隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 田園発、港行き自転車(上)(下)
JUGEMテーマ:小説全般

 田園発、港行き自転車(上)(下) / 宮本輝(集英社)

 評価 (上) ☆☆☆☆  
    (下) ☆☆☆☆


絵本作家として活躍する賀川真帆。
真帆の父は十五年前、「出張で九州に行く」と言い置いたまま、
富山で病死を遂げていた。
父はなぜ家族に内緒で、何のゆかりもないはずの富山へ向かったのか―。
長年のわだかまりを胸に、真帆は富山へ足を向ける。
富山・京都・東京、三都市の家族の運命が交錯する物語。



(感想)

我を忘れて引き込まれるような刺激はないけれど、
お話の進むテンポが遅いということもあり、時間をかけて少しずつ読みました。
どことなく古臭く、若い人にはピンと来ない作品かもしれませんが、
久々にどっぷり浸ったな〜という感じがします。
富山の景色の描写もとても美しく、真帆たちの旅した風景が目に浮かぶようです。

人の心の根本にある「優しさ」や「温かさ」を感じずにはいられません。
凛とした姿勢で生きる登場人物が多く、この人達のように生きたいと思った。
人を思いやる心自然と常に持ち、丁寧に、自分に正直に生きる・・・
そうすることがおのずと良い縁や絆を呼びよせるんですね。

「赤毛のアン」の件は宮本輝さんご自身に重なりますよね?w
先日読んだばかりの吉本ばななさんとの対談集「人生の道しるべ」にこのエピソードが載っていたのを思い出し、
思わずニヤッとしてしまいました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:41 | category:    宮本輝 |
# カフェ、はじめます
評価:
岸本 葉子
中央公論新社
¥ 1,944
(2015-09-09)

JUGEMテーマ:小説全般
 
 カフェ、はじめます / 岸本葉子(中央公論新社)

 評価 ☆☆


イケてない40代シングル女子が、かわいい古民家にひと目惚れ。
おむすびカフェ開業を目指して一念発起!
大家の風変わりな老女と娘、不動産業者との駆け引き、
頼りない行政書士や助っ人の旧友をも巻き込みドタバタ騒動。



(感想)

40代の独身女性がかわいい古民家に一目惚れし、
週末だけのおむすびカフェを開業する。
彼女は安定した仕事も家もあるのに、だ。
甘さも感じるし、動機も不十分だし、
なんだか主人公を素直に応援する気になれなかったというのが正直なところです。

だけど、この年まで堅実に生きてきた女性が一生に一度、
羽目をはずしてみたいみたいな?そんな気持ち?はわかる気がします。
たとえこのお店の経営がうまくいかなくとも、
彼女の中には後悔よりも思い切って冒険したという爽快感が残るはず。
「自分は何者でもない、何も成し遂げてない」と
自分の人生になんとなくモヤモヤしたものを抱えている女性には共感できるものは多いのかもしれません。

女性向けの小説ですね。「古民家」とか「カフェ」とか女子は大好きだもん。
男性にはまったく興味のないジャンルのお話だと思います。
安易すぎるお話でしたが、軽く読む分にはいいかもしれません。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:26 | category: 作家名 か行 |
# あの家に暮らす四人の女
評価:
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JUGEMテーマ:小説全般

 あの家に暮らす四人の女 / 三浦しをん(中央公論新社)
 
 評価 ☆☆☆☆☆


謎の老人の活躍としくじり。ストーカー男の闖入。
いつしか重なりあう、生者と死者の声―。
古びた洋館に住む女四人の日常は、今日も豊かでかしましい。
谷崎潤一郎メモリアル特別小説作品。ざんねんな女たちの、現代版『細雪』。




(感想)

私は「細雪」を読んでないのですが、何の影響もなく、文句なしに面白かったです!
これぞ三浦しをんワールド!大好きです。


三浦しをんさんの「腐女子」な部分が存分に発揮され、
「この人はやっぱりこうでなくちゃ!!」と強く強く感じました。
とにかく言葉のチョイスや物事を見る視点の面白さが私の笑いのツボにいちいちヒットするんだな。
で、何気ない日常の小ネタでクスッと笑わせてくれると思いきや、とどめの河童!!
ある夜、佐知が河童に助けられる件は腹を抱えて笑いました。
女性ならこの女4人のダメさ・残念さのどっかに必ず共感できると思います。
そこもこの作品の魅力の一つなのではないでしょうか。

続編希望。ずっとずっとこの4人の生活を見ていたいです。
たぶん映像化もされるでしょうね。
あ〜、ほんと面白かったです!!
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:36 | category:    三浦しをん |
# 水のかたち
JUGEMテーマ:小説全般

 水のかたち(上)(下) / 宮本輝(集英社)

 評価 (上) ☆☆☆☆☆
    (下) ☆☆☆☆☆


東京下町に暮らす主婦・志乃子、50歳。
もうすぐ閉店する近所の喫茶店で、文机と朝鮮の手文庫、
そして薄茶茶碗という骨董品を女主人から貰い受ける。
調べてみるとその茶碗は、なんと三千万円は下らない貴重なものだった・・・。
予想もしなかった出会いから、人生の扉が大きく開きはじめる―。




(感想)

先日読んだ宮本輝さんと吉本ばななさんの対談集「人生の道しるべ」の中で、
何度か話の中に出てきていたので読んでみました。
いやー、素敵でした。「心が洗われる」という点でこの二人の作家は共通してるのかもしれません。

近所の喫茶店の店主からタダでもらった古い茶碗。
その価値を調べてみると3000万円の値打ちがあることがわかった。
どうやら店主はその価値を知らずに、気楽な気持ちで譲ってくれたらしい。
・・・さて、ここでどうするか?
周囲の人々は「店主との取引は終わったのだ。堂々と3000万をもらえばいい」という。
たしかに彼らの言うように、
元の持ち主に茶碗の真の価値を明かす義務はないのかもしれない。
その意見は正しい。
でも、主人公にとってそうすることは自分らしくなかった。
自分の生き方ではない。
道義の問題ではなく、
私の心の問題なのだと「心」を優先させようとする主人公がたまらなく好きです。
シンプルに「そういうのが嫌い、私らしくない」・・・・いい!!
人生で大きな何かを為したわけでもない平凡な主婦でも、
「自分はこうなんだ」という確固たる意志を持ち、
人一倍正直にまじめにバカ正直に生きている姿は、
何に劣るでもなく美しいと思いました。
この作品の幸福の連鎖を「現実にはありえないおとぎ話だ」と評価する人もいるのだろうけど、
こういう正直な生き方が素晴らしい「縁」や「絆」を運んでくるということに関しては本当だと思う。
私はやはり地道に生きる人が好きだと改めて実感しました。
私もそうありたいです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:58 | category:    宮本輝 |
# となりの革命農家
評価:
黒野 伸一
廣済堂出版
¥ 1,620
(2015-03-04)

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 となりの革命農家 / 黒野伸一(廣済堂出版)

 評価 ☆☆☆


地方農業法人に左遷された上田理保子は、田舎の男尊女卑も耐え、
返り咲きを狙って奮闘中。
農の素人・春菜は、お人好しの青年・小原和也と、
マダラボケだが「有機の匠」とうたわれる義母・益子に助けられ、
農業と経済を学んでいく。一
『限界集落株式会社』が累計20万部を突破した黒野伸一の、新たな『農』小説!



(感想)

「限界集落株式会社」が面白かったので、読んでみました。
相変わらずスラスラっと読める文体。ライトノベルかと思うほどの軽さです。

今回は「近代農業 VS 有機農業」。
ぞれぞれ目指すものに違いはあれど希望を持ち、
真摯に農業と向き合っているという点では一緒。
両者がどう共存するかがテーマです。

どちらの言い分もわかるし、
個人の問題だけでなく後継者問題やお嫁さんが来ない問題など
農村の抱えるリアルな問題が描かれてる点にも読みごたえを感じました。
でも、できればもっと「農家の過酷さ」を見せてほしかった。
農家なら天候との戦いもあるはずなのに、
虫関係の苦労くらいしか描かれておらず、
「あれ?農業の難しさってこんなもんじゃないはずなんだけどな・・・。」と拍子抜けします。
有機農業に挑む二人の苦労なんて特にそう。
意外に早く有機に成功しちゃってポカーンです。
このへんがちょっと軽すぎるし、
農業経験のないアラフォーの二人の女性が農業に挑むという点でも、
これを読んで農業に簡単なイメージを抱く読者がいるのではないかと少々不安にもなりました。

あと、和也くん!!喧嘩っぱやすぎるでしょ〜。
こんな人が周りにいたらいやだなぁ。こんな人は社会に出ても通用いたしません。

「限界集落〜」に比べたらだいぶ落ちるけど、まぁ楽しめました。
続編のありそうな気がするので期待しています。

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 19:44 | category:    黒野伸一   |
# 人生の道しるべ
評価:
宮本 輝,吉本 ばなな
集英社
¥ 1,296
(2015-10-05)

JUGEMテーマ:読書

 人生の道しるべ / 宮本輝 吉本ばなな

 評価 ☆☆☆

 
困難な時代を生き抜く、知恵の対話。
創作、家族、人間関係、健康、死生観…
小説が問いかける「幸せ」のかたちとは。
人間の「生」を力強く肯定する作品を書き続けるふたりの作家が、
20年ぶりに出会い、そして語った。
二人の作家の思索が詰まった珠玉の対話集。



(感想)

お二人の人生観・死生観・・・。
それぞれに違いはあるものの、
どちらの「幸せの形」も私の思うそれと似通っていて、
お二人どちらの意見にも諸手を挙げて「賛成!!」と言える内容でした。

一つ一つのエピソードはさすが先輩、宮本輝さんの方が面白くてインパクトあります。
どちらかというと、後輩のばななさんの方が聞き役ポジションの対談のようです。
なかでも「手製のドスからの〜〜プレイボーイ」ネタが面白かったw
宮本輝さんらしくないエピソードで、忘れられそうにありませんw

ばななさんの「鳥たち」について語られている部分も多く、
私もこれは2回読んではいるのですが、
自分では気付かなかったことも書かれてあり、
いろんな読み方があるんだなと、とても参考になりました。
「鳥たち」、また再読してみます。

ばななさんは自分の作品の読者は
感受性の強い、世の中のうまく付き合えないタイプの人が多いということをよく理解しておられます。
そして、その人たちが救われるための「小商い」ができれば幸せだと思っている・・・・と。
私はそれがファンとしてとてもうれしかった。
この部分を読めただけでもう十分♪
そして宮本輝さんの愛読書が「赤毛のアン」シリーズとは!私と同じ!!驚きました。

この機会にと、
今、この対談の中でよく語られていた宮本輝さんの「水のかたち」を読みはじめてます。
でもやっぱり、お二人とも「作家」なわけでして、
対談集よりはお二人の小説を読んでいる方が学びも共感も多いような?
これを言っちゃあ元も子もないけど、私は対談集よりは小説の方が好きなので☆は3つで。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:51 | category: アンソロジー、競作 |
# ふなふな船橋
評価:
吉本ばなな
朝日新聞出版
¥ 1,404
(2015-10-07)

JUGEMテーマ:小説全般

 ふなふな船橋 / 吉本ばなな(朝日新聞出版)

 評価 ☆☆☆☆


書店の店長をしている立石花は、
15歳の時に大好きなお母さんと船橋の駅で別れるときに買ってもらった
「梨の妖精 ふなっしー」のぬいぐるみを15年経った今も大切に持っている。
花が奈美おばさんのマンションで暮らすようになって間もなく、
小さな女の子が出てくる不思議な夢を繰り返し見るようになる。その夢の中の女の子もまた、
「梨の妖精 ふなっしー」を愛するひとりだった・・・。
朝日新聞に連載中から大反響、あの「ふなっしー」も帯文を寄せている長編小説、ついにこの秋、出版! !




(感想)

ばななさんはふなっしーが大好きで、ふなっしーについて
「現実には役に立たず、なにをしてくれるわけでもないけど、
いるだけで確かな感じがして、果てしなく優しく受け入れられているような気がする、ただそれだけの存在」
と、コメントしています。
作家もそんな存在であると考えており、
いつかふなっしーをテーマにした作品を書くのを夢見ていたようです。
今回の作品はその夢が実現したもので、ふなっしーが帯を書いてくれてます。

私はもともとばななさんもふなっしーも大好きなので、
これは夢のようなコラボでした!!幸せっ。・゚・(*ノД`*)・゚・。
んー、でもこれはコラボというよりは、ばななさんのふなっしーへの愛情表現かな?
作家が好きな人をテーマにした小説を書く・・・・これほどの愛情表現がありますか??
ネットで他の方のレビューで「別にふなっしーでなくてもいい」とか
「流行にのっただけ」みたいなレビューも読んだけど、
これはふなっしーありきで書かれた小説なので、ふなっしーじゃなきゃ意味がない。
特殊な環境で育った主人公のヘビーな人生を、ふなっしーのひゃっはー!!な存在がうまく和らげているし、
その点においてもふなっしーの存在は効果的に思えます。

「人の心」に向き合うと、大事にしすぎて温めすぎて、壊してしまう。
主人公のこういう不器用な生き方、よーくわかります。私もこんなんだからw
でも、これはおそらく優しさじゃなく、ぶつかる度胸がないだけなのかもしれないな。
自分よりもまず、大切な誰か。
↑ こう考えてると逃してばかりで、いつまでたっても幸せになれないんだ。
こういう些細なエピソードの中に自分を見つけて、反省・後悔する場面の多い作品だったなぁ。

最後は主人公が本来あるべき自分の姿を見つけられてよかったです。
人であれ、大事にしてるぬいぐるみであれ、やはり弱い自分を見せられて支えになるものって必要だな。
人から見てどんなちっぽけなものでも、宝物を持ってる人は強い。

ばななさんにこんな小説を書いてもらえて、船橋に住んでいる人がとっても羨ましいです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:46 | category:    よしもとばなな |
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