隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 地上八階の海
評価:
角田 光代
新潮社
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(2000-01)

JUGEMテーマ:小説全般

 地上八階の海 / 角田光代(新潮社)

 評価 ☆☆☆


母は目に見えない何かに怯えはじめ、
兄嫁はとめどもなくしゃべり続け、
赤ん坊は鬱陶しい泣き声を響かせ、昔の男はストーカーになった。
癒しようのない孤独を抱えた私の毎日を描く表題作ほか、1編を収録。



(感想)

中編2作を収録。
うーん、うまく作品の世界に入り込めなかった。
重苦しく、常に不安がつきまとうような空気が漂い、
読んでいて気持ちのいい作品ではなかったです。

「真昼の花」はバックパッカーで当てもなく東南アジアを旅する女性の話で、
旅好きの角田さんならではの設定という気がしました。
私にはこんな旅をする度胸はないし、主人公の危機感のなさも信じがたいけれど、
何かを失ったり、責任を伴わなければいけない何かに解放されたときに、
「どうにでもなれっ!」とプチンと切れたように旅したくなる衝動はわかる気がします。
(でも、私には絶対にできないけどね)

表題作の「地上八階の海」は、
離れて暮らす家族・ストーカーになった元恋人に振り回されつつも、
モヤッとした孤独を抱える女性の話。
これは着陸点が見つからないまま終わってしまい、読後感も良くありません。
スッキリせず、記憶に残らなそうなお話でした。

だけど、あとがきは若くてもやっぱり角田光代!!
このころから私の好きな角田光代はすでに出来上がっていたんだなと感じ、
なんだか嬉しかったです。

本編はイマイチだったけど、あとがきで救われました。
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# この世は二人組ではできあがらない
JUGEMテーマ:小説全般

 この世は二人組ではできあがらない / 山崎ナオコーラ(新潮社)

 評価 ☆☆☆


1978年生まれの私は大学をでて働きながら、小説を書いている。
お金を稼ぐこと。国のこと。二人暮らしのこと。戸籍のこと。
幾度も川を越えながら流れる私の日常のなかで生まれた、数々の疑問と思索。
そこから私は、何を見つけ、何を選んでいくのだろうか。
「日本」の中で新しい居場所を探す若者の挑戦を描くポップな社会派小説。




(感想)

いつもグチグチなんか考えてて、モヤモヤがおさまらない?
山崎ナオコーラさんの小説は哲学的な部分があり、
そのめんどくささに自分と共通するものを感じています。
わかりすぎて、愛しさすらあふれ出るほどです。

何か決定的に大きい出来事があったわけじゃないけど、
仕事にも恋愛にも将来にも常にぼや〜〜んと不安を感じている。
夢はあるけど現実はそう簡単じゃなくて、淡々とゆるふわっと生きてる感じ?
「心の内側を見せること=カッコ悪い」みたいな素直じゃない感じは現代の若者のリアルをよくとらえているし、
主人公が作家を目指しているということから、ナオコーラさん自身の姿が主人公に重なりました。

今はまだ何もわからないし、何もできない。
だけど、そんな自分なりに漠然とだけど、
よりよい社会や素敵な未来を作ることに参加していきたいと考えているシオちゃんのことを私はいいなと思います。

あと、本筋とあまり関係ないけど、
手をキツネの形にして遊ぶエピソードがたまらなく好きでした。


 
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:26 | category:    山崎ナオコーラ |
# 盲目的な恋と友情
評価:
辻村 深月
新潮社
¥ 1,620
(2014-05-22)

JUGEMテーマ:小説全般

 盲目的な恋と友情 / 辻村深月(新潮社)

 評価 ☆☆☆☆


一人の美しい大学生の女と、その恋人の指揮者の男。そして彼女の親友の女。
恋にからめとられる愚かさと、恋から拒絶される屈辱感を、
息苦しいまでに突きつける。
これが、私の、復讐。
私を見下したすべての男と、そして女への―。
醜さゆえ、美しさゆえの劣等感をあぶり出した、鬼気迫る書き下し長編。



(感想)

元タカラジェンヌを母に持つ美しい蘭花、
容姿に激しいコンプレックスを持つ留利絵。
二人は親友同士だが、二人の目の前に茂実という男が現れ、
蘭花と恋愛関係に・・・・。
茂実の登場で揺らいでいく二人の心を、
同じ時系列でそれぞれに蘭花は「恋」、
留利絵は「友情」という観点から描いた作品です。

まずは「恋」の章。
はじめは盲目的な恋だった。
でも、恋人を支配する年上の女の存在を知り、
恋心に嫉妬・屈辱・執念と複雑な感情が入り混じり始める。
・・・と、恋をして周囲の言葉も耳に入らなくなる蘭花の心情はまぁ理解できる。

しかし「友情」の章へ入るとそうもいかない。
留利絵の自意識は相当なもので、怖い怖い。ここまで来るとサイコパス。
だけど「ほんとに留利絵を理解できないか?」
「こういう感情、身に覚えがないか?」と言われれば、
ほとんどの女はううーーんと考え込んでしまうはず。
そこが女の怖いとこ、このドロドロは女の性。

結局、蘭花は恋、留利絵は友情をそれぞれこじらせてしまったんだな。
なんだかんだでいちばん美味しいところを持っていって、
うまーく幸せになるのは美波のような女。
腹立つけど、これは小説でも現実でもお決まりパターン。

最後の最後にどんでん返しのさらにどんでん返しがあったのは意外でした。
さすがにここまでは予想しておりませんでした。お見事です!
| comments(0) | trackbacks(1) | 16:47 | category:    辻村深月 |
# 水やりはいつも深夜だけど
JUGEMテーマ:小説全般

 水やりはいつも深夜だけど / 窪美澄(角川書店)

 評価 ☆☆☆☆☆


セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。
仕事が忙しく子育てに参加できず、妻や義理の両親からうとまれる夫。
自分の娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦。
出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう男。
父の再婚により突然やってきた義母に戸惑う、高一女子。

同じ幼稚園に子どもを通わせる家々の、
もがきながらも前を向いて生きる姿を描いた、魂ゆさぶる5つの物語。



(感想)

他人同士が惹かれあって家族となり、でも何度もぶつかり合い、
傷つけあってお互いを見せ合いながら本当の意味での家族になっていく・・・・。
その過程が丁寧に描かれています。
エピソードの1つ1つが現代の若い夫婦が抱える問題のリアルを描いているけれど、
決して絶望感や焦燥感ではなく、
最後にはあたたかな光と安らぎを残してくれる作品集でした。

私は女なので、いつもなら女性が主人公の小説により深く感情移入をしがちですが、
意外にもこの作品では男性が主人公の「砂のないテラリウム」に最も共感しました。
昔のように甘えたり、激しい感情をぶつけるようなこともなくなり、
夫に興味を失っているように見える奥さんに対して、寂しさを感じる夫。
彼は今も妻を愛してはいるけれど、でも自分のことを恋しいと思い、
自分のことで悩んだり、そんな女の入る人生をもう一度味わってみたいと感じている。
子供を持つと、自然と「父」「母」になっていき、
自分たちの「男」「女」の部分は生活の中で薄れていく・・・。
その寂しさを他の女性で埋めようとするのは単純な下心や浮気心とは違う。
そんな言葉では片づけられない孤独感の表れだよね・・・・。
子供のいない私でもなんとなくわかるなぁ。

どのお話の登場人物も誰一人として責められない。みんな必死に生きている。
弱くて欠点だらけの者同士、寄り添って補いながら生きていかないと・・・
そんな気持ちになりますね。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:45 | category:    窪美澄 |
# メアリー・スーを殺して
評価:
乙一,中田永一,山白朝子,越前魔太郎,安達寛高
朝日新聞出版
¥ 1,620
(2016-02-05)

JUGEMテーマ:小説全般

 メアリー・スーを殺して / 乙一、中田永一、山白朝子、越前魔太郎

 評価 ☆☆☆☆☆

合わせて全七編の夢幻の世界を、安達寛高氏が全作解説。
書下ろしを含む、すべて単行本未収録作品。
夢の異空間へと誘う、異色アンソロジー。




(感想)

知らない人のために念のために書きておくと、
この「乙一、中田永一、山白朝子、越前魔太郎」という4人の作家、
実は全部同じ人なんです。
作品のテイストによって名義を変えて活動しておられる作家さんで、
だからこそ今回のような面白い企画も実現しました。
ファンとしてはこんな夢のような企画を考えてくれた方に心から感謝したいです。
ちなみに解説をされている「安達寛高」というのもこの人で、
自らの多人格な作品群を素で冷静に解説してるのが面白いですね。

やはり名義を変えて書き分けてるだけのことはあって、
学校を舞台したライトな謎ときモノから
背筋に冷たいものを感じるような不気味なホラーまであり、
どの作品も世界観が違い、バリエーションに富んでます。

 
特に好きなのは山白朝子名義の「トランシーバー」。
この作家が新人だった頃、夢中で読み漁ったころの
切なくて、でもほんのり怖くて・・・・みたいな世界観で、
あのころを懐かしく思い出しながら読めました。

残念なのは「あとがきがないこと」。
この人のあとがきは本当に面白くて、
私はこの人の作品に関しては単行本ですでに読んでいる作品でも
文庫化されるとあとがきだけ立ち読みしてるくらいですからw
・・・・ってことは・・・文庫版に期待ってことかー。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:19 | category: アンソロジー、競作 |
# 朝が来る
評価:
辻村 深月
文藝春秋
¥ 1,620
(2015-06-15)

JUGEMテーマ:小説全般

 朝が来る / 辻村深月(文藝春秋)
  
 評価 ☆☆☆☆☆


「子どもを、返してほしいんです」
親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。
電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、
だが、確かに息子の産みの母の名だった…。
子を産めなかった者、子を手放さなければならなかった者、
両者の葛藤と人生を丹念に描いた、感動長篇。



(感想)

私も佐都子たちと同世代、結婚はしていますが子供はおりません。
強く強く子供を求めていたわけでもなく、自然に状況を受け止めていますが、
やはり周囲の言葉で心が乱されたりすることはあるので、
自分の身に置き換えて考えさせられることの多い作品でした。
彼女たちが子供を求め、努力し、家族を作っていく姿には
人前で読んでいたにもかかわらずウルッとくるものがありました。

「血のつながり = 家族」なのではなく、
「実の親子であっても、家族というのは喧嘩のような話し合いを繰り返してぶつかり合い、努力して築くもの」
佐都子のこの考えに大賛成。
血よりも何よりも、大事なのは共に過ごした時間と築き上げてきた信頼です。

「朝が来た」というタイトル、
はじめのうちは佐都子たち夫婦に子供が来たことを意味してるのかと思いましたが、
最後まで読んでみるとどうやら違うようです。
この人たちにどんな未来が待っているのかの判断は読者の想像に任せるようなラストでしたが、
私には柔らかい光のさす、あたたかな始まりの光景にうつりました。

「子を産めなかった者」「子を手放さなければならなかった者」・・・・
どちらの視点からも描いているので、
どちらの年代の方も感情移入して読める作品だと思います。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:22 | category:    辻村深月 |
# 太陽がもったいない
JUGEMテーマ:エッセイ

 太陽がもったいない / 山崎ナオコーラ(筑摩書房)

 評価 ☆☆☆☆


舞台は自室のベランダ。
ドラゴンフルーツ、除虫菊、バジル、朝顔、ミニトマト、ゴーヤーetc.etc.
スズメも毛虫もやってきて、まるでそこは世界のミニチュア。
震災を経て、結婚をして、生と死を見つめた日々を、魅力あふれるイラストとともにつづるエッセイ。



(感想)

ガーデニングエッセイでありながらも、
植物の成長や生態から感じた
山崎ナオコーラさんならではの哲学が詰め込まれていて、
同じくベランダガーデニングを趣味とする私には読み応えのある本でした。
ナオコーラさんは私よりもかなり手広くガーデニングをやっておられるようですが、
それが私にもできそうな範囲内でのことなので、
趣味の観点からもとても参考になりました。

ドラゴンフルーツの増え方を見て、「個体としての生き方」「集団の中の個人」という
哲学みたいな考えに迷い込んだり、
コンパニオンプランツから自分が人生で選択してきたことを深く考えたり、
ナオコーラさんのこういう性格も好きですなー。

本の下にページ数が振られていますが、
それが手書きでたまにイラストも入っててかわいいです。手が込んでます。
そういう演出・遊び心って大好きです。

植物を育てることで感じる一喜一憂が手に取るように共感でき、
私も来春のベランダをどうしようかと早々とワクワクがはじまってきました。
春が待ち遠しいです♪

ただしガーデニングエッセイなのに、写真が1枚もないのは残念でした。
 
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:00 | category:    山崎ナオコーラ |
# ラプラスの魔女
評価:
東野 圭吾
KADOKAWA/角川書店
¥ 1,814
(2015-05-15)

JUGEMテーマ:小説全般

 ラプラスの魔女 / 東野圭吾

 評価 ☆☆☆


"円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、
行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと疑いはじめる。
同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。
検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、
双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。




(感想)

ミステリーというよりは、SFや科学の要素を盛り込んており、
東野さんの作品なら
「プラチナデータ 」や「パラドックス13」と同じ枠にカテゴライズすべき作品。

と、いうことは・・・。

あまり私の好みではないってことですな(*´ェ`*)タハァ
東野作品の面白さは描かれる事件の背景にある「人間味」だと私は思っているのだけど、今作はそこを深く掘り下げてはいなかったと思う。
登場人物たちの苦悩が心に響いてきません。
主人公が誰なのかがはっきりしないから、誰に感情移入したらいいのかわからなかったし。

私が頭が悪いだけかもしれないけど、
それぞれの現象がなぜ起こったのか、
なぜそうなるのかが理解できないから楽しめません。
消化不良というか、置いていかれてる感というか・・・・が、残ります。

最後の宝石店でのエピソードはこの作品のシリーズ化を予感させるものでした。
円華・武尾・桐宮って案外いいチームになのかもw
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:57 | category:    東野圭吾 |
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