隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# ストーリー・セラー
評価:
有川 浩
新潮社
¥ 1,365
(2010-08-20)
コメント:有川さん自身と重ねてしまいます。一体、どこまでが本当なの?

JUGEMテーマ:小説全般
 ● ストーリー・セラー / 有川浩
 ● 新潮社
 ● 1365円
 ● 評価 ☆☆☆☆☆
このままずっと小説を書き続けるか、あるいは・・・・。
小説家と、彼女を支える夫を突然襲った、あまりにも過酷な運命。
それは複雑な思考をすればするほど脳が劣化する、世界でたった1人だけの病気。
小説家の仕事は考えること・・・・しかし、働けば働くほど寿命を縮めることになる。
極限の選択を求められた彼女は
今まで最高の読者でいてくれた夫のために物語を紡ぎ続けた――。



(感想)

side:A 、side:Bの2編を収録。
どちらも妻が小説家で、夫は妻の書く小説の大ファンだという設定。
Aでは妻が病におかされ、Bでは妻を支える夫の方に病が忍び寄ります。

Bに“卑怯だよ、卑怯。・・・そのぼやきは、最大の誉め言葉だ”と小説家である主人公が思う場面があるんだけど、
まさにこの作品の有川さんこそが卑怯!とんでもなく卑怯!!
奥さんが小説家という設定のため、どうしても有川さん自身と重なる。
もしかして、この本は実際に有川さん夫妻にあったことじゃないの???
すべてがフィクションであることを願います!
もしかしたら・・・という不安を抱きながらも、次々と襲いかかる読者への罠にビビり、
でも、何度、おどかされても胸を締め付けるような夫婦のまっすぐな愛に
ページをめくる手が止まりませんでした。

お得意のベタ甘ワールドに「死」を寄り添わせるとは・・・キュン死にしそうで、
悲劇的な展開に泣けてきて、頭の中ぐっちゃぐちゃになりますね。
卑怯、ほんっとうに卑怯!
そして、なんてったって会話の部分のうまさ!
テンポがよくて、あえて普段の会話では使わないような言葉や言い回しが出てくるたびに、
“読む側”の私達はニヤリとしてしまう。

ああ、やっぱり有川さんの本って中毒性がある。
有川さんとご主人がすっかりハマっている読者のこういう感想を見て、
ニヤニヤしててくれたら読者として嬉しいです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:17 | category:    有川浩 |
# 銀河に口笛
評価:
朱川 湊人
朝日新聞出版
¥ 1,785
(2010-03-05)
コメント:子供のころに出会った不思議な友達とのセピア色の思い出

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 銀河に口笛 / 朱川湊人
 ● 朝日新聞出版
 ● 1775円
 ● 評価 ☆☆☆
昭和40年代・・・小学3年生の僕らは秘密結社「ウルトラマリン隊」を結成して、
みんなが持ち込んでくる不思議な事件の謎に挑んでいた。
夏休みも終わり二学期の始業式の日、不思議な力を持った少年リンダが転校してきた…。
ちょっぴりほろ苦い少年たちの成長物語。  


(感想)

朱川湊人さんの名を聞くだけで、セピア色の懐かしい風景が頭に浮かぶ。
今回の舞台は昭和40年代。
小学3年生の夏休み、主人公“モッチ”たちは、ある夕方、流れ星を見つける。
流れ星が消えたと思われる付近まで歩いてみると、そこにはモッチたちと同年代の男の子がいた。
彼は新学期になるとモッチ達のクラスに転校してきて、モッチ達の新しい仲間になる。
その転校生“リンダ”は不思議な力を持っているようで、
彼らは困っている人たちが持ち込んでくる謎を解決する「少年探偵団」を結成する。

目新しさも意外性もないけど、
なーんか、懐かしくて胸があったかくなるお話でした。
今現在、40代で2人の子供もいる大人になった主人公“モッチ”が
子供のころを懐かしく回想する形で綴られているのですが、
おそらくよその星から来た少年だったと思われる友達“リンダ”を思い出すまなざしがたまらなく優しい。
大人になったモッチがいかにこの思い出を大事にしているか、手に取るようにはっきりと伝わってきます。

クラスメートの小松さんを救う章のラストはあまりに悲しく、胸が痛い。
彼らは汚れのない子供だからこそ、大人以上に真っ白な「正義のこころ」を持っている。
子供であるが故に正義を貫く術を多くは持たないけど、
自分たちの無力さではどうすることもできなかった苦い思い出もすべて含めて、
彼らの胸の中でいつまでも大切に輝いている。
ミハルや小松さんはその後、険しい道を歩くことになったようだが、
それでも小学3年生のころの思い出は、2人の中で大切に輝いていてほしい。
そう願ってなりません。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:06 | category:    朱川湊人 |
# 乙女の密告
評価:
赤染 晶子
新潮社
¥ 1,260
(2010-07)
コメント:乙女ならではの世界観についていけない・・・

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 乙女の密告 / 赤染晶子
 ● 新潮社
 ● 1260円
 ● 評価 ☆☆
京都の外国語大学で、『アンネの日記』を教材にドイツ語を学ぶ乙女たち。
日本式の努力と根性を愛するバッハマン教授のもと、スピーチコンテストに向け、
「1944年4月9日、日曜日の夜」の暗記に励んでいる。
ところがある日、教授と女学生の間に乙女らしからぬ黒い噂が流れ…。
第143回芥川賞受賞。



(感想)

芥川賞受賞作。
京都の外国語大学で常に人形を抱いているバッハマン教授のもと、
「アンネの日記」を教材にし、暗唱スピーチに向けて練習の日々を送る乙女たち。
しかしある日、乙女たちのリーダー的存在である麗子様とバッハマン教授の間に
「乙女らしからぬ噂」が流れたことで学内の雰囲気が変わり、麗子様は失脚・・・・。
あらぬ噂をたてられたらこの大学では生きてはいけない。
乙女たちの緊張感とこの年頃ならではの残酷さを秘めた作品。

閉鎖的な乙女の園での独特な価値観と世界観・・・正直、気味が悪かったです。
バッハマン教授の存在や麗子様のキャラなどは明らかにコメディなんだけど、
「アンネの日記」を題材にするあたり、そうではないような気もするし、
なんだか理解に苦しみます。

教授が学生たちに「アンネの日記」の中で最も重要な日はいつ?という問いに、
迷わず真っ先に「アンネとがペーターとキスをした日」と答えたみか子。
「アンネの日記」をロマンティックな作品としてとらえている乙女ならではの幼さにはゾッとしました。

これが芥川賞をとるのか〜。
もともと私には合わない賞だとは感じていたけれど、その思いを改めて強める作品でした。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:03 | category: 作家名 あ行 |
# すれ違う背中を
評価:
乃南 アサ
新潮社
¥ 1,470
(2010-04)
コメント:「いつか陽のあたる場所で」の続編です

JUGEMテーマ:小説全般
 ● すれ違う背中を / 乃南アサ
 ● 新潮社
 ● 1470円
 ● 評価 ☆☆☆☆☆
「過去」の背中に怯える芭子。
「堀の中」の体験をいまだ不用意に口走る綾香。
しかしやっと、第二の人生が見えてきた二人だった。
ムショ帰りコンビのシリーズ、大好評につき第二弾。
 


(感想)

「いつか陽のあたる場所で」の続編。
ムショ帰りの巴子と綾香が過去を隠しながらひっそりと人生をやり直す物語です。
綾香の方は前作から自分のパン屋を持ちたいと必死で修行していましたが、
今作ではついに巴子の方にも将来の光が見えてきます
前作までは後ろ向きでオドオドしてて、ちょっとイラッとさせられる存在だった巴子だけど、
人間、やりがいや自信を持つとこんなにも変わってくるものなんですね〜。

二人は二人で支えあうことができるから、生きていられる。
過去を背負ってはいるけれど、
かけがえのないパートナーと夢をを得た今、二人とも幸せではあるのかもしれない。
けど、家族とのこと、夢の実現、そしてこのまま誰にも過去を知られずに生きていけるのか・・・・と、
彼女たちの未来には心配がいっぱい。
彼女たちの夢は応援したい。
でも、事件をきっかけに距離を置くようになった家族(特に綾香の子供)の存在は無視していいものではない。
この問題、彼女たちはどうしていくのだろう?
これからもぜひ続けてほしいシリーズです。
| comments(2) | trackbacks(0) | 12:18 | category:    乃南アサ |
# 小暮写眞館
評価:
宮部 みゆき
講談社
¥ 1,995
(2010-05-14)
コメント:700ページ強の分厚さにしてはスルスルッと読み終えました。

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 小暮写眞館 / 宮部みゆき
 ● 講談社
 ● 1995円
 ● 評価 ☆☆☆
花ちゃんこと英一の両親は結婚20周年を機にマイホームを購入した。
でもそれは普通の家ではなく、
かつて写真館を営んでいた面影が派はっきりと残る「古い写真館」だった。
一般住宅にはない写真館独特の設備のついた風変りな家での新生活が始まったが、
ここを写真館だと勘違いした女の子がおかしな写真を持ち込んだことから
英一は写真の謎を解く調査をやるはめに・・・・。


(感想)

700ページ超えの分厚い迫力に、根性を据えて読まれば!と気合いを入れてとりかかりましたが、
意外にスルスルッと読めました

両親に二人の男の子。
一見、どこにでもあるような平凡な家庭のように思えるけど、
風子という女の子をひとり失っており、それが原因で親戚とも不仲になってしまった一家のお話。
家族全員が風子の死になんらかの責任を感じている。
誰の責任でもないのはわかっているのだけど、責任を感じずにはいられない。
私の家族も弟を失っているので、その心の痛みが手に取るようにわかりました。
どんなに時間がたっても、おそらくその痛みは一生癒えません。
その苦しみもひっくるめて自分なんだと思って生きていかなきゃいけないんですよね・・・。

前半は心霊写真の謎を解くのがメインになりますが、このへんは退屈。
けど、後半は英一の不器用な恋や弟のピカが胸に秘めていた苦しみをメインに構成され、
なかなか読みごたえがあります。
正直、前半の心霊写真のあたりはなくてもよかったような・・・。
宮部さんの作品にしては中毒性のある面白さはありません。

垣本さんと英一がお互いを映したインスタントカメラを交換し、駅で別れるシーンは
強くなった垣本さんの覚悟にこみあげてくるものがありました。
後半になり、装丁の菜の花と桜の中を電車が走っている風景の意味がわかるのですが、
読み終えた今、改めてこの装丁を見ると心がほっこり温かくなるような気がします。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:10 | category:    宮部みゆき |
# 横道世之介
評価:
吉田 修一
毎日新聞社
¥ 1,680
(2009-09-16)
コメント:何気ない存在こそがかけがえのないもの・・・あなたにとっての「世之介」は誰ですか?

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 横道世之介 / 吉田修一
 ● 毎日新聞社
 ● 1680円
 ● 評価 ☆☆☆☆☆
横道世之介。
限りなく埼玉な東京に住む上京したての18歳。
嫌みのない図々しさが人を呼び、呼ばれた人の頼みは断れないイエスマン。
どこにでもいそうだけど、でもサンバを踊るからなかなかいないかもしれない。
なんだか、妙にいい奴。
世之介が呼び覚ます、愛しい日々の、記憶のかけら。
名手・吉田修一が放つ、究極の青春小説!
 


(感想)

横道世之介は平凡な大学生でありながら、言葉にできない非凡な空気をまとっている人。
そんな世之介の大学1年の1年間の出来事を描いています。
途中にはこの1年間に彼と深くかかわった人たちが数十年後に大人になり、
今はどこで何をしているのかもわからない世之介を懐かしく回想する場面がうまく挟み込まれています。
本のタイトルは「横道世之介」だし、世之介の生活を描いてはいるんだけど、
全体を通してみると世之介とかかわった人たちの人生を振り返る物語のようにも思える。
世之介の人柄と同じく、なんとも不思議な小説でした。

なんだかわからないんだけど心がほっこり癒される
世之介は友人たちに特に何をしてくれるわけでもなく、人との付き合いは比較的浅いのだけど、
なぜか彼の周りには人が集まってきて、やがては去っていく。
地味で、いいかげんで、若さが感じられなくて、今でいう草食系?
おおよそ明るいスポットライトの下には立つことがなさそうな男の子だけど、
あなたのまわりにも世之介のような友達が一人くらいはいませんでしたか?
強烈な思い出を残したわけではない。
でも、青春の只中でほんの一瞬でも世之介と過ごせたことはきっと自分の人生にささやかな意味をもたらしてくれたような気がしてならない。
そう考えるとこれまでの人生で出会ったすべての人と、すべての時間にささやかだけど確実に意味があったのだと思えてくる。
こういう考え方をすると何気ない日々もかけがえのないものに思えてきて、
ハッとさせられました。

これまでの吉田修一作品とは違った雰囲気で、簡単には忘れられない味わいがありました。
世之介の人生の最後は彼らしくない非凡な最後だったけど、
作者が唯一、世之介に与えた「スポットライト」でもある。
でも、こんな最後も見方を変えればとても世之介らしく思えます。
ああ、世之介・・・やっぱり不思議な人・・・。
| comments(4) | trackbacks(1) | 11:07 | category:    吉田修一 |
# 七人の敵がいる
評価:
加納 朋子
集英社
¥ 1,470
(2010-06-25)
コメント:お母さんたちの戦場ははたしていくつあるのだろう

JUGEMテーマ:小説全般 
 ● 七人の敵がいる / 加納朋子
 ● 集英社
 ● 1470円
 ● 評価 ☆☆☆☆
PTA、学童、教師、夫に姑、そして我が子までもが敵になる
保護者会や自治会に上司より、取引先より手強いモンスターが次から次へと現れる
困惑、当惑、そして笑いと涙の痛快PTAエンターテインメント!
ワーキングママ、専業主婦に、育児パパ、そして未来の子持ち候補たち必読小説。



(感想)

息子が小学生になったとたんに仕事と家庭以外でのつながりが一気に増えた。
自治会・PTA・学童保育にスポ少・・・有能な編集者でもある姉御肌の主人公・陽子は
役員をなすりつけ合い、おかしなルールに振り回されて、他のママたちに目の敵にされ、
さんざんな思いをしながらも効率の悪いシステムには黙ってしたがっていられない!!
仕事をバリバリこなし、子育てもがんばるワーキングママの奮闘記です。

加納さんにしては意外な痛快コメディでした。
女性ならではの陰湿でねちねちした「あるある」にうんざりしながらも、
子育てママには大いに共感できるお話だと思います。
ちょっと何かを頼むとすぐに「俺には仕事があるんだ。忙しいんだ。」と当たり前のようにほざく、
家庭を奥さんにまかせっきりのお父さんたちにも読ませたいですね〜。

読み進めるうちにこの家族の重要な秘密も明らかになり、
はじめは苦手に思っていた主人公がどんどん素敵に思えてきます。
ちょっと非現実的な展開もあるけど、義母や義姉、地域やPTAでの人間関係に悩んでいる人には
何かいいヒントが見つかるかもしれません。

働くお母さんほどパワフルな人種はいないね。
男なんてかなうはずがないんです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:01 | category:    加納朋子 |
# 買わねぐていいんだ。
評価:
茂木久美子
インフォレスト
¥ 1,260
(2010-03-17)
コメント:カリスマ新幹線アテンダントの素顔

JUGEMテーマ:エッセイ 
 ● 買わねぐていいんだ。 / 茂木久美子
 ● INFOREST
 ● 1260円
 ● 評価 ☆☆☆☆
JR東日本で売上ナンバー1を誇る新幹線アテンダント・茂木久美子さん。
同じ商品なのに、彼女が売りに回ると飛ぶように売れるのはどうしてだろう。
「買わせない」だから「欲しくなる」・・・・
今や講演依頼が殺到し、テレビや雑誌でも大絶賛されるカリスマの素顔の魅力とは。


(感想)

先日読んだ「つばさアテンダント驚きの車販テク」とかぶってるけど、
茂木さんの素顔を知りたいのであればこちらの方をおすすめします。
明るくて元気な茂木さんの魅力そのままに、ソフトで読みやすかったです。

茂木さんはただ必死に売り上げだけを伸ばそうと努力しているのではなく、
お客さんに旅のいい思い出を作ってもらい、自分もお客さんにも楽しんでもらいたい・・・
なによりもそれを大事にしている。
その姿勢が接客によるお客様との触れ合いににじみ出ているのでしょう。
だから彼女は売れる。
けど、すべての人に同じような接客をするわけではなく、
お客さんがいま、どんな目的で新幹線に乗っているのか、どんな気持ちなのか、
それをよく観察したうえでお客さんに接するからうまくいくのであって、
その観察力やコミュニケーション能力の高さにも驚かされました。
彼女が仕事するうえで大事にしていることは、どんな仕事にも役立つはずです。

普段はアゲ嬢でハデハデな茂木さん。
でも仕事中はきちっとしてる。
オンとオフをうまく分けたメリハリのある生活も仕事にいい影響を与えているような気がします。

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:46 | category: 作家名 ま行 |
# 「つばさ」アテンダント驚きの車販テク
評価:
松尾 裕美
交通新聞社
¥ 840
(2010-02)
コメント:茂木久美子さんがカリスマ販売員になれた秘密とは

JUGEMテーマ:新書
 ● 「つばさ」アテンダント驚きの車販テク / 松尾裕美
 ● 交通新聞社新書
 ● 840円
 ● 評価 ☆☆☆
山形新幹線「つばさ」に乗務し、車内販売を担当するカリスマ・アテンダントがいる。
限られた時間と空間の中で、一人、手ぎわよく、コーヒーをいれ、
弁当やサンドウィッチを売り、山形弁で沿線のみやげものをすすめ、
しかも、ワンランク上の売上げを確保する驚きの車販テクニックを、そのカリスマに密着取材した。
そこから見えてきたのは―。



(感想)

最近はテレビや雑誌でもよく見かける、山形新幹線の車内販売員・茂木久美子さん。
通常なら1日の売り上げが8~10万円のところ、彼女はその倍は売り上げる。
これまでの最高記録は40万円で、これはコンビニの1日の売り上げに匹敵するというから驚かされます。

本書は大きく3つの章に分けられます。
1・ カリスマ販売員・茂木さんの章
2・ 山形営業支店長の山川さんの章
3・ 昭和の車内販売に関する章
となると、「 「つばさ」アテンダント驚きの車販テク」というタイトルにはちょっとだまされた気が・・・。
1や2はいいんだけど、3はむりやりねじ込んだ感じが・・・。

茂木さんは普段は派手なアゲ嬢
仕事はがんばる、でもプライベートは思いっきり好きなことをやる
この切り替えのうまさも彼女の最高につながってる気がする。
支店長の山川さんも「新しいことにはどんどん気軽に挑戦し、ダメなときは即撤退」と言っていたし、
こういう軽さは女性特有のものなのかも。

ワゴンをバック走行するのは重たくて大変だけど、
お客さんと接触するトラブルは少なく、何よりお客さんの顔が見える。
おつりを渡す際の工夫には脱帽
お客さんに見えないところでさりげなく、時間ってこういうところで節約するもんなんですね〜。
たしかに会話の中に適度に方言を交えるのは親しみやすさを感じさせて効果的。
接客業に限らず、人の心をつかむヒントがたくさんつまっている本でした。

茂木さんは経験を積んでいくうちに「売りたい」から「伝えたい」にかわっていったという。
茂木さんから何かを買ってのどを潤したり、お腹を満たすことよりも、
お客さんとのわずかなコミュニケーションの中で、
新幹線での旅の思い出をより良い物にするお手伝いがしたい・・・。
そんな思いやりの行動することによって、商品もぐっと売れるようになる。
ふれあいとあたたかさが茂木さんの魅力。
そして、それが小さくローカルな山形新幹線だからこそ、茂木さんとうまくマッチしている
都会で茂木さんと同じことをしても同じ結果は得られないかもしれない。
彼女のやり方は山形だから・山形らしいから成功してるのではないでしょうか。
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:57 | category: 作家名 ま行 |
# ナニカアル
評価:
桐野 夏生
新潮社
¥ 1,785
(2010-02-26)
コメント:林芙美子に関してほとんど知識がなく、作品もこれまで一冊も読んでないことを激しく後悔。読む前の準備が必要でした。

JUGEMテーマ:小説全般
 ● ナニカアル / 桐野夏生
 ● 新潮社
 ● 1785円
 ● 評価 ☆☆☆
昭和十七年、女流作家の林芙美子は朝日新聞の特派員として戦時中の南方へ向かった。
命懸けの渡航、愛人との束の間の逢瀬、張りつく嫌疑、そして修羅の夜。
波瀾の運命に逆らい、書くことに、愛することに必死で生きた一人の女を描き出す巨編。



(感想)

読み始めてすぐに、林芙美子について何も知らず、著作を1冊も読んでない自分に後悔・・・。
(まさか林芙美子の話だとは知らずに読み始めたんだから仕方ないけど・・・)
少しでも知識があれば、単なる小説としてではない楽しみ方もできたかもしれない。

“あの林芙美子が書いた未発表の作品がでてきた”という設定で、桐野夏生が書くなんて・・・
相当な勇気がないと書ける作品ではない。
軍の命令とはいえ女だてらに戦地へ入り、真実を書きたいという作家としての強い気持ち、
愛人との束の間の逢瀬・・・。
うまくやっていたはずが、やがて訪れる疑惑の大きさに押しつぶされそうになりながらも、
たくましく生きる林芙美子という女性の激しさが存分に感じられ、鬼気迫る凄味を感じさせられます。
特に愛人と別れることになる夜の二人のやり取りは、生々しくゾクゾクするほどでした。

ひとつ贅沢を言わせてもらうと、林芙美子と夫の関係がどうしてこうも淡白なものなのか
そこがわからないことにもどかしさを感じます。
それがわかれば、ここまで不倫にのめり込んだ気持ちもより理解できたかもしれないのに。

それにしても本の最後に記されている「参考文献」の多さには驚き!!
その数、約60冊!!脱帽しました。

ナニカアル・・・・なんて意味深なタイトル。
きっとこの本に描かれない、もっと激しい真実も林芙美子にはあったのかもしれない。
そう思わずにはいられません。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:04 | category:    桐野夏生 |
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