# サウスポイント
2008.05.29 Thursday
サウスポイント
よしもと ばなな
JUGEMテーマ:小説全般
●サウスポイント/よしもとばなな
●中央公論新社
●1575円
●評価 ☆☆☆☆☆
子供の頃、母に連れられで夜逃げをした。
その時、大好きだった男の子に残してきた手紙の一節が、
ハワイアンの美しい調べにのり、
大人になり、その男の子とも疎遠になってしまった私の耳へ届く。
私はハワイアンを奏でるミュージシャンとのコンタクトを試みるが・・・。
(感想)
子供のころに強く強くひかれあったテトラちゃんと珠彦くんの2人が
大人になって再会する物語です。
あくまでメインはこの2人の奇跡のような恋なんだけど、
珠彦くんの家族は一年前に弟の幸彦くんを亡くしていて、
その悲しみの中で生きている。
私はそちらサイドのストーリーの方に共鳴してしまいました。
涙が止まらなかった。
これを書いている今だってとまらない。
私も弟を半年ほど前に亡くしたので、
この家族の悲しみと虚無感は今の私のそれと同じなんです。
なんだか今の私の思いを代弁し、
そしてこの事実をゆっくりと納得させてくれるような安心感と説得力がある。
今、この作品に出会えたことに感謝します。
死んだ弟の恋人だった人と
どうつきあっていくのかというのも・・・わかるんだぁ。
弟を失い、さらに彼女までをも失うのはつらい。
でも、弟がいなくなってしまった今、
彼女は私たちとは関係のない別の人生を歩かなくてはいけない。
すごくいい子だった。
本当はこれからもずっとずっと仲良くしていきたかった。
でもいつまでも私たち家族をかかわりを持つことは
彼女のこれからの恋愛や結婚に大きく影響してしまう。
そう思って彼女とも永遠のお別れをしなければならなかったことを思い出し、
またまた泣けちゃった
だからマリコさんにも、弟の彼女だった人にも
素敵な人に出会って幸せな結婚をしてほしい。
「じっくりとあきらめていくのは、
たまになにもかもが昔に戻ったような、
これからなにもかも良くなっていくと錯覚させるような希望の瞬間があるぶん、
急にあきらめることの何倍も悲しいということを私は知った。」
という一文があった。
私もこんな気持ちだったかもしれない。
でも、私にとってあの時間は悲しいだけでなく、
ゆっくりとさよならをするために大切でかけがえのない時間でした。
よしもとばななさんの世界は決してぶれない。
どこ作品を読んでも、言っていることはいつも同じ。
何気ない生活の中で何を大切にし、
どこを見つめていくことが幸福へつながるのかを気づかせてくれる。
胸が締め付けられるような、心を震わせる言葉にあふれていて心が洗われる。
ばななさんの本を読むと魂がツルッと磨かれたような気がする
今回は作品の本当のテーマとはちょっとズレたところにひっかかってしまったので、
他人が読んだらまったく参考にならない感想なのかもしれない。
すいません。
けど、許してね。
●この本が好きな人におすすめなのは・・・
ハチ公の最後の恋人/よしもとばなな
まぼろしハワイ/よしもとばなな