# 彼女について
2008.11.27 Thursday
JUGEMテーマ:小説全般
●彼女について/よしもとばなな●文藝春秋
●1260円
●評価 ☆☆☆☆☆
大人になってからは一度も会ったことのなかったいとこの昇一が突然訪ねてきた。
それは由美子がたまたま久しぶりに東京に戻っていた時で、
二人は失われた過去を探す旅に出る。
この世を柔らかくあたたかく包む魔法を描く書き下ろし長篇。
(感想)
今現在、今年のナンバー1です
大好きなよしもとばななの作品のなかでも、1位か2位くらいに好きになってしまいました。
ばななさんの世界観ってとっても独特なものだけど、
今回はちょっと違うんですよね。
今までのばななさんにはなかったような驚くような展開なのです。
いい意味で「らしくない」。
秘密がわかったあとの最後の数ページは涙がとまりませんでした
「愛情」に包まれているという安心感。
由美子はいとこの昇一と、そして亡くなったおば様の愛に包まれ、
心地よく数日間を過ごした。
その温かさと安らぎが読者にまで伝わってくるようで、
とっても幸せで気持ちのいい空気の中、読むことができました。
幸せって特別なものじゃなく、
当たり前の積み重ねによって得るものなのですね。
これに気づくと、一日一日を愛で、大切に生きようと思えます。
そして自分だけじゃなく、誰かの幸福をも祈って生きていこう。
世界を優しく温かい眼差しで見ていなければ、
こんな美しく心があったかくなる文章はきっと書けない。
ばななさんの作品はストーリーだけでなく、一文一文を味わうのが楽しく幸せなんです
この本の中で特に好きな文章をあげておきます。
「小さい女の子がシロツメグサで指輪を作っているみたいに、
私は今、ただかわいい気持ちで一日を作っている。そんな夢を見ることができた。」