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# はだかんぼうたち
2013.10.31 Thursday
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評価:
江國 香織
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,575
(2013-03-27)
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はだかんぼうたち / 江國香織(角川書店)
評価 ☆☆☆☆9歳年下の鯖崎と付き合う桃。母の和枝を急に亡くした桃の親友の響子。
桃がいながらも響子に接近していく鯖崎・・・。
"誰かを求める"思いにあまりに素直な男女たち・
"はだかんぼうたち"のたどり着く地とは――。
江國香織さんの文章って生活が感じられるのが心地いい。
本筋とはまったく関係のない、細かな描写を丁寧に描くのが好きです。
物語の語り手がコロコロと変わるスタイルなのだけど、
一体、何人の口から語られるんだろう・・・多い。
こういうスタイルの小説は数あれど、こんなに多いのは初めて読んだかも。
最初は誰が誰だかで混乱したけど、それぞれがわかってくると
この形の方がより彼らを深く理解できる気がする。
登場人物たちが誰にも見せたくない心の内側をさらけ出すような作品だから
「はだかんぼうたち」・・・なるほどなるほどです。
裸の心ですべてをさらけ出してしまうと、一人の人なんて選べない・・・
それはすごく正直な気持ちだと思う。
そして、いつも誰かと繋がっていたい、たしかな安心できる物も欲しい。
要するに、心はいつも寂しいんだ。傷だらけなんだと思わざるを得なかった。
明確なラストが準備されているわけでなく、なんとなく終わってしまうことを
不満に思う読者もいるだろうけど、私はこの人達にはこれがお似合いな気がする。
こんな風に彼らはこれからも日々生きていくのだから。
でも、どうしていい大人の桃や響子が鯖崎みたいな
つまんない軽い男に引っかかっちゃうんだろう?鯖崎の中身に何の魅力も感じない。
子供が4人もいて、家族一筋で突っ走ってきた響子が
こんな男にコロッといっちゃうのも寂しさ故のことなんだよな〜。
なんだか切ない・・・・・。
# 大地のゲーム
2013.10.31 Thursday
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評価:
綿矢 りさ
新潮社
¥ 1,365
(2013-07-31)
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大地のゲーム / 綿矢りさ(新潮社)
評価 ☆☆
震災の記憶も薄らいだ21世紀終盤。
原発はすでになく、煌々たるネオンやライトなど誰も見たことのないこの国を、
巨大地震が襲う。
来るべき第二の激震におびえながら大学キャンパスに暮らす学生たちは
カリスマ的リーダーに未来への希望をつなごうとする。
極限におかれた人間の生きるよすがとは何なのか。
これまでの綿矢りさ作品とはまったく雰囲気の違った作品だけど、
大地震後の荒廃した日本を舞台にしているわりに、中身は恋愛小説。
どうして大地震を絡めなければならなかったのか理解できず、
震災で大変な思いをした方々の神経を逆なでするのではないかと不安すら覚える。
意欲作なんだろうけど、失敗しちゃった?
# スナックちどり
2013.10.19 Saturday
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評価:
よしもと ばなな
文藝春秋
¥ 1,260
(2013-09-27)
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JUGEMテーマ:
小説全般
スナックちどり / よしもとばなな
評価 ☆☆☆☆ 40歳を目前に離婚した「私」と、
身寄りをすべてなくしたばかりの、いとこのちどり。
イギリス西端の田舎町を女二人で旅するうち、
魔法にかけられたような時間が訪れる―。
いとこ同士の2人の女性がイギリスの何もない田舎を訪れ、
ただゆっくりと自分のこれからの生き方を考えていく作品です。
ストーリーというストーリーはありません。なので退屈に思う人もいるでしょう。
主人公の2人と自分が同年代ということもあり、
自分の生き方までをも改めて見つめ直す機会をもらったような気がしました。
よしもとばななさんの作品はさりげない一文が、
まるで宝石のように輝いていることがあります。
今作でいちばんグッと来たのは、
「希望は遠くの山みたいなもんなんだ。
きっとお互いがお互いのことを気にいっているに違いない。
だから会いさえすればお互いがそれを確認できる。
ただその気持ちだけでいいんだよ」というちどりの言葉。
これって今の私の置かれた状況にドンピシャで、
ここだけ何度も何度も読み返してしまいます。
決定的な言葉や約束なんていらない。大切なのはお互いの気持ちだけ。
これがすべてなんだって胸を張って言える自信が欲しい。
途中で2人の関係がおかしな方向へ発展し、それはないでしょ?と興ざめしたものの、
やはり芯はぶれていない、いつも通りのばななさんでした。
# なごり歌
2013.10.19 Saturday
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評価:
朱川 湊人
新潮社
¥ 1,680
(2013-06-28)
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なごり歌 / 朱川湊人(新潮社)
評価 ☆☆☆
あの頃、団地は、未来と過去を繋ぐ道だった。
三億円事件の時効が迫り、
ひとつの町のような巨大な団地は未来への希望と帰らない過去の繋ぎ目だった。
ノスタルジックで少し怖い、悲しくて不思議な七つの物語。
商店街を舞台にした「かたみ歌」に続き、
今作は団地を舞台にした「なごり歌」というなつかし感涙ミステリー。
朱川湊人さんお得意のホロっと泣かせて、ゾクッと寒気もよぎる7つの作品集です。
7つの作品はすべて同じ団地を舞台にし、登場人物等も少しずつリンクしています。
どの作品も読んだ後にノスタルジックに酔いしれ、優しい気持ちになれます。
最初からあやしかった人物が、
7つ目のお話しでやっとメインとなってスッキリです。
# ユリゴコロ
2013.10.19 Saturday
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評価:
沼田 まほかる
双葉社
¥ 1,470
(2011-04-02)
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JUGEMテーマ:
小説全般 ユリゴコロ / 沼田まほかる(双葉社)
評価 ☆☆☆
亮介が実家で偶然見つけた「ユリゴコロ」と名付けられたノート。
それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。
創作なのか、あるいは事実に基づく手記なのか。そして書いたのは誰なのか。
謎のノートは亮介の人生を一変させる驚愕の事実を孕んでいた。
人を殺すことの快感にとりつかれた人間の告白ノートを軸に展開する作品。
とにかく、この告白の部分が薄気味悪く、作品中に漂っている空気すら始終不気味。
最後の展開には驚愕です。
私にはまったく想像のしていなかった大どんでん返しのラストでした。
ネット上には「感動した」という声が多かったですが、
私は感動よりもドロドロした気味の悪さだけが印象に残ります。
# 白ゆき姫殺人事件
2013.10.09 Wednesday
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評価:
湊 かなえ
集英社
¥ 1,470
(2012-07-26)
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JUGEMテーマ:
小説全般 白ゆき姫殺人事件 / 湊かなえ
評価 ☆☆☆
美人会社員が惨殺された不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まった。
同僚、同級生、家族、故郷の人々。
彼女の関係者たちがそれぞれ証言した驚くべき内容とは。
果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも・・・。
うーん、湊かなえさん・・・やはりどんどん質が落ちてるなぁ。
物語が一通り終わった後に、ツイッター形式で事件の真相や噂を語った物や
新聞や雑誌の記事を切り抜き等の「資料」をまとめて載っているのだけど、これ必要?
すごく読みずらいし、これまでの内容をおおまかにまとめたものにすぎず、
意味ないかな〜と思います。
変わった趣向を狙ったつもりなのだろうけど、このやり方は完全に失敗。
事件の真相も陳腐。
こんなことで人をメッタ刺しにして火をつけるのですか?
女の醜さをもっと濃く描く場面等があれば、もっと楽しめたかもしれない。
残念です。
# 手のひらの砂漠
2013.10.03 Thursday
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評価:
唯川 恵
集英社
¥ 1,575
(2013-04-05)
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手のひらの砂漠 / 唯川恵(集英社)
評価 ☆☆☆☆
平凡だけど幸せな結婚のはずだった。
しかし、その先に待っていたのは思いもよらぬ夫の暴力。
シェルターからステップハウス、DV被害女性ばかりで運営される自然農園・・・。
離婚を経て少しずつ自立を果たそうと模索する可穂子だが、
元夫・雄二の執拗な追跡の手が迫ってくる・・・。
いやー、さすが唯川恵さんです。
物語の世界に引き込まれ、ハラハラしながらも一気に読んでしまいました。
主人公の可穂子には決して落ち度があったわけではない。
なのに、ここまで追い詰められ、新しい希望が見えてきたかな?と思ったら
またすぐに踏みにじられ、何年も何年も苦しめられる。
私自身も可種子とともに終わりなき戦いに恐怖を覚えました。
こういうのってリアルの世界にもあるんだろうな。
こんなことにパワーを使うなら、
新しい恋愛とかもっと他のことを頑張れよって思うけどね。
でも結局、こういう人は同じことを繰り返すんだろうな。怖い怖い。
ここまで来ると自分を守るのは自分自身でしかないし、
大切なものを守れるのも自分でしかない。
後半で伊原さんと杏奈ちゃん親子と離れるという悲しい決断をし、
武術を身につけてその時に備えようとする可種子に胸が熱くなった。
最後には自分の生きる場所はここだと確信し、
納得する形で生きる場所を見つけた可種子だけど、
私としては本当は女性としての平凡だけどあたたかい生活を手に入れてほしかったです。
# 楽園のカンヴァス
2013.10.01 Tuesday
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評価:
原田 マハ
新潮社
¥ 1,680
(2012-01-20)
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JUGEMテーマ:
小説全般 楽園のカンヴァス / 原田マハ(新潮社)
評価 ☆☆☆☆☆
大富豪の屋敷に掛かる一枚の絵。
その真贋判定を迫られた若き二人の研究者。
期限は七日間--絵画の「本当の価値」に迫る傑作アートサスペンス!
絵画の知識はまったくといっていいほどなく、
ルソーの「夢」と聞いてもどんな絵なのかもわからない私なので、
この本を読むのは相当手こずるだろうな・・・と覚悟して読み始めたのですが、
そんな心配まったく必要なかった!
ティムと織絵のバイラー邸での7日間がはじまったあたりからは、
すっかりこの作品の虜になっていました。
ミステリーとしての要素は薄いけど、雰囲気はミステリーだよなぁ。
遅咲きで、評価される前にこの世を去ったルソーはもちろん、
絵画を愛する人たちの情熱がひしひしと伝わってきてゾクゾクします。
人間ドラマとしては描写が浅い気がしますが、
美術史を揺るがすような大きなナゾにワクワクできるからいいとしましょう。
メロドラマっぽいところが、
私のような美術の知識のないものには逆に助かりました。
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