にはできなかったのでしょうか。

 

物語のキーとなるのは「夜行」「曙光」という2つの銅版画の作品群。

この小説のタイトルが「夜行」であるならば、

この作品の対となる作品という立ち位置で、

もう一つの世界を描いた「曙光」という作品も書けばいいのに。

てか、「曙光」という作品がないのが不思議なくらいなのですが・・・。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:41 | category:    森見登美彦 |
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