隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 南の子供が夜いくところ
評価:
恒川 光太郎
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,470
(2010-02-27)
コメント:まったく新しい恒川光太郎

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 南の子供が夜いくところ  / 恒川光太郎
 ● 角川書店
 ● 1470円
 ● 評価 ☆☆☆
「今年で120歳」という若いおねえさんと出逢ったタカシは、
彼女に連れられ、遠く離れた南の島で暮らすことになる。
おねえさんの名前は「ユナ」。
ユナは昔、ある島に一本しかない紫焔樹のある森の奥の聖域に入ることを許された
〈果樹の巫女〉と呼ばれた少女だった……。
呪術的な南洋の島のめくるめく魔術的世界。


(感想)

人の優しさや残酷さを描き、ダークファンタジーみたい。
恒川さんがファンタジーを書くとこうなるのかなぁ。
新境地を開いたかのようなまったく新しい恒川ワールドで、
南国が舞台ということもあり、いつもの背筋がゾクゾクとするような恐怖感はありません。

連作短編の形になっているのだけど、
残念なのは面白いところとそうでないところがはっきり分かれていること。
そして、連作としてのリンクの仕方が、あまり鮮やかではないところ。
ユナさんをもっと前面に出せばもっと連作らしくなったのでは?

1作目の「南の子供が夜いくところ」と2作目の「紫焔樹の島」までは面白いし、
たしかなつながりも感じられるんだけど、読み進めるうちにどんどん離れて行ったような・・・。
この世でも、現代でもない世界を描いているのかと思いきや、
タカシの家族の問題などは今の日本にありがちな話。
現実と非現実をさまようようなユラユラとした不可思議さ・・・なぜか心地いいんですよね。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:23 | category:    恒川光太郎 |
# スロープ
評価:
平田 俊子
講談社
¥ 1,680
(2010-01-30)
コメント:鍋屋横丁、ソロモン諸島、隠岐・・・

JUGEMテーマ:小説全般 
 ● スロープ / 平田俊子
 ● 講談社
 ● 1680円
 ● 評価 ☆☆
夫だった人に追い出されたのを機に、東京に住み始めて今年で19年・・・。
わたしはあのとき東京に自分を流した。
心の深みから湧き上がる言葉。海を越え、坂で遊ぶ、大人小説。


(感想)

たまーに、まだ一冊も読んだこともない、名前も聞いたことのない作家の本を読んでみたくなる。
今回もそのパターンだったのだけど、どうやら今回はハズレのようです。
内容がつまらなかったのは私個人の意見でしかないけど、
でも、150ページしかなくて、しかも文字もデカいのにこの価格はないんじゃない???
ああ・・・こういうのを「大人小説」というのであれば、私はずっと「子供小説」を読んでいたい。

主人公の女性はさまよっている。しっくりくる居場所が見つからないようだ。
19年前に夫だった人に追い出され、流されるように東京にたどりつき、
方南町・鍋屋横丁で暮らし、
コロンバンガラ島で戦死した伯父の慰霊巡礼ツアーでソロモン諸島へ旅し、
その報告も兼ねて実家のある隠岐を久しぶりに訪れ・・・。
なんだか次々と主人公が移動して、ついていくのが大変でした。
いとこの話とか、消防車の話とか必要???
うーん、まったくわからない。

感想をまとめるのさえ苦しいほど、印象が薄い。
そういう本が年に何冊かあるけど、これもそのなかの一冊。
こんな感想、ネット上に公開していいのかしら?
それすら罪悪感を覚えるほどです(^_^;)
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:56 | category: 作家名 は行 |
# IN
IN
評価:
桐野 夏生
集英社
¥ 1,575
(2009-05-26)
コメント:「IN」は“淫”

JUGEMテーマ:小説全般 
 ● IN / 桐野夏生
 ● 集英社
 ● 1575円
 ● 評価 ☆☆☆
かつて小説家の緑川未来男は、
愛人の存在に嫉妬した妻の狂乱を『無垢人』という小説で赤裸々に書いた。
そして今、小説家の鈴木タマキは、
己自身の恋愛の狂乱と抹殺を『淫』という小説に書こうとしている。
『無垢人』と『淫』を繋ぐ、「○子」とは誰か?
『無垢人』に関する取材をすすめていくうちに、新たな真実が浮き彫りになり、
タマキ自身の恋も、ある結末を迎えることに・・・。


(感想)

桐野夏生といえば、あの名作「OUT」がある。
タイトルから察するに当然、「OUT」と対になる作品として「IN」が書かれたのだろうと思いきや、
「OUT」とはまったく雰囲気の違う作品でした。
「IN」は、“入れる”の「IN」ではないのです。
“淫”であり、“影”であり、“因”であり、“隠”であり、“姻”。
さまざまな意味を持つ「IN」であるものの、“入”の要素はないのです。

お話は主に2つの軸からなります。
小説家のタマキが、今手掛けている作品は
緑川未来男という作家が実話をもとに書いた「無垢人」という小説を題材にしたもの。
関係者への取材を進めるうちに真実に少しづつ「無垢人」騒動の真実。
そして、取材を進めるうちにタマキと、彼女とかつての恋人の間にもある変化が訪れる・・・。

作家という職業、そして作家を家族に持つ者にも覚悟が必要。
事実を織り交ぜたり、自分の体験や境遇を切り売りするように書くこともあり、
大きな犠牲を伴う職業とも言えるだろう。
タマキ・未来男と同じように桐野さんのこの職業に対する覚悟も感じられる。

テーマは「恋愛の抹殺」ということだけど、それに関しては私はよくわからなかった。
タマキと元恋人・阿部のつながりの深さがいまいち伝わりにくい。
「○子」の正体がわかったときもインパクトも少ない。

現代の闇をリアルに描くことに定評のある桐野さんにしては、
いつも感じさせられる凄味は感じるまでもなく読み終わってしまったかんじ・・・。
どうやら私はこの作品の世界に「IN」できなかったようです
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:49 | category:    桐野夏生 |
# あるキング
評価:
伊坂 幸太郎
徳間書店
¥ 1,260
(2009-08-26)
コメント:これが伊坂幸太郎??

JUGEMテーマ:小説全般 
 ● あるキング / 伊坂幸太郎
 ● 徳間書店
 ● 1260円
 ● 評価 ☆☆
弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた山田王求。
王求は仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を背負い、野球選手になるべく育てられる。しかし王求めるの才能は両親の期待以上に飛び抜けていると知った両親は、
さらに狂気ともいえる情熱を彼にそそぐ。
すべては「王」になるために・・・・。
 

(感想)

いつものスタイリッシュで爽快な伊坂ワールドではない。
最近、ちょっと伊坂作品に飽きてきていたのだけど、これはヤバイくらいつまらなかった。

両親の仙醍キングスへの愛は執着でしかなく、
王求の野球への思いも孤独を伴い、純粋な情熱とは思えない。
3人の女は不気味だし、なにやら常に気味の悪い空気が立ち込めているようで
読んでいて息が詰まるような作品でした。

才能のある人の孤独・王の孤独・・・。
凡人になれない苦しみってあるのだろうなぁ。
その苦しさを描きたかったんだろうけど、あまりに王求が完璧すぎて、
人間味もなくてなんだか感情移入できなかった。
残念。
| comments(2) | trackbacks(0) | 16:15 | category:    伊坂幸太郎 |
# 製鉄天使
評価:
桜庭 一樹
東京創元社
¥ 1,785
(2009-10-29)
コメント:「赤朽葉家の伝説」のスピンオフ。こういうの、評価云々の問題じゃない(苦笑)

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 製鉄天使 / 桜庭一樹
 ● 東京創元社
 ● 1785円
 ● 評価 ☆☆☆
鳥取県赤珠村。
その地に根を下ろす製鉄会社の長女として生まれた赤緑豆小豆は、
村の人たちに「バカお嬢」と呼ばれる手のつけられない不良娘。
彼女の強さの秘密は鉄を支配し自在に操るという不思議な能力だ。
荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディース“製鉄天使”の初代総長として、
中国地方全土の制圧に乗り出す―。


(感想)

うわー
桜庭さん、どこへ向かってるんだろう・・・。
これって「赤朽葉家の伝説」のスピンオフといってもいいのかな?
「赤朽葉〜」では大映ドラマを思わせるようなハチャメチャぶりだった不良少女・毛鞠。
今作の主人公の小豆は、おそらく名前だけは変更したものの、まるっきり毛鞠本人。
「赤朽葉〜」では描かれなかった不良たちの抗争と、少女の天下統一までの軌跡の物語。
ツッコミどころ満載で、まじめに読書を楽しみたい人は読んじゃダメ
これは完全にマンガです。
でも、読ませる力はあるんだよな〜。覚悟して読んでくださいね。

不良とかレディースとか、私にはまったくなじみのない世界だし、
なんだかイタくて笑える存在として描いているのがウケるー。
彼女らの真剣さとアツさが増せば増すほど余計に笑える
でも、えいえんを求める、十代の女の子のパワーってすごい。
これはこれで彼女たちの輝ける青春なんだよね。
笑えるなかに突然訪れるスミレっ子の転落と最期がつらい
私もスミレっ子のかわいさに惚れてしまってたので泣きました

この作品を好きとか嫌いとか論じたり、批評したりすること自体がバカバカしくすら思える。
これはこれなんだから、これでいいのよ。
そう開き直ってしまう作品。




読んでから数日は頭の中に「ぱらりらぱらりら〜」が響いてしかたないぜよ
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:13 | category:    桜庭一樹 |
# 吉祥寺の朝比奈くん
評価:
中田永一
祥伝社
¥ 1,680
(2009-12-11)
コメント:ちょっとクセのある恋愛小説

JUGEMテーマ:恋愛小説
 ● 吉祥寺の朝比奈くん / 中田永一
 ● 祥伝社
 ● 1680円
 ● 評価 ☆☆☆☆
「交換日記始めました!」
 恋人同士の圭太と遥が内緒で交わしていた交換日記それは二人だけの秘密だったはずが…。
「ラクガキをめぐる冒険」
 高校二年のときにクラスメイトだった遠山真之介。五年後の今、不思議なことに同級生の誰も彼のことを憶えていないのだ。
「吉祥寺の朝日奈くん」
 山田真野。上から読んでも下から読んでも、ヤマダマヤ。吉祥寺に住んでいる僕と、山田さんの、永遠の愛を巡る物語。
表題作を含める全5作。中田永一が贈る恋愛小説集



(感想)

「百瀬、こっちを向いて。」の中田さんの2作目です。

甘酸っぱく、純粋で、恋がはじまりそうなときめきにドキドキ
激しさはなく、小さな幸せと喜びで成り立っている恋・・・。
そこにうまくユーモアとミステリーを絡ませて、前作よりもグッと面白くなったと思います。
これなら恋愛小説が苦手な人にもおすすめできそう

特に「交換日記始めました」で日記をつないでいく人のあたたかさにほっこり。
「ラクガキをめぐる冒険」はまさかこういう展開におちるとは思わなかったので、
やられた〜って気が(苦笑)
中田さん、ほんとにほんとにあなたは何者なの
違うなら違うと言ってくれはやく、本当のことを教えて〜〜〜〜

読んでからかなり時間が経っているので、リアルに満足な感想を書けない自分が悔しい
なるべく読後の気持ちが新鮮なうちに書きたいんだけど、
なかなかそうもいかないのよねぇ
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:39 | category:    中田永一 |
# 結婚小説
評価:
中島 たい子
集英社
¥ 1,260
(2009-12-04)
コメント:形にこだわらない、それぞれの「結婚」

JUGEMテーマ:小説全般 
 ● 結婚小説 / 中島たい子
 ● 集英社
 ● 1260円
 ● 評価 ☆☆☆
「結婚小説」を書くために蕎麦打ち合コンに潜入取材した作家の貴世。
だが、急性蕎麦アレルギーでぶっ倒れ、途中退場することに・・・。
それがきっかけで出会った男も・福原も実は取材目的で参加していた映像作家
指をくわえて見てきた人の結婚・・・とうとう私にもみえてきた!?
 


(感想)

いま、何かと婚活、婚活と言われているけど、
主人公の貴世は39歳という年齢のわりにはそれほど結婚に対して焦りはない。
お見合いパーティに潜入したのは小説を書くための取材がしたかったから。
でも、そこで意外にも運命の出会いをしてしまい・・・

中島たい子さんって、いつも現代女性の興味をガッチリつかんできますよねー。
軽いうえに、自分や友人たちに置き換えて読めるような身近さもいい。
すごくスムーズに入り込みやすい作品です

ラストは意外な方向へいくのですが、
主人公の選択が良かったのかどうなのかは賛否両論あるだろうなー。
こういうの、これからの女性の考え方としてはアリなんだと思う。
この選択ができる主人公は素敵だし、本人たちはいいかもしれないけど、
でも結婚って本人同士だけのものじゃないですからね・・・
まだまだ主人公の柔軟な選択は社会に受け入れられるのは難しそう。
ラストがこうなったことで、単なるコメディに落ちてしまったような気がします〜〜

結婚って紙切れで縛るものじゃないですよね。
二人の心がつながっていれば、それだけで十分なはず・・・なんだろうけど、
まだまだこういう形が一般化するには時間がかかりそうです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:07 | category:    中島たい子 |
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