JUGEMテーマ:小説全般
草花たちの静かな誓い / 宮本輝(集英社)
評価 ☆☆☆☆
ロサンゼルス在住の叔母の突然の訃報。
甥の弦矢が駆けつけると、27年前に死んだはずの叔母の一人娘が、
実は死んだのではなく、当時からずっと行方不明なのだと知らされる。
なぜ叔母はそのことを長らく黙っていたのか。
娘はいまどこにいるのか。弦矢は謎を追い始める――。
生き別れた母子の運命を豊かに描き出す長編小説。
(感想)
ミステリーにカテゴライズされる作品なのだろうけど、
草花の清らかな美しさと、
アメリカ西海岸のリラックスした雰囲気が心地よく、
ドキドキするよりもゆったりとした気持ちで読める作品でした。
雰囲気がいいから、
本来は許しがたい行為をした人物もそこまでの悪人に思えない。
そのへんが宮本輝的配慮というか、らしさというか・・・ですね。
キクエさんの精神力の強さに圧倒されます。
母親としてその選択をしたことはもちろんなんだけど、
それ以降も一生、イアンの妻であるキクエ・オルコットとして
生き続けたということが、もう私なんかには想像もできない境地。
やっぱり宮本さんの作品って深い。
「人の心」たるものをしっかりと読ませてくれる作家です。
ニコの存在がハードボイルド感あってアメリカチックで素敵。
そしてキクエのスープも飲んでみたい。
本筋と違うささやかな部分にも惹かれるもののある作品でした。