隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# ポリティコン(上)(下)
評価:
桐野 夏生
文藝春秋
¥ 1,650
(2011-02-15)
コメント:理想郷のはずだった・・・息詰まる閉塞感と嫉妬、欲望

JUGEMテーマ:小説全般
 ● ポリティコン (上)(下) / 桐野夏生
 ● 文藝春秋
 ● 上巻 1650円
   下巻 1650円
 ● 評価  上巻 ☆☆☆☆☆
        下巻 
大正時代に東北に芸術家たちが創ったユートピア「唯腕村」。
1997年3月、村に残された唯一の若者であり後継者でもある東一は美少女・マヤと出会った。
母親は中国で行方不明になったマヤは、母親の恋人だった北田という謎の人物の「娘」として、外国人妻とともにこの村に流れ着いたのだった。
過疎、高齢化、農業破綻、食品偽装、脱北者・・・
東アジアの片隅の 日本をこの十数年間に襲った波は、いやおうなくふたりを呑み込んでいく。


(感想)
上巻は東一視点で綴られ、下巻の2部からはマヤ視点。
東一は唯一の若者であるという重圧・孤独感に押しつぶされそうになりながらも
やがて後継者であることからその地位を利用し、
村と女性たちを私物化するとんでもないえげつない男。

どうにもならない過疎と高齢化の問題、
抑えきれない東一の欲望に腹がたって仕方ないんだけど、
こんなにもドロドロと暗いのになぜかページをめくる手が止まりません。
桐野夏生のこの中毒性って、本当にヤバい。
小さい社会の中で憎しみ合い、でもそこから飛び出すこともできず、
結局は支えあっていきていく人々の村への思いは想像を超えるものがあるけど、
信頼とか何かを守り抜かなければならないという執念の強さは
生々しくもリアルに響いてきた。

最後にいきなりボロクソにやられた東一は笑っちゃうほどすがすがしかったよー。
嫌な男よ、ザマーミロ
けど結局、10年かけて東一とマヤはやっと対等の位置に立ち、
本当に信頼できる間柄になれた。
これってきっと二人が閉鎖的で特殊な共同体で生きたからこそなんだろうなぁ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:33 | category:    桐野夏生 |
# 花桃実桃
評価:
中島 京子
中央公論新社
¥ 1,575
(2011-02)
コメント:ちょっとズレているけど心地よい場所

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 花桃実桃 / 中島京子
 ● 1575円
 ● 中央公論新社
 ● 評価 ☆☆☆
40代シングル女子、父親が亡くなり、古いアパートを相続するはめになった。
ちょうど会社から肩たたきされていたこともあり、思い切って管理人になることに・・・。
昭和の香り漂うアパートでへんてこな住人に面食らい来し方をふり返っては赤面。
行く末を案ずればきりもなし…ほのぼの笑えてどこか懐かしい直木賞作家の最新小説。


(感想)

父親から相続した古いアパートの管理人になったアラフォー女子の茜。
昭和の香り漂うこのアパートには個性的な人ばかりが入居しており、
人間だけにとどまらず幽霊や猫までもが集まってくるヘンテコなアパート。
住人1人1人と茜が触れっていくほのぼのほんわかな雰囲気が
三浦しをんさんの「木暮荘物語」を思い出させます。
あれもアパートを舞台にした連作モノでしたもんね。

住人の誰が主人公になっても面白いんじゃないかってくらい、みな個性的。
どこかぬけていて、でも愛すべき人たち。
こんいうゆる〜い感じって大好きです。
中島京子さんならではの空気をしっかりと感じられます。

疎遠になって父がこのアパートで、この町で、どういうふうに暮らしていたのか、
茜はまるで今でも父がここにいるように父の存在をリアルに感じながら日々を送ったのだと思う。
お父さんの幽霊はきっとここにいて、住人たちを見守っている。
なんだか、いつまでもいつまでも彼らの生活をのぞき見ていたような
心落ち着ける作品でした。



 
| comments(2) | trackbacks(1) | 14:51 | category:    中島京子 |
# マリアビートル
評価:
伊坂 幸太郎
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,680
(2010-09-23)
コメント:伊坂幸太郎、やっぱり面白い!

JUGEMテーマ:小説全般
 ● マリアビートル / 伊坂幸太郎
 ● 角川書店
 ● 1680円
 ● 評価 ☆☆☆☆☆
元殺し屋の「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた相手に復讐するため、
東京発盛岡行きの東北新幹線“はやて”に乗り込む。
狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」&「檸檬」。ツキのない殺し屋「七尾」。
彼らもそれぞれの思惑のもとに同じ新幹線に乗り込み―物騒な奴らが再びやって来た。
『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲。
 

(感想)

伊坂幸太郎ってスタイリッシュで、いつしか読んでて気恥ずかしく思えるようになってきた。
けど、これは久々に夢中になって読みました。最近のヒットです。
私の好きな伊坂幸太郎が戻って来たってかんじ?

最初から最後まで、東京から盛岡までの新幹線の中での出来事だけで構成されています。
なんとこの新幹線、物騒な“殺し屋”たちが何人も乗っていて、
それぞれの思惑のもとに任務を遂行しようとしている、と・・・。
いたるところに伏線が張られまくりで、気を抜いて読むなんてとてもできない!
1つ1つを過度に疑いながら読んでいかないとね
小生意気なクソガキ・王子の自身が揺らいでいくあたりは読んでてスカッと気持ち良かったー。
木村のお父さん・お母さんがかっこいい。

七尾の運のなさがツボでした。この人好きだなぁ
いつかまた別の作品でお会いしたい・・・ 

物騒な話ではあるけど、面白かったなー。
こんなめちゃくちゃなヤツラをきれいにまとめられるのはやっぱり伊坂幸太郎の技量。
絶妙でした
| comments(2) | trackbacks(0) | 15:23 | category:    伊坂幸太郎 |
# 錨をあげよ(上)(下)
評価:
百田 尚樹
講談社
¥ 1,995
(2010-11-30)
コメント:波乱万丈、読むのきつかったー

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 錨をあげよ(上)(下) / 百田尚樹
 ● 講談社
 ● 各1995円
 ● 評価  上巻 ☆☆☆
        下巻 ☆☆☆
戦争が終わってちょうど十年目、いまだ空襲の跡が残る大阪の下町に生まれた作田又三。
激動の昭和の時代、生まれながらの野生児は人生という荒海を渡っていく。
いざ、海図なき嵐の海へ。さあ、錨を上げよ!



(感想)

上巻約590ページ、下巻約620ページ。
波乱万丈の人生を生きる主人公・作田又三。
その切れやすい性格が故に仕事も恋も次々と失敗の繰り返し
正直読むのがしんどかった。
こんなに長い小説を、主人公にちっとも共感できないままに読んだ自分に拍手

学校の勉強はできなかった(しなかった)けど、頭はすこぶるいい。
だから悪知恵も働いてしまい、人生の荒波をたくましく渡っていく。
なのにどうして、負のループに迷う込んだ自分の人生を客観的にみて反省し、
成長することがないのかと呆れっぱなし。
最後の最後で「愛に生きた男」みたいな描かれ方になってきて、閉口してしまいました。

それにしてもどうしてこれが「本屋大賞」の4位に入ったのか??
まったくもってナゾ。
面白くなくはないんだけど、無駄に長い。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:53 | category: 作家名 ま行 |
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