隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 彼女について

評価:
よしもと ばなな
文藝春秋
¥ 1,250
(2008-11-13)
コメント:今現在、私が選ぶ今年のナンバー1です☆
JUGEMテーマ:小説全般
●彼女について/よしもとばなな
●文藝春秋
●1260円
●評価 ☆☆☆☆☆ 
大人になってからは一度も会ったことのなかったいとこの昇一が突然訪ねてきた。
それは由美子がたまたま久しぶりに東京に戻っていた時で、
二人は失われた過去を探す旅に出る。
この世を柔らかくあたたかく包む魔法を描く書き下ろし長篇。



(感想)
今現在、今年のナンバー1です
大好きなよしもとばななの作品のなかでも、1位か2位くらいに好きになってしまいました。


ばななさんの世界観ってとっても独特なものだけど、
今回はちょっと違うんですよね。
今までのばななさんにはなかったような驚くような展開なのです。
いい意味で「らしくない」。
秘密がわかったあとの最後の数ページは涙がとまりませんでした

「愛情」に包まれているという安心感。
由美子はいとこの昇一と、そして亡くなったおば様の愛に包まれ、
心地よく数日間を過ごした。
その温かさと安らぎが読者にまで伝わってくるようで、
とっても幸せで気持ちのいい空気の中、読むことができました。

幸せって特別なものじゃなく、
当たり前の積み重ねによって得るものなのですね。
これに気づくと、一日一日を愛で、大切に生きようと思えます。
そして自分だけじゃなく、誰かの幸福をも祈って生きていこう。

世界を優しく温かい眼差しで見ていなければ、
こんな美しく心があったかくなる文章はきっと書けない。
ばななさんの作品はストーリーだけでなく、一文一文を味わうのが楽しく幸せなんです

この本の中で特に好きな文章をあげておきます。
「小さい女の子がシロツメグサで指輪を作っているみたいに、
私は今、ただかわいい気持ちで一日を作っている。そんな夢を見ることができた。」
| comments(4) | trackbacks(0) | 09:17 | category:    よしもとばなな |
# 人は、永遠に輝く星にはなれない

評価:
山田 宗樹
小学館
¥ 1,575
(2008-06)
コメント:人生をどう生きていくのかを考えさせられます
JUGEMテーマ:小説全般
●人は、永遠に輝く星にはなれない /山田宗樹
●小学館
●1575円
●評価 ☆☆☆
病院でソーシャルワーカーとして働く千夏のもとに、看護婦の紹介で西原という87歳の老人がやってくる。
妹の死のショックからその事実を忘れてしまい、
何度も妹の入院していたこの病院に見舞いに来てしまう独り暮らしの老人だ。
ある日、西原がひそかに思いを抱いていたデイサービスセンターの女性が一言の挨拶もなく、担当替えでいなくなってしまった。
その夜、西原は意識障害を起こし錯乱状態になり、自らが入院することに・・・。
孤独で頑なな西原だが、千夏の尽力で太平洋戦争を共に戦った戦友と会うことになり・・・。




(感想)
老人や重い病気にかかった人たちの孤独と心の闇を描きます。
いつか自分にもふりかかるかもしれない問題で、決して他人事としては読めません。
私だっていつかは年を取るし、その前に親の介護もしなければならないでしょう。
そんな日が来ることを思うと、しばし遠い目をしてしまう・・・。

ソーシャルワーカーも千夏、そして西原という老人。
途中まではこの二人の生活をそれぞれ描き、やがて二人が出会い、
そこで物語がつながります。

87歳になってもまだ自分で車を運転してどこにでも行く西原のおじいちゃん。
家族や周りの人にしてみれば心配なのはわかるけど、
お年寄りや病気の人にとって、今まで当たり前に出来ていたことがどんどんできなくなっていき、
できることが少なくなっていくのは言いようのない恐怖と不安だと思う。
私の祖父も82で、半年前に入院したのをきっかけに運転をやめているけれど、
それまでは乗っていましたからね。
祖父には私達がいくらでも力になるし、
今はいろんなサービスがあるんだから有効に利用して行こうと話したのだけど、
それでもなるべく誰にも迷惑をかけず、自分でやりたいのだといつも言っていました。
危険を感知する能力などは衰えていることはわかっている。
でも、彼らにとって人に頼らずにギリギリまで自分でやることは、最後のプライドなのだと思う。
自分で運転して、一人で住み慣れた家で暮らしたいという西原さんの姿は
祖父と重なるものがあり、考えてしまいましたよ。

お話自体は何かが起こるというわけでもなく、ただ重い作品という印象だったんだけど、
そんなふうにドラマ的なことなんか何もないけど、それでも続くのが人生というもの。
「人は、永遠に輝く星にはなれない」というタイトルがそれに気づいたら急に重く感じられました。

「誰も、永遠に輝く星には、なれない。
わたしたちに許されているのは、消滅点に達するその瞬間まで、
精いっぱい身を焦がし、光を放ち続けること」
という文章があるのですが、
年を取って自由に体が動かなくなっても、治る見込みのない病におかされても、
命の灯が消えるその瞬間まで生きることは続く。
その瞬間までをどのように生きるかは自分次第でしかなく、
その瞬間に後悔をしないような生き方をしていきたいと思いました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 15:57 | category:    山田宗樹 |
# 年下の男の子

評価:
五十嵐 貴久
実業之日本社
¥ 1,680
(2008-05-16)
コメント:夢のような、ドラマのようなお話です
JUGEMテーマ:恋愛小説
●年下の男の子/五十嵐貴久
●実業之日本社
●1680円
●評価 ☆☆☆☆
川村晶子、37歳。
マンションを購入してしまいました。
しかし契約翌日、仕事でとんでもないトラブルが発生し、
取引先の若い男の子と二人っきりで徹夜でトラブル処理することに・・・
でも、14歳も年下の初めて会った男の子なのに、なぜか話が合い、
知り合ううちに児島君から恋の告白までされちゃった
年齢差14歳のわたしと児島くんの恋はどうなるの




(感想)
軽くサクッと読めて面白かったです。
「パパとムスメの7日間」に然り、五十嵐さんってこういうのも書ける人ですよね。
ドラマ化しやすいストーリーだと思うなぁ。

37歳の晶子と23歳の児島君のラブストーリー
晶子は中堅クラスの飲料メーカに勤めている独身のOL。
独身の女がマンションを購入するということは、何かを諦めたことを認めたことになるようだけど、
晶子に関してはそこまでの強い決意があったわけではなく、
偶然、モデルルームの前を通りかかり、見学してしまったのをきっかけに
なんとなくそうなってしまった、みたいなカンジ・・・。

23歳の児島君にアプローチされて、
はじめは冗談としか取れなかった晶子さんの気持ち、わかるなぁ。
晶子さんに相談された友達が、「・・・ない」と即答しちゃったのもわかる。
33歳の私から見ても・・・ないもん。

「ないない、14歳下なんて絶対ない」と思ってた私でも、
晶子が秋山部長の方へ行っちゃいそうになった時は「いやー、ダメー」と思ってしまった。
ムリと思いつつも、いつの間にか児島君との恋を応援してる私がいました

児島君、契約社員だし、
イマドキの若者っぽいところが最初はちょっと受け付けない気がしたんだけど、
読み進めるほどになーんかいい男に思えてくるんですよね。
フッちゃうには惜しいような・・・笑。
ないと思いながらも、戸惑って悩む晶子さんの心が揺れも理解できるー。

けど、なぜここまで晶子がいいのかしっかりと書かれてないのは、
イマドキの男の子の心理ゆえなんでしょうか?

恋のライバルはあっさりと身を引いちゃうような弱腰さんで、
二人の間にある障害は「年齢差」だけっていうのが小説としては単純すぎたけど、
まぁ、軽い気持ちでちょっと読む分には問題ないかな。

これを男性が書いたというのは意外。
女性が主人公の作品を男性が書くと、
女性独特の微妙な心理など「ちょっと違うんじゃない?」と思うことがあるんだけど、
今回はまったくそんな風には感じず、自然と読めました
| comments(2) | trackbacks(0) | 12:45 | category:    五十嵐貴久 |
# 東京島

評価:
桐野 夏生
新潮社
¥ 1,470
(2008-05)
コメント:この設定は思いついてもなかなか書けませんよね(苦笑)
JUGEMテーマ:小説全般
●東京島/桐野夏生
●新潮社
●1470円
●評価 ☆☆☆
クルーザーで世界旅行に出たはずの清子夫婦が漂流の末にたどり着いたのは無人島
三ヶ月後、23人の若い男が島に流れ着き、太平洋の涯の島に女は清子ひとりだけ。
いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。
果たして、ここは地獄か、楽園か いつか脱出できるのか――。




(感想)
桐野さんの作品だから読むけど、
正直、あらすじを読んだだけで気が滅入りました
「無人島で、数十人の男の中に女が一人」ですよ?いやでもエログロ系の話を想像しちゃう
さらに1ページ目でいきなり明らかになるのですが、この女っていうのが「46歳」なんです。
若い男たちがこの唯一の女をめぐって、サバイバル・・・・
この設定、思いついてもなかなか書けるもんじゃない。
よっぽどうまくやらないとB級のエログロ小説にしかならないもん。
でも、そこはやっぱり桐野夏生
人間の欲、醜さ、非常事態で発狂していく様子が色濃く描かれ、
女性の図太さ、計算高さ、したたかさは憎たらしいくらいよく出ています。
女の汚い内面を描かせたらこんなにうまい作家はいないですよね。

サバイバルよりも人間の人間らしい面がどんどん壊れていく過程に読み応えを感じた。
非常時もみんな仲良く協力しあって・・・なんてのは幻想。
「他人より自分」。これが現実なのかもしれない。
もし、自分がこの状況に置かれたら、
彼らのようにはならないと言い切れない自分が恐ろしい

ラストはさっぱりしすぎてたけど、みんなそれぞれ現状を受け入れて生きてるようなので良しとします。
「オラガ事変」とネーミングには笑いました。

やっぱりワタナベみたいなキャラクタ−は必須ですね(ニヤリ)



| comments(7) | trackbacks(0) | 15:41 | category:    桐野夏生 |
# 真説・外道の潮騒

評価:
町田 康
角川グループパブリッシング
¥ 1,785
(2008-10-31)
コメント:「実録・外道の条件」から8年・・・またしても起こって(怒って)しまいました。
JUGEMテーマ:読書
●真説・外道の潮騒/町田康
●角川書店
●1785円 
●評価 ☆☆☆
年少者は年長者を敬い、大事にしなければならない・・・それが「長幼の序」である。
長幼の序を重んじる俺ははるか年上の演出家、宗田さんに
外国に行ってテレビに出演しろ、と言われる。
そんなことをするのは嫌で仕方なかったのだけれども、
長幼の序の精神に則ると無下に断るのも憚られ、
話だけでも聞こう、と思ったことからすべては始まった・・・。




(感想)
年上の演出家に頼まれ、ドキュメンタリー番組に出演することになったマーチダ。
番組のテーマは尊敬する作家・ブコウスキーの人生を辿る「マーチダコーの精神の旅」。
行き先はロサンゼルスということは決まったが、
ディレクターの稲村チャルベという男が
マスコミの常識(つまり社会の非常識)でしか物事を進められない男で、
スケジュールが定まらず、番組自体への納得もいかないままに出発の日を迎えてしまう
当然、ロスでの撮影もスムーズにいくはずはなく、
マーチダたちはチャルベ達マスコミのめちゃくちゃぶりに振り回されていきます

常識では許されないようなマスコミの外道っぷりを描く「実録・外道の条件」に次ぐ第2弾。
思えば、私がいちばん初めに読んだ町田康作品が「実録・外道の条件」でした。
どこまでが真実なのか(もしくは全部が作り話なのか)まったく判断できず、
エッセイでも小説でもないこの妙な味わいの虜になってしまったのです。

今回の「真説・外道の潮騒」でもマーチダは怒っています。
マスコミの人間には社会の常識的なことを言えば言うほど話が通じなくなる。
人の話を聞かず、ルールを守らず、自分を押し切ろうとする。
マスコミという変わった社会に対する怒るるマーチダのメッセージ。

でも、100%チャルベが悪いかと言われるとそうじゃない。
話をじっくりと煮詰めず、はっきりしないままにここまできたマーチダにも責任があり、
一方的にチャルベだけを責める資格はないんですよね〜。
もちろん、チャルベとマーチダだけじゃなく、
この撮影に関わっている人すべてに至らない点があるからこんな状況になったんだけど

まさに「人の振り見て我が振り直せ」な作品。
あんたら、みんな同罪だよ。

クスクス笑いはあったけど、他の作品に比べると笑えるポイントは少なかったです。



| comments(0) | trackbacks(0) | 11:55 | category:    町田康 |
# ひゃくはち

評価:
早見 和真
集英社
¥ 1,470
(2008-06-26)
コメント:人間の煩悩も108、野球のボールの縫い目も108
JUGEMテーマ:小説全般
●ひゃくはち/早見和真
●集英社 
●1470円
● 評価 ☆☆☆
新聞記者・青野雅人は恋人の佐知子から
実は二人は付き合い始める前から知り合っていたと打ち明けられる。
まったく覚えがなく混乱する雅人は、必死に記憶を辿っているうちに思い出したくもない過去に行き当たる。
野球に打ち込んでいた高校生の頃、
神奈川の超名門高校の補欠部員として、必死にもがいていた3年間。
甲子園に行きたい。そう誰よりも強く願う一方、
タバコ、飲み会、ナンパ、酒……。ごく普通の高校生としての楽しさも求めていた。
8年前ぼくらに何があったのか? ぼくは佐知子とどこで出会っていたのか?





(感想)
人間の煩悩の数・・・・108。
野球のボールの縫い目の数・・・・108。

炎天下の中、汗にまみれて白球を追いかける高校球児も普通の高校生。
甲子園に行きたい!でも、恋もしたいし、やっちゃいけないたばこやお酒に手も出してみたい。
そんな高校球児の中に渦巻く「普通の高校生」との葛藤を描くお話です。
中学野球界のスーパースターが何人も推薦入学してくる名門校の野球部。
一般入試で入ってきた部員・雅人とノブの「落ちこぼれ組」は当然のように仲良くなる。
二人が目指すのはレギュラー・・・・ではなくてまずはベンチ入り。

高校での野球部員としての思い出と、8年後の現在の雅人を交互に描いています。
テンポがよく、軽く読めました。
が、せっかくの野球のシーンは盛り上がりに欠け、さらっとしすぎてるような
もう、なんかこう手に汗握るような緊迫感が欲しかった。

佐和子といつ出会っていたかもひっぱったわりにたいしたことない。
転勤の話も無駄に感じたし、
200×年の現在のお話は再会のシーンだけで十分だったんじゃないかなー。
削るとこは削って、膨らませるとこは膨らませるべき。
各エピソードへの比重の置き方に新人作家らしい甘さを感じます。

甲子園に手が届きそうなレベルの選手が寮でたばこを吸ったり、
合コンでお酒を飲みまくったりなんてありえるの??
まぁ、高校球児だって普通の高校生だっていわれちゃそうなんだろうけど、
もっとストイックな感じに美化してたからちょっとイメージ壊れた
でも、これがリアルなんだろうな。
| comments(0) | trackbacks(0) | 16:32 | category: 作家名 は行 |
# 初恋素描帖

評価:
豊島ミホ
メディアファクトリー
¥ 1,260
(2008-08-20)
コメント:あるクラスの人間模様、恋模様
JUGEMテーマ:小説全般
●初恋素描帖/豊島ミホ
●メディアファクトリー
●1260円
●評価 ☆☆☆
ある中学校
のあるクラスをのぞいてみよう。
“思春期まっさかり”の中学2年生35名の中には片思いに悩む子もいれば、
両思いになって浮き足たっている者もいる。
もちろん、まだまだ恋になんて程遠い子も。
35名の生徒のうち、20人の男女それぞれの「ままならぬ想い」を描く連作掌編。
甘酸っぱい。ほろ苦い・・・でも、それだけじゃない中学時代。
あなたの“あの頃”をうずかせる、不慣れな恋の物語。



(感想)
各話ごとに主人公(語り手)が入れ替わる連作タイプの作品です。
読めば読むほどにクラス内の人間関係が見えてきます。
20人のルックスはどんな感じなのか、それぞれのイラストが添えられているのも嬉しい。
しかも、このイラストがまたかわいーんだ
本の前の方にこのクラスの名簿もちゃんとついてるのもありがたい。

多感な中学時代。
片思いであれ両思いであれ、初めての恋にドキドキする時期です。
同じ年齢ではあるけれど、中身が小学生のままの子もいれば、
驚くようなスピードで大人になってしまってる子もいる年頃。
まだまだ子供で上手な恋の駆け引きなんてできないものだから、
好きな子にはつい冷たくしてしまったり、
女の子に恥をかかせるような方法で愛の告白をしちゃったり、
背伸びしたいあまりに不器用に迫って失敗する。
この世代特有の過ちや願望が鮮やかに描かれててとっても読みやすいんです

20名のなかでいちばん気になったのは安西めいちゃん。
この子がどんな大人になるかと思うと・・・同性としてちょっと怖い。
こんな子が自分のそばにいたら大変だ。
めいちゃんとは友達になりたくないかも

甘酸っぱいなぁ。
うーん、でも自分が中学の時は、クラスの恋愛関係図の中に入ることのなかった地味な私には
懐かしさよりは人間観察的に楽しめました。
(うわー、この感想、すごいさびしい

中学生だったあの頃のあなたに似ている子がきっといるはず。
(私は身近な男子よりアイドルに夢中だったあたり飯田川理子ちゃんにシンパシーを感じました)
サクサクと読めて、感情移入もしやすいです。
豊島さんは平凡な学生の心理を描くのがほんとうにうまいんですよね
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:36 | category:    豊島ミホ |
# ハルカ・エイティ

評価:
姫野 カオルコ
文藝春秋
¥ 940
(2008-10-10)
コメント:著者の伯母様がモデルだそうです
JUGEMテーマ:小説全般
●ハルカ・エイティ/姫野カオルコ
●文春文庫 
●940円 
●評価 ☆☆☆☆
大正に生まれ、見合い結婚で嫁ぎ、
戦火をくぐり抜けて、戦後の自由な波に乗り・・・。
時代の荒波にもまれつつも、平凡な少女は決して後ろ向きになることはなかった。
その天真爛漫な魅力を開花させ、人々はみなハルカに引き込まれていく。
姫野式「女の一生」、激動の時代を明るく生きた、ハルカ、80歳の物語。



(感想)
大正に生まれ、激動の時代を明るく生きた、ある女性の物語。
主人公・ハルカのモデルは著者の実の伯母さまだそうです。
つまり、第一章に出てくるハルカの姪の作家・秋子さんは著者自身ということ。

この時代に女性が自分らしく生きることは困難でしょう。
今を生きる私達と、この時代を生きたハルカ達の生き方は違うけれど、
女性たちが抱くときめきや憧れは今も昔も根本的には変わらない。
問題は時代がそれを許してくれるかどうか。
けど、そんな時代のなかでもハルカはもちろん、学生時代の友人たちも
何とか自分で人生を切り開いたのだから素晴らしい女性たちだと言いたい。

うーん。でも、納得できない部分も多い。
ハルカは確かにポジティブで天真爛漫な女性だけど、
この女性が80代になった時に、ああいうおばあちゃんになるというのが疑問。
なんだか描かれていない部分に素敵なおばあちゃんになれる素が隠されていたような・・・。
素敵に年を取るために、ハルカさんにヒントをもらいたかった私にしてみれば少々ガッカリ

夫の人物像をもっと深く描いてほしく、そのへんは物足りなかったけど、
最後の最後で夫婦の幸せな様子が強く感じられたのでオッケー。
物語はこんな一文で締めくくられる。
「ああ、夏の終わりの夕暮れは、なんや、ロマンチックやなぁ。」
ここにハルカの幸せがすべてつまってますよね
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:56 | category:    姫野カオルコ |
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