隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 荒野

評価:
桜庭 一樹
文藝春秋
¥ 1,764
(2008-05-28)
コメント:もっともっと見続けていたい。少女が女に変わる時・・・。
JUGEMテーマ:恋愛小説
荒野/ 桜庭一樹
●文藝春秋
●1764円
●評価 ☆☆☆☆
恋愛小説家の父をもつ山野内荒野。
中学の入学式の日、ようやく恋のしっぽをつかまえた12歳。
恋多き父の相手が変わるたびに、人がやってきては去っていき、またやってくる鎌倉の家。
大好きだった家政婦さんが出て行き、新しい家族としてやってきたのは・・・。




(感想)
桜庭さんの本は「私の男」と「赤朽葉の伝説」の二冊を読んだことがあるんだけど、
これはどっちとも違うかんじ。
この3冊の中ではこの作風がいちばん好き。
マンガっぽいけど、女子的感性でキュンとしちゃいます。
でも、「私の男」で直木賞を受賞して次にこうくるとは・・・
なんだかいまだにつかめない作家さんです。

山野内荒野という女の子の思春期を描きます。
家族、友情、恋・・・誰にでもあった懐かしくも瑞々しい時期。
彼女はいたって平凡な女の子なんだけど、
父親は恋多き人気恋愛作家
二人の親友はどちらもモテモテで注目を浴びる目立つ子なので、
どうしても荒野も注目されることが多い。
荒野なんて名前だけど、名前の第一印象からくるイメージとはまったく性格の違う子。

そんな荒野、親同士の結婚でクラスメートの悠也と兄妹になってしまいます。
以前からなんとなくいい雰囲気の二人だったし、家族になったらフツー悩むでしょ
葛藤があるでしょ
まわりには秘密にはしてるみたいだけど、
そのへんを悩んでる姿がまったく描かずに付き合い続ける二人には違和感を感じます。

軽い青春モノに思えるけど、女の女たる部分はするどく描かれてる。
女の私でもちょっとドキッとするようなセリフも多いですね。

もう子供じゃない、この世のすべてをしっかりと見てやるんだと決意して、
眼鏡をコンタクトレンズに買えるエピソードはすがすがしく素敵でした。
この小説に出てくる女性の中で荒野はいちばん幼かった。
でも、この瞬間、彼女は確実に大人の階段をのぼったんだろうなぁ。

あー、それにしても鎌倉の女の子の生活って素敵だな〜。
当時はコンビニもなかった田舎の学校に通ってた私には彼女らが羨ましくて仕方なかった。
レトロな着物姿で歩く若い女の子たち、
放課後はうさぎの形のかわいいおまんじゅうを食べて、
雰囲気のいい和雑貨屋さんをのぞくような学生時代を送っていれば、
誰もが気立てがよくてかわいい娘さんに成長しそうな気がする。
はあ〜、いいなぁ

最後に記しておこう。
悠也、ワタシ的にドンピシャですこんな男子が自分のまわりにいたらやばいね。
・・・なんて、中学生の男の子に対して思ってしまったー
| comments(6) | trackbacks(1) | 12:51 | category:    桜庭一樹 |
# あなたがここにいて欲しい

評価:
中村 航
祥伝社
¥ 1,470
(2007-09)
コメント:表紙の優しいイメージそのままの本です
JUGEMテーマ:小説全般
●あなたがここにいて欲しい/中村航
●祥伝社
●1470円
●評価 ☆☆☆☆
吉田君にとって、小田原は「ゾウとあんぱん」の町だ。
懐かしいあの日々、温かな友情、ゆっくりと育む恋・・・。
僕には守り続けなきゃならないものがある。
静かで優しい3編を収録。




(感想)
恋愛アンソロジー「LOVE or LIKE」に収録されていた「ハミングライフ」が大好きで、
もう一度読みたくて、今度はこっちを読んでみました。
やわらかく、優しいイメージの表紙のイメージそのまま
ゆったりと穏やかな時間の流れる心地いい作品集です。

表題作の「あなたが〜」は主人公の吉田君と、その友人でヤンキーの又野君のつかず離れずの友情、
そして吉田君と舞子さんの恋愛を描いています。
吉田君は子供のころから物事を冷静に見ていた人で、
だからこそ又野君の素晴らしいとこを見極めた素敵な人。
語り手が誰なのかはわからないけれど、三人称で主人公は「吉田くん」と表記されていて、
それが作品の雰囲気を膨らませるのに効果的
吉田君を見えない誰かがあたたかい眼差しでいつも見つめている。
そんな「つつまれている感」も心地よい。
どうやら私も生き急ぐよりは、
吉田君みたいにゆっくりしっかり見極めながら生きていく方が性に合ってる感じ。
なんだか妙に波長が合うような気がしました

「男子五編」はおそらく著者のこれまでをそのまま綴ったもの。
この中で≪世界三大美徳≫は“礼儀”と“仲良し”、
そして最後のひとつは“もうひとつを探し続けること”となっているんだけど、
私は途中で候補に挙がっていた“感じよく振る舞う”の方が中村さんらしくて私は好きなんだけどな

そしてやっぱり「ハミングライフ」はど真ん中にキュンとくるわー
イラストもツボだし、二人のやり取りはいちいちセンスがいい。
こんな恋愛、憧れるなぁ

ほっこりした気分になりたいときには、中村さんの本を読むことにしよう
| comments(2) | trackbacks(0) | 11:23 | category:    中村航 |
# 深川にゃんにゃん横丁
評価:
宇江佐 真理
新潮社
¥ 1,575
(2008-09)
コメント:町の人たちの優しさとかわいい猫ちゃん達の日常

JUGEMテーマ:小説全般
●深川にゃんにゃん横丁/宇江佐真理
●新潮社
●1575円
●評価 ☆☆☆☆
お江戸深川、長屋が並ぶ「にゃんにゃん横丁」は、その名の通り近所の猫の通り道。
のんびり暮らす猫たちを横目に、雇われ大家の徳兵衛は、今日も店子たちの世話に大忙し。
下町長屋の人々をあたたかく描き出す連作集。 




(感想)
かわいいタイトル
もー、手に取らずにはいられませんでした
時代モノは苦手だけど、宇江佐さんは「卵のふわふわ」がすごく良かったし、
また読んでみたいと思ってたのです。

必ず一匹や二匹の猫を見かける小路、「にゃんにゃん横丁」が舞台。
ここで暮らす人たちの人間模様を温かく描きます。
頼りになる大家さん・徳兵衛さん、口は悪いけど世話好きで人情に厚いおふよさん・・・みんなあったかい。
ちょっとうざいかもしれないけど、本当なら「ご近所」ってこうあるべき。
誰でも一人では生きていくことはできない。
誰かに支えられて、そして支えながら生きていることをしっかりと感じる。
胸を締め付けられるような悲しい展開もあり、
生きていくことの厳しさもかいま見せられます。

あくまで猫は主役じゃなくて、
ここに暮らす人たちのそばに寄り添っているだけなんだけど、
その微妙な距離感もいいんだよなぁ
猫ちゃん達、作品の重要なスパイスになってます。

人の温かさと猫ちゃん達ののんびりとマイペースな姿に読んでてほのぼの
自分じゃない誰か(何か)の存在って大きいものですね。
| comments(0) | trackbacks(1) | 12:06 | category:    宇江佐 真理 |
# 雷の季節の終わりに

評価:
恒川 光太郎
角川書店
¥ 1,575
(2006-11)
コメント:幻想的な雰囲気に酔えます
JUGEMテーマ:小説全般

●雷の季節の終わりに /恒川光太郎
●角川書店
●1575円
●評価 ☆☆☆☆
一般の書物にも記されることはなく、地図にも載っておらず、
外の世界からあえて隠れて存在する土地「穏」。 
穏で暮らす少年・賢也にはかつて一緒に暮らしていた姉がいたが、
姉はある雷の季節に行方不明になったまま・・・。
姉の失踪と同時に「風わいわい」という物の怪に取り憑かれた賢也は、
町のある人物の秘密を知ってしまったために町を追われる羽目になる。
風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは?




(感想)
恒川光太郎さんの文章をあまりに美しく、
読んでいるとついつい世にいることを忘れてしまいそうになります
1973年生まれのまだ若い作家なのだけど、
この年齢でこんなに雰囲気のある世界を構築できるなんて素晴らしいです。

穏という町の設定も味わい深いし、
風わいわい・闇番・墓町・獅子野・・・次々と現れる不思議な存在に読んでてワクワクします。

けど、「夜市」や「秋の牢獄」に比べるとちょっと荒い感じは否めない
前半はあくまで穏を舞台にした賢也という少年が中心となる物語なのだけど、
途中からそれとは別に茜という少女の物語も描かれます。
こちらは私達の住む現代に似たような世界が舞台なので、
せっかくの幻想的な世界に俗世界的なものが混雑してしまい、
なんだかいい雰囲気が損なわれてしまうのです
それだけでなく、このへんから話は意外な展開に転がり、しかも急ぎ足で進んでいくので、
なんだか読者はおいてきぼりを食うような寂しさに襲われそう・・・。
いまひとつ惜しい作品でした。
が、やっぱりこの人の世界観は素晴らしいので、これからの読み続けたい作家です。

| comments(2) | trackbacks(0) | 09:27 | category:    恒川光太郎 |
# 貧困大国ニッポン―2割の日本人が年収200万円以下

評価:
門倉貴史+賃金クライシス取材班
宝島社
¥ 680
(2008-06-07)
コメント:壮絶でした
JUGEMテーマ:新書
●貧困大国ニッポン―2割の日本人が年収200万円以下/門倉貴史+賃金クライシス取材班
●宝島社新書
●680円
●評価 ☆☆☆☆ 
一生結婚できない正社員、食費月1万円台の4人家族、
ゴミを奪い合う年金老人、援交子育てママ・・・・・。
今や、日本の労働者4人に1人が年収200万円以下。
彼らはどのような生活を送っているのでしょうか?
 衣食住から教育、医療。そして貧困ゆえの犯罪事情(主婦売春、ネット犯罪など)まで、
「最底辺100人」の証言で追う貧困大国ニッポンの生々しい現実。
 平成日本の下層社会を赤裸々に綴る迫真のレポート。




(感想)
今、日本で働く人のうちの2割が年収200万以下であると言われています。
ものすごーく稼いでいる人はわずかながらもいるのだろうけど、
ワーキングプアどころじゃなく、ギリギリのところで生きてる人の方が多い。
だんだん貧富の差に開きができ、2極化している我が国の経済事情。
この本はその底辺で想像を絶する生活をしている人たちの声を集めたレポートです。
ほとんどがインタビューで構成されているので内容は難しくなく、
リアルな声が伝わってくる本でした

彼らの生きていくための涙ぐましい努力・節約術はあまりに壮絶。
同じ国のこととは思えないほど・・・。
働きたいという意思はあるのだけど、
きちんとした住所がないから就職できない、お金がないからアパートも借りられない。
すべての悪循環にはまってしまい身動きができない人の多いこと

なかでも私は主婦なのでどうしても同世代の女性や主婦の証言が強く響いてきました。
食品用のラップは洗って10回は使うとか、
出産一時金が目当てで子供をたくさん産む夫婦の話など、
私だって決して楽な暮らしをしてるとは思ったことはなかったけど、
彼らに比べたら自分はどれほど安定した環境に置かれているのか・・・。

でも、そういって安心していられないのが今の日本の危ういところ。
もし明日、夫の会社が倒産したら?
きっと彼らのような生活を強いられることでしょう。
そんな意味でこの本は今の日本に生きる誰から見ても決して他人事ではありません。

どんどん読み進められる本だけど、救いがないのが読んでて辛い。
ここ数週間で景気は目に見えて悪化しているし、
それをどう生き抜いていくのかといった打開策はこの本では何も提示されず、
ただ貧困にあえぐ人々をレポートするだけ
でも、そういう点にも現実の厳しさを突き付けられました。
二世議員ばかりでお金の苦労を知らない政治家の人たちは
ここまでの暮らしをしている人がいる現実を把握してるのだろうか?
この本はこの日本の現状をいちばんわかっていない彼らにこそ読んで欲しいものです。



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
 ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る/門倉貴史
 派遣のリアル 300万人の悲鳴が聞こえる/門倉貴史
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:15 | category:    門倉貴史 |
# ショコラティエの勲章

評価:
上田 早夕里
東京創元社
¥ 1,575
(2008-03)
コメント:いちばん食べたいのは1300円のパフェ♪
JUGEMテーマ:小説全般
●ショコラティエの勲章/上田早夕里
●東京創元社
●1575円
● 評価 ☆☆☆☆☆
京都に支店を持つ老舗の和菓子屋「福桜堂」
ここの神戸支店が綾部あかりの勤めているお店である。
福桜堂の二軒先には人気のショコラトリー「ショコラ・ド・ルイ」があり、
あかりがルイを訪れている時に店内でちょっとした事件が起こる。
その事件がきっかけで、あかりはルイのシェフ・長峰と出会うことになり・・・。
様々なお菓子をめぐる事件と人間模様、鮮やかで美味しいスイーツ連作集。




(感想)
老舗和菓子屋さんの看板娘・あかりさんと
クールで冷静な天才ショコラティエ・長峰さんが
スイーツにまつわるちょっとした謎を解いていくお話です。

表紙は作品のイメージそのままチョコレート色。
本当に美味しそうなスイーツがたくさんでてきてヨダレが
嬉しいことに和菓子屋さんと洋菓子屋さんがどっちもでてくるので、
和洋どちらのお菓子も楽しめるのが幸せーっ

読んでいるうちにどうしても二人のラブな展開を期待しちゃうんだけど、
そう簡単に甘〜い展開にいかないのがミソ。
甘すぎるスイーツより、
ちょっと甘さ控えめの大人の上品な味わいの方がある方が美味しく感じるように
単純にあまーくならないビターな二人の関係が作品の雰囲気にピッタリマッチしています。
ほどよい甘み+苦味がとっても読みやすいミステリーでした。

梅崎さんのフルーツを贅沢に使ったスイーツ、
福桜堂の懐中しるこ、三好さんの美しい「月人」、ルイの栗ロール・・・・。
でもでも、いちばん食べたいのはルイのチョコレートパフェ
アイスクリームの原料やカカオにこだわっているから1300円もするんだけど、
チョコレート屋さんのパフェ、どーしても食べてみたいわ
あと、ルイの夏季限定のテイクアウトアイスクリームも捨てがたい
表面に薄い円盤状のチョコがコーティングするように埋め込んであるんです。
スプーンでつつくとそれが割れて、
なかに詰め込まれているソースがとろ〜っと流れ出す仕組みになってるらしい
うおー、うまそう。想像するだけで溜息が・・・。
・・・このようにこの本はストーリーそのものだけでなく、
出てくるスイーツの美味しそうな描写だけでも十分楽しめるんです
スイーツはあくまで脇役のはずなんだけど、主役級に存在感がありました。

これを読む時は手元に甘いお菓子を準備しておくことをお勧めします。
絶対、絶対食べたくなるからっ
面白かったというよりは、美味しい気分にさせくれる本でした。
ごちそーさまでしたっ
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:55 | category: 作家名 あ行 |
# ロードムービー

評価:
辻村 深月
講談社
¥ 1,575
(2008-10-24)
コメント:優しい気持ちになれる3つの短編集
JUGEMテーマ:小説全般
●ロードムービー/辻村深月
●講談社
●1575円
●評価 ☆☆☆
デビュー作『冷たい校舎の時は止まる』から生まれた3つの短編集。
誰もが不安を抱えて歩き続ける、未来への“道”。
子どもが感じる無力感、青春の生きにくさ、幼さゆえの不器用・・・。
それぞれの物語を、優しく包み込んで真正面から描く。




(感想)
元となっている「冷たい校舎の時は止まる」を読んでいないどころか、
辻村さんの本を読むのもはじめて
ずっと読んでみたかった作家さんでした。
「冷たい〜」を読んでいなくても十分楽しめる本でしたよ

悪くはないんだけど、3つとも新鮮味がない
以前読んだことがある、何かで見たことがある・・・みたいな
使い古されたテーマのように思えるのがちょっと

だって1つ目の「ロードムービー」が
≪引っ越しで離れ離れになるのが嫌で家出をする小学生の話≫
2つ目の「道の先」が
≪塾の講師のバイトをしている大学生を好きになるちょっと大人っぽい中学生。≫
3つ目の「雪の降る道」が
≪病気の友達を毎日見舞ったんだけど、その友達に「お前なんかいなくなれ」と言われて家出≫

ね?3つともどこかで聞いたことのあるような話でしょ??
でも、どの話も子供だからこその無邪気さ・無鉄砲さなんかが発端になってる故の事件ばかりで、
なんだか懐かしい気持ちになりました
勢いでやっちゃったり(言っちゃったり)するんだけど、すごく後悔するの。
でも、もう後戻りできなくてどうしたらいいかわかんなくて、ただただ泣く・・・みたいなこと、
私も子供のころはよくあったなぁ。
先が見えない不安だけでなく、子供は自分で選ぶことができない。
その不安とモヤモヤがよく出ていました。

一つ目「ロードムービー」の仕掛けにはやられたっ

この3つのお話が「冷たい〜」とどうつながっているのか気になります。
もともと興味を持ってた作家さんだし、こっちも読んでみよう
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:49 | category:    辻村深月 |
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