隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 恋歌
評価:
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講談社
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(2013-09-27)

JUGEMテーマ:小説全般

恋歌 / 朝井まかて(講談社)

評価 ☆☆☆☆



幕末の江戸で熱烈な恋を成就させ、天狗党の一士に嫁いで水戸へ下った中島歌子。
だが、尊王攘夷の急先鋒である天狗党は暴走する。
内乱の激化にともない、歌子は夫から引き離され、囚われの身となった。
樋口一葉の歌の師匠として知られ、明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰し一世を風靡した歌子は、
何を想い、胸に秘めていたのか。落涙の結末!



(感想)

直木賞受賞作です。
失礼ながら今回の受賞ではじめてお名前を聞く作家さんでした。

樋口一葉の師である歌人・中島歌子が主人公。
幕末の江戸で水戸の若い藩士に恋をして嫁いだのだが、2人には幸せな時間は少なく、
離ればなれになり、歌子は囚われの身に・・・・。
女性の視点で描かれ、恋愛が絡んでいるから
時代物が苦手な私でもスーッと入っていけたのかもしれない。
自我の強いお転婆なお嬢さんが恋をし、嫁ぎ先で苦労をし、
凛とした一人前の奥様となっていく姿は胸を打つものがあります。
タイトルがタイトルだし、恋愛ものかなと思われそうだけど、そんな軽いものじゃない。
時代に翻弄され、でも心は決して揺るがなかった強い女性のお話でした。

特に歌子が最後に詠んだ歌が胸にしみます。
 「君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ」
恋することを教えたのはあなたなのだから、どうかお願いです。忘れ方も教えてください。

あー、改めて自分の歴史オンチっぷりが悲しい。
歴史的な背景を理解していれば、時代小説はもっともっと面白いと思う。
歴史を知らない私は絶対に損してる。
だからここはちょっと真剣に勉強してみようと思って、簡単な本を買ってきました。





 
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:46 | category: 作家名 あ行 |
# 美雪晴れ

 美雪晴れ / 高田郁(ハルキ文庫)

 評価 ☆☆☆☆


名料理屋「一柳」の主・柳吾から求婚された芳。

しかし芳は、なかなか承諾の返事を出来ずにいた。

一方で澪も、幼馴染みのあさひ太夫こと野江の身請けについて、

また料理人としての自らの行く末について、懊悩する日々を送っていた…。

いよいよ佳境を迎える「みをつくし料理帖」シリーズ。幸せの種を蒔く、第九弾。



(感想)


芳と澪の生きる道が分かれ、それぞれの道を歩き始める第9弾。

野江ちゃんを身請けするという大きな目標に向かい、澪がとうとう動き出しました。

そして、自分はどんな料理人になりたいのか、

料理の道で人生の花を咲かせるとは一体どういうことを指すのかを真剣に考え始めるのですが、

澪本人ですらはっきりとわからなかったその答えを

とうにわかっていたのが「あの人」というのが気にかかる・・・。

うーん、次号で進展、あるのでしょうか??

今回は物語の流れに刺激がなく、平坦に進んだ印象なので☆は4つで。


小さな喜びもみんなで分かち合い、

いつも誰かの幸せを思って生きているつる家の人たちが大好きです。

自分もこうありたい・・・このシリーズを読むたびにその思いを強くします。


なんと最後に 悲しいお知らせが・・・・。

次号10弾が最終巻になるそうです(>_<)悲しいなぁ。楽しみだけど悲しい。

今、残っている問題をラスト一冊でケリをつけられるのかと少々心配ですが、

みんなの幸せを祈りつつ次号を待ちます。澪、絶対に幸せになるんだぞ〜!!


鼈甲珠・・・食べてみたい。

| comments(0) | trackbacks(0) | 12:12 | category:    高田郁 |
# とことん! - とんかつ道

 とことん! - とんかつ道 / 今柊二(中公新書ラクレ)


 

 評価 ☆☆



今日は上野、明日はファミレス。定食評論家がとことん食べ歩く。

かつサンド、ハム カツ等のバリエーション。とんかつ早慶戦。

長崎トルコライス等のご当地カツ。果て はハワイでとんかつラーメン。

お新香、みそ汁、キャベツなど脇役陣もチェック。カ ツ文化を掘り起こす!

100店超掲載。



(感想)


たまにエビフライやカキフライに浮気するけど、

基本はすべて「とんかつ」。
掲載店舗100店超えの非常にボリューミーな内容でした。


東京近郊のお店が多く、

私の知らない店ばかり・土地勘がないというのも原因かもしれませんが、
正直、どのお店がどうなのかがわからなくなります。
どこも美味しそうだったけど印象に残っているお店がない。
メニューがすべて「とんかつ」なせいか、お店の個性が見えてこない本です。


あと、文章。
気取らなくて読みやすい文章ではあるんだけど、軽い。
読者をとんかつの世界に引きこむテクニックはないと感じました。
“味も普通に美味しい”って表現が出てきたのには驚き!
“普通に美味しい”・・・・プロが使っていい表現ではありません(^_^;)


体調が万全でない中、ヘビーなメニューに挑み続けた努力は認める。
でも、頑張りすぎたかな。掲載店舗はこんなに多くなくていい。
もっと店の個性を感じさせ、カラー写真の多い本にまとめた方がよかったかも。
胸やけしそうでーす。ごちそうさまでした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 12:12 | category: 作家名 か行 |
# M8
評価:
高嶋 哲夫
集英社
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(2004-08-26)

  M8 / 高嶋哲夫(集英社)

  

 

 評価 ☆☆☆☆


東京をマグニチュード8の直下型大地震が襲う!!

若手研究者が東京直下型大地震を予知。

阪神大震災を同じく体験した三人の同級生たちそれぞれの葛藤を軸に、

首都大地震を最新の研究を反映して完全シミュレーションした書き下ろし。



(感想)

あまりにもリアリティがあります。
主な登場人物のほとんどが

阪神大地震で大きな被害を受けた過去を持つという設定ですし、
東日本大地震や阪神大地震を経験した方は読むのがつらいかもしれません。
登場人物の心理や行動が響き、打たれます。


地震の研究をするって難しい。
研究の甲斐があり、予測通りに地震が来たとしても嬉しくはないだろうし。
研究の結果を信じて、人々が動いてくれたら被害は軽減されるのだろうけど、

れたら袋叩きよ?
日本経済に大きな損失を与えてえらいことになる。
それでも、「地震は来ます」って断言できる?これはなかなかに難しい問題ですね。


こういう作品を読むことで、
私たちも常に危機感を感じ、その時のための備えをしておくべき。
たしかに大地震が起きてしばらくの間は備えもしっかりしておいたけど、
最近はずいぶんといい加減になっています(>_<)反省せねば!!

| comments(0) | trackbacks(0) | 10:52 | category: 作家名 た行 |
# 漁師の愛人
評価:
森 絵都
文藝春秋
¥ 1,365
(2013-12-16)

 漁師の愛人 / 森絵都(文藝春秋)


 評価 ☆☆☆☆

 

不倫の恋の末、脱サラで漁師となった男と暮らす決意はしたものの、

「妻」から時折かかってくる長電話と、

身内意識の強い閉鎖的な村で敵意にみちたまなざしを向ける海の女たちに悩まされ、

閉塞に覆われた田舎の愛人生活を描く「漁師の愛人」。

東日本大震災から一か月足らず。

被災地だけでなく、東京でも小さいながらも変化する日々の様子を描く「あの日以降」。

「少年とプリン」「老人とアイロン」「ア・ラ・モード」の3編からなる“プリン3部作”を収録。



(感想)


プリン三部作はただただかわいかった。

こういうことに熱くなれる男性、好きです。

どれもとても短い作品なのだけど、出てくる男性が必ずプリンのことでキレるw

もしかしたらこれ、主人公の男性はみな同一人物なのかもしれない。


表題作の「漁師の愛人」。

隣人の顔すらわからない都会に住む人には理解しがたい世界かもしれない。

けど、田舎ではたしかにこういう意識が強く存在する。

プライバシーなんてないも同然。変わったことをしている人ははじかれる。

その中でも自分を見失わない春子さんはかっこよかった。

田舎って案外、こんなふうに外から来て違う目線でその土地を見た人間が、

地域のためになる様な大きな気付きをもたらすことがある。

そうなればコミュニティーの一員として受け入れられる。

自分が愛した男が生き生きと輝ける場所はここなのだもの、ふんばってほしいものです。


震災後の東京でルームシェアをして暮らす女性達を描いた「あの日以降」。

あの震災で被災者の方々はたしかに大変な思いをされたけど、

被害の少なかったところの人達もそれぞれに生活の変化はあったはず。

そこへ目をつけた震災小説ということではなかなか斬新だったと思います。

| comments(0) | trackbacks(1) | 09:57 | category:    森絵都 |
# 妻が椎茸だったころ
評価:
中島 京子
講談社
¥ 1,365
(2013-11-22)

 妻が椎茸だったころ / 中島京子(講談社)


 評価 ☆☆☆☆


「人」への執着、「花」への妄想、「石」への煩悩・・・。

ちょっと怖くて愛おしい五つの『偏愛』短篇集。



(感想)

「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」「ラフレシアナ」

「妻が椎茸だったころ」「蔵篠猿宿パラサイト」「ハクビシンを飼う」。

5つの短編のタイトルがどれも印象的で思わず“読みたい!”と思わせます。うまい!

そしてどのお話の内容もタイトルに負けないインパクトのあるお話でした。


5つに共通するのは「執着心」。

そこはかとない怖さがあり、不思議な感覚に襲われる読後感。

なんだか現実をよく似ているけど、

どこかがずれている異世界に誘われるような感じです。

5つともきれいなオチがあるのがまたいいんだな。

思わずにやりとしちゃいました。


この短編集はずべて小説現代に載った作品をまとめたものですが、

5つをまとめて読むことで意味があるような気がする。

より一層の深みと不思議さが増すというか・・・。


| comments(0) | trackbacks(0) | 15:17 | category:    中島京子 |
# 金米糖の降るところ
評価:
江國 香織
小学館
¥ 1,680
(2011-09-28)

 金米糖の降るところ / 江國香織 (小学館)


 評価 ☆☆☆



ブエノスアイレス近郊の日系コロニアで育った佐和子とミカエラの姉妹は、

少女の頃からボーイフレンドを<共有すること>をルールにしていた。

留学のため来日した二人だったが、誰からも好かれる笑顔の男、達哉と知り合う。

達哉は佐和子との交際を望み、彼女は初めて姉妹のルールを破り、

達哉と結婚する・・・。

しかし20年後、佐和子が達哉に離婚届を置いて、

年下の男性とともにアルゼンチンに戻ってきて・・・・。



江國さんの文体、描写の繊細さが大好きです。

あえて書かなくてもいいようなことを書くことで、

さりげなく物語の世界を広げている。

自分の想像力では想像できないような細かな美しい部分まで、

どっぷりと世界に浸れます。



淡々と読み進めることができたけれど、

アジェレンの純粋な恋心以外にはまったく共感ができなかった。

不倫の恋ではあるけれど、

ここに出てくる人たちの中でちゃんと素直にまっすぐ恋をしていたのは

おそらくアジェレンだけ。

ミカエラなんて「人の所有物は欲しい!」と思うようなそんな女にしか見えないし、

達哉への執念だって、佐和子が彼と結婚したからでしょ。怖い人。

でもこんなに共感できないのに、それでも引き込まれちゃうのはさすが。

やっぱり、江國さんの文章の「読ませる力」なのかなぁ。


姉妹の<ルール>。怖い姉妹。

だけどそれってつまり、

誰にも渡したくないほどに激しく愛した男性はいなかったってことでしょ?

佐和子にとって唯一のそれが達哉だったのかもしれないけど、

これ以上愛するのがつらいから好きじゃない男の人を選ぶって理解できない。

たぶちん、全然魅力ないしそのへんに疑問が残る。

私が子供すぎるのかなぁ・・・。

それにしても達哉が帰国し、

所沢の自宅で門を開けた瞬間に目にしたもののシュールさは強烈だった。

ちょっと忘れられないシーンになりそう。


佐和子の選択の不可解さがこの作品の肝なのだろうけど、

私はどうせならもっと胸を締め付けられるように切ない恋愛小説が好き。

私には到底理解のできない世界だった。

| comments(0) | trackbacks(0) | 12:20 | category:    江國香織 |
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