隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 拳の先
評価:
角田 光代
文藝春秋
¥ 2,376
(2016-03-10)

JUGEMテーマ:小説全般

 拳の先 / 角田光代(文藝春秋)

 評価 ☆☆☆


ボクシング雑誌の廃刊に伴い、文芸編集部へ移動となった那波田空也は、
新たな場所で忙しい日々を過ごしているが、あるきっかけで再びボクシングとの距離を縮める。
初めての恋人・つた絵の存在、ジムに通う小学生ノンちゃんの抱える闇、
トレーナー有田が振りまく無意識の悪意、脅威の新人選手・岸本修斗。
リングという圧倒的空間に熱狂と感動を描ききる長編小説。



(感想)

「空の拳」のその後を描くお話です。

前作同様、ボクシングの試合の描写はチンプンカンプンだし、
長いな〜と思う場面も多々あったけど、
リングで闘うボクサーではなく外からボクシングを見ている空也の客観的な視点で描かれてたからこそ
私も最後までついていけた気がします。
先日、角田さんのトークショーに行ってきたのですが、
ご本人はこの作品をうまく書ききれなかったと思っていらして、
そこはやはり根本的な「男女の性差」によるものを感じたかららしい。
でもそれでも書いたのは、ご自身がボクシングジムに通って、
ボクシングを間近に見て、作家として熱いものを感じたからでしょう。
作中での坂本君の姿はそのトークショーで話されていた角田さんの男友達のエピソードと重なりました。

空也がずっと抱いてたスッキリとしない違和感は、読んでいる間中ずっと私も感じていました。
でも得体のしれない不安はどんな世界に生きる人にもあるもので、
そこをどう変えるかはやはり自分自身でしかないのだな。
逃げることはカッコ悪いことではない・・・うん、そうだ!そうだ!と激しく共感しました。

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:44 | category:    角田光代 |
# 坂の途中の家
評価:
角田光代
朝日新聞出版
¥ 1,728
(2016-01-07)

JUGEMテーマ:小説全般
 

 坂の途中の家 / 角田光代(朝日新聞出版)

 評価 ☆☆☆☆


3歳の子を持つ専業主婦の里沙子は刑事裁判の補充裁判員に選ばれてしまう。
毎日、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、
いつしか彼女の境遇にみずからを重ねていき、日常が大きく揺らぎ始めるのだった。
社会を震撼させた乳幼児の虐待死事件と“家族”であることの心と闇に迫る心理サスペンス。



(感想)

この本を読んだこの気持ち、
「面白い」とか「のめり込む」とかそういう言葉で片付けられるものじゃないです。
苦しくて、重たくて、感情移入しすぎて・・・。
つまんないのとは別の理由で、読むのにこんなに時間のかかった本も久しぶりでした。
角田さんはこの作品で「会話というコミュニケーションの曖昧さ、言葉で伝えることの難しさ」と
描きたかったと仰っていました。
同じことを聞いても、人によってこんなにも受け取り方が違うのかと感じたし、
もし自分がこの事件の裁判員だったらどんな判決を下すかな?と考えてみても、
読み終えた今になってもその答えを出せずにいます。

里沙子は事件に触れるうちに自らの境遇をも犯人に照らし合わせてしまい、
その重圧から負のスパイラルに陥っていきます。
やがては自分は子供を愛しているのかとすら疑問を抱き、離婚まで考え・・・・。
でもこんな風に自分自身を照らし合わせてしまうのは里沙子だけでなく、読者自身にもあてはまること。
私は日々の生活の中で無理をしてはいないか? 逆に家族に無理はさせてはいないか?
・・・この本を読んだことは、それを考えるいい機会にもなりました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 09:48 | category:    角田光代 |
# 世界は終わりそうにない
評価:
角田 光代
中央公論新社
¥ 1,512
(2015-05-22)

JUGEMテーマ:エッセイ

 世界は終わりそうにない / 角田光代(中央公論新社)

 評価 ☆☆☆☆


愛すべき、私たちのしょっぱい日常。
恋愛の苦み、読書の深み、暮らしの滋味…。
膝を打ちたい気分で人生の凸凹をあじわうエッセイ集。




(感想)

エッセイ・対談・書評と盛りだくさんな内容。
よしもとばななさん、三浦しをんさんなどとの対談があり、
書評では町田康さんの本も登場。
私はこの3人も大好きなので、私にとってはとってもお得な夢のような一冊でした。

旅やら食やら恋やら・・・肩肘はらずに気楽に読めて、
「そうそう!」と共感できる部分も多かったです。
作家としてこれまでに素晴らしい作品をいくつも書き、
賞やら映像化やらで結果も残して来ているのに、
それなのに自己評価が低い角田さん。
こんな謙虚な姿勢の人だからこそ、言葉がスーッと入ってくるのだろうなと思います。

よしもとばななさんとの対談のなかで、
ばななさんが『「本当にいい小説というのは、その中には必ず半分以上自分自身が書かれている」と言っていました』と仰ってたのを読み、
ファンとして思わず目頭が熱くなりました。
たしかにばななさんの小説には、
決してブレることのないばななさんらしさがいつもちゃんとあって、
だからファンは安心して読み続けられると私は常々感じています。
こういう言葉がばななさんから聞けただけで、私はこの本を読んで本当に幸せでした。

評論家の坪内祐三さん、ブックデザイナーの祖父江慎さんとの対談では、
お恥ずかしい話しながら、
各出版社によって文庫の活字の大きさ・字体・紙質などに違いがあるということを私ははじめて知りました。
さっそく自宅にある各社の文庫を見比べてみて「なるほど〜」と関心♪
これからはそういった角度からも本の個性を楽しんでいきたいです。

ハッとさせられたのは、
三浦しをんさんとの対談の中で、三浦さんが「書評を書く上で禁じ手にしていること」。
ああ・・・この「禁じ手」、
このブログを書くときに、私、結構やってしまってる・・・・!!!
私のこのフェアじゃないレビューで読んでくれた方を混乱させてしまったことがあるかもしれませんね。
ううーん、今後気をつけます。大変勉強になりました。

いしいしんじさんの本、もうずいぶん読んでないので読んでみようと思います。
そして佐野洋子さんのエッセイはきっと私も好きになりそう!
この本のおかげで、読みたい本が増えました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:54 | category:    角田光代 |
# イヤシノウタ
評価:
吉本 ばなな
新潮社
¥ 1,512
(2016-04-27)

JUGEMテーマ:エッセイ

 イヤシノウタ / 吉本ばなな(新潮社)
 
 評価 ☆☆☆


みんなが、飾らずむりせず、
自分そのものを生きることができたら、世界はどんなところになるだろう。
ほんとうの自分、を生きるための81篇からなる人生の処方箋。




(感想)

81篇もあるので、
短い文章を次々と読んでいくのが苦手な私には合わないスタイルの本でした。
吉本ばななという人はいつもまっすぐで、心が豊かで、
自分を保って生きている方なんだと改めて思ったけど、
私はこの人の作品ならばやはりエッセイより小説が好き。
小説からじわじわとこの人らしさを感じ、
「気づき」を得る方が私には充実感があるように思えます。
そんな個人的な理由になりますが、今回の評価は☆3つです。

後半にいくにつれて心の琴線に触れる文章が多くありました。
特に「二年かかった」「男女」、この2つ章は何度も何度も読み返しました。

「二年かかった」は更年期を経験した今の状態を綴ったもので、私にはまだ未知なる世界なのだけど、
年をとるのもそう悪くないかな???と前向きな気持ちにさせられました。
引き算していくこと = のびのびできるようになる・・・この考え方いい!
「ここからのスタートのしかたで、これからの人生が楽しくもキツくもなる」・・・これはちゃんと覚えておこう。

「男女」もなるほどな〜、でも難しいな〜としみじみ感じました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:30 | category:    よしもとばなな |
# 光のない海
評価:
白石 一文
集英社
¥ 1,890
(2015-12-04)

JUGEMテーマ:小説全般

 光のない海 / 白石一文(集英社)

 評価 ☆☆☆


建材会社の社長を務める高梨修一郎。
50歳を過ぎ、心に浮かぶのは過去の秘密と忘れがたい運命の人・・・・・・。
個人と社会の狭間にある孤独を緻密に描き、
成熟した大人に人生の意味を問う長編小説。




(感想)

人生の意味や運命に関する物語であるという点に関しては、
いつもと変わらないブレない白石一文であると思う。
だけど今回は主人公が男性ということもあり、いかにも男性的な話で、
主人公よりも若い世代の女である私にはほんの少し重厚すぎるように感じました。
個人的にはもう少し「運命」や「恋愛」の要素を含んだ白石作品の方が好みです。

深く心に残りそうな一文がありました。
それは・・・
どんな人間のいのちも、それ一つでは立っていられないのかもしれない。
私たち一個一個のいのちは、別の一個一個のいのちによって支えられて
初めていのちとして存在していくことができるのかもしれない。
・・・という部分です。

最後に主人公に「社長さーん」と呼びかけているのは、もちろんあの人ですよね?
安易な展開に落ち着いちゃうのかもしれないけど、
主人公を支えるのはあの人であると私は信じたい。
そうであれば、この重苦しい物語にも一筋の光が見えますもんねっ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:13 | category:    白石一文 |
# 温泉妖精
評価:
黒名 ひろみ
集英社
¥ 1,296
(2016-02-05)

JUGEMテーマ:小説全般

 温泉妖精 / 黒名ひろみ(集英社)

 評価 ☆☆


美しい母親と姉のもとで育ち、
容姿コンプレックスを抱えて美容整形を繰り返す27歳の絵里。
大きな二重、高い鼻、脱色した髪と青いカラーコンタクトで、
外国人のふりをして田舎の温泉宿に泊まるのが趣味の彼女は、
ある日、向かった旅館で、「影」と呼ばれる嫌味ったらしい中年男と出会う。




(感想)

私は温泉好きなので、ついついタイトルにつられて読んでみたのですが・・・。
うーん、すんごく読みにくかったです。
構成に著者の力不足をはっきり感じます。
現在から回想シーンに切りかわったりする場面転換がスムーズじゃなく、
読者は今読んでるのが現在なのか過去なのかわからなくなりそうです。

タイトルの「温泉妖精」の意味がわかった時は、
“なーんだ、そういうことか”とポカーンとしちゃいました。苦笑。
主人公と中年男性の関係をもう少し掘り下げたら面白くなったかも?

すいません、よくわかんなかったです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 09:56 | category: 作家名 か行 |
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