隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 書店員の恋

評価:
梅田 みか
マガジンハウス
¥ 1,470
(2008-10-23)
コメント:本好きならきっと手に取ってしまう、このタイトルはズルい。
JUGEMテーマ:恋愛小説
●書店員の恋/梅田みか
●マガジンハウス
●1470円
●評価 ☆☆☆
主人公は、大手書店チェーンに勤める今井翔子(26)。
が好きでこの職業に就き、入社6年目にして文芸コーナーのチーフに大抜擢される。
チーフ就任後、はじめて手がけることになったのは「ケータイ小説フェア」。
本好きなら誰もがそうであるようにケータイ小説のヒットに違和感を抱いている翔子は戸惑うが、
試しに読んでみた一冊のケータイ小説の中でただ一冊だけ心に残った作品があった・・・。
お金がなくては生きていけない? でも、お金では幸せになれない?
二人の男性の狭間で揺れる心・・・女性の生き方、本当の愛について問う。



(感想)
このタイトルはズルイなぁ
これがお店に並んでたら本が好きな人(特に女子)なら、確実に手に取ってしまう・・・。
でも実際に読んでみると、普段本をたくさん読んでいる人が満足できるようなものではない。
どっちかというとケータイ小説を読んでいる層が好みそうな軽い恋愛小説。
「書店員」って言葉に騙されました
もっと書店独特の静かな雰囲気や、本の香りがしてくるような味わいがあるものを描いていたんだけど

別に「書店員」に重きは置いてない。
貧乏ヒマなしで現在も将来も定まらない不安いっぱいな彼とギクシャクし出したところに、
成功していて誰もが憧れるリッチな男性からのアプローチ。
さぁ、どっちを選ぶって・・・ありがちな恋愛モノでしょ・・・。
翔子の選択にも意外性がなくて、きれいにまとめたかんじ。

本が大好きで書店員になった翔子にとって、
店長から「本は作品ではなく、商品だ」といい切られることはわかっていてもキツいこと。
私も含め、今の文芸の流行や書店の変化に違和感を抱いている本好きも多いだろうけど、
本を職業にしてしまったことで生じるジレンマ、
好きなことを逃げ場所にすることができない書店員の苦しみは私達の比じゃないな
多くの書店員さんがこの本に大きな期待を込めて読み、その結果ガッカリした姿が目に浮かびます。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:18 | category: 作家名 あ行 |
# 群青

評価:
宮木 あや子
小学館
¥ 1,365
(2008-09-30)
コメント:深い群青と燃えるような赤
JUGEMテーマ:小説全般
●群青/宮木あや子
●小学館
●1365円
●評価 ☆☆☆
凉子・大介・一也は離島で育った、たった3人の同級生。
でも、いつまでも子供のままではいられない。
愛する女のために命を懸けて海に潜る男たちの熱く純粋な思い、
そして最愛の人を失った女の絶望と再生を鮮やかかつ官能的に描いた恋愛小説。
長澤まさみ主演で映画も公開されます。



(感想)
長澤まさみ主演の映画「群青」の脚本を原案に、宮木あや子が書き下ろし。
そのせいか完全に頭の中のイメージは長澤まさみです。
でも、ラブシーンも、それ以上の激しいシーンも多いであろうこの難役。
はたして彼女に演じられるのー??映画の方はなんだか見るのが怖い

舞台は石垣島よりさらに高速船で行く美しい島・南風原島
タイトルが美しく澄み切った海の色・ブルーではなく「群青」なのに、深く濃い絶望と悲しみの色が見えます。
美しく、青い世界の中にある絶望・・・そこに鮮やかな「赤」がいくつか入ってきて、
色彩的にもイマジネーションがくすぐられる作品でした。

女1人に男が2人。
子供のころから一緒だった3人が成長して三角関係に・・・・。
いかにもありきたりなどこかで見たような読んだことがあるようなストーリー。
さらさらっと読みやすかったです。

悲しみの末に精神が破壊させれてしまった凉子の絶望と孤独、
龍二さんの後悔も、あまりに深いもの。
幸福な時間は深い深い海に沈んでしまった。
狭い島で島民全員に監視されているように生きるしかない閉塞感はあまりに息苦しく、
そんな彼女たちを心配し、遠くから見つめる人の優しい眼差しはもどかしさと温かさで切ない。

予想していた展開だったけど、群青の海が澄んだブルーになるような
目の前が開けるようなラストはすがすがしかったです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:57 | category: 作家名 ま行 |
# 告白
評価:
湊 かなえ
双葉社
¥ 1,470
(2008-08-05)
コメント:根本にあるのは「母親の愛」

JUGEMテーマ:小説全般
●告白/湊かなえ
●双葉社
●1470円
●評価 ☆☆☆☆
愛娘を校内で亡くした女性教師が、終業式で明かしたのは
それは「このクラスに娘を殺した犯人がいる」という衝撃の告白・・・。
ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。
新人離れした圧倒的な筆力で綴られる驚愕のデビュー作。
 



(感想)
昨年、すごく売れた本たしかにすごく面白かったです。
ノンストップであっという間に読み終えてしまいました。

とにかく第一章の冷ややかな恐怖は新人とは思えない
でも残念なことに一章の完成度があまりに高いため、その後はインパクトに欠ける・・・。
全体通しても凄いんだけど、一章の凄さは圧倒的。
むしろ他の章はなくてもよかったのかも?ってくらいに。

一章は女教師、その後はこのクラスの生徒、犯人の家族、犯人・・・と、
それぞれ別の人の視点から事件の真相が語られていきます。
被害者と加害者のそれぞれの親子愛が事件の大きな鍵となっている。
誰かが違った愛情表現をしていれば事件はこのような形にはならなかったかもしれない。
一言で愛といってもいろんな形がある。
その選択の難しさとゆがみが事件を引き起こしたとも言えます。
少年が犯罪を犯した時、どんな形で裁くべきなのだろう。
被害者であり、犯人を預かっている担任でもある女教師の立場は
どんな判断でこの事件と向き合うべきなのかあまりに難しい。

最後にもう一度、読者を恐怖に陥れる残酷なラストが待っています。
これには「後味が悪い」という声も多く聞こえるけれど、
私はこの女教師の執念にすがすがしさすら感じました。

湊かなえ・・・すごい作家がでてきたなぁ。
次回作も絶対チェックしなきゃあ
| comments(2) | trackbacks(1) | 10:43 | category:    湊かなえ |
# 切羽へ

評価:
井上 荒野
新潮社
¥ 1,575
(2008-05)
コメント:何もないからこそ濃密な大人の恋愛小説
JUGEMテーマ:恋愛小説
●切羽へ/井上荒野
●新潮社
●1575円
●評価 ☆☆☆☆
静かな島で、夫と穏やかな日々を送るセイの前に、ある日、一人の男が現れる。
夫を愛していながら、急速にその男に惹かれてゆくセイ。
宿命の出会いに揺れる女と男を、緻密な筆に描ききった美しい切なさに満ちた恋愛小説。


(感想)
舞台は唯一の小学校には生徒が9人しかいないような小さな小さな島。
島へ入る手段は当然、船しかなく、島への出入りは誰にも隠せない。
そんな監視されるかのような狭い環境の中で生まれる恋・・・・。
こう考えるとと「島」ってエロチックだわ

井上荒野さんの作品は初めて読んだけど、不思議な文章を書く人だなぁ。
サラサラと読める読みやすい文章なのに、
お互いに触れることすらなく、ぎこちなく求め合う二人の緊張感が行間にまで溢れてる。
繊細で官能的。まさに大人の恋愛小説ですね。
こういうのが直木賞をとるとはねぇ

出会いは3月。
4月、5月、6月・・・と季節の移ろいと並行して高まる思い。
決定的な出来事は何もないのに、二人が惹かれあっていることには島の誰もが気づいてる。
相手の男性は決して素敵な男性ではないけど、
この島に本土から独身の男性が引っ越してくること自体が事件であり、スキャンダルのもと。
平凡な日常にある日突然異物が入ってくることで、女たちは日常どころか心までかき乱されてしまう。
思いは日に日に募るのに、何の行動も起こさない主人公とは逆に
同僚の月江は誰に隠すこともなく、堂々と不倫の恋に身を焦がす。
この対照的なコントラストも作品の激しさを増している。

タイトルにも使われている「切羽」という言葉は、
「トンネルを掘っているいちばん先の部分」という意味らしい。
つまり、トンネルが完成すればなくなってしまう部分。
精一杯の勇気を出しても切羽までしかたどり着けなかった二人・・・。
このもどかしさが余韻として残ります。
久しぶりに大人の味わいのある恋愛小説に出会ったなぁ。満足満足
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:23 | category:    井上荒野 |
# 右岸

評価:
辻仁成
集英社
¥ 1,785
(2008-10-11)
コメント:「左岸」と対になる物語
JUGEMテーマ:小説全般
●右岸/辻仁成
● 集英社
●1785円
●評価 ☆☆☆
福岡で隣同士に住んでいた九と茉莉。
不思議な力を授かりながらも、その力で人を救うことができず苦しむ九。
放浪の後、パリで最愛の女性・ネネに出会うが、いつも心の片隅には茉莉がいて・・・。
江國香織と辻仁成の奏でる二重奏ふたたび。
信頼し合い、尊敬し合う作家同士だから実現した、柔らかな幸せの物語。



(感想)
江國さんの「左岸」と対になる物語です。
この本を読んだブロガーさんの感想を読んでいると、
“「左岸」から読んだ方がいい”という意見が圧倒的に多く、
その順番で読ませてもらったんだけど、
2冊読んでみると確かにその順序でないとキツイかも?と思います。

「左岸」は波乱万丈の女性の人生を描き、同性からの共感も得やすいでだろうけど、
「右岸」は主人公が超能力を持っているという設定のためか
取り方によってはオカルトチックな作品と思われても仕方のない内容。
「右」を最初に読むと引いちゃう人もいそう
超能力があることによって普通の生活ができず、九には次々と不幸が襲ってくる。
その生きにくさが精神世界っぽい事柄にもつながってくる。
いつもならスピリチュアルなものってスーッと心にしみ込んでくるはずなんだけど、
どうも自然じゃなくて、うまく入り込めなかった。

で、九の一生は性とは切り離せないようでHシーンがやたらに多い。
どうしたって何度も何度もそこに戻るんだもん
官能的で美しい描写でもなく、そのへんにも女性は引くでしょう。

九の初恋の人・茉莉。
他の女性に恋をして結婚し、子供まで出来ても、
九の心の中にもいつも茉莉への思いが消えることなく残っていた。
九の一生は茉莉への思いであふれているというのに、
茉莉にとっての九は「幼なじみ」でしかない。
この決定的な温度差が悲しい。

それぞれの壮絶な50年・・・。でも物語の締めくくりは穏やか。
こんな生活がずっと続いてくれれば・・・と、
彼らの当たり前すぎて気付かないほどのささいな幸福を祈ってなりません。
| comments(0) | trackbacks(1) | 11:50 | category:    辻仁成 |
# 左岸

評価:
江國香織
集英社
¥ 1,785
(2008-10-11)
コメント:江國香織が描く「茉莉」サイドの物語
JUGEMテーマ:小説全般
●左岸/江國香織
●集英社
●1785円
●評価 ☆☆☆☆
福岡で隣同士に住んでいた茉莉と九。
茉莉の兄の惣一郎も含め、3人で幼い日々を過ごしたが、
ある事件によって3人はこれまでの関係を築けなくなってしまう・・・・。
踊ることと兄が大好きな茉莉は17歳で駆け落ちし、同棲、結婚、出産を経験。
数々の男と付き合っては別れたけど、いつもどこかに、影のように九の存在を感じていた…。
江國香織と辻仁成の奏でる二重奏ふたたび。
信頼し合い、尊敬し合う作家同士だから実現した、柔らかな幸せの物語。



(感想)
寺内茉莉と祖父江九。
それぞれの50年を江國香織と辻仁成が描きます。
江國さんは茉莉の物語「左岸」、辻さんは九の「右岸」。
2冊読むことによってあわせて約1000ページの壮大な物語となる。
まだ「左岸」しか読んでない段階ですが、さすがこのボリュームは読み応えアリ。
このスタイルだと、あくまで茉莉側の視点でしか描かれていないので、
茉莉の知らないところで九に何があったのか、など
九側のエピソードはほとんど描かれることなく、そこがもどかしいっ
でも、それこそがこのスタイルの狙いなんだよね〜。
実際、九のいろんなことが知りたくて
「左岸」を読み終えてもうすぐに「右岸」を読み始めています。

同じ時代の同じ流れに沿って生きているのに、
左岸と右岸の両側に立っているように決して重なることのない二人の運命・・・。
茉莉の人生は男の人との関係に流されて、とんでもなく波乱万丈です。
17歳で駆け落ちって・・・こんなことしちゃってこの先どんだけ堕ちてくんだろう、
しかも茉莉って江國さんの作品のヒロインっぽくないし、なんて思いつつ、
これほどの長い物語だけにいつしか私も茉莉のそばにいるような気持ちになってきました
波乱万丈で追い込まれても、きっといつかは道は開ける。
のちに結婚することになる男性を付き合い始めて、彼の仕事を手伝って、
結婚後も彼と同じように彼の仕事も愛した茉莉はすごく素敵で幸福な人。
この頃の茉莉がいちばん好きです。
女の人生って出会って男性によってかわるもの。
茉莉の人生はまさにそうだったけど、
でも、彼女は自分を持ってたくましくまっすぐ前を見て生きてもいるんだよね。
年齢を重ねるごとにどんどん素敵になっているし、
同じ女として感じるものも大きかったなぁ。
特に兄弟という唯一の物を失ったという点で私と茉莉は共通点があるので、
そのへんの茉莉の思いは他人事じゃなかった。
これほどのものを失ってまでも、生きていかなければならない。
茉莉の姿を見て、私も改めて頑張って生きていこうと誓いました。

「生活のすべてが、茉莉には証明だった」という一文にズキンときました。

はやいとこ「右岸」も読んで、さらに「左岸」への理解も深めたいです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:24 | category:    江國香織 |
# 2008年に読んだ本・ベスト10
JUGEMテーマ:読書

2008年に読んだ本は104冊でした。
一応、1月の「カシオペアの丘で」から、
1月に感想をアップした「
瑠璃でもなく、玻璃でもなく 」までが2008年に読んだ本になります。

ではでは、今年はずいぶんと発表の時期が遅れてしまいましたが、
発表していきたいと思います。


■2008年に読んだ本・ベスト10■

1位 彼女について/よしもとばなな

2位   図書館戦争シリーズ(全6巻)/有川浩

3位     食堂かたつむり/小川糸
 
4位   ひなのころ/粕谷知世

5位   宿屋めぐり/町田康

6位   阪急電車/有川浩

7位   ブランケット・キャッツ/重松清

8位   ショコラティエの勲章/上田早夕里

9位   そうだ、葉っぱを売ろう!/横石知二

10位  仏果を得ず/三浦しをん



昨年同様、選ぶのが難しかった
読んだ冊数そのものも少ないけど、
文句なしで大好きって思える作品にはなかなか出会えなかった一年でした。
6位くらいまではベスト10入りは当然ってくらい好きなのだけど、
7位〜はなんとか選んだかんじです。

1位は「彼女について」。文句なし。
こういう価値観は大事にしたい。
不変的なものは残しつつ、新しいばななさんも見ることのできた作品でした。

2位の「図書館戦争シリーズ」は別冊も合わせた6冊をまとめて順位に反映しました。
そうでないとベスト10が有川浩さんだらけになってしまうので

4位の「ひなのころ」は読んだ当初は☆は4つしかつけてないんだけど、
今も心に大切に残っている作品
5つ星をつけた作品は他にもたくさんあったんだけど、
こちらの方がどう考えても上のような気がして4つ星でもランクインです

| comments(2) | trackbacks(0) | 16:09 | category: 年間ベスト10 |
# 真夏の島の夢

評価:
竹内 真
角川春樹事務所
¥ 1,785
(2004-01)
コメント:退屈しのぎにちょうどいい気軽な一冊
JUGEMテーマ:小説全般
●真夏の島の夢/竹内真
●角川春樹事務所
●1785円
●評価 ☆☆☆
瀬戸内海のある島で行われる演劇コンクールに参加するため、
進也たちのコント劇団「コカペプシ」のメンバー4人は島へと渡った。
同じフェリーには女性作家の佳苗とアシスタントの律子が乗り合わせていて、
進也たちはすぐに彼女たちと親しくなる。
しかし・・・最高の夏になりそうな予感が思いがけず島の産廃問題に巻き込まれ…。



(感想)
気軽に読める作品です。
深く考えなくていいし、読後に特に何も残りはしないんだけど、
こういうのは時間を持て余してるような時にいいよね。

島で行われる演劇コンクールに参加するためにやってきた男たち。
島のホテルに缶詰めになって作品を書くことになった女性作家とアシスタント。
同じフェリーに乗り合わせたこの男女が知り合い、ひと夏の恋に発展しつつ、 
自分たちはまったく望んではいないのに、
島民たちが熱くなっている島の産廃問題に巻き込まれていく・・・といったストーリー。

物語は「劇団」「小説」「産廃問題」の3つの柱で構成されています。
それぞれの出来事が劇や小説を作り上げていくのに良い相乗効果となり、
1つの劇や小説がどのように作られていくのか、
その舞台裏も知ることが出来てエンターテイメント性は高い作品といえる。
でも、印象に残るような作品かと言われれば・・・否。
軽い気持ちで読む分にはいいけど、ちょっと薄っぺらいというか弱いというか・・・。

キャラクターはしっかりしてるのに、
どうも柱が3本もあることで中心が定まらず、散漫な気がしてしまいました。

 
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:39 | category:    竹内真 |
# 金色の野辺に唄う

評価:
あさの あつこ
小学館
¥ 1,470
(2008-05-31)
コメント:死を繊細に描いている本です。
JUGEMテーマ:小説全般
●金色の野辺に唄う/あさのあつこ
●小学館
●1470円
●評価 ☆☆☆
今、九十を超えた老女・松恵が息をひきとろうとしている。
彼女を看取る親族、知人・・・それぞれに松恵に救われた過去の思い出がある。
屈託や業を抱えながらも、誰かと繋がり共に生き抜いていくことの喜びを力強く描く連作短編集。





(感想)
松恵さんは誰にでも優しく、あったかいおばあちゃんで、
彼女の存在によって救われた人はたくさんいます。
今、その松恵さんが死の時を迎え、
生前の彼女にかかわった4人の人が彼女との思い出を振り返ります。

季節感たっぷりで繊細で美しい物語でした。
この世にあった魂が少しずつ浄化されて天にかえっていく・・・・・
その静かで神々しい雰囲気が十分に感じられる味わいのある文章。
あさのあつこさんってはじめて読んだんだけど、
子供向けの本を書いてる方というイメージが強かったんですね。
でも、読んでみると意外と大人の趣のあるものを書ける人なんだな〜、と。
こういう世界観は好きだなぁ

特に松恵さんのお孫さんの所に後妻さんとしてやってきた美代子さんの視点を綴る「竜胆の唄」と、
松恵さんに救われた過去のある花屋さんの視点の「遥かなる子守唄」が素敵だった〜。
のオレンジ、竜胆のムラサキ、
キーワードとなるアイテムの色の鮮やかさも印象深い。

冒頭と最後の松恵さんの心の描写が美しい。
私もこんな温かい光が差す、いい日和に穏やかな死を迎えられたら本望です

| comments(0) | trackbacks(1) | 09:17 | category:    あさのあつこ |
# 瑠璃でもなく、玻璃でもなく

評価:
唯川恵
集英社
¥ 1,470
(2008-10-02)
コメント:「不倫している女」と「不倫されてる妻」
●瑠璃でもなく、玻璃でもなく /唯川恵
●集英社
●1470円
●評価 ☆☆☆
JUGEMテーマ:
恋愛小説
人には言えない秘密の恋をしている美月・26歳。
平凡な結婚生活に刺激が欲しくて逃げ道として仕事をはじめた英利子・34歳。
ひとりの男性を挟んで交錯する、ふたりの女の人生のゆくえ。



(感想)
女性なら誰もが思い当たる、無視できないテーマ。さすが唯川さん。
美月は朔也の不倫相手、そして英利子は朔也の妻。
それぞれの視点から交互に語られるスタイルで、
美月と朔也の恋の行方によって変化していく3人の運命を描きます。

女は自分の持っていないものを羨み、欲しがる生き物。
美月は今の恋人と幸せな結婚がしたい。
子供のいない主婦の英利子は母として、または職業人として自分を認めてくれる場所が欲しい。
結婚だって成功だって決してゴールではないのに、どうしても求めてしまう。
ひとつを手に入れたと思っても、欲しいものは次々と出てきて、その激しい欲望に終わりはなく、永遠に続く。
だから女性は男性に比べると年を取っても好奇心を失わず、いつまでも輝いてるのでしょうか(笑)


美月は妻のいる朔也を本気で求めた。
まわりにどう言われようと、奥さんと顔を合わせて戦うことになっても朔也が欲しかった。
それほどの強い思いを持っているのに、
でも、自分を好きだと言ってくれる「もう一人の彼」を都合よくキープしておきたいという気持ちはどうしてもわっかんないんだよな〜。
そのズルさがこそが本来の美月のような気もして、怖さも感じる。
男は女のこういう部分には気付かないものなんだよね。

もひとつ、納得いかないのは朔也と友章、二人の男性の描かれ方。
朔也は物わかりのいい男みたいだけど所詮は不倫をするような男。
友章だってどんな女にだっていい顔をする信頼のおけない男よ〜。
どちらもよく考えるととんでもない男なのに、いい男っぽく書かれてるのはどうかな〜

物語の最後の最後にそれぞれの5年後が記されている。
それは二人の未来がこのまま穏やかに行くわけではない波乱の予感も感じられます・・・。

装丁が素敵
パールのキラリとした輝きに一つずつラメが散りばめられてて、大人っぽく高級感がある。
唯川さんのファン層が好きな感じ
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:47 | category:    唯川恵 |
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