64(ロクヨン) 上・下 / 横山秀夫(文春文庫)
評価 上 ☆☆☆☆ 下 ☆☆☆☆
元刑事で一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。
記者クラブと匿名問題で揉める中、
“昭和64年”に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件への警察庁長官視察が決定する。
組織と個人の相克を息詰まる緊張感で描き、ミステリ界を席巻した著者の渾身作。
(感想)
なかなかに重厚感のある。読ませる警察小説。
横山秀夫さんの作品は久々に読みましたが、期待を裏切らずさすがです。
警察内部を描く小説でありながらも、
犯罪に直接かかわることはない「広報」という視点から描く警察小説という点が新鮮。
NHKでドラマ化されたものを見て小説版にも興味を持ったのですが、
ドラマもかなりいい出来だったけど、
小説版はさらに人物描写も深く、緊迫感があります。
特に後半はグイグイ引きつけられました。上巻より下巻の方が面白いです。
雨宮さんが犯人を見つけ出したのは意外な方法で、
その鬼気迫る執念には胸がしめつけられる・・・。
男社会が舞台なので、女の私には少々男臭く感じたのも事実ですが、
男性と同等に扱ってほしいと思いながらも、
いまやるべきことを精一杯勤める美雲や
ただ一心に娘の安全と帰宅を祈る美那子へは比較的感情移入しやすく、
女だからこその読み方もできた気がします。
あ、でも不気味に存在感のある二渡にはもうちょっとかき回してほしかった。
そこに唯一物足りなさを感じました。