隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# ときどき旅に出るカフェ

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ときどき旅に出るカフェ / 近藤史恵(双葉社)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

瑛子が近所で見つけたのは、カフェ・ルーズという小さな喫茶店。

そこを一人で切り盛りしているのは、かつての同僚・葛井円だった。

ここでは海外の珍しいメニューを提供しており、

旅を感じられる素敵な空間をすっかり気に入った瑛子は足しげく通うようになる。

会社で起こる小さな事件、日々の生活の中でもやもやすること、

そして店主の円の秘密――。

不思議なことに世界の食べ物たちが解決のカギとなっていく。

読めば心も満たされる“おいしい"連作短編集。

 

 

 

(感想)

 

店主が毎月日本国内や世界中を旅して、

その旅で見つけた珍しいメニューを提供する。

そんな素敵なカフェを舞台に繰り広げられる謎解き連作短編集です。

美味しそうなカフェメニューもたくさん出てくるし、

この雰囲気を嫌いな女性はいないはず!

気軽に読める軽さなので、あっという間に読み終えてしまいました。

 

カフェというと女性らしいほわわ〜んとしたイメージがあるけど、

それよりも店主の芯の強さと行動力に惹かれます。

きちんとしたビジョンを持って、揺らぐことなく生きられるのは素敵。

この店(この人)は変わらない・流されないという安心感があるから、

お客さんも人もついてくる。うーん、理想だなぁ。

 

よい雰囲気でサクサク読めるのですが、ラスト近くはなにやら不穏な空気・・・。

せっかくいい心地よい雰囲気だったのにそれをあえて壊すということは、

続編があるとしか考えられません。

まだ素敵な店長の元で、美味しいものを食べて、

いい旅をさせてもらえることを期待しています。

 

| comments(0) | trackbacks(0) | 09:26 | category:    近藤史恵 |
# ガーデン
評価:
価格: ¥ 1,512
ショップ: 楽天ブックス

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ガーデン / 千早茜(文藝春秋)

 

 評価 ☆☆☆

 

花と緑を偏愛し、生身の女性と深い関係を築けない、帰国子女の編集者。
異端者は幸せになれるのか。幸せにできるのか。
著者会心の感動作。

 

 

 

(感想)

 

静かな空気感を持つ作品。

けど、燃えるよう荒々しい人物の登場により、その世界観は壊されます。

その瞬間の“何かが動き出す予感”にはゾクゾクしました。

 

植物を偏愛する帰国子女の主人公は、

人との距離の取り方が苦手で、近づけば近づくほど孤独を感じてしまう。

なーんか生命のエネルギーをまったく感じない人です。

そのせいかこんなにも植物がたくさんでてくる作品なのに、

彼の部屋の植物からにも生き生きとした生命力は感じない。

まるですべてが造花みたいに無機質に思えてきちゃってw

けど逆に女性たちはギラギラしています。

どの人もがんばって、悩んで、自分なりに道を切り開こうとしている。

そん対照的な描かれ方が女性として小気味よかったです。

 

“男は必ず間違える”・・・ある登場人物(もちろん女性)のこの言葉にドキン!

激しく共感いたしました。

彼らは間違えたことをいえばめんどくさいことになることを最初からわかってる。

だからそれを回避するために“本音”ではなく“正解”を言おうとする。

でも女にはそんなのバレバレで結局、余計にめんどうなことになる。

ねぇ、どうして彼らはそこまでの計算ができないんでしょうね?

| comments(0) | trackbacks(0) | 10:37 | category:    千早茜 |
# 私をくいとめて
評価:
価格: ¥ 1,512
ショップ: 楽天ブックス

JUGEMテーマ:小説全般

 

 私をくいとめて / 綿矢りさ(朝日新聞出版)

 

 評価 ☆☆☆

 

黒田みつ子、もうすぐ33歳。
男性にも家庭にも縁遠く、

一人で生きていくことになんの抵抗もないと思っている。
ただ時々、「正解」が見えなくて、迷ってしまうことも・・・。
そんな時は、もう一人の自分「A」に脳内で相談をしている。
私やっぱり、あの人のこと好きなのかな。
でも、いつもと違う行動をして、何かが決定的に変わってしまうのがこわいんだ――。
感情が揺れ動かないように、周りとうまく調和するように。
「おひとりさま」を満喫しようと、繊細に気を配るみつ子。
同世代の女性の気持ちを描き続けてきた著者による真骨頂。

 

 

(感想)

 

綿矢りささん、

読者をニヤリとさせるような切れ味のあるセンスのいい文章を書く人。

感覚が若く、まさに「新世代」って感じが好きな作家さんです。

タイトルの付け方も毎回秀逸なんですよね。

 

今作のおおまかなストーリーはいたってシンプル。

主人公は33歳のシングルの女性。

なーんとなくおひとりさまライフにも慣れちゃって、

そんな状況に焦りや抵抗も感じなくなってきている。

でも、たま〜に将来に対する不安は襲い、

自分の中に住むもう一人の自分「A」に対して、

「ねぇ、私、これからどうすればいい?」と問いかける日々・・・・

 

先日読んだ島本理生さんの「わたしたちは銀のフォークと薬を手にして」でも感じたことだけど、

恋愛や結婚に劇的にロマンティツクなことを求めすぎたら何もはじまらないのかもな。

やっぱ大事なのは「激しさ」よりも「穏やかさ」。

この主人公が手にした幸せも結果そういうことだった。

しかもそれは彼女が思ってた以上にときめきも刺激もなく、

ただのんびり穏やかな幸せだけは確実に続くようなそんな恋。

 

綿矢さんがこんな等身大のアラサー女性のお話を書くとは意外でした。

けど、今作はなーんとなくいつもに比べるとぬるい。

綿矢りさらしいキレがない。

こないだ読んだ「手のひらの京」も落ち着いた作品だったし、

この流れで綿矢さんの持ち味が薄まってしまったらさびしいです。

次回はもっとはじけてくれることを期待します。

| comments(0) | trackbacks(0) | 09:40 | category:    綿矢りさ |
# やめるときもすこやかなるときも

JUGEMテーマ:小説全般

 

 やめるときもすこやかなるときも / 窪美澄(集英社)

 

 評価 ☆☆☆

 

家具職人の壱晴は毎年十二月の数日間、声が出なくなる。

過去のトラウマによるものだが、原因は隠して生きてきた。

制作会社勤務の桜子は困窮する実家を経済的に支えていて、恋と縁遠い。

欠けた心を抱えたふたりの出会いの行方とは。

 

 

 

(感想)

 

誰だって過去のトラウマや背中に重たく抱えているものの1つや2つ、必ずあります。

そんな重い荷物を抱えて生きている二人が

お互いに欠けたものをゆっくり補い合うことで関係を深めていくお話でした。

しかし壱晴の過去のトラウマが

「おそらくこういうことなんじゃね?」って私が想像してたものそのまんまで、

ありきたりというか、韓ドラっぽいというか・・・w

 

壱晴は過去のトラウマを話し、

桜子とともにあの場所へもう一度戻ることで重い荷物の半分を桜子に背負ってもらえる。

けど、逆に桜子は愛した男性の重い荷物を背負わされることになる。

しかもどんなに桜子が彼を支え、愛したとしても、彼の傷は絶対になくなることはない。

相当の強い気持ちと覚悟がないとキツい恋だなぁ。

そんな二人の心の動きを一方の視点からではなく、

交互に描くスタイルの作品だからせつなさは余計に増します。

 

二人の恋の行方も気になりますが、

それよりも何よりも私が「ああ?」って思ったのは、

32歳で処女の友達に彼氏ができて幸せいっぱいの桜子に対して、その友人が、

「うまくいってる恋愛を女友達に話すときは最大限に気を使って。

 それが女社会のルールだよ」なんて言葉を吐いたこと。

友達なのにさ、

32まで恋愛に恵まれてこなかった女の子がやっとつかんだ幸せに対してよくこんなこといえるよ。

つくづく女ってこえーなと思った場面でした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:11 | category:    窪美澄 |
# わたしたちは銀のフォークと薬を手にして

JUGEMテーマ:小説全般

 

 わたしたちは銀のフォークと薬を手にして / 島本理生(幻冬舎)

 

 評価 ☆☆☆

 

年上のエンジニア・椎名さんと仕事先で出会った知世。

美味しいものを一緒に食べる関係から、

少しずつ距離が近くなっていったある日、

椎名さんは衝撃の告白をするが……。

限られた時間。たった一度の出会い。特別じゃないわたしたちの、特別な日常。

 

 

 

(感想)

 

30すぎてそれなりに経験してきた大人の女性たちの、

うまくいかない恋を描く作品です。

ここ数年の島本理生はメンヘラ臭がキツくてつらかったけど、

今回は恋だのグルメだの女性の好きなものがふんだんに盛り込まれていて、

苦しくない島本理生はほんとうに久しぶりでした。

 

椎名さんと知世を見ていると、

同じものを美味しいと感じられたり、楽しめたり、

そんな日常の特別じゃないことの喜びを共有できる人と一緒にいることこそが

「シアワセ」なんだな〜としみじみ感じます。

恋愛って、特別なキラキラを求めてしまいがちだけど、

ほんとはそうじゃない。それとは真逆のものこそが大事。

ああ、二人の静かな幸せが長く続くこと、心から祈りたいです。

 

椎名さんのプロポーズの言葉も素敵だったけど、

それよりも不倫に悩む飯田ちゃんの

「気にいられないと興味すら持たれないけど、気にいられてセックスしたら、

好きになってしまうか終わってしまうかのどっちかだから、結局いいことない」

って言葉の方が私には刺さったなー。

私は不倫してる人を批判する気持ちとかはまったくなくて、

むしろ不倫なんて誰にとっても明日は我が身かもしれないくらいに思ってます。

だって、ときめきは日常のすぐそばにけっこう転がっているものですもんね。

ただたんに自分の立場を考えて、

行動にブレーキをかけられるかどうか、それだけの違いです。

それに対して「結局いいことない」って・・・なるほど!

納得できすぎて「そりゃそうだ」ってストンと共感できてしまいました。

あははっww

| comments(2) | trackbacks(0) | 15:55 | category:    島本理生 |
# 東京會舘とわたし(上・下)
評価:
辻村深月
毎日新聞出版
¥ 1,620
(2016-07-30)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 東京會舘とわたし(上 旧館・下 新館) / 辻村深月(毎日新聞社)

 

 評価 上 ☆☆☆ 下 ☆☆☆☆

 

「東京會舘」・・・ここは華やかなる“社交の殿堂"である。
大正、昭和、平成という時代を情熱的に生きた人々を、鮮やかな筆致で描き出す。
直木賞作家が贈る、一つの建物の〈記憶〉をたどる長編小説。



 

(感想)

 

※ 上下巻あわせての感想となります。

 

「あ、辻村さんってこういうのも書けるんだ」というのがまず第一印象。

そして、調べてみて納得。なんとはじめての歴史小説らしいです。

いつの間にか幅広い作品を書ける作家さんに成長されたんですね。

 

今作の主人公は「建物」。

東京・丸の内に実在する東京會舘という宴会場・結婚式場・レストランの長い歴史を描いた連作短編集です。

(現在は本館は建て替え工事のため、お休み中。)

読者好きな方には「直木賞・芥川賞の記者会見と贈呈式をするところ」と言った方がいいかな?

(東京會舘のHP → https://www.kaikan.co.jp/index.html)

 

描かれるのは大正12年から平成27年まで。

いろんなエピソードがあったけど、

登場する有名人はマッカーサーから角田光代までいろんな時代のいろんな方が!

それだけでもう東京會舘の歴史の重みを感じます。

長い時間の中で毎日毎日新しい物語が紡がれていく。

どんな建物にもこんな風に一人一人の思い出が詰まっていると思うと感慨深いです。

 

実際に東京會舘へ行って、食事をしてみたくなりました。

また、作品に登場するお土産用のお菓子「ガトーアナナ」や「パピヨン」「プティフール」などは通販でも購入可能です。

| comments(4) | trackbacks(0) | 08:32 | category:    辻村深月 |
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