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# 夜の底は柔らかな幻 (上)(下)
2013.07.10 Wednesday
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評価:
恩田 陸
文藝春秋
¥ 1,680
(2013-01-12)
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夜の底は柔らかな幻(上)(下) / 恩田陸(文藝春秋)
評価 (上) ☆☆ (下) ☆☆
犯罪者や暗殺者たちが住み、国家権力さえ及ばぬ無法地帯である〈途鎖国〉。
特殊能力を持つ〈在色者〉たちがこの地の山深く集うとき、
創造と破壊、歓喜と惨劇の幕が切って落とされる――
極悪人たちの狂乱の宴、壮大なダーク・ファンタジー。
ううー、ついていけなかった!
読んでる間中、ずっと「おいていかれてる感」が付きまとっていて、
いや〜な予感はしていたんだけど、最後までその感覚はなくならなかった。
恩田さんの作品って、なんだかわからないまま読み進めていって、
いつのまにかその世界に取り込まれているということがよくあるんだけど、
今回はそこまでではなかったなぁ。
これを読むことはまさに自分の想像力との戦いでした。
後半、もうページ数が残りわずかだと言うのに、
どうやって収束させるんだろうとドキドキハラハラ・・・。
まぁ、なんとなくおさまるところにおさまったもののポカーンとしちゃった。
スケールが大きい作品と思ってたわりにあっさりしていて、
風呂敷を広げ過ぎちゃったかんじですか?
それぞれの人間関係など描き切れてないのも気になったし、
これは続編ありきで書かれた作品なのでしょうか・・・。
(でも、きっと続編でても読まないと思う。)
私、いまだに「ほとけ」とか「ソク」とか理解できてません。
直木賞にノミネートされてるみたいですけど・・・・、
正直、恩田陸さんにはこれで直木賞はとってほしくないなぁ。
# 何者
2013.07.08 Monday
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評価:
朝井 リョウ
新潮社
¥ 17,180
(2012-11-30)
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何者 / 朝井リョウ(新潮社)
評価 ☆☆☆
「あんた、本当は私のこと笑ってるんでしょ」
就活の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。
学生団体のリーダー、海外ボランティア、手作りの名刺……
就活大学生の自意識をリアルにあぶりだす、書下ろし長編小説。
今時の若者の就職活動を描いた作品。
登場人物も若いし、著者も若いせいかものっすごく軽く感じるけど、
こういうのこそがこの年代の人のリアルだよね。
ツイッターも上手に利用してて、
まさにこの著者が今この時にしか書けない小説であることは間違いない。
社会にも出てないのに、ちょっと留学したとかボランティアに励んだとか、
自分が持ってる数少ないカードを
さも特別な強いカードに見せかけようと必死に知恵と努力を駆使して
エントリーシートを詰めていく様は大人の私なんかから見たら痛々しくもあり滑稽。
協力しているフリをしながら肝心なことは絶対に話さない、
影では小馬鹿にして、いつでも裏切って出し抜いてやることだってできる。
この冷めた感じがとにかく生々しかった。
ほんと、客観的に見れば「あんたら何者なの?」って感じ。
だからこそ最後の最後に仕掛けられた爆弾が小気味よく感じられます!スッキリ!!
それにしてもこれで直木賞ってどうなんだろう。
これで直木賞とれるって一気に賞のレベルが落ちた気がするわ。
# 私とは何か 「個人」から「分人」へ
2013.07.03 Wednesday
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評価:
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講談社
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(2012-12-17)
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私とは何か 「個人」から「分人」へ / 平野啓一郎(講談社現代新書)
評価 ☆☆☆☆☆ここ最近で平野さんの小説を2冊読んでみたわけだけど、
この人の作品をより深く理解するためには、
どうしても平野さんの造語「分人」というものを理解する必要がある。
そのために手にしたのがこの本です。
「分人」とは、対人ごとに存在する様々な自分のこと。
恋人との自分・家族との自分・職場の同僚との自分・
高校の同級生との自分・大学の同級生との自分・・・
これらは必ずしも同じ自分ではないはず。
よく「本当の自分」などということを言う人がいるけれど、
たった一つの本当の自分なんて存在せず、
対人ごとに見せる複数の顔が、すべて「自分」であるという考え方です。
いや、これは目からウロコの発想。
この人、私と同じ年なんだけど、よくこんなこと考えついたな。
斬新とかまったく新しい考え方とかそういうわけじゃない。
要するに、発想の転換?気づかなかったことに気づかせてくれたようなそんな本です。
この考え方で自分を見つめれば、
いろんなことを素直に納得でき、気持ちが軽くなります。
難しくとらえていた人間関係がスーッとラクに思えてくるはずです。
自分は誰と一緒にいる時の分人が好きかーーー。
それをはっきりと自覚すれば、おのずと「なりたい自分」が見えてくる。
その分人を足場にして、生きる道を見つけていけばいい。なるほどです!
でもだからといって、1つの分人にだけ生きていけない。
複数の分人を生きることこそが精神のバランスをうまく保つらしい。
たとえば職場での人間関係に悩んでいるとしても、そこだけでクヨクヨ悩まずに、
家族や友人といる時はいつも笑っている明るい分人を大切にする。
それだけで仕事のストレスは大きく軽減されてしまう。
うーん、すごく面白かったわ〜。
これ知ってるだけで生きるのがラクになりそう。
# 残月
2013.07.02 Tuesday
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評価:
高田 郁
角川春樹事務所
¥ 650
(2013-06-15)
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残月 / 高田郁(ハルキ文庫)
評価 ☆☆☆☆
みをつくし料理貼シリーズ第八弾。
前作「夏天の虹」のラスト、吉原の大火に巻き込まれた又次が亡くなり、
「つる屋」の面々は悲しみをこらえながらも新たな日々を送っていました。
ページをめくってまずショックだったのは、
いつも本の最初にある“主な登場人物”の欄に小松原様の名前がないこと!!
ええー、もう出てこないの?
私としては2人は今回は結ばれなかったけど、
きっといつかは何かの縁でまた巡り合えると思っていたので・・・。
2人の仲は本当にこれで切れてしまうのでしょうか。
今回の主人公は芳さんかなぁ。
行方不明になった息子の佐兵衛さんとの間に進展があったし、
もうひとつ、思わぬ(・・・まぁ、想像はしてたけど)幸福が訪れる。
前作で又次さんの死という悲しい出来事があった分、
今作は未来の幸せを感じさせるようなエピソードが多かったように思います。
けど1つ気になるのは、今回は各章を彩る料理の存在感が薄かったこと。
つる屋の面々を取り巻く出来事には、いつも料理がついてきたはずなのに、
今回は料理は完成するまでの苦労も、美味しそうな描写もどれもいまいち残りません。
特に「海苔巻き」はほとんど脇役にしかすぎない印象だし、
「葛湯」もほんの少し出てきたきりでしょ?
やはりシリーズ物は長くなればなるほど
完成度も落ちてくるものなのでしょうか。
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