隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# ワーキング・ホリデー
評価:
坂木 司
文藝春秋
¥ 1,550
(2007-06)
コメント:父と息子・・・ひと夏の親子物語

JUGEMテーマ:小説全般
● ワーキング・ホリデー / 坂木司
● 文藝春秋
● 1550円
● 評価 ☆☆☆☆
ヤマトは元ヤンのホスト。
ある日、彼の勤めるホストクラブに小学生・進が訪ねてくる。
「はじめまして、お父さん」・・・
そんなときに限って運悪く仕事をクビになってしまい
宅配便(特別仕様車)ドライバーに転身することに・・・。
新しい仕事と息子との生活を同時にスタートさせることになったひと夏の贈り物。




(感想)

漫画かライトノベルを読んでいるような軽さで読みやすい。
元ヤンホストの視点で描かれているので言葉はくだけてて荒っぽいけど、
逆にそれが親しみやすい
進の言葉だけを信じ、本当に息子なのかという疑いも持たないヤマトに違和感を覚えつつも、
ほのぼの優しい雰囲気に包まれて、あまり深いことは気にせずに読んでしまいました。

周囲のあたたかい人たちからの手助けもあり、
無理をせずに、自然に親子になっていくヤマトと進の姿がほほえましい
料理が得意で小学生というよりは「おばちゃん」みたいなしっかりした性格の進が
時折見せる“子供らしさ”もかわいいな〜。
こんな風にいい人しかでてこない作品って珍しいよね。
家族向けのテレビドラマにしたら面白いかも(提供はもちろんヤマト運輸で)

坂木さんの作品ってどれを読んでも「続きが読みたいっ」と思わせてくれるけど、
この本も今後の2人(進の母・由希子も含めた3人)がとっても気になります
続編希望
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:57 | category:    坂木司 |
# 乱反射
評価:
貫井 徳郎
朝日新聞出版
¥ 1,890
(2009-02-20)
コメント:私もあなたも加害者になるかもしれない・・・

JUGEMテーマ:小説全般
● 乱反射 / 貫井徳郎
● 朝日新聞出版
● 1890円
● 評価 ☆☆☆☆
ほんの少しの職務怠慢、ルール違反、事なかれ主義、尊大な態度・・・・・・
複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。
裁くことのできない、罪さえ問えない人災の連鎖により奪われた命・・・。
遺族はただ慟哭するしかないのか?
モラルなき現代日本を暴き出す、新時代の社会派エンターテインメント!
 

(感想)

普通ならプロローグのあとに1章、2章、3章・・・とすすんでいくものだけど、
この本は「−44」からはじまります。
残すところ3分の1までも読んだ頃にやっと「0」となり「1」がきて、
ここではじめて事件が起こるというカウントダウン形式が盛り上げてくれます。
つまり、3分の2は事件の序章にすぎないのだけど、
ここでそれぞれの人物像をしっかり綴ることに大きな意味のある作品なのです。

犬のフンを放置したり、ちょっとだけ仕事の手を抜いたり、
誰にも迷惑をかけないと思ってほんのちょっとズルをするなんて誰にだってあること。
でも、それが誰かの運命を大きく変えているかもしれない・・・。
読めば読むほどに気が滅入る話でした。

たとえ知らない誰かの人生が崩壊してしまったとしても、
「あなたが犬のフンを始末しなかったから子供は死んだ」なんて・・・。
ほとんど言いがかりとしか思えない・・・。
ここで謝ったら自分の穏やかな人生までもが終わってしまうかもしれない、なのに素直に頭を下げられますか?
その答えは考えても考えても出てきませんでした。
この程度のルール違反、誰でもやってしまうでしょ???
だから謝ることをしない人たちの気持ちもわかるんです。

とりあえず、モラルについてもじっくり考えてみるきっかけにはなりました。
普段の無意識やエゴがとんでもないことを引き起こしてるのかもしれないんですね。
今日から気をつけようー。

乱反射って・・・本の内容、そのままのタイトルだったんですね・・・。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:33 | category:    貫井徳郎 |
# 暴走する「世間」で生きのびるためのお作法
評価:
佐藤 直樹
講談社
¥ 880
(2009-07-22)
コメント:生きにくさの原因はこれだった!

JUGEMテーマ:新書
● 暴走する「世間」で生きのびるためのお作法 / 佐藤直樹
● 講談社
● 880円
● 評価 ☆☆☆☆
現代人が生きにくい理由・・・・それは世間だった
うつ病も引きこもりも彼女ができないのも悪いのはぜーーーーんぶ世間
人生がうまくいかない人への大ヒント、「社会」と「世間」は全くの別物です。



(感想)

いま、日本が抱えているあらゆる問題の原因となるのは、ぜーんぶ「世間」だった
・・・・ たしかに言われてみればそうなのかも。
すべての嫉妬やコンプレックスは他者がいるからうまれるもの。
「人に迷惑をかけてはいけない」「そんなことをしたら人になんと言われるか」
人の行動の前には必ずこういう考えが出てくるもの。
世の中に白い目で見られないようにあれこれ考えて、それだけで疲れちゃうことって多すぎる
他者の目を気にすることがない世の中になればどんなにかラクでしょうね〜。

学校、仕事、恋愛、ケータイ事情、格差社会・・・
あらゆることがうまくいかないのはすべて世間のせいだというところにおさまる。
なかでも格差社会・恋愛の章は面白く、共感できました。
宗教に関係がなく正月もクリスマスもお盆も盛大にやる日本人。
世間がやっていることに流されて、都合のいいように取り入れる日本人。
ああ、外国から見ると、日本って本当に面白い国民性を持った国なんでしょうね。

あとがきで「大事なことは、あなたが学校や職場やサークルや恋愛でメゲそうになったときに、
自分が悪いのではない、世間が悪いのだと、きっぱり叫ぶことである」とあるけれど、
それで片付けちゃいかんですよね。
世間という悪条件があるのは誰もが同じであるならば、
なぜひきこもりになる人とならない人がいるのか。彼女が出来る人と出来ない人がいるのか。
そこはもう世間のせいではなく、自分自身の問題。世間のせいにしたってどうにもならないでしょ。
そこをどうする
私はそこまでのヒントを、この本の中できちんと教えてほしかったなぁ。
そこがちょっと残念。
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:20 | category: 作家名 さ行 |
# 学問
評価:
山田詠美
新潮社
¥ 1,575
(2009-06-30)
コメント:学校の勉強よりずっと大事な「学問」

JUGEMテーマ:小説全般
● 学問 / 山田詠美
● 新潮社
● 1575円
● 評価 ☆☆☆☆☆
東京から引っ越してきた仁美、貧しいけれどリーダー格で人気者の心太、
食いしん坊でお坊ちゃんの無量、いつでもどこでも眠ってしまう千穂
4人は、友情とも恋愛ともつかない、特別な絆で結ばれていた。
一歩一歩、大人の世界に近づいていく彼らの毎日を彩る、生と性の輝き。
海辺の街を舞台に、4人が過ごしたかけがえのない時間を官能的な言葉で紡ぎ出す傑作長篇。



(感想)

この作品でいう「学問」とは学校で教えてくれる勉強ではなくて、「男女の性愛」。
誰から教えてもらったわけではなく自らで性の衝撃と喜びに目覚め、
少しずつ大人に近づいていく4人の子供たちを描きます。

単純にエロスとは言えない、瑞々しさがありました。
大人に興味本位で教えてもらった知識ではなく、心や体の感覚と快感から少しずつ学んでいった「性」。
友情と恋が混じりあって、どこからがどの感情なのかわからない。
それがなんなのかもわからないのに、止められない性の欲望。
「ツ・イ・ラ・ク」を読んだ時のドキドキに似てるなぁ。
全然いやらしくなく、性の素晴らしさを描いてる。
逆に、美しく繊細にすら感じる・・・。
子供がそれを早いうちに理解するって勉強よりずーっと大切なコトじゃないですか

4人と、彼らに大きくかかわってくる同級生の素子ちゃんとの合わせて5人。
彼らの青春時代を描きながらお話は進行していくけど、
各章のはじめに彼らがこの先の未来にどういう人生を送り、どう死んでいくかが簡潔にしるされています。
「性」が あるから「生」がうまれる。「生」はやがて「死」となる。
それをすべてひとつの流れとしてとらえると、とてつもなく大きな生命の神秘を感じます。

これは本当に傑作
体からいろんなものがあふれてきそう。
山田詠美さん、読めば読むほどに好きになっていくなぁ〜
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:35 | category:    山田詠美 |
# ふちなしのかがみ
評価:
辻村 深月
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,575
(2009-07-01)
コメント:「トイレの花子さん」「こっくりさん」・・・懐かしい怖い話をモチーフにしたホラー

JUGEMテーマ:小説全般
● ふちなしのかがみ / 辻村深月
● 角川書店
● 1575円
● 評価 ☆☆☆
おまじないや占い、だれもが知っていた「花子さん」。
夢中で話した「学校の七不思議」、おそるおそる試した「コックリさん」。
やくそくをやぶったひとは、だぁれ?その向こう側は、決して覗いてはいけない―。
子どもの頃、誰もが覗き込んだ異界への扉を、青春ミステリの旗手が鮮やかに描きだす!



(感想)

「トイレの花子さん」「学校の七不思議」「コックリさん」など、
子供のころ、怖いなと思いつつも興味があって仕方のなかった怖い話をモチーフとした短編集です。
なんとなく知っていることをモチーフにしているので、すんなりと作品に入っていけました。

不条理感たっぷりの怖さってかんじ。
スッキリしないところに気味悪さを感じます。

なかでも表題作の「ふちなしのかがみ」が好きでした。
ラストの衝撃にやられたー。
「八月の天変地異」は怖さだけでなく、最後にあたたかい思いがわいてくる感動系。
新鮮味はないけど、こういうホラーも好きだなぁ。
「おとうさん、したいがあるよ」は心理的な怖さはあるけれど、
説明がつかず、いまいち消化不良。

辻村さんの長編も読んでみたいです。
気になってはいるんだけど、なんといってもどれも長いから勇気が出ないのです
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:34 | category:    辻村深月 |
# パーフェクト・リタイヤ
評価:
藤堂 志津子
文藝春秋
¥ 1,500
(2009-04)
コメント:女、50〜60歳からの人生をどう生きるか

JUGEMテーマ:小説全般
● パーフェクト・リタイヤ / 藤堂志津子
● 文藝春秋
● 1500円
● 評価 ☆☆☆
定年退職間近の布沙子は
かつての上司との愛人関係に区切りをつけ、なぜか自分を嫌っている苦手な後輩とも話し合い、
着実に定年の準備を進めつつあった。
そして、もう一つ、布沙子のこれからの人生を彩るであろう「完璧な退職」のために計画してきたことが…。
オーバー40の女性たちの心情を鮮やかに描いた短篇集。
 

(感想)

5つの短編からなる作品集。
どのお話にも共通するのは、主人公が「40代後半〜60歳間近の女性」であること。
テーマは「リタイヤ」。
この年代の女性ならではの不安や孤独、理想を描いています。

それぞれの価値観の違いで、「パーフェクトな老後」が違ってくるのは理解してるものの、
どのお話の主人公を見ても共感も憧れもできず、
「ほんとうにこれがあなたにとってのパーフェクトなの?」と思わずにはいられなかった。
誰の選択も正解だとは思えないし、納得できないもどかしさも残るけど、
いろんな人がいてこその世間だからな。
個人性の面白みは感じました。

定年を迎えたといっても今の60代はまだまだ若い。
定年後の人生に趣味でも見つけてのんびりと暮らすのもいい老後ではあるけれど、
まだ何かをはじめるのに遅いという年齢でもない。
守りじゃなく、攻めの姿勢で新しい生き方を模索する中年の方って輝いている


私の老後・・・まじめに考えてみたことはまだ一度もない。
私たち夫婦の場合、子供もいないわけだし、
まわりに左右されず、とにかく自分の手で切り開いていくしかないわけで・・・、
ただ流されるだけじゃない、後悔しない生き方・・・。
「まだ先のこと」なんて思わずに、少しは真剣に考えてみようかな。

はー、ここ本に出てくる女性たちは
私よりもずーっと「現役の女」なような気がする
30代の私方の方が女であることを忘れてるわ・・・。
これじゃいかんなー。現代の女性の若さを実感する作品でした。

それにしても・・・・この装丁はダサすぎませんか
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:48 | category:    藤堂志津子 |
# 龍神の雨
評価:
道尾 秀介
新潮社
¥ 1,680
(2009-05)
コメント:「雨」が陰湿な世界を作り上げている

JUGEMテーマ:ミステリ
● 龍神の雨 / 道尾秀介
● 新潮社
● 1680円
● 評価 ☆☆☆☆
雨のせいで、彼らは過ちを犯す。雨のせいで、彼女は殺意を抱く・・・。
すべては雨のせいだった。雨が僕らのすべてを狂わせた。
人は、やむにやまれぬ犯罪に対し、どこまで償いを負わねばならないのだろう。
悲しい境遇に置かれる2組の子供達がたどり着いた、慟哭と贖罪の真実とは?



(感想)

血のつながっていない親と暮らす2組の兄弟が出てきます。
血がつながっていないが故にわかりあえない、壁がある。
誤解と息苦しさの中で生きていて、それと「雨」がある事件を引き起こしてしまいます。

とにかくずーっと雨が降っている。
はじめから、この雨が陰湿な世界をすっぽりと作りこんで雰囲気作りがまずうまい
一気にこの世界に取り込まれてしまいました。

登場人物のみんが勘違いしていて、考えすぎていて、嘘もついてる。
嘘に嘘が積み重ねられ、どんどん取り返しのつかない事態へ・・・。
で、彼らだけじゃなく読者もまんまと騙されるのね。
まさかあの人がですよ。

圭介くんは可愛いんだけど、辰也は不気味だなぁ。
体操服の件とか怖すぎるー
でも、彼をわざわざキモキャラに描いてるのも、読者を騙す作戦なんだろうなぁ。
今、考えてみると何もかもが伏線だったのかもしれない。

きちんと感想を書こうとするとネタバレになりそう
今回は多くを語らずにおこうと思います。

ひとつ言えることは、
たとえ血がつながっていなくても、家族は家族なんだってこと。
この2組の家族は悲しみを経て、まさに本当の家族になろうとしていた矢先だったんだ。
あと少し言葉を交わしていれば・・・そう思うと切なくなっちゃいますね。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:57 | category:    道尾秀介 |
# 鬼の跫音
評価:
道尾 秀介
角川グループパブリッシング
¥ 1,470
(2009-01-31)
コメント:「S」でつなぐ短編集

JUGEMテーマ:小説全般
● 鬼の跫音 / 道尾秀介
● 角川書店
● 1470円
● 評価 ☆☆☆
鈴虫だけが知っている、過去の完全犯罪。
心の中に生まれた鬼が、私を追いかけてくる・・・・もう絶対に逃げ切れないところまで。
一篇ごとに繰り返される驚愕、そして震撼。道尾秀介、初の短篇集。
 


(感想)
直木賞の候補になっていた作品です。
連作短編集と聞いていたけど、どうも連作じゃない
なぜこれを連作短編だと言って売るのかナゾ・・・

収録されている6つのお話のすべてに「S」という人物が出てくるのですが、全員まったくの別人。
しかしどの「S」も薄気味の悪い男だったり、主人公が悪に手を染めるきっかけとなる男であったりと、
主人公にとっての負の存在であることは共通している。
この「どいつもこいつもみんなS」なのにも妙な怖さがあるんです。うまい演出だ。

ジメジメとした陰湿な空気が漂い、気味が悪く、
人の心理が次第に狂気へと変化していく過程もジワジワと怖い。
この「ジメジメ・ジワジワ」のいや〜な感じが文章から鳥肌立つほど感じられる。
文章がうまいんだなぁ。
結末で意外な方向へ落とすどんでん返しがあるけど、
私、こういう展開って好きなんですよね。

ちょっと他の話とは毛色が違う気がした「悪意の顔」がいちばん印象的です。
たんに怖いだけでなく、常識では片づけられない不思議系の要素もあって
乙一テイストな味わいがありました

夏だし、なにかホラーっぽいものでも読みたいなと思い手にした一冊。
その点ではまさに「求めてた本」。

実は道尾さんが直木賞の候補になったのはわかってはいたものの、
候補作のイトルを失念していて
図書館でとりあえず新しいっぽい道尾作品を2冊まとめて借りてきたのです。
「まぁ、このどっちかだろう」、と。
・・・ということで、次も別の道尾作品をご紹介します
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:09 | category:    道尾秀介 |
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