隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 真昼なのに昏い部屋
評価:
江國 香織
講談社
¥ 1,470
(2010-03-25)
コメント:外の世界に出てしまったお姫様

JUGEMテーマ:小説全般 
 ● 真昼なのに昏い部屋 / 江國香織
 ● 講談社
 ● 1470円
 ● 評価 ☆☆☆
会社社長の夫・浩さんと、まるで軍艦のような広い家に暮らす美弥子さんは、
家事もしっかりこなし、「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。
大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんは、
純粋な美弥子さんに心ひかれ、二人は一緒に近所のフィールドワークに出かけるようになる。
時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、
ふと気がつくとジョーンズさんのことばかり考えている美弥子さんがいた―。



(感想)

江國香織さんが「翻訳の子供の本みたいな文体で書きたかった」という、
のんびりと子供に言い聞かせるような文体はまるで大人のための童話のようでした。
一言で言っちゃえば不倫モノ。
けど、不倫のドロドロな感じはまったくない。
二人のフィールドワークの場面とか、心地よい風が吹いているように雰囲気がいいのは
この文体のおかげでしょうね

かごの中の鳥のようにおっとりとした主婦の美弥子さん。

やることやってしまって、後戻りできなくなった美弥子さんが、
【きちんとした不倫妻】になろうと一旦自宅へ帰るんだけど、【きちんとした不倫妻】ってナニ???
そういうことに疑問を持たない、天然な美弥子さんはほんとうに滑稽に思える。
浩さんが実は意外と嫌な男だつたことを見極められなかったのも、
美弥子さんの性格故のことなんだろうな〜。



この先、ちょいネタばれあります。


 ↓  ↓  ↓


結局、美弥子さんは浩さんとの離婚を選ぶ。
きちんとしていたい美弥子さんだから、それは当然のことだろう。
なのに、最後の最後の【奇妙で残念なことですが、美弥子さんはジョーンズさんの目に、もう小鳥のようには見えないのでした】って一文がショックで怖くて・・・
たとえ美弥子さんが離婚しても、きっとこの二人に未来はない。
つまり、ジョーンズさんはかごの中の鳥のような、きちんとした奥さんだった美弥子さんだから好きになったんだ。
なんつー話
けどそうだよね〜。
家族のことにしても、日本での美弥子さん以外の女性との関係にしても
ジョーンズってそういう男なんだと思う。
このほんわかした文体がジョーンズを「ちょっと素敵な害のない外国人」だってカン違いさせたんじゃない?

このエンディングを受け、読み終えてみて初めて、
このちょっと怖い表紙の意味がわかった気がしました。

外の世界へ出ることを知ってしまった美弥子さん。
このさき、彼女はどうすれば幸せになれるんだろう・・・。
| comments(2) | trackbacks(1) | 12:02 | category:    江國香織 |
# 王国〈その4〉アナザー・ワールド
評価:
よしもと ばなな
新潮社
¥ 1,365
(2010-05)
コメント:王国・・・その後の物語

JUGEMテーマ:小説全般 
 ● 王国〈その4〉アナザー・ワールド  / よしもとばなな
 ● 新潮社
 ● 1365円
 ● 評価 ☆☆☆☆
視力の弱い占い師のパパ、薬草茶作りの達人のママ、そしてパパを愛するパパ2・・・。
3人の親の愛を一身に浴びて育った片岡ノニは、陽光降るミコノス島で運命の出会いをした。
その相手は、“猫の王国の女王様”と死に別れた哀しみの家来・キノ。
そう言えば昔、パパが「ノニはいつか、恋愛抜きで、猫の女王の家来と一緒にいるようになる」って言ってたっけ・・・。
ノニ、苦しいときは小さかった時のことを思い出して・・・。
もうひとつの王国、ついに最高の完結へ



(感想)

わー
ついに大切な大切な「王国」シリーズが終わってしまいました
シリーズの第4巻と聞いていたので、続編かと思っていたけど、
続編というよりは番外編と言った方がいいかも??
今作の主人公は雫石の娘・ノニです。

ばななさんの文章は一文、一文が心にスーッと入ってくる。
今作はこれまでの3冊に比べると沁みこんでくる感が低かったのだけど、
それでもやっぱり根の部分に流れているものは同じ。

ばななさんの本を読み、書いてあることの意味がきちんと理解できるようになったら、
すごく生きやすくなった。
地球と、自然と、あたりまえに共存して生きることはこれからの時代、
もっともっと大切なことになってくる。
文明の進化に乗り遅れることよりも、その方がきっと意味があるよね。
それだけは忘れずにいたい。

けど、この本の中の雫石は私の知ってる雫石とイメージ違った。
小説に書かれていない時間の中で、彼女はどんな人生を送ったんだろう。
ずいぶんとたくましくなった気がするなぁ。
| comments(2) | trackbacks(0) | 12:09 | category:    よしもとばなな |
# ピストルズ
評価:
阿部 和重
講談社
¥ 1,995
(2010-03-24)
コメント:神町シリーズ第2弾!

JUGEMテーマ:小説全般
 ● ピストルズ / 阿部和重
 ● 講談社 
 ● 1995円
 ● 評価 ☆☆☆
「若木(おさなぎ)山の裏手には、魔術師の一家が暮らしている――」
山形県東根市神町で書店を営む石川は、
あるキッカケから、町の外れに住む“魔術師一家”と噂される人々 に接触する。
その名は菖蒲(あやめ)家。
謎に包まれた一族の秘密を探るべく、
石川は四姉妹の次女・あおばにインタビューを敢行するのだが……。
そこで語られ始めたのは、一族の間で千年以上も受け継がれた“秘術”にまつわる目眩めく壮大な歴史だった。
そして秘術の後継者である末娘・みずきが引き起こしてしまった取り返しのつかない過ちとは ??



(感想)

ついに出た!神町シリーズ第2弾!
実在する町・神町・・・。
阿部和重さんの故郷でもあるこの小さな田舎町は、
私が住んでいるところから車で20分ほどのところにあります。
主人公のモデルとなった本屋さんはちゃーんと実在するし、
作中に出てくる地名やお店の名前も実在するものが多いので、
阿部さんの作品は私にとってすごくイメージしやすく、楽しく読める
あの小さな町のどこかで、あんな事件やこんな事件が起きてると想像するだけでドキドキします。
よくも、「神町」ってキーワード1つでこんな作り話が妄想できるな・・・すごいぜ。

けど、面白さはいまひとつ。
面白くなりそうな予感はするものの、突き抜けない。
壮大に大きな風呂敷を広げてみたものの、きれいに畳むことができなかったような。
濃い登場人物が多いわりに稼働率低くてもったいない。

自分の地元を妄想でこんなに汚して、おもちゃにして、
地元には不愉快に思っている人もいるとかいないとか・・・。
どうしてここまで神町にこだわる???
疑問持ちながらも、このかたくなといえるほどのゆがんだ愛情・・・私はいつまでもこの妄想にお付き合いしたいと思ってます

今作は「シンセミア」事件から6年後であり、主人公はあの事件の傷をいまだに抱えてるし、
「グランドフィナーレ」や「ニッポニアニッポン」の世界にもつながっていて、
阿部さんの作品を読んでいる者にとっては二度も三度もおいしい
逆にこの本を“はじめての阿部和重”にしてしまうと楽しさは半減
絶対におすすめしません。

ふ〜。それにしても長かったぜ665ページ。
途中、ある一部分だけが説明的でつまらなくて、読了まで時間がかかりました。
文体は以前ほど堅苦しくなかったような??
あのかたい文章でおかしげなことを書くところが好きだったのに(-_-)
ま、へんな作家であることに変わりはないが。
| comments(2) | trackbacks(1) | 15:32 | category:    阿部和重 |
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