# 君が降る日
2009.05.29 Friday
JUGEMテーマ:小説全般
● 君が降る日 / 島本理生● 幻冬舎
● 1375円
● 評価 ☆☆☆
恋人・降一を交通事故で亡くした志保。
事故の原因をつくったのは降一の先輩の五十嵐で、彼は降一の代わりに降一の母の喫茶店を手伝うことになる。
彼の存在を受け入れられない志保だったが、同じ悲しみを抱える者同士、少しずつ二人の距離が近づいていき…。
「君が降る日」他、二編収録。
(感想)
「君が降る日」「「冬の動物園」「野ばら」の3編を収録。
島本理生ってどうしてこんなに痛々しい話しか書かなくなっちゃったんだろう。
最近は読んでて辛いです。
恋人を亡くしたことから、ゆっくりと立ち直っていく志保。
自分の不注意で友人を失い、その痛みを抱えて生きていくことになる五十嵐。
悲しみの種類は違えど、そのことで距離を縮めていく2人・・・。
福岡に行った五十嵐に会いに行っちゃう志保にイライラ
志保には幸せになってほしい。・・・・でも、降一のことも忘れないでほしい。
五十嵐にだって前を向いて、降一の分も生きて欲しい。
でも、降一が私の大切な人だったら、何があっても私は五十嵐を許すことはないだろう。
大切な人を失ったことのある人は、100%立ち直れるなんてことは絶対にない。
その傷も抱えての自分として生きていかないと。
前を向いて生きていても、悲しい記憶は忘れず、自分を形造る要素としていくべきだと思う。
いちばん好きなのは「野ばら」。
祐と佳乃は恋には発展しないものの、仲が良すぎる2人。
佳乃は祐の兄に淡い好意を抱くようになるものの、彼は意外な人物とくっついてしまう・・・。
最後の一文がズシンと重たい。
「私達は、あの雪の日から、別れると言えない関係を紡いでいたのだと、初めて気づいた。
ただ一つの、好き、だけが欲しい思春期にとって、
それがどんなに棘だらけの野ばらだったか、私は知らなかった。」
“別れると言えない関係”・・・・・これってすごーい適切で切ない表現。
男女間の友情って、
相手にほんのちょっとだけでも恋をしていなければ成立しないんじゃないのかな。
誰でも、これが恋なのか友情なのか、わからないような関係に揺れたことがあるはず。
祐が佳乃に谷崎俊太郎のあの詩が好きだと言ったことは、ある意味告白だよね?
あの時、すぐに佳乃にあの詩を見せていたらっ
「君が降る日」の二人だって、
何か一つでも二人の未来が重なり合うような小さな出来事があれば、変わっていた気がする。
ああ、人生ってこんなことの繰り返しなのかもね。
どのお話も、もう少し先が知りたいようなお話でした。
彼らはどんな未来を歩くのだろう。