# 荒野
2008.12.22 Monday
JUGEMテーマ:恋愛小説
●荒野/ 桜庭一樹●文藝春秋
●1764円
●評価 ☆☆☆☆
恋愛小説家の父をもつ山野内荒野。
中学の入学式の日、ようやく恋のしっぽをつかまえた12歳。
恋多き父の相手が変わるたびに、人がやってきては去っていき、またやってくる鎌倉の家。
大好きだった家政婦さんが出て行き、新しい家族としてやってきたのは・・・。
(感想)
桜庭さんの本は「私の男」と「赤朽葉の伝説」の二冊を読んだことがあるんだけど、
これはどっちとも違うかんじ。
この3冊の中ではこの作風がいちばん好き。
マンガっぽいけど、女子的感性でキュンとしちゃいます。
でも、「私の男」で直木賞を受賞して次にこうくるとは・・・
なんだかいまだにつかめない作家さんです。
山野内荒野という女の子の思春期を描きます。
家族、友情、恋・・・誰にでもあった懐かしくも瑞々しい時期。
彼女はいたって平凡な女の子なんだけど、
父親は恋多き人気恋愛作家、
二人の親友はどちらもモテモテで注目を浴びる目立つ子なので、
どうしても荒野も注目されることが多い。
荒野なんて名前だけど、名前の第一印象からくるイメージとはまったく性格の違う子。
そんな荒野、親同士の結婚でクラスメートの悠也と兄妹になってしまいます。
以前からなんとなくいい雰囲気の二人だったし、家族になったらフツー悩むでしょ
葛藤があるでしょ
まわりには秘密にはしてるみたいだけど、
そのへんを悩んでる姿がまったく描かずに付き合い続ける二人には違和感を感じます。
軽い青春モノに思えるけど、女の女たる部分はするどく描かれてる。
女の私でもちょっとドキッとするようなセリフも多いですね。
もう子供じゃない、この世のすべてをしっかりと見てやるんだと決意して、
眼鏡をコンタクトレンズに買えるエピソードはすがすがしく素敵でした。
この小説に出てくる女性の中で荒野はいちばん幼かった。
でも、この瞬間、彼女は確実に大人の階段をのぼったんだろうなぁ。
あー、それにしても鎌倉の女の子の生活って素敵だな〜。
当時はコンビニもなかった田舎の学校に通ってた私には彼女らが羨ましくて仕方なかった。
レトロな着物姿で歩く若い女の子たち、
放課後はうさぎの形のかわいいおまんじゅうを食べて、
雰囲気のいい和雑貨屋さんをのぞくような学生時代を送っていれば、
誰もが気立てがよくてかわいい娘さんに成長しそうな気がする。
はあ〜、いいなぁ
最後に記しておこう。
悠也、ワタシ的にドンピシャですこんな男子が自分のまわりにいたらやばいね。
・・・なんて、中学生の男の子に対して思ってしまったー