隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 傷つく人、傷つける人
評価:
信田 さよ子
ホーム社
¥ 1,470
(2013-07-26)

 傷つく人、傷つける人 / 信田さよ子

 評価 ☆☆☆


長年カウンセリングの現場に立つ著者が「傷つく」という言葉をキーワードに、

家族、友人、職場などの、さまざまな人間関係にひそむ問題とその対処法を探る。


私が求めていたのは、

他者による傷の明確な原因のわかるケースではなく、

自分や社会の現状に悩んで勝手に傷ついて苦しんでる人のケースに触れる本だったので、

この本の内容は求めていたものとはちょっと違っていたけれど、

うなづける点も多く、読んで良かったと思える本でした。


「傷つくこと」と「傷つけられたこと」の違い。

「傷ついた」と感じている人は自分が焦点になっているが、

「傷つけられた」と感じている人は他者への怒りを感じている。

この違いに愕然としたし、

最近の傾向として「傷つけたくない」と思う人が増えてきているというのにも納得。

どうやら私はこの「傷つけたくない」という傾向が強いのかもしれない。

だからいつも行動に出る前に悩んでしまう。で、結局何もできずに終わってしまう。

これが私の人間関係をめんどくさくしているのだとわかった。


「過去は水に流せない」。

だからといって、忘れられない自分はダメなのだとは考えてはいけない。

そうならないために大切なのは「誰かに聞いてもらう」こと。

批判されずに、黙って聞いてもらうこと。何回も何回も聞いてもらうこと。

誰かの力を借りて、何があったのかをきちんと自分の中で整理すること。

これをすることによって、経験が過去になっていく。


「よい人間関係を築く」

自分を否定しない友達をできるだけ多く作る。

コンパートメントをたくさん持つ。


ちょっと書きだしてみただけでも、得るものは多かった。

これを自分にどう当てはめて、変わっていけるかだと思う。

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:25 | category: 作家名 な行 |
# 死神の浮力
評価:
伊坂 幸太郎
文藝春秋
¥ 1,733
(2013-07-30)

 死神の浮力 / 伊坂幸太郎

 評価 ☆☆☆☆


1年前、ひとりの少女が殺された。

容疑者は近所に住む少女の家族とは顔なじみの青年。

しかし、証拠不十分で彼は無罪放免。

だが、少女の両親は間違いなく青年が犯人であることを知っていた。

そんな両親のもとに、あの死神・千葉がやってくる・・・。



「死神の精度」の続編ですね。で、しかも長編!

前作が短編集だったので、長編と気づいたときには驚き!

そのせいかな、なーんか長いような間延びしてるような印象がしたのは・・・?

面白いんだけど、なかなか進まねーっていうかね、そんな気がした。


復讐に人生を捧げる決意をした夫婦の話しなんて、

これ以上ないほど暗いはずなんだけど、

千葉のすっとぼけたようなキャラ(でも、本人は大まじめ)のおかげで、

クスッとさせてくれるようなユーモアと軽さが生まれている。実に痛快。

でも、いたるところに伏線がちりばめられているし、気も抜けない!

ママチャリで疾走する場面は緊迫の場面のはずなのに笑えました。

こんなにダークなテーマなのにこんなに笑えるなんて、やっぱすごいです。

| comments(0) | trackbacks(1) | 16:40 | category:    伊坂幸太郎 |
# Deluxe Edition
評価:
阿部 和重
文藝春秋
¥ 1,470
(2013-10-28)

 Deluxe Edition / 阿部和重(文藝春秋)

 評価 ☆☆☆


米軍によるビンラディン殺害、若者による団塊世代おやじ狩り、津波、原発事故・・・。

現実をアグレッシブに取り入れつつも誰も見たことないシュールでブラックな世界。

9.11‐3.11。時代を撃ち抜く超小説集。  


阿部和重の最新短編集。

いろんなところで発表したものを1つにまとめた作品のようですね。

いかにも阿部さんな世界観。

物騒でウィットに富んでいて、センスのいい文章を書く人だと思う。

うーん、でもやっぱり阿部さんは長編の方が好きです。

1つ1つのお話しが短すぎてもったいなかった!



| comments(0) | trackbacks(0) | 13:31 | category:    阿部和重 |
# 調律師
評価:
熊谷 達也
文藝春秋
¥ 1,838
(2013-05-24)

 調律師 / 熊谷達也(文藝春秋)

 評価 ☆☆☆


「音」を「香り」として感じる身体。それが、彼女が私に残したものだった―。

仙台在住の直木賞作家が、3.11の後に初めて描く現代小説。


ある出来事がきっかけで、

ピアノの音を聞くと「音」だけでなく「香り」も感じることができるようになった調律師の喪失感と再生までを描きます。


熊谷達也さんは宮城県出身の作家なので、

今作には震災の様子もしっかりと描かれています。

震災があったのはこの作品の第3話を書き始めようとしていた頃だったということで、

あの出来事がこの作品の流れもテーマも大きく変えてしまったのだそう。

たしかに途中からストーリーが急転した印象は否めませんが、

作家としていま書くべきものは「これ」だ。

熊谷さんはきっとそう思ったに違いない。その気持ちは十分に感じられます。


主人公はある出来事をきっかけに喪失感を抱えて生きて来た人だけど、

震災をきっかけに前を向いて歩けるようになった。

そうやって苦難を乗り越えて、

さらにもう一段、強くなれるってたくましいよね。

私もそんな強さが欲しいよ。


ピアノやクラシックに詳しくないと「?」な部分も多い作品でしたが、

読書の秋に美味しいコーヒーでも飲みながら読むにはぴったりの作品じゃないかなぁ

| comments(0) | trackbacks(0) | 14:12 | category:    熊谷達也 |
# 空飛ぶ広報室
評価:
有川 浩
幻冬舎
¥ 1,680
(2012-07-27)

JUGEMテーマ:小説全般

 空飛ぶ広報室 / 有川浩(幻冬舎)

 評価 ☆☆☆☆


不慮の事故で戦闘機パイロットの夢が破れた空井大祐が転勤した先は
防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室。
待ち受けるのはひと癖もふた癖もある先輩たちだった・・・。


不慮の事故でパイロットの夢が絶たれた空井大祐と
報道記者からニュース番組のディレクターに移動させられた稲葉リカ。
お互いが傷つけあい、認め合いながらも、
自分が新たに置かれた環境で成長していく物語です。

自衛隊の隊員さんの「志」にただただ感服するばかり。
自分たちの職業が世間一般からどのように思われているのか理解しながらも、
それでも有事には救助にかけつけてくれる。
命をかけて、国と国民を守る職業に就いている。
でも、本当は「普通の人達」。
彼らへの意識を改めなきゃと強く思いましたね。

有川さんにはどうしても激甘な会話やシチュエーションを期待しちゃうけど、
今回はそれは控えめ。
あー、この2人、将来的にはどうなるんだろう。気になるな〜。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:20 | category:    有川浩 |
# 働かないの れんげ荘物語
JUGEMテーマ:小説全般

 働かないの れんげ荘物語 / 群ようこ

 評価 ☆☆☆☆

48歳になったキョウコは、まだ古いアパートのれんげ荘に住んでいた。
相変わらず月々10万円しか使えない貯金生活者のままで
マイペースな暮らしを続けている。
季節を感じ、丁寧な暮らしを大切に生きるキョウコの愛おしい日々は続く・・・。



まさか「れんげ荘」に続編があったとは!
いいですよね〜、このゆるい感じ。
働かずに、月に10万円で貯金を崩しながら生きていく
この生活にはとっても憧れるけど現実はなかなか出来るものではない。
キョウコさんは自分に厳しいところがあるから可能なんだよね。

普通に暮らしてるなら、マイペースに過ごしてる今の生活に不満はない。
なのにキョウコさんは、母親との確執を思い出したり
他人と自分を比較したりして、自分で気になる問題を作り出している。
要はヒマだから余計なことを考える時間がある!
これは今の私にも当てはまることだからハッとしました。
何もないところに自ら問題を発生させる必要などない。
キョウコさんみたいに刺繍でもなんでもいい。
何かをしていないと人間、心も体もダメになっちゃうね。

キョウコさん、このまま隠居生活を続けるのでしょうか?
これはこれでたしかに幸せの1つの形なのだろうけど、
もう一歩、踏み出してもいいような気がする。
続編がまたあるならぜひ読みたいです。

| comments(0) | trackbacks(0) | 11:33 | category:    群ようこ |
# 夢を売る男
評価:
百田 尚樹
太田出版
¥ 1,470
(2013-02-15)

JUGEMテーマ:小説全般

 夢を売る男 / 百田尚樹(太田出版)

 評価 ☆☆☆☆



敏腕編集者・牛河原勘治の働く丸栄社には、本の出版を夢見る素人が集まってくる。
しかし、牛河原が彼らに持ちかけるジョイント・プレス方式とは―。
現代人のふくれあがった自意識と
いびつな欲望を鋭く切り取ったブラックコメディー。



文章を書くのが好きな人ならば、
一度くらいは「自分の本を出してみたい」と思ったことがあるはず。
そのささやかな夢に忍びよってくるのが丸栄社という出版社です。
「自分はこのままでは終わらない」「評価されたい」という意識に訴えてくるのが
ジョイント・プレス方式という出版方法。
これは出版社と著者が共同でお金を出し合い、本を出版するというシステム。
しかし、この著者負担の費用は本来かかるはずの費用に比べると相当高く、
ぼったくりもいいとこ!!
この会社はそのぼったくり商法で大きくなった会社なのです。

それにしても「夢を売る男」とはよく言ったもんです。
お金を多く取られたかもしれないけど、
騙された人たちは全員、夢の実現や自信を手に入れた。
そのお金でそれを得たと考えれば安いものなのかもしれない。

最後の1行がたまりません。
この言葉に牛河原という男の本当の姿が現れています。小憎らしいラストでした。

| comments(0) | trackbacks(0) | 15:32 | category:    百田尚樹 |
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