隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 流れ星が消えないうちに
評価:
橋本 紡
新潮社
¥ 1,470
(2006-02-20)
コメント:「忘れる」んじゃなく、「残す」ということ。

JUGEMテーマ:小説全般
●流れ星が消えないうちに/橋本紡
●新潮社
●1470円
●評価 ☆☆☆☆
恋人の加地君が自分の知らない女の子と旅先の事故で死んだ。
あれから1年半・・・。
奈緒子は、加地君の親友だった巧君と新しい恋をはじめ、
ようやく加地君のいない現実を受け入れ、「日常」を取り戻しつつある。
しかし、あれから二人の間に加地君の話題が出たことは一度もない。
そして、奈緒子は今も加地君の思い出の詰まった部屋では眠ることができず、
玄関に布団を敷いて眠る日々を送っている――。
深い悲しみの後に訪れる静かな愛と赦しの物語。 




(感想)
ずっと気になっていた橋本紡さんを初読み

加地君という男の子の突然の死。
それから一年半が経ち、彼の恋人だった奈緒子は彼の親友だった巧君とつきあっている。
二人の間に一度も加地君の話題が出てこないという不自然さながらも、二人は一緒にいる。

死んでしまった人というのは、それだけで永遠であり、特別なものになってしまう。
生きている人間にはかなうはずのないポジションにいってしまってる。

巧君は奈緒子は愛しあってていることに間違いはない。
それはお互いの中に生きる加地君の存在を感じることも含めての愛情なのだろう。
巧君が言うように巧君の左手は今も加地君の右手をつかんでいるし、
加地君の左手は菜穂子の右手をつかんでいる。
加地君の両手は塞がれているけど、奈緒子と巧君の片手は空っぽのまま。
ならばその手と手をつないでしまえばいい。
そんな風に思える巧君は加地君に負けず劣らず素敵だ。

忘れられるはずがない。
でも、時間がたてばちょっとずつ忘れ、何かは残るだろう。
忘れる必要なんかない。それで構わない。
そう開き直れることが人の死を受け入れるということなんじゃないのかなぁ。
二人の恋はやっと今、スタートラインに立ったのかもしれない。

「忘れる」とか「思い出になっていく」ということは、
私のなかでも毎日心にわだかまっていた思いなので、
所々が自分自身に当てはまり涙がこぼれました。

加地君の言葉が胸に残ります。
「俺はもう考えるのはやめた。やれることはやろうと思うんだ。
考えすぎて立ち止まるのは、いいかげんにしとこうってさ。
動くことによって見えてくるものがあるはずなんだ。」
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:54 | category:    橋本紡 |
# 風葬
評価:
桜木 紫乃
文藝春秋
¥ 1,300
(2008-10)
コメント:新感覚官能ミステリーって・・・・。

JUGEMテーマ:小説全般
●風葬/桜木紫乃
●文藝春秋
●1300円
●評価 ☆☆☆
釧路で書道教室を開く篠塚夏紀は、母親に軽度の認知症の疑いを持つうちに、
これまで母の若いころや自分の出生について母から何も聞かされていなかったことに気づく。
母が焦点の合わない目でひたすらに「行かなくちゃ、行かなくちゃ」と言う“ルイカミサキ”という場所。
そこに母が隠している過去があるのでは??
封印された謎を解き明かすために夏紀はその地をめざす――。



(感想)
アマゾンなどのBOOKデータベースには「新感覚官能ミステリー」と書いてあり、
その「新感覚」という言葉にひかれて手にとってはみたものの
これのどこが新感覚なの〜
いかにも2時間サスペンスドラマみたいな内容
(“岬”がキーワードってのもいかにもサスペンス的でしょー!?)
「官能」的な要素は感じなかったし、
これほど内容の紹介と中身が伴わない作品には出会ったことないよ

荒れた海と書道の墨の香りがしそう。
あまりの多くの色をもたない作品だなー。

次々と謎が深まり、
日本の人口が100人くらいしかいなかったらこの人間関係の狭さも納得できるものの、
あまりの都合の良さに失笑すらもれてきた。
すべてが一本の線でつながっちゃうなんて出来すぎでしょ

「涙香岬(るいかみさき)」という地名は正式な名でなく通称らしい。
でもとても美しい名だなぁ。
何もない場所のようだけど、どうしても美しいところを想像しちゃうよね
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:25 | category:    桜木紫乃 |
# 財布のつぶやき
評価:
群 ようこ
角川書店
¥ 1,365
(2007-12)
コメント:庶民的な感覚に親近感♪

JUGEMテーマ:読書
●財布のつぶやき/群ようこ
●角川書店
●1365円
●評価 ☆☆☆☆
老後の資金が不安になり、家計簿を付け始めたものの二か月で挫折
60歳まで払い続ける予定の実家のローン、そして年末に襲ってくる税金問題。
どんぶり勘定から脱却し、堅実な生活を送れるのはいつの日か
身近で鋭い視点に誰もが共感!お金に関するあれこれを綴ったエッセイ集。
 


(感想)
若い頃には考えたこともなかった老後のお金の心配について、
50歳を過ぎてようやく考えるようになったという群さんのお金や生活にまつわるあれこれエッセイ。
群さんのエッセイは初めて読んだけど、庶民的な感覚で共感できること多し。
人気作家の群さんのことだから、周囲からはしこたまため込んでいるらしいと思いこまれているものの、
実際はまったくそんなことはないらしい
私なんかはこの若さでも、老後のことを考えると目の前が暗〜くなる
かといって何か考えて始めてるわけでもないんだけど漠然と感じてる不安・・・。
50代の群さんならその不安も私以上と思いきや、意外と明るくのほほ〜んと暮らしていらっしゃる。

500円玉貯金をしてもちまちま使ってしまう。
10年前に買った服を今も大切にきている。
ビリーズブードキャンプへの入隊。
まるで知り合いのおばちゃんのムダ話を聞いてるような親近感、心地よさ。

大好きな着物にはお金をかけてるようだし、趣味の三味線も楽しんでるみたい。
つつましい日々の生活の中にも、
こんな風に好きなことにお金や時間をかけるのは心の健康のためにいいことですよね。
それはけっして「贅沢」とは違う。
こういう余裕はどんなにお金に困る事態になろうともなくしたくないものです。

群さんのエッセイ、また読もうっ


| comments(0) | trackbacks(0) | 10:38 | category:    群ようこ |
# 楽園(上)(下)
評価:
宮部 みゆき
文藝春秋
¥ 1,700
(2007-08)
コメント:滋子のための「謎」を描き切らなかったのはナゼ?

JUGEMテーマ:ミステリ
●楽園(上)(下)/宮部みゆき
●文藝春秋
●上下ともに1700円
●評価 ☆☆☆☆
「模倣犯」事件から9年が経った。
事件のショックから立ち直れずにいるフリーライター・前畑滋子のもとに、荻谷敏子という女性が現れる。
12歳で死んだ息子に関する、不思議な依頼だった。
少年は16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、それを絵に描いていたという―。 



(感想)
図書館で上と下を合わせて借りるのに、こんなにも年月がたった。
発売されて1年半もたっていたのですね。やっと読めるぞー
でもさすが人気の本
いろんな人が読んだだけあって、図書館でこんなに汚れてる本は見たことがないってほどに汚れやシミがありました(苦笑)

さて、「模倣犯」の続編ともいうべき作品。あの前畑滋子が主人公です。

グイグイと読ませる力があり、さすが宮部みゆきはうまい。
次から次へとでてくる疑問、浮かび上がる真実。
解き明かしていく上で新たな事件も見えてくる。山場がいくつもあり、読み応えがありました。

あの日、茜さんがしてしまった「とんでもないこと」。
帰宅してあんな態度を取ってしまったのは、茜さんなりに両親に救いを求めていたあらわれ。
最後まで不良娘としてしか描かれてない茜さんにもっと救いの場面が欲しかった。
これじゃあ、最後に不器用なりにも両親を頼った彼女があまりにかわいそう
でも、それでもそんな茜さんを許さなかったのが土井崎夫婦の「親としての愛」だったのかもしれない。
これ以上、茜さんに道を踏み外させてはいけないと・・・。
謎を解きつつも、親の愛に触れる場面が多く、これは「親子の愛」を描いている作品とも言えますよね。

上巻のラストがなんともにくい。
「こんな終わり方はズルイ!すぐ読まずにいられないじゃないか!」と・・・。
休む間もなく下巻に手を伸ばした自分がいました。たぶん、他の読者さんもみんなそうだったのでは(笑)

下巻、最後の最後の土井崎のお母さんの存在感にも圧巻。

それにしても等くんの描いた「山荘の絵」の謎だけが解明されないまま終わってるのが心残り。
等くんははたして誰の記憶を読んでいたのでしょうか?
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:41 | category:    宮部みゆき |
# 超スピリチュアル次元  ドリームタイムからのさとし
評価:
ウィリアム レーネン,よしもと ばなな
徳間書店
¥ 1,575
(2009-01)
コメント:このタイトルが惜しい

JUGEMテーマ:読書
●超スピリチュアル次元  ドリームタイムからのさとし/ウィリアム・レーネン × よしもとばなな
●徳間書店
●1575円
●評価 ☆☆☆
夫婦、子育て、SEX、恋愛、友人―。
あなたと周りの人みんなを幸せにするスピリチュアル・エッセンス
よしもとばななさんが聞く!世界的サイキック・チャネラーからのかつてないアドバイス集。



(感想)
“THE 徳間書店”みたいな本(笑)
前半はばななさんとの対談で、後半はレーネンさんによるスピリチュアルガイダンス。

スピリチュアル系の本は嫌いじゃないし、よしもとばななさんの名前につられて買ったんだけど、
この手の本を読むと感じる「目の前が明るく開けるようなかんじ」はこの本にはなかった。
いまひとつ、自分の求めているものとは違ったさとしの本でした。
対談の部分がばななファンには物足りない。ばななさん完全に聞き役。
もっと彼女の意見も交えた、意見交換するような対談を期待してたんだけど

地球や宇宙の惑星は2000年ごとに時代の変換を迎えています。
で、その返還の時期はまさに今、やってきているらしい。
これまでは科学や産業の発展の時代であり、そのおかげで地球も大気も汚された。
人間や民族の間にお金や力による優劣も生まれてしまった。
でもこれからの2000年は調和・平和・さとりの時代へと移行している。
地球の人々も科学や技術だけでなく、精神的に成長する時代がきている
温暖化などから地球を守ることと同時に、人間それぞれの心の成長が未来の地球を作る。
こういうことを書いている本が今すごく多いのは、
きっと本当に世の中がそういう方向へ進まなければならない状況にあるからなんだろうなぁ。

残念に思うのはこの本、タイトルが惜しいこと
これじゃあ、なんかいかにもいかにもなタイトルで、気軽に手に取りにくいじゃない?
後半の夫婦や子育てに関するあたりは子ナシの私には今現在あまり必要のない教えなんだけど、
子育て真っ最中のお父さんお母さんには良さそう
そういう人たちが手に取りたくなるようなタイトルにすれば良かったのに

人生そのものが喜びであることを認めよう。
戦争のない時代・星に生まれたかったのならそうしていたはず。
病のない肉体、別の家族のもとに生まれたかったらそうしていたはず。
この地球の現状、この家族のもとに自分が生まれたことにはきっと意味がある。
だから自分はここにいる、。
そう考えると、いまいち不満がある今の自分を見つめなおす機会にもなるのでは??
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:02 | category: アンソロジー、競作 |
# とんび
評価:
重松 清
角川グループパブリッシング
¥ 1,680
(2008-10-31)
コメント:不器用な父親と温かい人たちの子育て物語

JUGEMテーマ:小説全般
●とんび/重松清
●角川書店
●1680円
●評価 ☆☆☆☆
昭和37年、28歳のヤスさんに長男アキラ誕生
愛妻・美佐子さんと、我が子の成長を見守る日々は、
家族の温もりを知らずに大人になったヤスさんと美佐子さんにとってはじめて得た「家庭」だった。
しかし、その幸福は、突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう―。
我が子の幸せだけを願いながら悪戦苦闘する父親の、喜びと哀しみを丹念に描き上げた長編小説。 



(感想)
親一人、子一人。不器用ながらも子供への愛情は人一倍。
迷いながら、時に暴走しながらもまっすぐに子育てしていくヤスさん。
息子が成長し、嬉しいことがあるたびに親には寂しさや辛い選択もついてくる。
息子のため、自分の寂しさを精一杯我慢するヤスさん。
どこの親子もぶち当たることなのかもしれないけど、
もがきながらもアキラの幸福を願うヤスさんに目頭があつくなる思いでした。

アキラはヤスさんだけでなく、照雲さん一家やたえ子さんなどの多くの愛情を得て育った。
そんな周囲の人の愛情も沁みます。
多くの愛情を得て育った子らしく、アキラは自慢の息子に成長する。
アキラのまっすぐな成長はまるで自分の周囲にいる子供の成長のように私にとっても嬉しく、
リアリティ溢れる作品です。

和尚さんの手紙やアキラの作文、照雲の迫真の演技など・・・・
イチイチ泣きのポイントが散りばめられているのも憎い。
重松さんはやっぱり家族の絆で泣かせるのがうまいんだなぁ
いい作品です。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:34 | category:    重松清 |
# きのうの世界
評価:
恩田 陸
講談社
¥ 1,785
(2008-09-04)
コメント:不安感の漂う恩田陸ワールド

JUGEMテーマ:小説全般
●きのうの世界/恩田陸
●講談社
●1785円
●評価 ☆☆☆ 
塔と水路がある町のはずれで死体が見つかった。
死んでいたのは少し前から丘の上の一軒家に住み、町のことを調べていたよそ者の男。
しかも彼がこの町で使っていた名前は偽名であり、一年前に失踪したことになっていたらしい。
彼はなぜここで殺されたのか・・・?
恩田陸が紡ぐ、静かで驚きに満ちた世界。誰も予想できない結末が待っている



(感想)
最初からとにかく謎・謎・謎
しっかり読んでいるんだけど、うまくこの世界観に入り込めなくって、
置いていかれてるような不安感は最初から最後までありました。
けど、このどうしようもない不安感と不安定さは相変わらずの恩田陸で、
まったく関連性のないパズルのピースを不安いっぱいではめ込んでいくようなそんな心地のする作品でした。

が・・・。町で起きた殺人事件の謎をひも解いていくお話だったはずが、
意外な方向に転がっていってしまい、最終的に「とんでも系」な結末が待っていた・・・
さすがにこの結末は想像してませんでした。
・・・・てか、500ページ近くも読んできたのにあまりの突拍子のなさに脱力

「水路」とか「謎の塔」とかキーワードだけでドキドキできるんだけどな。
鍵を握るような登場人物も何人も現れるんだけど、
でも最終的になんでもなかったみたいなことも多く、肩すかしな要素も多い。
長いわりにはすっきりとしないモヤモヤの残る作品でした
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:13 | category:    恩田陸 |
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