# 夏の裁断
2015.12.21 Monday
JUGEMテーマ:小説全般
夏の裁断/島本理生(文藝春秋)
評価 ☆☆☆
過去に性的な傷をかかえる女性作家・萱野千紘の前にあらわれた編集者・柴田は悪魔のような男だった―。
胸苦しいほどの煩悶と、そこからの再生を見事に描いた傑作。
(感想)
どうにもこうにもこういう男はいかん。
これから一緒に仕事をしたい女性の胸に初対面で触れる軽さとか、
たま〜に「おまえ」って呼ぶあざとさとか(*`・з・)ムッ
でも「危険」「正しくない」・・・そうわかっていても惹かれてしまうのが女の矛盾。
柴田のやり口を嫌悪するか、意識しちゃうか・・・
どっちにしても激しく気にしちゃうのも女の性。
主人公の過去に性的な傷がある云々は置いといて、
同じ女としてこの理性に抗えない本能をわかる?といわれれば、「わかる」・・・かな?
そこが女の弱いとこ、ダメなとこ。
柴田と千紘がそれぞれに抱える深い闇をもう少し掘り下げてほしかった。
特に柴田。この悪魔を形作るものがきちんと描かれてないからこそ、
このザワッとする気味の悪い不安定さを生みだしているのかもしれないけど、なんだか物足りない。
千紘が子供のころに大人に傷つけられた出来事にしてもはっきりしたことは何もわからず、
モヤッとしたものが残ります。
蒸し暑い夏のさなかにただひたすら自炊を繰り返す千紘の姿は、
まるで己そのものを切り刻んでいるかのようにも思え、読んでいて痛々しい。
千紘の求めているものがなんなのか結局わからなかった。
きっとこの人はまたこんな暗くて苦しい恋を繰り返す。
彼女にとっての「救い」はなんなんだろう?
しかし島本理生はどうしてこんな作品ばかり書くのだろう。
ここまで続くと、もう心配になるレベルでメンヘラ臭ハンパない。
本が切り刻まれる場面にしたって、こんなのはどんな作家でもつらいもの。
よく書けたものです。
ただただ読んでいて息苦しい。
でも、それでも私はきっと島本理生の作品を読み続けるだろうな。
そうさせる力はある作家なのです。だから目が離せません。