隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 橋を渡る
評価:
吉田 修一
文藝春秋
¥ 1,944
(2016-03-19)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 橋を渡る / 吉田修一(文藝春秋)

 

 評価 ☆☆☆☆☆

 

ビール会社の営業課長、明良。
部下からも友人からも信頼される彼の家に、謎めいた贈り物が?
都議会議員の夫と息子を愛する篤子。
思いがけず夫や、ママ友の秘密を知ってしまう。
TV局の報道ディレクター、謙一郎。
香港の雨傘革命や生殖医療研究を取材する。結婚を控えたある日……
2014年の東京で暮らす3人の選択が、未来を変えていく。

 

 

(感想)

 

各章が後半でつながるのであろうことは予想できるけど、

まさか時を超えてこういう展開に発展するとは!!脱帽です。

こういう手法は吉田修一さんっぽくないないですね。新境地?

たしかにそれぞれの章には何かの伏線らしきものはたくさん散りばめられており、

しかしそれがまったく回収されることなく、次の章ではまったく別の人の話になってしまう。

「今度どーなるんだろう」と不安とモヤモヤがいっぱいの状態で読み進めなきゃならないのですが、

最後にはその伏線っぽいあやしげなものがずべて回収されてスッキリ!

実際にあったその時代を代表するようなニュースなどをあえて多めに織り込み、

時代を色濃く強調してみせたことにもちゃーんと意味がありました。

 

吉田修一さんのわりにぶっとんだ印象を受けましたが、

たまにはこういうのもいいかもしれません。

| comments(0) | trackbacks(0) | 16:41 | category:    吉田修一 |
# セシルのもくろみ

JUGEMテーマ:小説全般

 

 セシルのもくろみ / 唯川恵(光文社)

 

 評価 ☆☆☆

 

平凡な生活を送る専業主婦・宮地奈央の生活は一変した。

友人に誘われ軽い気持ちで応募した女性誌の読者モデル募集で思いがけず採用されたのだ。

華やかなファッションの世界に渦巻くモデルたちの様々な思惑に困惑しながらも、

奈央は“負けたくない”という自分の中の「女」に気付く―。

人気女性誌『STORY』の大好評連載、待望の文庫化。

 

 

(感想)

 

「STORY」に連載していた小説とは知らずに読み始め、

読んでる途中にそのことを知り「なるほどな〜」と納得。

もともと小説を読み慣れてない人向けに書いたのかな?

モデルとして、そして女として変化していく様があまりにとんとん拍子すぎて

軽い印象を受けました。

普通の主婦だった主人公が突然読者モデルという華やかな立場に立つことで生じる

周囲への影響や家族の心境などがあまりにも描かれていなすぎるし、

女同士の足の引っ張り合いとドロドロ加減もなんともSTORY世代の好みそうな感じですね。

 

ただたんに「仕事に就いた」というだけではなくて、

人前に出るモデルになったことで女であることや美しさと意識するようになり、

自信とプライドを持つようになった。

でも、それが彼女のほんとうの幸せなのかな?と思うと必ずしもそうとも言い切れないのに

同性として悩んでしまいます。

最後の最後の編集長との一件・・・・これさえなければ私も見方も違ったかもしれないけど。

なーんとなくスッキリしないラストでした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 17:05 | category:    唯川恵 |
# 下に見る人
評価:
酒井 順子
KADOKAWA/角川書店
¥ 605
(2016-01-23)

JUGEMテーマ:エッセイ

 

 下に見る人 / 酒井順子(角川書店)

 

 評価 ☆☆☆

 

人が集えば必ず生まれる序列に区別、そして差別。

自らの"人を下に見てしまう"感覚を吐露し、人間の心の闇に鋭く迫る。

なかなか書けないホンネを余すところなく露わにする異色のエッセイ!

 

 

(感想)

 

自分の父親がたいした人物でもないくせになぜか誰のことをも下に見ている人間なので、ついタイトルにひかれて読んでみました。

 

共感できる部分もあるのですが、

あくまで「上」の視点からしか描かれていないから不快に感じる部分もあります。

都会で「イケてる女子」として学生生活を送り、

自分に自信もあるであろう酒井さんは「下に見られる人」の心情に寄り添う考え方は

おそらくできないのかな。

もうそこから自分とは違うステージにいる人だなと思ってしまって、

なんとなく心の距離を感じながら読んでしまった私です。

 

しかし、誰かを下に見ることによって自分の立ち位置や気持ちを保てる場合もあるし、

受験にしろ就職にしろ、みんなが平等の位置に立てないからこそ成り立つものもある。

だから必ずしも、上下が出来てしまうことを良くないこととは言い切れません。

要は人として自分が何者でもないのに、

人を馬鹿にするような意味で「下に見る」のはどうかということなんでしょうね。

| comments(0) | trackbacks(0) | 16:18 | category: 作家名 さ行 |
# 奥さまはクレイジーフルーツ

JUGEMテーマ:小説全般

 

 奥様はクレイジーフルーツ / 柚木麻子(文藝春秋)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

夫と安寧な結婚生活を送りながらも、セックスレスに悩む初美。

同級生と浮気未満のキスをして、義弟に良からぬ妄想をし、

果ては乳房を触診する女医にまでムラムラする始末。

この幸せを守るためには、性欲のはけ口が別に必要…なのか!?

柚木がたわわに実る、果汁滴る12房の連なる物語。

 

 

(感想)

 

愛し合ってても、それと身体のつながりの有無は別のハナシ・・・。

欲求不満で日常のちょっとしたことが性的な妄想につながってしまう主人公を笑ったり呆れたりはできません。

本人にはとっても切実な問題。

主人公の妄想がふくらめばふくらむほど同性として悲しく切ない気持ちになりました。

 

「男と女」という色っぽい空気がなくなったからこそ生まれてくる連帯感や

あたたかさに幸福感も感じるから厄介。

愛が冷めているのなら離婚するなり、

他の異性と割り切った関係になるという選択肢もあるのだろうけど、

この人達ちゃんと愛し合ってるから話もこじれるし・・・・。

 

各章のタイトルと作中でキーとなるアイテムにフルーツを登場させる技は、

重くナーバスな悩みを軽めに描くのに効果的でした。

問題が問題だけに暗く受け止めんのもなんかアレだし、

自虐気味に自分で自分を茶化さないとやってらんねーよ感のよく出ているうまい演出だと思います。

 

ピオーネのお弁当を売る感じの悪い店員。

●●●●を目指すジムのトレーナー。

この2つのエピソードは特になくてもいいような気がするけどあえて書かれているのは、

著者のリアルな体験でこれと似たようなことがあったんじゃないかなと思いましたねww

 

こういう悩みって女性側からはなかなかまっすぐ向き合いにくいものだけど、

女にはタイムリミットがあるだけにいつまでも目をそむけていられるものでもない。

この本をきっかけに一歩踏み出せる女性が一人でもいればいいですね。

| comments(0) | trackbacks(0) | 13:56 | category:    柚木麻子 |
# ねじまき片想い(〜おもちゃプランナー・宝子の冒険〜)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 ねじまき片想い(〜おもちゃプランナー・宝子の冒険〜) / 柚木麻子(東京創元社)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

毎朝スカイツリーを見上げながら、水上バスで通勤する富田宝子、28歳。

浅草にあるおもちゃ会社の敏腕プランナーとして働く彼女は、

次から次へと災難に見舞われる片想い中の西島のため、

SP気分で密かに彼のトラブルを解決していく…!

やがて、自分の気持ちに向き合ったとき、宝子は―。

 

 

 

(感想)

 

すっごいかわいいお話でした。

 

長年の片思い・・・気持ちは伝えられないけど、彼のそばでお役に立ちたい。

切ない乙女心はわかるんだけど、宝子さんがあまりに非現実的でイタい女性すぎて、

漫画チックになってしまってるところで好き嫌いが分かれる作品なのかもしれません。

最後まで読んでも彼の魅力がさーっぱりわからず、

ここまで長く思い続ける価値のある男なの?と思ってしまいますが、

そのズレっぷりも含めて、宝子さんらしさなんだろうなぁ。

 

最終的にハッピーエンドが待っているのかと思いきや、

決してそうとはいえない思わぬ展開なのもいい意味で期待を裏切ります。

やっぱ宝子さん、タダものじゃあない!

いつかは幸せ、つかんでほしいです♪♪

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:58 | category:    柚木麻子 |
# 僕とおじさんの朝ごはん
評価:
桂 望実
中央公論新社
¥ 1,728
(2015-02-24)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 僕とおじさんの朝ごはん / 桂望実(中央公論新社)

 

 評価 ☆☆

 

ぐうたらで無気力に生きるケータリング業者の水島健一。

だが、ある少年と出会い、人生と真面目にかかわらざるを得なくなる―。

少年が最後に下した決断に、水島はどう向き合うのか!書き下ろし感動長篇。

 

 

(感想)

 

いやー、タイトルにもある「僕」に該当する人物が出てくるまでが非常に長いです。

物語が始まるまでの前フリ、こんなに必要なんでしょうか?

 

「テキトーに生きてたおっさんがある少年との出会いと別れによって変化・成長する。」

・・・こう書けばいい話に思えるかもしれないけど、

ここまで味合わないと変われないなんて逆に情けないと思ったのは私だけ?

でも何事も手を抜かずに、まじめにやっとけば道も開けるんだなとしみじみ思ったり。

 

やっぱり食べ物の持つパワーってすごい、これは身にしみて思いました。

まさに「食はいのち!」ですね♪

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:38 | category:    桂望実 |
# 学生時代にやらなくてもいい20のこと

JUGEMテーマ:エッセイ

 

 学生時代にやらなくてもいい20のこと / 朝井リョウ(文藝春秋)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

話題の現役大学生作家の、まったくイケてない日々。
『桐島、部活やめるってよ』の著者の初エッセイ集。

華々しい「大学生作家」の看板の陰で繰り広げられる、無為で阿呆な爆笑の日々!

 

 

 

(感想)

 

ねぇ、これって「学生時代にやっておくべき20のこと」って間違いじゃない?ww

いやー、笑いました。アホですね、若さですね。

これこそがリア充ってやつなんじゃないですか?

やーっぱり、こういうアホなことや多少の無茶は学生時代にぜひぜひやっておくべきだと思う。

こういう時間をともに過ごした仲間とは社会人になっても気の置けない関係を築いていけると思うし、

私から見て、バカバカしさに満ちた朝井さんの大学生活はこれ以上にないほど輝いて見えました。

 

んー、そしてさすが作家ですね。

着眼点が面白いし、やっぱり文章がうまいから読ませる力がある。

軽いんだけど、

ただの若いにいちゃんの青春記にはなってないところが直木賞作家の力量でしょう。

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:41 | category:    朝井リョウ |
# 醒めながら見る夢
評価:
辻 仁成
KADOKAWA/角川書店
¥ 1,728
(2014-04-11)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 醒めながら見る夢 / 辻仁成(角川書店)

 

 評価 ☆☆☆

 

華道の家元後継者として厳しく育てられた姉妹・亜紀と陽菜は、

演出家の優児をめぐって三角関係に陥りながら、

自らの心のありようを模索する。

答えの無い不条理な世界で、行き場を失った愛はどこへ向かうのか――

 

 

 

(感想)

 

「人間の心ってどこにあるんだろう」

 

・・・人間にとっての永遠のテーマといっても過言ではない難問を投げかける今作。

心とはなにか、自分のとはなにかという問題と格闘しながら生きる男女。

後半は意外な方向へいったものの、最後までブレのない軸のある作品でした。

身体的にゾクゾクするような耽美な美しさも感じます。

亜紀の話し方だけが妙に浮いていた気もするけど、

全体的な雰囲気は舞台である京都の静かな美しさとマッチして、

なんともいえない妖しい色気もある作品でしたね〜。

 

人間の心は「頭」にあるのか、「胸」にあるのか。

それをどうとらえているかによって愛し方・生き方も違ってくるでしょう。

永遠にわかりあえない苦しみも生まれるでしょう。

どの登場人物も感情をさらけ出しているように見えて実はそこまで深い部分は見せてはいない。

そのへんが彼らの誰一人として満たされていない要因なのだと思う。

心って本当に扱いが難しい!

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:15 | category:    辻仁成 |
# 食堂のおばちゃん
評価:
山口恵以子
角川春樹事務所
¥ 1,404
(2015-08-07)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 

 食堂のおばちゃん / 山口恵以子(角川春樹事務所)

 

 評価 ☆☆☆☆

 

ここは佃の大通りに面した「はじめ食堂」。
昼は定食屋、夜は居酒屋を兼ねており、姑の一子と嫁の二三が仲良く店を切り盛りをしている。
夫婦のすれ違い、跡とり問題、仕事の悩み……いろいろ大変なこともあるけれど、
財布に優しい「はじめ食堂」で、美味しい料理を頂けば明日の元気がわいてくる!
元・食堂のおばちゃんが描く、涙あり、笑いありの心温まる物語。

 

 

 

(感想)

 

食べ物屋さんを舞台にし、そこへ集う人々の人間模様を綴る小説はこれまでいくつも読んできたけど、

ここまできちんとレシピを載せてくれたものは記憶にありません。

13種類もの料理のレシピ付き。とてもありがたいです。

・・・が、私が特に「美味しそう!」と思ったタルタルソース・冷や汁・中華風冷や奴の3つが

載っていなかったのは残念!!

そのあたりの痒いところに手が届かない感がなんとも惜しいです。

 

この手のお話はストーリーよりも何よりも「いかに読者の食欲をそそるか」がカギだと思います。

その点に関してはパーフェクト。

どれもイメージしやすい庶民的な料理ばかりだから想像力も掻き立てられます。

あったかい町の定食屋・・・おばちゃんたちの人柄も良く、近くにあれば通いたくなるお店でした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 13:59 | category:    山口恵以子 |
# 君の膵臓をたべたい
評価:
住野 よる
双葉社
¥ 1,512
(2015-06-17)

JUGEMテーマ:小説全般

 

 君の膵臓をたべたい / 住野よる

 

 評価 ☆☆☆☆

 

偶然、僕が病院で拾った1冊の文庫本。タイトルは「共病文庫」。
それはクラスメイトである山内桜良が綴っていた、秘密の日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。

 

 

 

(感想)

 

展開はベタだし、あまりにリアリティのない話なんだけど、

それでもやっぱり最後は泣いちゃいました。

 

【地味なクラスメイト】【秘密を知っているクラスメイト】

【仲のいいクラスメイト】【仲良し】【?????】

・・・彼女の中で彼の立ち位置がどんどん変化している??

そう思いきや実はそうではなく、

「小説」という文字で表現するものならではの面白さを見せつけられます。

こういう作品に出合うと、改めて「小説っていいな〜」と思えますね。

 

映画化されるらしいけど、映像ではこの「文字だからこその面白さ」は活かせません。

泣かせる作品としてストーリーだけで勝負するのでしょうか?

それともこの「文字だからこその面白さ」を映像でも味わえる秘策を思いついてくれるでしょうか?

そのへんを確かめる意味でも映画版が楽しみです。

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:52 | category:    住野よる |
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