隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# “町内会”は義務ですか?  〜コミュニティーと自由の実践〜
JUGEMテーマ:新書

“町内会”は義務ですか?  〜コミュニティーと自由の実践〜 / 紙屋高雪

評価 ☆☆☆☆


自分の住む地域のコミュニティーは大切…
…でも実際のハナシ、自身の手間と面倒は極力避けたい…というのが本音。
そんな建前と本音がシビアな現実になる場が、町内会・自治会です。
団塊ジュニア世代の著者は、町内会長(自治会長)をついひきうけてしまい、その仕組みと実態に驚きつつ、てんてこまいに。
ちょっとした成果に充実感をえたりもしながら、最後は「吊るし上げ」にあった末、
一風変わった「ミニマムで楽しくラクな町内会」の創生へと到りました。
体験ルポを通して、歴史や、法的な位置づけ、統計データも踏まえ、
町内会・自治会の今後のあり方を提言します。



(感想)

私達がここへ引っ越してきた12年前は、今よりも確かにご近所や自治会の交流がありました。
でも年月が経ち、自分たちよりも若い世代が増えるにつれて、
ご近所とのコミュニケーションの機会はどんどん減り、
最近は知っている人と以外はすれ違っても挨拶もしない住人が多い状況。
変わったな・このままでは自治会も機能しなくなるのでは?と不安感を抱えている最中にこの本に出会いました。
こんな世帯数の多い町内会(自治会)ではないけれど、
うちも何度も会長や役員になったことがあるので、著者の苦しみや葛藤には身をつまされる思いです。
本の中に綴られたエピソードの中には、私の住む町内会であったことと似たような出来事も出てきて、
「ああ、どこの町内会でも出てくる問題なのだな」と感じさせられたりもしました。

震災等でも普段からのご近所とのつながりの必要性は大きく見直されましたし、
正直「自分は絶対に積極的には参加したくないけど、誰かにうまく運営してほしい」というのが
町内会に対する多くの人の意見だと思います。
ならば、どうしていけば役員にも住人にも負担のない町内会が作れるのか?
著者は町内会長としてそれを実践しました。

会長としての負担の大きさにどんどんまいり、追い詰められていく著者・・・・。
なんとかごまかしながらこなすのかと思いきや、最終的に彼は思い切った決断にでます。
これまでの町内会の歴史を変える大きな決断!これには驚きました!
比較的新しい住人なのに会長に祭り上げられあげく、
すべてを丸投げされるかのように押しつけられて、普通なら心が折れます。投げ出します。
でも、それでも投げ出さずに新しい道を模索し、築き上げた著者に拍手です。

これから世の中は高齢化社会に向かってますます加速化します。
そうなってくると隣近所とのつながりは今以上に大切にしていかなければなりません。
この本を読んだ今でも役員になるのは正直嫌ですがww、過度に嫌がらずに協力くらいはしようかな
著者の努力を見ているうちにそんな気持ちになりますよ。
町内会・・・1人1人の意識の持ちようで変わる気がします。
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:43 | category: 作家名 か行 |
# サーカスナイト
評価:
よしもと ばなな
幻冬舎
¥ 1,620
(2015-01-21)

JUGEMテーマ:小説全般

サーカスナイト / よしもとばなな(幻冬舎)

評価 ☆☆☆☆☆



さやかの親指は動かない。手錠から抜く時に、骨が砕けたのだ。
事件の後、さやかは娘のみちると幸せに暮らしていた。
亡き夫・悟の想いを胸に、穏やかな毎日を送っていたが、ある日、家に一通の手紙が届く。
差出人の名前は、 さやかが封印した記憶を呼び覚ますものだったーー。
家族の新しい幸せな絆を発見する物語。



(感想)

約360ページということで、ばななさんにしては久々にボリュームのある長編。
ばななさんの作品は何気ない一文に「ドキッ」としたり「ウルッ」としたり心を揺さぶられることが多く、
この作品もそのたびに立ち止まって自分の置かれている現状や人間関係を見つめ直し、
いろいろと考えさせてくれる作品でした。

その場にいることに限界を感じたら、何も無理して頑張る必要はなくて、逃げてもいい。
すべては時間と、その時に最適な人間関係が解決してくれる・・・・。
この作品にはそれを教えられたようで、
自分の中にわだかまっている重たい荷物がふと軽くなったような気がしました。

「最高の宝物」と「最悪の思い出」。
この両方をくれるのはたしかに同じ人や同じ出来事であることが多く、繋がっている。
悲しい経験ほど心に色濃く残るけど、
なんとかふんばって、あるいは一時だけ忘れて、
その悲しみを超えた時にこそ最高の宝物が待っている。
暗闇はいつまでも続かないし、その先には必ず光さす場所がある・・・。
これを心に留めておくだけで、ずいぶん楽に焦らずに生きられるのかもしれないな。
そして、自分の限界や性質をしっかりと見極めたうえでの「諦め」は決して負けじゃなくてステップだということ。
これらは誰かに教えてもらうのではなく、
時間がかかってもいいから自分で「気づく」「見つけ出す」ことが大切なんだな。
そういうことがじんわりと、そしてしっかりと理解できました。

物語の中に登場するイダさんと兄貴はバリに実在してる人物です。
私にとってよしもとばななという人は、
じっくりと自分の心と現実に向き合う機会を与えてくれるスペシャルな作家。
そんなばななさんをばななさんたらしめていて、ばななさんを形作っているのは
周囲にいる彼らのような素敵な人達なのだと思います。だから彼らにも感謝です。

「できることをやっていたらいつのまにか叶うのがほんとうの夢」
「ひとつ、またひとつあきらめていく道のしみじみした良さを三十過ぎたら少しわかるようになった」
「なんでもないように見えることの中に、ものすごく面白いものがいっぱい潜んでいる。
 それを掘り起こしていくのが面白い」

↑ 今回、グッときた言葉たち。
こういう名言がさりげなく散りばめられてるからばなな作品は気を抜いて読めません。


冒頭に七尾旅人さんの「サーカスナイト」の歌詞がありますが、
この曲はYouTubeで聴くことができます。こちらです

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:36 | category:    よしもとばなな |
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