隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 三匹のおっさん
評価:
有川 浩
文藝春秋
¥ 1,600
(2009-03-13)
コメント:おっさんの話と侮るなかれ

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 三匹のおっさん / 有川浩
 ● 1600円
 ● 文藝春秋
 ● 評価 ☆☆☆☆
定年退職後、近所のゲーセンに再就職した剣道の達人キヨ。
柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主シゲ。
機械をいじらせたら無敵の頭脳派、工場経営者ノリ。
彼らは町内の平和を守る「三匹のおっさん」。
孫と娘の高校生コンビも手伝って、詐欺に痴漢に動物虐待…身近な悪を成敗


(感想)

恋愛小説の女王の有川さんが「おっさん」て・・・・
すっかり有川さんのベタ甘な世界の中毒になってる私は、このタイトルを見て少々がっかり。

が、違った
有川さんはファンの期待を裏切りません。
3人の元気なおっさんの活躍を描きつつも、ちゃーんと甘い要素も入ってますよ〜
キヨさんのお孫さんの祐希くんと、ノリさんの娘さんの早苗ちゃんの高校生コンビ。
この二人の甘い恋の行方はやっぱり有川テイストで激甘です

3人のおっさんが町の平和を守るために自ら私設自警団を結成。
バランス良く頭脳派1人と武闘派2人がそろっていることもあり、
小さな町を舞台に目立たず、なのに完璧におっさんたちは平和を守ります。
「ズッコケ3人組」の中年シリーズにそっくりなお話なんだけど、
甘い甘い要素がある分、女子的にはこっちの方が楽しめるかな

キヨさんが60歳になり、定年を迎えたことから彼らの影の活動ははじまります。
その活動は引ったくり騒動や痴漢、学校で飼っているカモを傷つける犯人を懲らしめたり・・・。
有川さんがあとがきでも書いているように、
今どきの60歳って全然“おじいちゃん”じゃないですよね〜。
まだまだ現役でいけそうなのに定年が早すぎるくらい。
それなのに会社はどうしてもやめなきゃいけない。
そんな余力が有り余ってる世代が、自分たちで何かをはじめるってすごくいいことだと思う。
世のおじさんたちにも見習ってもらいたいな。

お年寄りと孫の世代にセンスや考え方に開きがあるのは当然のこと。
しかし、この物語の中で彼らはお互いの良いところを認めることにより、
その距離をどんどん近づけていく。
頭ごなしに「今どきの若いモンは・・」だとか「年寄りはうるさいから」なんて思いこまずに、
まずはしっかり話を聞いてみるのがいいのかもね。
じいちゃんと孫のこういう関係、いいよなぁ

老後までのほんの何年かを、こんな風に生き生きと過ごせたらいいですね。
定年後のオヤジたちの生き方の良いモデルを見たような気がします。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:39 | category:    有川浩 |
# 星間商事株式会社社史編纂室
評価:
三浦 しをん
筑摩書房
¥ 1,575
(2009-07-11)
コメント:オタクあり、BLあり

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 星間商事株式会社社史編纂室 / 三浦しをん
 ● 筑摩書房
 ● 1575円
 ● 評価 ☆☆☆☆
星間商事株式会社は1946年に創立した中規模商社
2006年が会社が出来てちょうど60年であり、
それに向けて社史編纂室が誕生したが、
創立60周年のお祝いが執り行われた昨年、社史が完成することはなかった
それはたんに社史編纂室のメンバーがやる気がなくゆるすぎるから・・・。
そんなゆるい部署だからメンバーの一人・川田幸代が
自分のオタク的趣味のために会社のコピー機を使いまくろうが誰も気づくはずはない。
しかし、それが運悪く本間課長に見つかってしまい、
会社の重大な過去を暴く、爆弾みたいな計画に展開していくなんて・・・。



(感想)

社史編纂室のメンバーにオタク女子がいたことから、
本物の社史のほかに、会社の過去の秘密を暴く同人誌を作ることになる社史編纂室のお話。
テンポが良くコメディっぽいのでスラスラ読めました。

が、真実がわかっていく過程でのドキドキ感や、
真実を知るものからの脅迫めいたものにも緊張感がなく、読みごたえはなかった。

オタクあり、BLあり・・・。
軽めで面白いかと言われれば面白いんだけど、もう少し深みが欲しかった。
作中に挿入される本間課長の書いた自伝的小説や幸代のBL小説が面白くなかったのが残念。
会社の暗部として闇に葬られていたサリメニの女王のことがもっと深く描かれてればなぁ。
ここまで会社が隠したがる秘密にそれほどインパクトがなかったのもマイナスです。

仕事・趣味・恋(結婚)・友情・・・すべてを充実させたい。
でも、そんなにすべてがうまくいくなんてありえないから、何かを諦めなきゃいけなくなる。
その究極の選択に悩む幸代たちアラサー女子の葛藤も、
私が彼女たちと同年代のせいかすごくよくわかる。
かなり非現実的なお話と思いきや、
こういう部分にしっかりとリアリティーは描かれていました。
| comments(2) | trackbacks(1) | 12:47 | category:    三浦しをん |
# 神去なあなあ日常
評価:
三浦 しをん
徳間書店
¥ 1,575
(2009-05)
コメント:「なあなあ」のゆとりこそが大切なのかな

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 神去なあなあ日常 / 三浦しをん
 ● 徳間書店
 ● 1575円
 ● 評価 ☆☆☆☆
高校を出たら、フリーターにでもなってテキトーに食っていこうと思ってた。
なのに、担任と母親が俺に内緒で「緑の雇用制度」なるものに応募していたんだ。
無理やりに新幹線に押し込まれ、俺は三重県の山奥にある「神去村」へ・・・・。
はじめはイヤイヤながらも林業に従事しはじめた俺がこの村でみつけたものは・・・。


(感想)

「なあなあ」とはこの物語の舞台となる神去村の方言で、
「ゆっくり行こう」「まぁ、落ち着け」みたいなニュアンスの言葉。
わりとおっとりした人が多いこの村そのものを表すような言葉なのです

今どきの男の子・勇気が自分の意志とは関係なく林業が盛んな山奥の村に放り込まれた。
村の人との交流やまったくなじみのなかった林業という職業に触れ、
一歩ずつ大人の男に近づいていく成長の1年間を綴った物語。

林業なんて正直言ってまったく興味ない。考えたこともない。
そんなんでこのお話を読めるんかな?と一抹の不安はあったけど、
これが意外と引き込まれました。
ダイナミックな自然の姿と、林業に携わる男たちの職業と木に対する真摯な姿勢。
ここには都会育ちの勇気をここにとどまらせるだけのものがあるもんね。
素晴らしいこの村の光景は、とっても自然に、鮮やかに、目に浮かびます

村のピンチである山火事の被害を食い止める手助けをし、
村の神聖な行事である祭りにも参加し、村民も少しずつ勇気を村の一員として認め始める。
閉鎖的な土地で新しいものを受け入れるのは簡単なことじゃない。
その緊張感まで手のひらに伝わるようでした。
48年に一度のお祭りの場面は迫力があったけど、笑えたし

勇気の仕事の先輩であり、同居人でもありヨキの飼っている犬・ノコがかわいい。
犬だけど、みんなと同じくらい「山の男」としてのプライドは高いんだよねー。
山火事のときに役に立てなかったことに傷つき、自信をなくしてしまう様は
かわいそうだけど可愛かったなぁ

笑える要素たっぷりなのに、勇気のマジメな思いはしっかり感じられます。
さわやかで気持ちのいい作品でした。
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:26 | category:    三浦しをん |
# きのうの神さま
評価:
西川 美和
ポプラ社
---
(2009-04)
コメント:医療をテーマにした短編集

JUGEMテーマ:小説全般
 ● きのうの神さま / 西川美和
 ● ポプラ社
 ● 1470円
 ● 評価 ☆☆☆
『ゆれる』で世界的な評価を獲得し、今、最も注目を集める映画監督が、
日常に潜む人間の本性を渾身の筆致で炙りだした短編集。
『ディア・ドクター』に寄り添うアナザーストーリーズ。


(感想)

映画「ディア・ドクター」の原作本かと思いきや、そうではありません。
「ディア・ドクター」という短編も収録されてはいるんだけど、違う話みたいだし、
まぁ、地域医療にかかわる人を題材にした作品とでもいうのでしょうか。

田舎に住んでいる人がどこか具合が悪くなったとしても、
都会のようになんでもかんでもすぐに近くの病院で診てもらえるわけではありません。
その点はとても不便で心配も多いのだけど、
でも、子供のころから同じ先生にかかれば、おのずと医師と患者の間で信頼関係や親しみもうまれる。
田舎に住んでいる私だからこそ、
著者は地域医療の現状を丁寧に取材し、真摯に描いていることが感じられました。

地域の医療をあらゆる角度からみた、静謐な作品です。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:51 | category: 作家名 な行 |
# 水曜日の神さま
評価:
角田 光代
幻戯書房
¥ 1,680
(2009-06)
コメント:旅をすること、書くということ

JUGEMテーマ:エッセイ
 ● 水曜日の神さま / 角田光代
 ● 幻戯書房
 ● 1680円
 ● 評価 ☆☆☆
必要なものはほんの少しだけ。
「旅をすれば小説が書ける」と信じて10年。
ところがある日、小説が書けなくなった。さあ、どうする
旅にまつわる46篇を収録したエッセイ集。 



(感想)

主に旅にまつわるエッセイを集めた作品集です。

角田さんはたくさんの旅をされていて、今までに行った国の数は33カ国ほど。
ほとんどがリュックサックを背負って、安宿を泊まり歩くような旅らしい。
見た目はそんなにアクティブな人には見えないのになぁ。意外

角田さんを作っているものは、おそらくきっと旅での経験なのだろう。
そして、角田さんのエネルギーの源がわかったような気がしました。
自分の常識や価値観にはあてはまらない世界を見ることは
小説家にとってとても大切なことなのだろう。
でももちろん、私たちにとっても
自分の枠に当てはまらないものを見ることによって、見えてくるものもあるんだよね。

なかでも「オリエント急行に乗る」の章に感銘を受けました。
「動く豪華ホテル」といわれるこの列車での贅沢な時間は、
ここに乗り合わせた客とスタッフすべてによって作り出される極上の時間だといいます。
日本人の贅沢は「休息」を意味するけれど、欧米人のそれは「未知のものを存分にみること」らしい。
だから、ホテルを走らせるのだという。
贅沢はただ漫然と感受するものではなく、自らが作り出すもの・・・・・。
日本人にはない発想であり、国民性の違いというか真の意味での心の豊かさを見せられた気がします。
 
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:39 | category:    角田光代 |
# オイアウエ漂流記
評価:
荻原 浩
新潮社
¥ 1,785
(2009-08-22)
コメント:悲壮感のない、明るいサバイバル小説

JUGEMテーマ:小説全般
 ● オイアウエ漂流記 / 荻原浩
 ● 新潮社
 ● 1785円
 ● 評価 ☆☆☆
リゾート開発会社の海外事業スタッフとして勤務する塚本賢司は、トンガからラウラへ向かう飛行機に乗っている。
新規事業の接待のために上司らとともにスポンサー企業の御曹司を接待をしている最中なのだ。
しかしなんと、その飛行機が遭難
命からがら流れ着いたのは水も火もないポリネシアの孤島
しかもどうやらココ、無人島の予感が・・・
賢司をコキ使う上司たち、スポンサー企業の御曹司、挙動不審な新婚カップル、
小学生とそのじっちゃん、怪しいガイジン・・・プラス犬
あり得ないメンバー10人での毎日は、はたしていつまで続くのか。
 

(感想)

このようなテーマの小説というと、
「喰うか食われるかの生々しい生存競争」「ギラギラした性欲」みたいな、
人間の欲の醜い部分がてんこ盛りみたいなおぞましさがお約束でしょ?
が、この小説にはまったくそんな醜さも悲壮感はありません。
ここまで明るいサバイバル小説ははたしてあるでしょうか?
荻原浩さんならではの笑いが満載です

無人島に来てまでも打ち破ることができない上司と部下の関係、
スポンサーへのヨイショ・・・現代日本の会社社会のおかしみを皮肉るようなブラックユーモア。
でも、読み進めるにつれて、生きていくためにはどんな手段を使ってだって、
どんなものだって食べなきゃいけない「生 = 食」の事実をまざまざと見せつけられ、
きれいごとじゃない生の生々しさが身にしみました。

遭難するまでの機内でのくだりが長いのと、
ただひたすら島での生活を描いただけなので凡長な気がしなくもない。
もう少しコンパクトにまとめてもらえれば、評価はもっと高かったと思います。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:10 | category:    荻原浩 |
# 静子の日常
評価:
井上 荒野
中央公論新社
---
(2009-07)
コメント:素敵なおばあちゃんの毎日

JUGEMテーマ:小説全般
 ● 静子の日常 / 井上荒野
 ● 中央公論新社
 ● 1470円
 ● 評価 ☆☆☆☆
宇陀川静子、75歳。
息子夫婦(愛一郎・薫子)が同居するために借りてくれた一軒家に、
彼らと孫のるかとの4人で暮らしている。
週に2回は水泳を習うためにフィットネスクラブに通い、
「可愛らしいおばあさん」だからすぐにみんなの人気者になった。
でも、この人、たんなる可愛らしいおばあさんじゃおさまらない
何かに過剰すぎて、反対に何かが決定的に足りなくもあるこの世の中で、
毎日のように出くわす“ばかげた”事象を決して見過ごさない。
このバランスの悪い現代での、静子なりの決着のつけ方とは・・・。



(感想)

読み始めて2,3ページですぐに“私の好きそうなにおいがする”と感じましたが、
最初のイメージ通り、私好みの作品でした

75歳の可愛らしいおばあちゃん・静子さんは、ポジティブで行動的。
自分を「もう年だから・・・」なんてまったく考えることもなく、
どんどん若い人の輪に入っていく(というか、自然に若い人たちが歩み寄ってくる)。
こんなおばあちゃんになりたいと思ってしまうような理想的なお年寄りなのです。

何も知らないふりをして、でも物事はしっかりと見ている。
この年になると若い人の言うことに流されがちだけど、自分の考えはちゃんと持っている。
しかも、家族や若い仲間の人生がいい方向へ向かうように、
本人に気づかれようにさりげなく軌道修正のサポートをしてくれるような人。
でしゃばらず、見返りを持たない、「私がしてあげたのよ」的な意識すらない・・・。
この年齢になれば人生の紆余曲折を味わって物事を達観できるようになっているでしょう。
その時に自分に残っているものが、こんな優しさとさりげなさだったらいいなぁ。
ああ、こんな年の取り方がしたい

自分の思い通りにいかないことを拒絶したり、イヤイヤ思いながら妥協するよりは、
静子さんのように折り合いをつけてしまう方がいい。
がまんしなければならないから、その環境でも楽しめる要素を自分で見つけてしまおう。
案外、このくらいのペースで生きる方がラクなのかもしれませんよね

ちっぽけだけど、これこそが私自身の人生。
その愛おしさ・かけがえのなさをしみじみを感じさせてくれる本です。
ほっこりいい時間を過ごさせてもらいました
| comments(2) | trackbacks(1) | 11:55 | category:    井上荒野 |
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