# 持たざる者
2015.08.31 Monday
JUGEMテーマ:小説全般
持たざる者 / 金原ひとみ(集英社)
評価 ☆☆☆☆
僕はどこだが分からないここにいる―修人。
全ての欲望から解放された、いや、見放された―千鶴。
人生とは結局、自分自身では左右しようのないもの―エリナ。
きっと、私がここから別の道を歩む事はないだろう―朱里。
他者と自分、世界と自分。絡まり合う、四者の思い。思いがけない事故や事件。
その一瞬で、ねじ曲がる。平穏な日常が、約束された未来が。
混沌、葛藤、虚無、絶望。四年ぶりの傑作長編小説。
(感想)
金原さんの本、ずいぶん久しぶりに読んだのですが、
まるで別人かと思うくらいに大人になられた印象です。
以前はやたらと自我の強さを感じる作家だったけど、他者を見守る視線がそなわった?
母となり、あの震災があり、
それらの体験が彼女を成長・変化させたのが如実に感じられます。
特に4人の主人公のうち、
エリナは金原さん自身を重ね合わせているのかもしれません。
あることがきっかけで、人生がガラっと変わってしまった4人。
4人とも裕福だし、なんとなく鼻につくところもあるのだけど、
みんなが気付かないふりをして目をそむけたくなるような問題に真摯に向かう人達だった。
物事は考えすぎると実際以上に深刻化してしまうことが多々ある。
「自分が!」「自分は!」と思いすぎることなく、
他者のことも踏まえた広い視線で物事を見つめられるようになれたらいいなぁ。
私も自意識が強く、
自分の考えにまっすぐなタイプなので思うことも多かったですw
4つの中で最後に収録されている朱里の物語がいちばん身近で生活感があり、
親近感のわく話でした。
これがいちばん面白いんだけど、
これだけが金原ひとみらしくなくて、1つだけ激しく浮いてるのも事実。
最後の最後でバランス悪くなっちゃったのが残念です。