JUGEMテーマ:小説全般
その手をにぎりたい / 柚木麻子
評価 ☆☆☆
80年代。都内のOL・青子は、銀座の高級鮨店で衝撃を受けた。
そのお店「すし静」では、職人が握った鮨を掌から貰い受けて食べる。
青子は、その味に次第にのめり込み、
決して安くはないお店に自分が稼いだお金で通い続けたい、と一念発起する。
お店の職人・一ノ瀬への秘めた思いも抱きながら、
転職先を不動産会社に決めた青子だったが、
到来したバブルの時代の波に翻弄されていく。
一ノ瀬との恋は成就するのか?
(感想)
バブルの時代に銀座の高級鮨屋の常連になるためにがむしゃらに働いた女性の話。
彼女がなぜそんなに頑張れたかというと、
その店の鮨だけでなく、店の職人を好きになってしまったから。
お鮨屋さんが舞台のお話だと知り、改めてタイトルの意味を考えると
このストーリーにこのタイトルはかなり秀逸。
主人公、最初は初々しくてかわいらしかったけど、
時代や仕事に流されて、
どんどん嫌いなタイプの女性になっていくのが読んでいて痛々しかったです。
一ノ瀬への思いは秘めながらもそれはそれで、
手近な他の人とも恋愛したり、
体だけの関係続けたりけっこう美味しい思いしてるのがどうもなぁ。
そういう子だから彼女の味方になり、応援する気にはなれませんでした。
それにしても柚木さんの食べ物の描写にはいつもやられます。
だからこの人、女性に人気があるんだと思う。
主人公を東京に留まらせたヅケの握りはインパクトが大きかったです。
鮨を職人から手渡しで受け取るというのも、
見方によってはたまらなくエロチックじゃないですか!?
美味しいものをこんな風に渡されたら、そりゃ惚れるわw