透明な迷宮 / 平野啓一郎(新潮社)
評価 ☆☆☆
深夜のブダペストで富豪たちに衣服を奪われ、監禁されてしまった日本人の男女。
「ここで、見物人たちの目の前で、愛し合え──」
あの夜の屈辱を復 讐に変えるために、悲劇を共有し真に愛し合うようになった二人が彷徨い込んでしまった果てしない迷宮とは?
美しく官能的な悲劇を描く最新小説集。
平野啓一郎さんの長編はいくつか読んだけど、
短編集を読むのは初めてでした。
もう最初にいっておくけど、この本、感想書くの難しいです。
万人受けするようなタイプの作品ではありません。
難解だし、どのお話にも漂う孤独感が重苦しく、
独特の世界観なのでかなり読者を選ぶ作品だと思います。
うーん、なんというか「孤独」だけでなく、そこから来るジメジメとした不気味さ?
そういうものが読んでいる間、始終まとわりついてくる。
現実ではありえない話ばかりなのだけど、実は私のすぐ近くで正気やリアルからかけ離れて、
心がこんなところへ行ってしまってる人がいてもおかしくないような気もしないでもない。
その世界に迷い込んだら抜けられなくなるようなゾクゾクする感じもある。
特に印象深かったのは「消えた蜜蜂」です。
この静かな不可解さ、寂しさは長く記憶に残りそう。