隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 透明な迷宮
評価:
平野 啓一郎
新潮社
¥ 1,620
(2014-06-30)

JUGEMテーマ:小説全般

透明な迷宮 / 平野啓一郎(新潮社)

評価 ☆☆☆


深夜のブダペストで富豪たちに衣服を奪われ、監禁されてしまった日本人の男女。
「ここで、見物人たちの目の前で、愛し合え──」
あの夜の屈辱を復 讐に変えるために、悲劇を共有し真に愛し合うようになった二人が彷徨い込んでしまった果てしない迷宮とは?
美しく官能的な悲劇を描く最新小説集。



平野啓一郎さんの長編はいくつか読んだけど、
短編集を読むのは初めてでした。

もう最初にいっておくけど、この本、感想書くの難しいです。

万人受けするようなタイプの作品ではありません。
難解だし、どのお話にも漂う孤独感が重苦しく、
独特の世界観なのでかなり読者を選ぶ作品だと思います。

うーん、なんというか「孤独」だけでなく、そこから来るジメジメとした不気味さ?
そういうものが読んでいる間、始終まとわりついてくる。
現実ではありえない話ばかりなのだけど、実は私のすぐ近くで正気やリアルからかけ離れて、
心がこんなところへ行ってしまってる人がいてもおかしくないような気もしないでもない。
その世界に迷い込んだら抜けられなくなるようなゾクゾクする感じもある。

特に印象深かったのは「消えた蜜蜂」です。
この静かな不可解さ、寂しさは長く記憶に残りそう。










 
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:21 | category:    平野啓一郎 |
# 新月譚
評価:
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文藝春秋
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(2012-09-20)

JUGEMテーマ:小説全般

新月譚  / 貫井徳郎(文藝春秋)

評価 ☆☆☆☆


八年前に突然絶筆した作家・咲良怜花は
若い編集者の熱心な復活のアプローチに自らの半生を語り始める。
そこで明かされたのはある男性との凄絶な恋愛の顛末だった―。



説明不足な点も多いけど、
最後まで一気に読ませる吸引力はある作品だったと思います。

自分の容姿に激しい劣等感を持つ女性が主人公です。
一言でいえば恋愛小説なのかなぁ?

劣等感を抱えて生きてきた彼女をはじめて褒めて、愛してくれた「木之内」という男。
彼女が大人になり、女になり、
才能を開花させるのに必要不可欠だった彼女にとっての唯一の存在です。
彼女が整形をしたのも、作家デビューしたのも、すべては木之内のため。
木之内ははたから見れば不誠実でずるい男なんだけど、
名声や他者の目なんかよりも、この人の言葉だけがすべてだった。
すべては好きな男のため・・・私はそんな生き方もありだと思う。
それによって自分の才能を開花できたんだから、この恋は悲しいだけの恋じゃない。
得るものはあった、そう思いたい。

でも残念なことに書くことをやめてから今日まで、
主人公がどう生きてきたかがまったく描かれていない。
そして、書かなくなった理由にも拍子抜け。
主人公の隠された秘密を期待させるような書き方をしているわりにこの程度の理由とは・・・・。
強い恋心に引き寄せられ、何か大きな秘密があるのではとワクワクして読んだのに、
あまりにも陳腐な展開でした。
(でも、それに気づくまでは面白かったです)
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:47 | category:    貫井徳郎 |
# 春から夏、やがて冬
評価:
歌野 晶午
文藝春秋
¥ 1,620
(2011-10)

JUGEMテーマ:小説全般

春から夏、やがて冬 / 歌野昌午(文藝春秋)

評価 ☆☆☆


スーパーの保安責任者の男と、万引き犯の女。
偶然の出会いは神の思い召しか、悪魔の罠か?
これは“絶望”と“救済”のミステリーだ。



最後の最後はどんでん返しのためのどんでん返しみたいな展開に
思わず「おいおい・・・ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ」。
結局、真実はなんだったのかすっきりしないままで終わってしまい、
もどかしさだけが残ります。

娘を事故で亡くし、その悲しみから逃れられず自ら命を絶った妻・・・。
1人になった平田の孤独ははかり知れず、ずーっと作品に暗い影が付きまとう。
どこかに光があってもよかったのに・・・。
誰も救われない、後味の悪い作品でした。

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 09:06 | category:    歌野晶午 |
# 波形の声
評価:
長岡 弘樹
徳間書店
¥ 1,728
(2014-02-14)

JUGEMテーマ:小説全般

波形の声 / 長岡弘樹(徳間書店)

評価 ☆☆☆


人間の悪意をとことん見据えたまなざし、
心温まるどんでん返し、そして切なさはビターに!
奥の深い長岡ミステリー最新作7篇。



初読みの作家さんです。今、注目されている方ですよね。

7編のミステリー短編集。
読みやすいのでサクサクと読めますが、今一つかな〜。
途中で犯人(結末)がわかっちゃうのもあれば、
わからないままに結末まで読んでも、「ああ、そうなんだ」程度で大きな驚きがない。
ミステリーのわりにハラハラドキドキ感がありません。

よかった作品を強いて1つあげるとすれば「黒白の暦」。
社内の女性同士の無言の争いを描いていて、
女性として大いに共感できる部分があったし、
最後には胸にあたたかいものが残りました。

あえてそうしているのかどのお話にも
人と競うことや優越をつけることが出てきた気がする。意図的?





 
| comments(0) | trackbacks(1) | 13:39 | category: 作家名 な行 |
# 祈りの幕が下りる時
評価:
東野 圭吾
講談社
¥ 1,836
(2013-09-13)

JUGEMテーマ:小説全般

祈りの幕が下りる時 / 東野圭吾(講談社)

評価 ☆☆☆


夢見た舞台を実現させた女性演出家。
彼女を訪ねた幼なじみが、数日後、遺体となって発見された。
数々の人生が絡み合う謎に、捜査は混迷を極めるが…。



加賀恭一郎シリーズとは知らずに読み始め、
加賀が出てきた途端「ああ、あのシリーズなのか」と知りましたw
ミステリーというよりは親子の絆を描いた作品。
東野さんお得意のテーマですね。

このタイトルをつけた時点で、
疑うべきなのは誰なのかが読者にはなんとなくわかってしまう。
親子の絆を描いていることに間違いはないのだけど、
殺された人達は殺されるほどのことはしてないのに・・・・と思ってしまうともうダメ。
この親子の不幸に同情することができませんでした。

そしてこの作品は本筋とは別に「原発」も大きなテーマであるといえます。
原発での作業は被ばくで命を縮める可能性のある危険な職業なのに、
扱いはまるで日雇いの労働者のよう。
孫請けひ孫請けのようないいかげんな下請け会社ばかり。
こういう状況で働く人々を描いたことで、社会への問題提起とも受け止めました。

事件そのものよりも、加賀の母親のエピソードが登場することで
加賀の過去に触れることができた。その部分では評価したいです。
ラストでは加賀を看護師の金森登紀子さんとのこれからも予感させ、
2人の関係からも今後目が離せませんね。
だがしかし、読者をうならせるようなトリックもなく、新鮮さも感じなかったのは事実。
綿部俊一・浅井忠雄・横山一俊・越川睦夫・・・もう何が何だかわからなくなるし〜(>_<)
つまらなかったとは言わないけど、面白いとはっきり言えるほどでもなかったです。
| comments(0) | trackbacks(1) | 13:52 | category:    東野圭吾 |
# それもまたちいさな光
JUGEMテーマ:小説全般

それもまた小さな光 / 角田光代(文春文庫)

評価 ☆☆☆


デザイン会社に勤める悠木仁絵は35歳独身。
いまの生活に不満はないが、結婚しないまま一人で歳をとっていくのか悩みはじめている。
そんな彼女には「35歳までお互いが独身だったら結婚しよう」と約束した駒場雄大という幼馴染がいる。
お互いが独身のまま35歳を迎え、あの約束を果たそうとする雄大だが、
仁絵には雄大と宙ぶらりんな関係のまま恋愛に踏み込めない理由があった。



35歳・・・・。
仕事の上でももう若くはないし、
出産のタイムリミットも近付いて、結婚にも焦りが出る微妙なお年頃ですね。
仕事にも結婚にも欲どころか不満もない女性であっても、
自分の現状にあれこれと思いをはせる時期だと思います。

35歳の仁絵は「お互いに35歳まで独身だったら結婚しよう」と約束した幼馴染との関係に迷っている。
悪いヤツじゃないけど、
幼馴染であるが故にお互いの性格もこれまでの恋愛も知りすぎていて、
ときめかないからだ。
結婚・・・・ときめきは必要ない?
ときめかない相手だからうまくいかないのではなく、うまくいかせる。
それが地に足のついた生活だ。なんだか寂しいけど、それが現実。
百人が反対しても止められない激しい恋よりも、
他人である誰かとどうでもいい毎日を繰り返していくことの方がよほど大きな、
よほど強い何かがあるのかもしれない。

つまりは、そういうことがいいたい小説。あまりにリアル。
小説を読んでいるのに、
リアルに自分のそばにいる誰かの人生観や結婚観を聞かされているようなそんなかんじがした。

竜胆美帆子がラジオで意味のないくだらないことを話すことをモットーにしているように、
人生なんて意味がなく、くだらないことの繰り返し。
まぁ、それはわかるよ?
それでも飽きることなく、
日々を暮らしていける気楽なパートナーはたしかに心地かもしれないけど、
だけど私は相手にずーっとときめいていたい。
ときめきながら、心地よい単調な日々を過ごすのだって可能だと思うんだよね。
そういう人と一緒にいたい。
と、いう部分でなんとなく納得できなくて、この本の☆の数は3つです。

でも、激しく共感できたのは、
ものすごく好きな相手にわがままや強気なアピールはできないという部分。
「こんなに好きでなかったらどんないよかっただろう。
 好きじゃなければこちらからがんがん連絡して、
 時間作ってよ、とか言えたかもしれない。
 図々しくも馴れ馴れしくもできただろうにな。
 嫌われたっていいんだから。」というところ。
まだ2人が恋愛関係(もしくはそれ以前)であるならばそうなんだよな〜、となんだか切なくなりましたわ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:27 | category:    角田光代 |
# 私に似た人
評価:
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JUGEMテーマ:小説全般

私に似た人 / 貫井徳郎(朝日新聞出版社)

評価 ☆☆☆☆


小規模なテロが頻発するようになった日本。
ひとつひとつの事件は単なる無差別殺人のようだが、
実行犯たちは一様に、自らの命をなげうって冷たい社会に抵抗する“レジスタント”と称していた。
いつしか人々は、犯行の方法が稚拙で計画性もなく、その規模も小さいことから、
一連の事件を“小口テロ”と呼びはじめる―。



未来に希望の抱けない若い貧困層による「小口テロ」が相次ぐ日本のお話。
若い貧困層がどんどん増えて、人とのかかわりも少なくなり、
ネットでしか人と繋がれない人も多くなっていた今、
誰でもいい、計画性もない、ただ自分の命や未来を投げ打ってでも社会への不満を示したい・・・・。
一歩間違えば似たような行動を起こしてしまいそうな崖っぷちの人はたくさんたくさんいる。
これはフィクションだでは済まされない気がしました。

連作短編のような形になっていて、
テロを起こすもの・被害者・被害者の元恋人・テロ犯の家族・・・など様々な角度で語られます。
それにしても語り手の人数多すぎ?なかなか話が進まなくてイライラ。
語り手の人数減らして、もっと短くまとめてもよかったような気がします。

モヤモヤを抱えたままやりきれない思い出生きる若者をネットで見つけ出し、
言葉巧みに小口テロへと誘導する《トベ》という人物がカギを握っているのですが、
最後の最後で《トベ》の正体までたどり着くんだけど、この正体がなんとも・・・・。
ポカ〜(o'д'o)〜ン...でした。
読者に《トベ探し》もさせてくれない予想外の結末ってどうなんでしょ?
ちょい拍子抜け。

面白かったけど、もっとコンパクトにできたこと。
そして、読者をまったく置いてけぼりにした展開が残念なので☆は4つで。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:30 | category:    貫井徳郎 |
# Burn.‐バーン‐
評価:
加藤 シゲアキ
KADOKAWA/角川書店
¥ 1,404
(2014-03-21)

JUGEMテーマ:小説全般

Burn.‐バーン‐ / 加藤シゲアキ(角川書店)

評価 ☆☆☆☆


天才子役・レイジが出会ったのは、
魔法使いのようなホームレスと愛に満ちた気さくなドラッグクイーン。
人生を謳歌する彼らに触れ、レイジは人間らしい心を取り戻し、
いつしか家族のようにお互いを慈しむようになる。
だが幸せな時は無慈悲で冷酷な力によって破られて・・・・。


アイドルグループ・NEWSの加藤くんの小説3作目です。
以前読んだ「ピンクとグレー」でも感じたけど、アイドルとは思えないクオリティ。
タレントで小説書く人はけっこういるけど、この子はイケると思う。
アイドルということを抜きにしても、今後も成長を追いかけたい作家です。
でも、うまさは認めるんだけど、いつも世界観が古臭いのはどうして??ww
2作目は読んでないからわからないけど、2作目もそんなかんじなのかなぁ。

物語に入り込むまでにやや時間がかかりますが、
魅力的なキャラクターであるホームレスとドラッグクイーンが出てきてからは一気に引き込まれました。
若干、説明不足な点もありますが、
1作目に比べて確実に腕をあげていると思います。

芸能界にいる方なので、身近な世界を舞台に描くのは当然かと思います。
いつかは外の世界に視野をうつした作品も書いてくれることを期待しつつ、
今はそこは目をつぶりましょう。
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:03 | category:    加藤シゲアキ |
# 本屋さんのダイアナ
評価:
柚木 麻子
新潮社
¥ 1,404
(2014-04-22)

JUGEMテーマ:小説全般


本屋さんのダイアナ / 柚木麻子(新潮社)

評価 ☆☆☆☆☆

「大穴(ダイアナ)」という名前、金色に染められたバサバサの髪。
自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、

本の世界と彩子だけが光を与えてくれた。
正反対の二人だけど、私たちは一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に――。
自分を受け入れた時、初めて自分を好きになれる!
試練を越えて大人になる二人の少女。最強のダブルヒロイン小説。



こういうタイプの小説を私が嫌いなはずはなく・・・・ドンピシャでした。

「赤毛のアン」へのオマージュとも言える作品。


ご都合主義で予想の範囲内の展開でもいいのです。

私もダイアナや彩子のように本が大好きだから、つい2人に自分の姿を重ねてしまいました。

本でつながれる友達・・・1人もいないな。そんな意味では2人が羨ましいです。


育った家庭環境が違いすぎたけど、本という共通の趣味を持ち、仲良しだった2人。

しかし、ある日の小さな出来事が2人を10年も引き離すこととなります。

唯一無二の大親友だっただけに、素直に元に戻れないもどかしさ。

でも、ずーっとお互いの中でそれぞれの存在は大きくて、

会わなくなっても心の中では激しく意識しあう2人に胸がキューッとなりました。

彩子が大学にはいったあたりから、ちょっと物語の雰囲気が変化したように思えたけど、

殻を破って共学の大学へ入り、新しい世界へ踏み出したのだから・・・と考えると

まぁこれもアリかな?一応の納得はできるかな。


「赤毛のアン」「若草物語」「小公女」・・・・。

このあたりの少女小説に夢中になった人なら楽しめると思います。

中学生くらいの女の子にも読んでほしいですね。


ところで私も「アン」のシリーズはすべて読んだけど、

後半になるにつれてそんなにつまらなくなるんだっけ??

私はアンの次男のウォルターが大好きだし、そんな感想は持たなかったけど・・・・。

再読してみる必要がありそうですな。

| comments(2) | trackbacks(1) | 16:53 | category:    柚木麻子 |
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