隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# あねのねちゃん

評価:
梶尾 真治
新潮社
¥ 1,575
(2007-12)
コメント:ファンタジーっぽいけど、ちょっと怖くて笑えます。
JUGEMテーマ:小説全般
●あねのねちゃん/梶尾真治
●新潮社
●1575円
●評価 ☆☆☆
幼稚園のころ、極端に人見知りをした玲香には、
他の人には見えないけど、自分には見えるたった一人の友達「あねのねちゃん」がいた。
少しずつ友達ができはじめるとあねのねちゃんは消えて行き、
今はそれが想像の産物だと分かるが、当時は唯一の友達だった。
ところが、大人になり、失恋の痛手を負っていた玲香のもとに再び「あねのねちゃん」が現れる。
ファンタジックに展開するあなたの友達の物語。 



(感想)
イマジナリー・コンパニオン。
孤独な状態におかれている子供が、その境遇を補填するために作り上げる想像上の友人。

小さい頃に仲良く遊んで、玲香の孤独を埋めてくれた実在しない友人「あねのねちゃん」が
大人になった玲香の元にあらわれたことによって起こる騒動を描いています。
表紙もタイトルもかわいいから心温まるファンタジーかと思いきや、意外とブラックでした。
あねのねちゃんは玲香とはまったく正反対の性格で、
玲香が思いもつかない(できない)ようなことを平気でしてしまう残酷な面もある子で、
あねのねちゃんが玲香を傷つけた上司や元カレにするお仕置きは、
「おいおい・・・」と引いてしまうほどやりすぎ(>_<)
でも、あねのねちゃんは言ってのける。
「私がしてることは玲香ちゃんがしたいと思ってるのにできないことよ」と・・・。
こんな風に玲香は自分の本心をあねのねちゃんによって突きつけられていき、
このへんが大人の小説なのかなと思いました。

んー、でもお母さんの正体とか、お母さんとあねのねちゃんの戦いの場面あたりは
もう完全にマンガかB級映画みたい
映像ならまだしもこれを大人に活字で読ませるとは・・・。
これってもともとはケータイ小説の単行本化らしいし、
これじゃやっぱり一般の読書ファンから「所詮ケータイ小説なんか」って思われるのも仕方ないですね

無邪気だけどきちんと筋が通っていて、
100%自分の味方をしてくれるあねのねちゃんに再会したことで成長した玲香。
最後の彼女は見違えるほど強く、自分をもった女性になっていて、
終わりは気持ちのいいものでした。
あねのねちゃんのためにも玲香には幸せになってほしいです
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:49 | category: 作家名 か行 |
# グラニテ

評価:
永井 するみ
集英社
¥ 1,890
(2008-07)
コメント:「母と娘」が「女と女」に変わる時
JUGEMテーマ:小説全般
●グラニテ/永井するみ
●集英社
●1890円
●評価 ☆☆☆☆
趣味のケーキ作りが高じて、小さなケーキショップを経営していた万里だが、
夫が40代の若さで急死し、今は娘の唯香と二人で暮らしている。
店は今や人気のカフェへと拡大し、3店舗を経営する経営者となった。
一回りも年下で映画監督の恋人・凌駕もいて順風満帆に思えた万里の生活だったが、
凌駕と唯香と出会ったことで母子の関係に変化があらわれはじめる・・・。




(感想)
一回りも年下で、しかもちょっと有名な映画監督が恋人であることを娘に隠している母。
その恋人が娘にはじめて出会った時、
彼は娘の天性の輝きに気づき、ぜひ次回作に女優として出てほしいと懇願。
万里が映画出演に反対したもんだから母子の間に亀裂が生じてしまいます。

手元で大事に育ててきた娘が急に大人になっていくことに抵抗してしまう母。
はじめて情熱を向けられるものを見つけ、無我夢中で大人になろうとする唯香。
それだけならまだしも、唯香は自分を引き出してくれた凌駕に恋心まで抱いてしまい、
なんだかもうドロドロ
でもこういう展開、昼ドラ好きな私には楽しかった

「母と娘」という関係がどんどん「女と女」になってくる。
まだまだ子供だと思っていた娘が「女」として自分と同じ土俵で勝負しようとしている。
自分の手の中にいると思っていたのに、
演技への自信と恋によって圧倒的なパワーを得て、
別人のように変化していく娘を目の当たりにする恐怖。
しかも彼女をここまで磨いたのは自分の恋人
母としてじゃない、万里の女としての本音があまりに生々しい。
万里にも唯香にも共感は難しいけど、
二人とも本音で戦い抜いたことに間違いはなく、
ぶつかりあった末にできた映画を見ることによって雪解けしたのはなんとなく納得。
ラストがあっさりしすぎて拍子抜けしたけど、母子の本当の絆ってこういうものですよね

指揮者の奥様が万里に言った本音には「おおーっ」拍手ものです
こんなにハッキリ言えたら気持ちいい。
そうよね、よく考えると万里って嫌な女よね

タイトルのグラニテとはシャーベット状の氷菓のこと。
冷凍庫で少し固めたらフォークでかき混ぜて、また冷蔵庫へ戻し、
それを丁寧に何度も繰り返して作るのですが、
ちょっとかき混ぜるタイミングがずれると台無しになってしまう難しいお菓子。
二人の関係はグラニテをいい加減にかき混ぜたようにザラザラしてしまった。
丁寧に時間をかければなめらかになったはずなのに・・・。
グラニテというキーワードは奥が深いものがありました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:54 | category:    永井するみ |
# ダイイング・アイ

評価:
東野 圭吾
光文社
¥ 1,680
(2007-11-20)
コメント:東野さんにしては・・・。
JUGEMテーマ:小説全般
●ダイイング・アイ/東野圭吾
●光文社
●1680円
●評価 ☆☆☆ 
頭に暴行を受け、病院に運び込まれた雨村慎介は、
自分が過去に交通事故で一人の女性の命を奪ったと聞かされるが、
なぜかそれに関する記憶だけきれいに消失してしまっていた。
なぜ、そんな重要なことを忘れてしまったのだろう・・・?
事故の状況を調べ、記憶を取り戻していこうとする慎介だが、
信頼していた身近な人物たちが徐々に怪しい動きを見せ始める……。




(感想)
グイグイと引き込まれるけど、でも、決定的に何かが足りない。
いつもの東野圭吾らしさがない、そんな風に感じられた。

ちょっとオカルトチック。超常現象のような説明できない現象もあり。
こんな結末におさまるとは意外でした。
精神が崩壊してしまったのか、はたまた本当に霊から乗り移られてしまったのか、
それとも催眠術か・・・。
が!瑠璃子という存在に無理があるような気がしてなりません。

なぜ瑠璃子があんなにも激しく慎介の体を求めるのかも不明
無駄に性的なシーンが多い

何が怖かったかっていわれればやはり事故を詳細に描写した部分。
まさに今、車で自分をひき殺そうとしているドライバーを見つめる被害者の目
その恨みの強さはドライバーを呪うことすらできる。
その目を想像しただけで震えが来るほど。
タイトルも象徴するように、目に込められた怨念にゾクゾクきます。

マネキンっていうのも怖いもんだよね
しかもウエディングドレス姿っていうのが不気味さを煽ります
| comments(2) | trackbacks(0) | 10:02 | category:    東野圭吾 |
# 秘湯、珍湯、怪湯を行く! ―温泉チャンピオン6000湯の軌跡

評価:
郡司 勇
角川書店
¥ 930
(2005-09)
コメント:マニアックすぎる〜(笑)
JUGEMテーマ:温泉に行こう
●秘湯、珍湯、怪湯を行く! ―温泉チャンピオン6000湯の軌跡/郡司勇
●角川oneテーマ21
●930円
●評価 ☆☆☆☆
なぜ、そこまでして温泉道を極めようとするのか・・・・
その答えは「そこに湯が湧出しているから」。
今にも崩れそうな廃墟の湯、アンモニア臭の漂う湯など
「こんなとこに入るの」と目をうかがってしまうような写真の数々。
温泉チャンピオンが心から満足した“本物の温泉”が登場する温泉バカ一代



(感想)
この人はすごいの一言に尽きます。
私も自分のことを温泉好きだと思ってたんだけど、
郡司さん知っちゃったら恐れ多くてもう温泉好きなんて語れない
この本に載っている温泉のいくつかは私には絶対にムリです
恥ずかしいやら気持ち悪いやらでとてもとても・・・。
郡司さんの温泉魂に少しひきつつ、逆に尊敬の念も覚えつつ
私は成分表をしっかり見て分析したり、味まで確かめるなんて考えたことはないし、
温泉好きを語っていた自分が恥ずかしいです(>_<)

郡司さんは「癒すというより、攻めている感じ」という。
湯との対峙・・・私からすると「は?」という感じで、
もう湯との付き合い方が私達とは根本的に違うんですね・・・。
行ったことのある温泉も載っていたんだけど、
その珍しい特徴にまったく気付かず、ただ浸かっていたことを今になってもったいなく思います。

山道をテクテクと歩き、やっと発見した湯には浴槽などは存在せず、
持参した子ども用プールにその湯を苦労してためて温泉を楽しむ郡司さんを想像したら
思わず吹き出してしまいました(私の想像のなかでももちろん足は組んでいる)

写真の豊富で、立ち読みで写真を見るだけでも面白いです。
特に52ページの真ん中、80ページの上、81ページの下、85ページの下、139ページの3番目なんて
「クレイジー」としか言いようがありません

ここで見たいくつかは気軽に行ける距離にあるから行ってみよう
温泉の違う楽しみ方を学んだような気がします。
とりあえず美容にも良さそうなドロドロの泥湯には入ってみたい
もっと温泉極めるぞ〜
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:27 | category: 作家名 か行 |
# マリカの永い夜;バリ夢日記

評価:
吉本 ばなな
幻冬舎
---
(1994-03)
コメント:小説 + 旅エッセイ
JUGEMテーマ:読書
●マリカの永い夜;バリ夢日記/吉本ばなな
●幻冬舎
●1365円
●評価 ☆☆☆
蓮の花を見つめるマリカ。
彼女にはまだいくつ、越えなくてはいけない悲しいことがあるのだろう。
多重人格のマリカと10年の時を共にした元精神科医が見た、自由な魂たちの悲しみと希望の物語。
そして、霊が肉を包む南の磁場での著者の体感世界を現わす「バリ夢日記」。
小説 + 紀行エッセイ。




(感想)

前半はバリを舞台した小説「マリカの永い夜」、
後半は作品のために訪れたバリの旅を綴った「バリ夢日記」。
一冊で小説とエッセイの二つが楽しめます

精神科医を辞めたばかりのジュンコ先生は、
10年ほど診てきた多重人格症の患者・マリカと医者と患者の垣根を超えた友人としてバリ島へ行きます
マリカの中には数人の人格がいて、彼らは両親のひどい仕打ちにより心が崩壊してしまったマリカを必死に守ってきたけれど、
ジュンコ先生の診察により、いまや統合されていない人格は13歳の少年「オレンジ」のみ。
今回のバリ旅行はそのオレンジが望んでのことです。

マリカもジュンコ先生もオレンジも、そして消えた他の人格たちもそれぞれ憎しみあっているわけではない。
守り、守られて、肩を寄せ合って生きてきた。
そのへんが他の多重人格ものの作品と違うとこかなぁ。
重い雰囲気はなく、愛にあふれた作品になってるのがばななさんらしい
医者たるもの、マリカの中の他の人格をきれいに消滅させることこそが務めなのだけれど、
そうなってしまうことにみんながなんとなく寂しさを感じている。
いつしかみんなの中に絆が生まれてしまってるから別れも辛い。

他の人格たちは消滅するのではなく、マリカの中でひそかに生き続けたり、
またある者は新たな場所を求めて旅立つ。
完全なる消滅という形の別れでないことがマリカにとっても私にとっても救いでした。

後半の「バリ夢日記」からは仲間との楽しい様子とバリの美しい風景が感じられる一方、
「マリカの永い夜」のヒントと思えるようなエピソードも散りばめられていて読んでいて楽しい。
それにしても食べ物の話は本当に美味しそうバリ料理が食べたい
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:43 | category:    よしもとばなな |
# 長い終わりが始まる
評価:
山崎 ナオコーラ
講談社
¥ 1,260
(2008-06-26)
コメント:小笠原の性格の悪さばかりが気になる

JUGEMテーマ:小説全般
●長い終わりが始まる/山崎ナオコーラ
●講談社
●1260円
●評価 ☆☆
大学4年生の小笠原はマンドリンサークルに所属している。
就職活動よりも人間関係よりも趣味のマンドリンに命をかけているから、
他のメンバーのように軽い気持ちでサークル活動を楽しむことを軽蔑している。
だからみんなと活動以外の場面でつながることがなかなかできない。
そんな小笠原にもとても好きな人がいるのだが・・・。
いつまでも流れていく時間を描いた青春文学。




(感想)
何が起こるわけでもない淡々としたお話でした。
主人公の小笠原のひねくれまくった性格の悪さがすごーく気になります
こういう難しい人って身近にいたら案外好きなんだけど、
サークル内の関係とか客観的にみちゃうと嫌な人だなぁ。
やったことがないのに、
「この年になってもコンドームのことが言い出せない自分がふがいない」
とか思っちゃってるところなんかほんとイヤ。

マンドリンの技術は誰もが認めるけれど、
その性格ゆえに決してリーダーやサークルの重要人物になることはできない。
それにすんごくムカついている女・小笠原。
我が道を行く系のキャラと思われてるけど、実際はサークル内の序列を誰よりも気にして、
自分の居場所を求めている。
素直すぎるから、人に見せなくてもいいところまで見せて嫌われてるタイプ。

小笠原が田中に恋をする気持ちってほんとに恋なのかなぁ?
たんに音楽の同志を求めてただけのように思う。
田中の女ったらしなところ見極められず、いいように遊ばれちゃったってこと。
結局は小笠原にも見る目がなかった。

男も女も登場人物はすべて名字で呼び捨てで書かれているので、
誰が男で誰が女なのかわからなくなり、困りました。
でも、もしかしたらこれは小笠原が彼らを男とか女とかそんなことどーでもよくて、
単に記号としてしか意識してないことを表してるのは?と思い、
つくづく小笠原に呆れてしまいます。

恋をしたり挫折をしたりして、小笠原が性格を改めるとかでなく、
最後まで徹底的にいやな女だった。一体、何が描きたかったんだろう・・・。
しかし、社会に出ると今の小笠原の自己主張やわがままは通じなくなる。
彼女はどんな大人になるんだろう。
その後の彼女の見てみたいかも。
| comments(4) | trackbacks(1) | 12:45 | category:    山崎ナオコーラ |
# フラミンゴの家

評価:
伊藤 たかみ
文芸春秋
¥ 1,400
(2008-01)
コメント:育った環境がどうであれ、しっかりとした人たちの物語
JUGEMテーマ:小説全般
●フラミンゴの家/伊藤たかみ
●文藝春秋
●1400円
●評価 ☆☆☆
町の下半身と言われる南口の商店街で、
パチンコ屋とスナックを経営する母を手伝い、
実家のスナックを手伝う元(今も?)ヤンキーのバツイチ男・正人。
元妻にガンが見つかり入院したため、
離婚以来6年も会っていなかった思春期の娘の晶を預かることになったが、
晶は父親に捨てられたと思いこんでいるためになかなか親子の距離は縮まらず・・・
困惑しつつも絆を深めていく家族の物語





(感想)
いい年をして田舎ヤンキー上がりまるだしの主人公・正人。
リーゼントでバッチリ決めて、改造シーマを乗り回している事実を晶に知られたくなくて、
必死に隠そうとするのだがすぐに見破られてしまう。
一方の晶は父親に捨てられたと思いこんで生きてきた都会っ子。
もしこのまま母が亡くなってしまったら母の実家へ行くか、母の恋人のところへ行くか、
それともこの父親のところへ・・・。
もしもの時を思い、晶は必死で正人の人間性を見極めようとする。

正人が商売をする町は「町の下半身」と呼ばれ、子供を育てるには決して良いとはいえない町。
こんな町でなんだかいかがわしい商売をする大人たちの中に放り込まれた晶だが、
だからといって彼らが汚れているというわけではない。
義理人情に厚く、責任感があり、あやしいけどきちんと生きている人たち。
家族の問題にしても商売にしても真剣な彼らは何も恥じるようなところはなく、
その人の環境によって、人間性が図れるわけはない。
なかでもいいのが正人の今の恋人のあや子。
彼女がいたから、正人と晶は歩み寄ることができた。
ちょいデブでも、いい女はいい女

子供ができたからといって、誰もがすぐに親になれるわけではない。
子供と接していろんな経験値を増やしていくことによって、一歩一歩、親になっていくもの。
一組の親子が出来ていく過程を見るような作品でした。
はじめは頑なに正人を「片瀬さん」と呼んでいた晶が、
最後には自然と「パパ」と呼べるようになっていることがすべてを表しています。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:41 | category:    伊藤たかみ |
# ウツボカズラの夢

評価:
乃南 アサ
双葉社
¥ 1,785
(2008-03-19)
コメント:ウツボカズラとはよく言ったもんだ・・・
JUGEMテーマ:小説全般
●ウツボカズラの夢/乃南アサ
●双葉社
●1785円
●評価 ☆☆☆
母が亡くなってすぐに父が女を家に連れ込んだ。
弟もその女になついてしまい、家庭に居場所を失った未芙由は
一度も会ったことのないおばの「ウチにおいでよ」という言葉を真に受けて東京にやってくる。
もともと壊れかかっていた鹿島田家だが、歯車はどんどん狂い始め・・・。
鹿島田家の人々の日常をシニカルに描ききることで見えてくる不気味な世界とは・・・。




(感想)
家に居場所がなくなり、東京の親戚を頼ってきた未芙由。
そこは高級住宅地のお屋敷だったが、家族はバラバラ。
そこで家事を任され、目立たないように邪魔にならないように静かに静かに生きてただジーッとチャンスを狙っている。
気付かないうちに人の隙間に入り込み、静かに静かにおびき寄せるのは・・・居場所と幸せ。

はじめは家族の物語なのかと思ってたけど、
タイトルの意味がわかり、物語の本質に気づいた瞬間、ゾッとしました。
ウツボカズラ・・・よく言ったものです。
本編の最後(408ページ)の主人公の決意には鳥肌が立つほど。
こういう不気味さって桐野夏生っぽいなー。

プロローグがうまく生かしきれてない印象だったけど、最後の最後のエピローグで納得。
最終的に誰も損してないからすごい。
読み始めた時の印象と話の展開がこんなにも違う作品も珍しい。

それでね、この本、スピン(しおりの紐)が2本ついてるんですよ
どんな意味があるんでしょうね??
個人的にはどっちの紐を使っているのかわからなくなって「あれ?あれ?」ってなったのですが
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:02 | category:    乃南アサ |
# プラチナタウン

評価:
楡 周平
祥伝社
¥ 1,890
(2008-07-23)
コメント:難しくない社会派小説☆
JUGEMテーマ:小説全般
●プラチナタウン/楡周平
●祥伝社
●1890円
●評価 ☆☆☆☆
大手総合商社部長の山崎鉄郎は、ちょっとしたミスで出世街道から外された上、
150億もの負債を抱えて平成の大合併からも爪弾きされた故郷の町の町長を引き受ける羽目に陥ってしまう。
しかし、町の現状は財政再建団体入りは不可避といえるほど想像以上にひどかった
そんな中でさえ、事態の深刻性を認識できてないお役所体質の職員たち、
私腹を肥やそうとする町議会のドンなど、
鉄郎の前に田舎ゆえにまかり通る非常識が立ちはだかる。
そんな困難に挫けず、鉄郎が採った目からウロコの財政再建策とは?




(感想)
面白かったー。「明るい社会派小説」ってかんじ?
こんなわかりやすい社会派小説なら私でも十分楽しめるっ
表紙の二人の表情が作品すべてを物語っています。

バリバリの商社マンだった男が破たん寸前の故郷の町長となり、財政再建を目指す。
そこで目をつけた事業が「老人ホーム」。
とはいっても私たちがイメージするようなホームではなく、
都会の富裕層をターゲットにした巨大な近代的老人ホーム。
介護が必要な人には手厚い看護、そうでない人はマンション感覚で。
土地の人には当たり前の光景になっている自然は都会の人には売り物になり、町内で釣りもゴルフも楽しめる。
町を破たん寸前に追いやった原因ともいえる無計画な箱モノ施設もこれで最大限に利用できる。
そして何より都会の感覚にも十分対応できるような商業施設をホームに隣接させることにより、
ホームでの介護士・商業施設での販売員と若い人の雇用も増え、人口も税収もあがりいろんな意味でよい、と。

・・・夢のような話です。

老人問題、地方の過疎化、雇用問題、古くからの商店街が抱える問題・・・
今、地方が抱える多くの問題を多く含んでいる。
私の住んでる町もこんな感じだからこういう状況、よーくわかるけど、
それをすべて一つの施設建築で解決してしまおうというからすごいっ

お金のある人しか入居できないという現実はリアルだけれど、老人問題へも雇用問題へも夢が広がった。
この事業によってこの町は老人だらけの町になってしまうけど、暗さをまったく感じない。未来が明るい

ほんとは☆5つ付けていいほど面白い。でも、4つにしたのはあまりに展開が都合よすぎること。
これほどの事業がこんなにトントン拍子に進むわけない〜。
大きな反対勢力や一部住民からの強い反発などあるはずなのにそれがほとんど描かれることがないし、
こんな大きな仕事を町長がついこの間までいた会社に任せるなんて普通だったらマスコミが騒ぎ立てるでしょ、ヤバイヤバイ
| comments(2) | trackbacks(1) | 10:26 | category: 作家名 な行 |
# 静かな爆弾

評価:
吉田 修一
中央公論新社
¥ 1,365
(2008-02)
コメント:ワンクッション置いたコミュニケーションの難しさ
JUGEMテーマ:恋愛小説
●静かな爆弾/吉田修一
●中央公論新社
●1365円
●評価 ☆☆☆
テレビ局に勤める早川俊平はある日公園で耳の不自由な響子と出会う。
人の声を集めるのを生業とする俊平と、音のない世界で暮らす響子。
やがて二人は恋に落ちるが・・・。



(感想)
耳の聞こえない響子の影響か、
の中での足音やほんの少し食器がぶつかり合う音など些細な生活音が聞こえてきそうでした。

響子に一緒に暮らすことを断られ、
悲しいけれど心のどこかでホッとする俊平。
好きだけれど、突き進むことに躊躇するのは、
危険やトラブルにみまわれてもその事実にさえ気づかない響子に対する恐れ。
愛する人をそんな危険にさらさらければならないことへの恐怖にあると思う。

私は言葉にできないなら紙に書けばよいと思っていた。
でも紙に書いてコミュニケーションをはかることには限界がある。
咄嗟に出てしまう衝動的な言葉は伝わらないし、
早口でまくしたてればスッキリするようなことも「書く」という行為のために
紙を探したり、言葉を選んでワンクッション置いているうちに浄化されてしまうだろう。
そんなことから気持ちにズレが出てきてもおかしくはない。

耳が聞こえないという設定以外に響子の人物像が見えてこないのが残念。
人物像だけでなく気持ちも見えてこない。
読者でもイライラするんだから俊平の気持ちが窺えますね

神宮球場の場面は喧騒が押し寄せてくるような感覚に襲われ、
また不気味でもあり圧巻。

俊平の仕事の様子が詳細に描かれすぎてることに疑問を感じたけど、
タイトルが「静かな爆弾」であることを考えると素直に納得できます。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:48 | category:    吉田修一 |
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