隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 男ともだち
評価:
千早 茜
文藝春秋
¥ 1,674
(2014-05-26)

JUGEMテーマ:小説全般
  
男ともだち / 千早茜(文藝春秋)

評価 ☆☆☆☆☆


関係のさめた恋人と同棲しながら、遊び人の医者と時々逢いびき。
仕事は順調なのに、本当に描きたかったことを見失っている―。
京都在住イラストレーター神名葵29歳の熱くてダークな疾走する日常。



直木賞の候補になった作品ということで読んでみました。
はじめて読む作家さんだけど、
あまりの文章のうまさに序盤からグイグイ引き込まれました。
久々にいい作家に巡り合えて嬉しい!今後もこの人の本を追いかけたいです。

作中に「男ともだちか。なんかずるい響きだな」というセリフがある。
うーん、たしかにその通り。同性の友達とは違う、かといって恋人でもない。
非常に微妙な位置にある関係性。
主人公の男ともだち・ハセオは女にとってファンタジーみたいな男。
作中で2人の関係を「それって永遠じゃない。求めるものが何もなくても離れないなんて。すごい信頼関係だわ。」と表現した人がいるけれど、
恋愛感情はない。何も求めない。でも離れない。信頼し、わかりあえている男・・・・。
自分の彼女にこんな男ともだちがいたら、どんな男だってやきもきするはず。
ある意味、女にとってこういう男は恋人以上に絶対的な存在。

恋愛でも単純な友情でもないから関係性には悩む。
でも絶対に寝ない。だって決定的なことさえなければずーっと一緒にいられるから。
それが周囲には子供が傷をなめあうようなおままごとに見えても構わない。
そんな男が1人いれば、女はそれだけで自信と安らぎを手に入れられる。
ただ見守ってるくれる・・・・その存在の大きさは女にとって計り知れない。

同棲中の彼がいるのに医者と不倫。
その上にこんな男ともだちがいる。
夢をつかんで、仕事は順調。
主人公は決して好きなタイプの女性ではなかったし、
恋愛観にも共感は持てないけど
やっぱり心の底では彼女が羨ましかった。
何よりも、ハセオの存在が羨ましくてたまらなかった。

この作品を男性はどう読むのか。ぜひ男性の意見も聞いてみたいです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:54 | category:    千早茜 |
# 天の梯
JUGEMテーマ:小説全般

天の梯 / 高田郁(角川春樹事務所)

評価 ☆☆☆☆☆


『食は、人の天なり』――医師・源斉の言葉に触れ、料理人として自らの行く末に決意を固めた澪。
どのような料理人を目指し、どんな料理を作り続けることを願うのか。
澪の心星は揺らぐことなく頭上に瞬いていた。
その一方で、吉原のあさひ太夫こと幼馴染みの野江の身請けについて懊悩する日々。
四千両を捻出し、野江を身請けすることは叶うのか! ?
「みをつくし料理帖」シリーズ、堂々の完結。


「みをつくし料理貼」、ここに堂々の完結。
この作品は歴史モノが苦手な私が初めてハマった歴史小説シリーズでした。
登場人物も読者もみんなが幸せになれる、納得満足のラスト!
前作を読み終えたすぐ後は解決していない問題が多すぎて、
あと1冊でどうまとめるんだよ!高田さん!と心配でしたがこんなにきれいにまとめるとは!
もう交わらないと思っていた小松原さんと澪の人生もきれいに決着をついています。
高田さん、本当に本当にありがとうございました。

あさひ太夫の身請け金・4千両という途方もないお金を工面するべく奮闘する澪・・・。
どんな手段で澪がこのお金を工面するかは今作の焦点でもありますが、
そのテがあったか!あっぱれ!一本取られた!と小気味のいい展開に思わずニヤリッ( ̄ー ̄)

自分のことよりも、そばにいる人達の幸せをいつも願っているこの物語の登場人物達が本当に大好きでした。
これでお澪ちゃんたちとはお別れか~、としょんぼりしていたら、
それぞれのその後を描く番外編が刊行されるよう予定とのこと。
本当のお別れはまだ少し先なのですね。楽しみに待っています☆
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:07 | category:    高田郁 |
# 昭和の犬
評価:
姫野 カオルコ
幻冬舎
¥ 1,728
(2013-09-12)

JUGEMテーマ:小説全般

昭和の犬 / 姫野カオルコ(幻冬舎)
 
評価 ☆☆☆



柏木イク、昭和33年生まれ。いつも傍らに、犬。
犬から透けて見える飼い主の事情。



直木賞受賞作です。
姫野カオルコさん、久しぶりに読んだけど、これで直木賞取ったのか〜。
ちょい以意外です(^_^;)

昭和30年代に滋賀県に生まれた主人公・イク。
大きく変貌する時代を描きながら、
あたたかい家庭に恵まれず、決して幸せとはいえない人生を送るイクを綴ります。
犬はただ彼女の人生を通り抜けていくだけ・・・・。
犬と飼い主のハートフルストーリーみたいな作品ではありません。

大きな事件もなく、淡々と過ぎていくイクの人生。
なんだかね、読んでてずーっと悲しかった。
イクの孤独がヒシヒシと伝わる。
でも、おそらくイクは自分を孤独だとも不幸せだとも思っていない。それが悲しい。
家庭環境に恵まれなかったから犬だけを溺愛したというわけでもなくて、
イクは犬に対してもクール。
何かに熱く情熱を傾けることもないこの人の生き方は、
この家庭環境が作り上げたもの。
ただ与えられた環境で淡々と生きている姿・・・
これを決して不幸だとは描いていなかった。それがよかったです。






 
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:56 | category:    姫野カオルコ |
# ホテルローヤル
評価:
桜木 紫乃
集英社
¥ 1,512
(2013-01-04)

JUGEMテーマ:小説全般

ホテルローヤル / 桜木紫乃(集英社)

評価 ☆☆☆☆


湿原を背に建つ北国のラブホテル・「ホテルローヤル」。
訪れる客、経営者の家族、従業員はそれぞれに問題を抱えていた。
閉塞感のある日常の中、男と女が心をも裸に互いを求める一瞬。
そのかけがえなさを瑞々しく描く。



ラブホテルが舞台の話なんて聞くと、色っぽい小説なのかな?と思いきや、
まったくそんなことはありませんでした。
どちらかというと、生きていく上での閉塞感を描いたという印象です。
その裏暗いかんじが、ラブホテルという存在の放つ印象とうまく調和しています。
どうにもならない暗さが心に沁み入りました。

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:33 | category:    桜木紫乃 |
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