隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 花野に眠る 秋葉図書館の四季
JUGEMテーマ:小説全般

花野に眠る 秋葉図書館の四季 / 森谷明子(東京創元社)

評価 ☆☆☆☆


れんげ野原のまんなかにある秋葉図書館は、いつでものんびりのどか。
新人司書の文子の仕事ぶりも、どうにか板についてきた。
そんななか、図書館のお向かいの日向山から突然、白骨死体が・・・。
本を愛してやまない人の心をくすぐる、やさしい図書館ミステリ!




(感想)

「れんげ野原のまんなかで」の続編です。
私がこの本を読んだのは2006年1月。
れんげそう畑に囲まれた静かな図書館が舞台♪
もうそのシチュエーションだけで本と花が好きな私はこの本が気にいりました。
大好きな作品として今も鮮明に記憶に残っているし、
当時のレビューにも「ぜひ続編を!」と書いていたので実現したのがとても嬉しいです。

物語が進むにつれ、悲しくもまっすぐな1人の人物の人生が浮かび上がってきます。
自分のできる範囲で精一杯に生きているのに、
少しでも人と違う・劣っている部分があると平凡な幸せすらも許されない。
だけどそんな報われない人でも、
強い想いというものは永遠に色褪せず、受け取った人・向き合った人の心に残る。
「人を想う気持ち」が心にしみました。

残念だったのは、前作から感じていた「登場人物のキャラクターの甘さ」。
当時のレビューにも「続編があれば、もう少し人物をしっかりと描いてほしい」と書いていたけど、
前作からの登場人物・図書館のスタッフ3人に限ってはそれは改善されてなかったと思う。
いい3人組だとは思うんだけど、もう少し深く描き込めなかったのでしょうか・・・・。
とにかく主人公に魅力がない。これは致命的。うーん。もったいないなぁ。

図書館が舞台の作品だけあって、作中には実在する本がたくさん登場します。
そのなかでも「ある子馬裁判の記」はぜひ読んでみたいです!
そして辰巳芳子さんの本も少し前にかなり話題になった本だし、チェックしなきゃ〜〜。
こんな風にこの本からまた、別の本と出会う機会をもらって・・・それもまた素敵なことですね。

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:28 | category:    森谷明子 |
# アイネクライネナハトムジーク
評価:
伊坂 幸太郎
幻冬舎
¥ 1,512
(2014-09-26)
コメント:アイネクライネナハトムジーク

JUGEMテーマ:小説全般

アイネクライネナハトムジーク / 伊坂幸太郎(幻冬舎)

評価 ☆☆☆☆☆


ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。
奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、
他力本願で恋をしようとする青年、
元いじめっこへの復讐を企てるOL……。
情けないけど、愛おしい。そんな登場人物たちが紡ぎ出す、数々のサプライズ! !
伊坂作品ならではの、伏線と驚きに満ちたエンタテイメント小説!



(感想)

短編集のスタイルでありながらも、
実はすべてのお話がつながっているという連作短編になっています。
いろんな要素を少しずつリンクさせて最後にすべてを鮮やかに繋げてみせるというやり方は
伊坂さんのお得意のスタイルですが、
今作は人が死んだり、金や名声のために騙したり、裏切ったり・・・・みたいな「物騒さ」がない。
普通の人達の普通の生活・恋愛を描いているので、親近感を感じます。
日常の小さな幸せや奇跡にほっこり☆
伊坂作品には珍しい「女性向けの伊坂作品」と言えるかもしれません。
少なくとも私にとってはこんなに心穏やかに読めた伊坂作品は他になかったです。
他の作品に比べて刺激が少ないのは確かですが、私にはこれくらいが合ってる気がします。

「この方がどなたのお嬢さんかわかっているのですか作戦」好きだな〜。
なんつー、小気味の良さ!!

そして・・・「斎藤さん」ってあの斎藤さんなのですね!
あとがきを読んでやっと気づきました。
この作品、斎藤さんの音楽も合わせて聞いてみるとより味わい深いものになりそうです。

 
| comments(0) | trackbacks(1) | 14:43 | category:    伊坂幸太郎 |
# 火星に住むつもりかい?
評価:
伊坂 幸太郎
光文社
¥ 1,728
(2015-02-18)

JUGEMテーマ:読書

火星に住むつもりかい? / 伊坂幸太郎(光文社)

評価 ☆☆☆☆


住人が相互に監視し、密告する。
たとえ危険人物とされた人間にギロチンにかけられる―身に覚えがなくとも・・・・。
交代制の「安全地区」と、そこに配置される「平和警察」。
この制度が出来て以降、犯罪件数が減っているというが・・・。
そして今年、安全地区に選ばれた仙台でも、危険人物とされた人間が、ついに刑に処された。
そのとき!全身黒ずくめで、謎の武器を操る「正義の味方」が、平和警察の前に立ちはだかる!



(感想)

テーマがテーマだけに、
これまでの伊坂作品に見られたウィットに富んだ小気味の良さはなし。
前半はあまりテンポが良くないけど真壁鴻一郎という存在がスパイスとなり、
彼が登場したあたりからようやく物語が動き出したという印象でした。

「正義」と「偽善」の違いは何か。
恐ろしい集団心理のなかで、どれだけ自分を保てるか。
読み進めていくうちにテーマが明確になってくると作品の重みもグンと増します。
「困っている人は助けろ」、これは私には至極当然なことのように思えるけど、
「人を助けることができるなんておこがましい」「すべてを助けないことは偽善」・・・・という考えもある。
正義のあり方をつい考えてしまいました。

だけど、この作品に登場するヒーローは深いことも重いことも考えてなくて、
ただ人間としてのあたりまえの感情に突き動かされて行動しただけ。
この単純さもこの作品の魅力だと思います。

伊坂作品は最後の最後で、物語のいたるとこに散りばめられた複数の伏線がすべて回収され、
なんともいえない爽快感を感じることが多いけど、今作はそういった種類のものではありませんでした。
私はこういうのよりはもう少しユーモアのある伊坂作品の方が好きなので、今回は☆は4つで。

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:57 | category:    伊坂幸太郎 |
# 貴様いつまで女子でいるつもりだ問題
JUGEMテーマ:エッセイ

 貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 / ジェーン・スー(幻冬舎)

 評価 ☆☆☆☆


これまで誰もが見て見ぬふりをしてきた女にまつわる諸問題(女子問題、カワイイ問題、ブスとババア問題、おばさん問題……etc.)から、恋愛、結婚、家族、老後までーー。
今話題沸騰中の著者が笑いと毒を交えて、自らの経験や失敗を開陳する宝石箱のようなエッセイ。
20代、30代、40代女性の働き方、生き方に知恵と術を授けてくれる、女にとっての教典的物語でもある。
モヤモヤ言葉にできない感情に片がつき、読後はスッキリ!!




(感想)

ジェーン・スーさんの「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」を読んだ時、
長年、自分の中にわだかまっている言葉にできないモヤッとした感情をスパッと言葉にしたものを見つけ、
肩の荷がおりたようなスッキリした気持ちになりました。
今回も身につまされる言葉やハッとする言葉、多かったです。

「加齢と拭けは微妙に異なる」
「容れモノの経年劣化だけがことさら際立つのには注意が必要」
「ことあるごとに正論を吐く。正しい。正しいが可愛くない。可愛ければいいというものでもないが、
 愛嬌や愛想が身を助けることを私が学ぶのは遅すぎた」
「隙のある状態に耐えられる能力は、あいまいな空気を他者の間に漂わせたままにできる強さ」
「卑屈な感情を伴って、誰かをブスのくせに、ババアのくせにを思う時は、私も自分自身に低く評価を付けている時」

ううう・・・・・(・ω・`)
納得納得。わかる〜。
こういうことを高いところから言ってるわけでなく、
あくまでジェーンさん自身も「いつまでも女子でいてしまってる」中年女性としての立場から言ってるからいいんだよな。
そんな同志達に親愛の意味を込めての・・・・「貴様」ww
この「貴様」って言葉のチョイスもサイコーです!

いちばん刺さったのは最後の章「小さな女の子救出作戦」。
女は「大人」とみなされる年齢になっても、心の中に小さな女の子のような感情を残している。
大人だって「寂しい・傷ついた」という感情はあるのに、子供の頃のようにそれを素直に表に出すことができない。
自己防衛のつもりでそのネガティブな感情を心に押し込めたまま無視しようとすると、
見栄・意地・自己批判・自己憐憫と過剰な俯瞰が自分を不幸にして苦しめる。
だから大人の理想像に縛られて無理に強がらないで、泣きたい時には泣く。甘えたい時には甘える。
自分のみっともない感情に開き直るのも「大人」なんだと知りました。

これを読んで、「私が生きにくさを感じる理由」が少しわかったような気がします。
そして、その自分をどうなだめて、受け入れていけばいいのかも・・・。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:04 | category:    ジェーン・スー |
# 地平線の相談
評価:
細野 晴臣,星野 源
文藝春秋
¥ 1,512
(2015-03-28)

JUGEMテーマ:読書

 地平線の相談 / 細野晴臣 星野源(文藝春秋)

 評価 ☆☆☆☆


2007年から『TV Bros.』で連載中の大人気対談「地平線の相談」の書籍化。
1981年生まれの星野源が音楽の師と仰ぐ、1947年生まれの大先輩・細野晴臣に日常のゆる~い困り事から、
仕事の心配、最近の心もよう、ダイエット問題、男女関係の深い悩み事まで人生相談。
34歳差のふたりの心和むふたりのトークをたっぷりお届けします。



(感想)

星野源が憧れて憧れて“人生の師”と仰ぐ細野晴臣に「相談」を持ちかける形式の連載対談。
「日々」「からだ」「音楽」「こころ」「男と女」「仕事」など話題は豊富。
まえがきを星野さん、あとがきを細野さんが書いています。

私は星野源さんのファンなので、この本を手に取りましたが、
細野晴臣さんはどんな方なのか正直よく知りません。
けど、読んでいくうちに細野さんってのんびりとおだやかで、
かつ広く柔軟な考えを持っている方なのかなと認識。
で、ああ・・・この人なら源さんが憧れ、大好きになるのは当然だなぁと思いました。
もーう!巻頭の2人が手をつないでるかっわいい写真がすべてを物語っています。
これ1枚で星野さんが細野さんの好きすぎて仕方ない様子が手に取るように伝わりますよ。
軽く嫉妬するくらいにww

ただこのゆるさが読み物としては少し物足りなかったかな?
思わず赤ペンで線を引きたくなるようなキラリンとした一文は見つけられなかった。
「学び」「得るもの」はないかもしれない。
でも、「このままでいんだ」「ゆるくていいんだ」って肩の力がスッと抜けるような安心感をくれる本ではありました。

星野さんのアルバムで言えば、
「エピソード」あたりを小さな小さな音で流してゆったりと読みたいようなそんな一冊です。

 

| comments(0) | trackbacks(0) | 16:23 | category: アンソロジー、競作 |
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