隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 持たざる者
評価:
金原 ひとみ
集英社
¥ 1,404
(2015-04-24)

JUGEMテーマ:小説全般

 持たざる者 / 金原ひとみ(集英社)

 評価 ☆☆☆☆


僕はどこだが分からないここにいる―修人。
全ての欲望から解放された、いや、見放された―千鶴。
人生とは結局、自分自身では左右しようのないもの―エリナ。
きっと、私がここから別の道を歩む事はないだろう―朱里。
他者と自分、世界と自分。絡まり合う、四者の思い。思いがけない事故や事件。
その一瞬で、ねじ曲がる。平穏な日常が、約束された未来が。
混沌、葛藤、虚無、絶望。四年ぶりの傑作長編小説。



(感想)

金原さんの本、ずいぶん久しぶりに読んだのですが、
まるで別人かと思うくらいに大人になられた印象です。
以前はやたらと自我の強さを感じる作家だったけど、他者を見守る視線がそなわった?
母となり、あの震災があり、
それらの体験が彼女を成長・変化させたのが如実に感じられます。
特に4人の主人公のうち、
エリナは金原さん自身を重ね合わせているのかもしれません。

あることがきっかけで、人生がガラっと変わってしまった4人。
4人とも裕福だし、なんとなく鼻につくところもあるのだけど、
みんなが気付かないふりをして目をそむけたくなるような問題に真摯に向かう人達だった。
物事は考えすぎると実際以上に深刻化してしまうことが多々ある。
「自分が!」「自分は!」と思いすぎることなく、
他者のことも踏まえた広い視線で物事を見つめられるようになれたらいいなぁ。
私も自意識が強く、
自分の考えにまっすぐなタイプなので思うことも多かったですw

4つの中で最後に収録されている朱里の物語がいちばん身近で生活感があり、
親近感のわく話でした。
これがいちばん面白いんだけど、
これだけが金原ひとみらしくなくて、1つだけ激しく浮いてるのも事実。
最後の最後でバランス悪くなっちゃったのが残念です。
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:54 | category:    金原ひとみ |
# ボーイミーツガールの極端なもの
評価:
山崎ナオコーラ
イースト・プレス
¥ 1,728
(2015-04-17)

JUGEMテーマ:小説全般

 ボーイミーツガールの極端なもの / 山崎ナオコーラ(イースト・プレス)

 評価 ☆☆☆☆☆


年齢も性別も境遇も異なる男女が出会い、恋をし、時には別れを経験する。
「絶対的な恋なんてない」
不格好でも歪でもいい、人それぞれの恋愛の方法を肯定する連作小説集。
人気多肉植物店・叢Qusamuraの店主・小田康平が植物監修を務める。


(感想)

久々にさわやかでほっこり気持ちのいい恋愛小説を読みました。

「ボーイミーツガールの極端なもの」という作品タイトルもインパクトあるし、
各章のタイトルもユニークで秀逸。
タイトルセンスで好奇心をくすぐるセンスのある作品です。

自由で、のびのびとしていて、個性的な恋をする人たちの連作短編集で、
すべてのお話にサボテンが絡んできます。
棘があって不格好なサボテンと一筋縄ではいかない恋愛をうまく重ね合わせてるのでしょう。
正直、サボテンとリンクさせる必要性はあまり感じませんが、
1つ1つのサボテンの写真と特徴が載っているので、
植物好きなワタシ的には「今度はどんなサボテンかな?」という楽しみもありました。

いくつになっても、どんな状況にあっても、恋するときめきは忘れたくない。
恋は心を成長させてくれるものでもあり、冒険させてもくれるものでもある。
恋だけではなく、人生を描いているとも言えますね。
今まで読んだナオコーラさんの作品ではこれがベストです。大好き!
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:10 | category:    山崎ナオコーラ |
# 虚ろな十字架
評価:
東野 圭吾
光文社
¥ 1,620
(2014-05-23)

JUGEMテーマ:小説全般

 虚ろな十字架 / 東野圭吾(光文社)

 評価 ☆☆☆☆


別れた妻が殺された。
もし、あのとき離婚していなければ、私はまた遺族になるところだった。
東野圭吾にしか書けない圧倒的な密度と、
深い思索に裏付けられた予想もつかない展開。
私たちはまた、答えの出ない問いに立ち尽くす。



(感想)

いつもの東野作品に比べると話の流れに動きが少なく、
少々退屈に感じたのですが、
これは手に汗握るエンターテインメント作品として楽しむものではなく、
「死刑とは」ということに真摯に向き合うための作品なのかもしれませんね。

憎き犯罪者に対し、死刑または無期懲役という重い判決に勝ち取ったとしても、
その犯罪者が最後まで心からの反省をしなかったら、
はたしてその判決に意味はあるのか?
犯人が心を入れ替えて更生したところで殺された人は戻ってこないし、
それで被害者が許してくれるわけでもない。
被害者家族が重く悲しい思いで費やした時間も決して戻らない。
小夜子の書いた原稿の中に
「人を殺せば死刑・・・そのように定める最大のメリットは、
その犯人にはもう誰も殺されないこと」とあったけど、
ほんとうにその通り。それだけでしかない。
あどけない小さな子供の命も、残忍な犯罪を犯した犯罪者の命も、
「たった一つの命」であることは間違いないし、
たとえ犯罪者であれど死刑になどしていいのか? 
逆に死刑制度はなくすなんてことはありえるか?
考えれば考えるほど、わからなくなるテーマです。
あまりに重い問いかけに、
読後の今でも自分の中での答えはまとめられずにいます。

だけど、人が人に対して、本当の意味での「裁き」を下すことなんてできない。
・・・これだけは確かなんだろうな。
| comments(0) | trackbacks(1) | 15:59 | category:    東野圭吾 |
# 満願
評価:
米澤 穂信
新潮社
¥ 1,728
(2014-03-20)

JUGEMテーマ:小説全般

 満願 / 米澤穂信

 評価 ☆☆☆


人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは―。
驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、
交番勤務の警官や在外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、
フリーライターなどが遭遇する6つの奇妙なミステリ短篇集。



(感想)

“ミステリー”という部分での推理の面白さややられた感は少ないのですが、
6作品とも良くできた短編集ではあると思います。
ミステリーという部分にこだわらなければ十分に楽しめました。
だけどその場では楽しめる作品でしかない。
長く心に残る作品にはおそらくならないでしょう。
6つとも変なモヤモヤは残さず、
きちんとオチをつけてきれいに終わらせてはいるけど心には響きません。

1番目の「夜警」はこの中ではいちばんミステリーっぽくて面白かったです。
真実が分かった時はゾクッとしました。

多くの賞を取っているようだし、期待していたのですが
どうやら期待しすぎてたのかもしれません(^_^;)
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:31 | category: 作家名 や行 |
# 舞台
評価:
西 加奈子
講談社
¥ 1,512
(2014-01-10)

JUGEMテーマ:小説全般

 舞台 / 西加奈子(講談社)

 評価 ☆☆☆☆


29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。
しかし初めての一人旅、初めての海外でトラブルが・・・。
虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、
助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に。
苦難の果てに葉太がたどり着いた境地とは・・・。



(感想)

主人公の葉太は自意識が異常に強い。
私も含めて、今の若者には比較的そういう傾向があるようだけど、
彼の場合はちょっとしゃれにならないくらいにひどいようです。
そんな葉太がはじめてのニューヨーク1人旅で人生最大の大恥をかき、
途方に暮れて絶望の淵に追い込まれます。
しかし、ここまで落ちたらもう怖いものなんかない!
恥もプライドも全部捨て、
どんどん身軽に自然体になっていく葉太の姿が清々しかったです。
異常な自意識っぷりをコミカルに描いており、
「わかるわかる」と思いながらクスクス笑えました。

誰もが「自分」という舞台の主人公です。
その舞台を面白く・刺激的で実り多いものにできるのは自分自身でしかありません。
すべてを脱ぎ棄てて、
葉太は今やっと自分自身の人生という舞台を歩き始めようとしている。
29歳、まだまだ遅くないよ o(-`д´- o)がんばろー!!
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:53 | category:    西加奈子 |
# 抱く女
評価:
桐野 夏生
新潮社
¥ 1,620
(2015-06-30)

JUGEMテーマ:小説全般

 抱く女 / 桐野夏生(新潮社)

 評価 ☆☆☆


1972年、吉祥寺、ジャズ喫茶、学生運動、恋愛。
二十歳の女子大生・直子は社会に傷つき反発しながらも、
ウーマンリブや学生運動には違和感を覚えていた。
必死に自分の居場所を求める彼女は、
やがて初めての恋愛に狂おしくのめり込んでいく――。




(感想)


直子は私の親とほぼ同世代で、私は生まれてもいない頃のお話ですが、
街の様子や学生達のスタイルが丁寧に描写されてあり、
当時の灰色っぽい世の中の様子がしっかりと目に浮かびます。

今の時代の若者に比べれば、
この時代の若者の方が確実にしっかりとした主張は持っていただろうし、
生命力にもあふれていたのではないかと思います。
厳しい時代であっただろうけど、馬鹿や無茶をするのも若さ故のこと。
そんな勢いのある時代の若者にうっすらと羨ましさも感じます。
だけど、直子のようにはっきりとした夢や理想もなく、
ただなんとなく生きてる女の子にとってはとても生きにくい時代だったでしょうね。

スムーズに読めたわりに作品の世界観にのめり込めなかったのは、
主人公に魅力がなかったからかもしれません。
これこそが当時の若い女の子の等身大の姿なのかもしれないけど、
ぼんやり流されているようにしか見えません。
彼女は深田と出会い、運命の恋をしたように思っているようだけど、
今の時点ではただカラダでつながってるだけだし、これもすぐにダメになるんじゃないかなぁ。
何か一つでもいいから、この子に熱いものを感じられたら違っていたかも。

桐野さんの作品としてはかなり異色な題材でしたが、
私はいつものようなダークでエグい桐野ワールドのほうが好きですね。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:19 | category:    桐野夏生 |
# 森は知っている
評価:
吉田 修一
幻冬舎
¥ 1,620
(2015-04-22)

JUGEMテーマ:小説全般

 森は知っている / 吉田修一(幻冬舎)

 評価 ☆☆☆☆


南の島の集落で、知子ばあさんと暮らす高校生の鷹野一彦。
一見のどかな田舎の高校生活だが、
その裏ではある組織の諜報活動訓練を受けている。
ある日、同じ訓練生で親友の柳勇次が、一通の手紙を残して姿を消した。
逃亡、裏切り、それとも? その行方を案じながらも、
鷹野は訓練の最終テストとして初任務につくが――。
過酷な運命に翻弄されながらも、真っさらな白い地図を胸に抱き、
大空へと飛翔した17歳の冒険が、いま始まる!




(感想)

タイトルと表紙のデザインからして、
さわやかな青春物をイメージしちゃいますが、
青春物であると同時にスパイ小説でもあります。
つまり、産業スパイになるべく特殊訓練をされる高校生のお話です。
今までの吉田修一さんとは少し違った新鮮味があり、
あっという間に読み終えてしまいました。

「太陽は動かない」という作品の主人公の少年時代を描いている、
いわばエピソードゼロ的な位置づけになる作品ですが、
「太陽は動かない」を読んでいない私でも問題なく楽しめました。
(これから読んでみようと思います♪)

壮絶な過去を背負った孤児を集めて、産業スパイに育てる・・・。
頼れる大人も選択肢もない彼らにとって、その運命はあまりに悲しい。
何の疑問も持つこともなく任務を遂行する一方で、
次の日は普通の高校生とて学生生活を送る・・・そのギャップも読んでいて切ない。

「1日だけなら生きられる。たった1日だけ。それを毎日、続ければいい」
この言葉、胸に染みました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:00 | category:    吉田修一 |
# クズころがし
評価:
鈴木 拓
主婦と生活社
¥ 1,188
(2015-05-29)

JUGEMテーマ:読書

 クズころがし / 鈴木拓(主婦と生活社)

 評価 ☆☆☆☆☆


クズ、ゴミ、カス、クソ、ゲス…日夜浴びせられる罵詈雑言や炎上騒動。
そこを涼しい顔で切り返し、したたかに生き抜いてきた稀代の“嫌われ者”・鈴木拓。
初めて明かす、人生を絶対にしくじらない“愛され”処世術。
どんなに嫌われても、そこそこの成功をつかめる32の秘密。



(感想)

鈴木拓がクズとかゲスとか言われていることは知ってたけど、
バラエティ番組等で実際にゲスいことをしてる場面を見たことはなく、
この本を読むまでは「ドランクドラゴンのメガネの方」程度の認識しかありませんでした。

タレント本というよりは、自己啓発本ですね。
できないものはできない。向いてないものは向いてない。
それを認めるのは勇気いります。
で、そんなクズな自分をさらけ出して飯のタネにして、
家族養っていくのはもっと勇気のいることです。
でも、この人はそうやって「クズ芸人」というお笑い界の新ジャンルを築いたし、
クズを活かせる職業なんてなかなかない。
そう考えるとお笑い芸人は天職なのでしょうね。

鈴木さんが芸能界で今の位置にいられるのは、
● 己を知り、自分の限界と技量をきちんと把握する。
● 無理にハードルはあげない。
● 調子に乗らない。
これがきっちりできているからです。
何も考えずに言いたい放題やってるわけではないし、努力しなかったわけでもない。
うまくいかなくて、心がバッキバキに折れて、
絶望しまくった末にたどり着いた境地が彼の今の位置です。

人間関係や恩義・仕事のマナーはとても大事にしているようなのでそこにも好感が持てました。
だからこそ仕事も来るのだと思います。そこは芸人も一般の職業も一緒。
たまにクスッと笑えて、目からウロコの処世術本でした。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:45 | category: 作家名 さ行 |
# ジェントルマン
JUGEMテーマ:小説全般

 ジェントルマン / 山田詠美(講談社)

 評価  ☆☆☆☆


眉目秀麗、文武両道にして完璧な優しさを持つ青年、漱太郎(そうたろう)。
しかしある嵐の日、同級生の夢生(ゆめお)はその悪魔のような本性を垣間見る――。
天性のエゴイストの善悪も弁(わきま)えぬ振る舞いに魅入られた夢生は、
漱太郎の罪を知るただ一人の存在として、彼を愛し守り抜くと誓う。




(感想)

漱太郎の悪魔性を知った日から彼の虜になった夢生。
こんな男にすべてを捧げ、愛する心理は理解できないけれど、
夢生の心理描写は美しい。
これに関してはさすが山田詠美だと唸らずにはいられません。
アブノーマルな世界観の作品なのに、読みやすいというのも不思議。

背徳的な恋だとしても、不道徳だとしても、
決して実らない一方通行の思いだとしても、
見返りを求めることすら期待せず、ただ今の状況を幸せに感じているのであれば、
おそらくそれは幸せな恋なのでしょう。
夢生と漱太郎はまったくタイプの違う人間に見えるかもしれないけど、
内に宿る狂気という点では似たものを感じます。
二人はお互いにそれを嗅ぎとったから、こんな関係になったのだろうな。

貴恵子さんが登場してからの展開がなんとなく陳腐にも思えましたが、
作品全体に漂う、狂気をはらんだ美しさには引き込まれました。



 
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:05 | category:    山田詠美 |
# パノララ
評価:
柴崎 友香
講談社
¥ 1,944
(2015-01-15)

JUGEMテーマ:小説全般

 パノララ / 柴崎友香(講談社)
 
 評価 ☆☆☆


二八歳の「わたし」(田中真紀子)は友人のイチローから誘われ、
彼の家に間借りすることにした。
その家は変な家で、私の部屋はガレージのうえにある赤い小屋。
イチロー父の将春は全裸で現れるし、母は女優、姉と妹も一癖ある人ばかり。
そんなある日、イチローは
「自分はおなじ一日が2回繰り返されることがたまにある」、と私に打ち明けるのであった。




(感想)

同じ日が2回繰り返されることがたまにある「イチロー」、
ワープできる「文」、電話が来ると相手の顔と表情がわかる「絵波」。
それぞれ特殊な能力を持った兄弟の家に間借りすることになった私・「田中真紀子」。
彼らの1年間を描いた作品です。

常識では理解できないようなおかしなことが起きているにもかかわらず、
それをわりと素直に受けとめる人達・・・なんとも不思議なお話でした。
彼らがそれを受け入れるから読者もすんなりと受け入れてしまう。
そして物語がとにかく淡々と流れていく。
グイグイと引き込まれるようなものでもなく、すっごい面白いわけでもない。
でも、な〜んとなく読ませる魅力のある作品??

すっきりとしなかったのは、すべてに対する「理由」が何一つ明らかになってないこと。
なぜ、この家の兄弟は特殊な能力を持っているのか?
それをなぜ、真紀子も体験してしまったのか?
真紀子の両親はなぜ、ああなのか?
すべてがぼんやりとしたまま。
読後に残る「?????」が消火できずに悶々としています。
白黒つけたいタイプの人には絶対オススメできない作品ですw

それにしても「田中真紀子」と「イチロー」って・・・・w
登場人物にここまでキョーレツな名前を付ける意味あった??
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:41 | category:    柴崎友香 |
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