隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# やってられない月曜日
やってられない月曜日
やってられない月曜日
柴田 よしき
やってられない月曜日/柴田よしき
新潮社
1470円
評価 ☆☆☆☆
高遠寧々、28歳。
歌手か女優?あるいは少女漫画の主人公みたいな名前だけど、
平凡な(ちょっと変わった趣味はあるけど)OLです。
大手出版社に勤めてはいるけれどコネ入社。
それにコンプレックスを抱き、彼氏もいないけど
気の合う同僚はいるし、まぁまぁお気楽な一人暮らしを満喫中ぴかぴか
けど、そんな平凡な日々にも、いろんな事件は潜んでて――。
「あるあるある!」って思わず呟いちゃう、
本音満載のワーキングガール・ストーリー。



(感想)
軽く読めるのが良かった◎
柴田よしきさんのこういうテイストって大好きです。

小説の主人公としていかにも作られた感がプンプンする
主人公じゃないのがいい。
大手出版社に勤めるOLなんていっても、
みんながみんな仕事にやりがいを感じてて、常に充実した恋愛ができてるわけじゃない。
そこそこのお給料で、現実に不満を抱きながらもまあまあ妥協して生きてる。
毎日にドラマなんてない。
そこにリアリティを感じ、共感できました。

でも、何もないようにみえる平凡な日々の中にも
ちょっとした事件はある。
そういう小さな出来事を積み重ねながら、
仕事や会社や仲間のいい面を見つけて、少しずつ変わっていく寧々。
劇的な出来事なんてなくっても、人は成長していくもの・・・。
そのさりげなさが、寧々だけでなく
平凡な私たち読者にも可能性を感じさせてくれるんです。

コネ入社であることのコンプレックス。
容姿も良くなく、彼氏もいない。
自分にないものってはっきり自覚しがちだけど、
持っているものって自分ではなかなか気づけないもの。
寧々だって気づいてなかっただけで、いい友人や相談相手に恵まれていた。
一生をかけて楽しめる生きがいも持っていた。
これからは「自分が持っていないもの」ではなく
「持っているもの」を数えてみよう。
持っているものの数は同じでも、
その方が毎日がきっと輝いてみえるよねニコニコ

週末、月曜日のことを思うと憂鬱・・・。
「やってられない」でも「やらなきゃならない」。
主人公と一緒に私もガンバローと、ちょっと元気を与えてくれる本でした。


●この本が好きな人におすすめなのは・・・
月曜日の水玉模様/加納朋子
朝顔はまだ咲かない―小夏と秋の絵日記/柴田よしき
ワーキングガールズ・ウォーズ/柴田よしき
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:52 | category:    柴田よしき |
# あなたの呼吸が止まるまで
あなたの呼吸が止まるまで
あなたの呼吸が止まるまで
島本 理生
JUGEMテーマ:小説全般

あなたの呼吸が止まるまで/島本理生
新潮社
1575円
評価 ☆☆
12歳の野宮朔は、舞踏家の父と二人暮らし。
家を留守にしがちの父の代わりに家事の一切を取り仕切り、
元気に遊ぶことよりも、秘密のノートにお話を書くことに幸せを感じる女の子。
父の仲間たちは変わった人が多いし、
どうもクラスメートとは打ち解けられないけど、
なんとか一歩一歩、大人に近づいてます。
しかし、そんな彼女を襲った、突然の暴力・・・。
彼女が最後に選んだ復讐のかたちとは――。



(感想)
「暴力」を描いた作品らしいというのは知ってました。
けど、一言に暴力といってもいろんな形があって、
具体的なところまでは知らずに読みました。
しかし、読み進めているうちに「まさか・・・:」という悪い予感が襲ってきて、
それが見事に的中してしまい、
見たくない物を見てしまったような不愉快感でいっぱいです。
12歳の多感な時期の少女が傷つけられる物語を書きたいならば、
他にも手段はあるはずなのに、
島本さんはどうしてこんな不快な手段を選んだんだろう・・・。

主人公の朔、クラスメートの鹿山さん、田島君。
みんながみんなあまりに大人で、
とても小学生としては見れなかった。
鹿山さんが朔と仲良くなるきっかけとなった味噌汁のエピソードなんてありえないよ!?
だって小学生が言いますか?
「味噌汁は先に野菜をごま油で炒めておくと香りが良くなる」なんて汗
こういう不自然さがきにかかり、
どうしても「子供の小説」とは思えない。
だから、朔に向けられた暴力が
12歳の少女へのものと捉えるのも難しくってひやひや

朔の復讐の仕方にしたって
幼稚ながらも、あまりにもねちっこくて興ざめしちゃう汗
朔、変なところで子供なのね・・・。

島本理生さんは好きな作家の一人なのに、
こういう感想を書かなきゃいけないことに驚いています。

| comments(2) | trackbacks(0) | 11:25 | category:    島本理生 |
# 木洩れ日に泳ぐ魚
木洩れ日に泳ぐ魚
木洩れ日に泳ぐ魚
恩田 陸
JUGEMテーマ:小説全般

木洩れ日に泳ぐ魚/恩田陸
中央公論新社
1470円
評価 ☆☆☆☆
これは一枚の写真カメラについての物語である。
部屋の荷物はあらかた運び出し、
僕と彼女は2人で過ごす最後の夜月を迎えている。
この先の人生をそれぞれが歩いていくために、
僕には明らかにしておかなければならないことがひとつだけ残っていた。
僕たちと写真にうつるもう一人の人物を殺したのは自分だと、
彼女の口から、白状させなければならない・・・今夜中に。



(感想)
明日からは別々の人生を歩きはじめる一組の男女が、
ともに過ごす最後の一夜の物語。
たった一夜、2DKのささやかなアパート、登場人物は2人だけ・・・。
閉塞感すら感じさせそうな、こじんまりとした設定ながら
回想の中で場面はいろんなところへ飛び、
奥行きのある作品でした。
読み応えたっぷりですグッド

最後に、ひとつだけどうしても明らかにしなければならないこと。
それはある人物の死にかかわること。
隠されていた真実、考えられる憶測をつなぎあわせていくにつれ、
2人の関係も微妙に変化していく。
最後の2人の気持ちのおさまり方は女性作家ならでは猫2
真実はわからないまま、謎は謎のまま残るのに、
ラストは晴れ渡る青空のように清々しいおてんき
不思議な余韻が残りますニコニコ
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:28 | category:    恩田陸 |
# カツラ美容室別室
カツラ美容室別室
カツラ美容室別室
山崎 ナオコーラ
カツラ美容室別室/山崎ナオコーラ
河出書房新社
1260円
評価 ☆☆☆
オレは梅田さんの紹介で
「カツラ美容室別室」の人たちと出会った。
店長の桂さんはカツラをかぶった美容師で、
オレと同じ年で27歳のエリちゃんと
24歳のゆかりさんの3人がカツラ美容室別室の面々。
出会ったその日、オレたちは花見桜に行くことになったが・・・。
大人の事情、大人の友情、大人の交流の行方は?



(感想)
うーん。
非常に感想の書きにくい本ですひやひや

美容師があからさまにそれとわかるようなカツラをかぶってて、
しかもその人の名字が「桂さん」って
設定自体は個人的にドンピシャ猫2
でもお話に深みがないんだよな〜。

大人の男女が出会い、
当然ながら恋愛対象ラブとして見始めて、
なんとなくいい雰囲気になるんだけど、
でも付き合うには至りませんでした・・・みたいな話。
そんなことはもう全然珍しくもないでしょう。
この2人が盛り上がっている様子もまったくないから、
読み手にもドキドキやワクワクがなくて淡白な感じ。
カツラの美容師・桂さんも絡んでくるんだけど、
設定に負けないほど強烈なキャラってわけでもないし、
どうなんだか[:ふぅ〜ん:]

面白くも、面白くなくもなく、
「ふーん、そうなんだ」で終わっちゃうのです。
なんだかこんな感想ですいません。

・・・で、ブログを書こうと思い、出版社をみてみて納得たらーっ
【河出書房新社】か・・・。
ここの本、どれを読んでもイマイチ物足りないんだよな〜。
はじめから知ってたら読まなかったかも汗
| comments(0) | trackbacks(2) | 11:21 | category:    山崎ナオコーラ |
# ホテルジューシー
ホテルジューシー
ホテルジューシー
坂木 司
ホテルジューシー/坂木司
角川書店
1470円
評価 ☆☆☆☆
柿生浩美20歳。
大家族に生まれたせいか正義感にあふれる若年寄り、
しっかり者の男前に育ってしまいましたたらーっ
ひと夏のアルバイト先はアバウトすぎて問題山積みの沖縄のC級ホテル。
あやしげな同僚たちと、ワケあり風なお客様に翻弄される日々の中、
次から次へと災難が・・・。


(感想)
以前読んだ「シンデレラティース」の姉妹編ともいえる作品。
「ホテルジューシー」で主人公・浩美の親友として登場するサキちゃん。
この子が「シンデレラティース」の主人公で、
それぞれ彼女たちのひと夏のアルバイト経験を描いているのです。
もちろん「シンデレラティース」の方にも浩美ちゃんはちょろっと登場してますおはな

カラッとしてて面白かったーぴかぴか
沖縄のおおらかな土地柄や美味しそうな食べ物・・・
どれもこれもキラキラまぶしく見えましたぴかぴか

ミステリー仕立てにはなっているものの、
それよりは一人の女の子の成長物語として読んでほしい。
大家族の長女として縛られた生き方をしていて、
知らず知らずに頭の固い女の子になっていた浩美ちゃんが
このバイト経験を通して、少しだけ柔軟な考えができるようになる。
私は浩美ちゃんのまじめさに
「うんうん、そうだよね。許せないよね。」と共感しつつ読みました。
こういうの、うざいって思われるかもしれないけど、
私も曲ったこと、不真面目なことは許せない性分なので汗

沖縄ってゆるやかなイメージがある一方、
地元で育った人でないと理解することのできない壁も持っている。
その土地柄を知る意味でも考えるところがありました。
多くの人が沖縄に抱いている「勘違い」にも
さりげなく警告してくれているし・・・。

ところで・・・
そもそもサキちゃんと浩美ちゃんは、
2人で卒業旅行飛行機に行くためにアルバイトを始めたのです。
ならば2人のその旅の様子も書いてほしいな〜と期待してますウィンク

うん。
私は「シンデレラティース」よりこっちの方が好きラブ


●この本が好きな人におすすめなのは・・・
シンデレラティース/坂木司
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:11 | category:    坂木司 |
# 【新釈】 走れメロス 他四篇
新釈 走れメロス 他四篇
新釈 走れメロス 他四篇
森見 登美彦
JUGEMテーマ:読書

【新釈】 走れメロス 他四篇/森見登美彦
祥伝社
1470円
評価 ☆☆☆☆
あの名作が、京の都に甦る!?
暴走する恋と友情――。
異様なテンションで京都の街を突っ走る表題作をはじめ、
先達への敬意(リスペクト)が切なさと笑いをさそう、五つの傑作短編。
若き文士・森見登美彦の近代文学リミックス集ぴかぴか



(感想)
「山月記」「藪の中」「走れメロス」
「桜の森の満開の下」「百物語」。
名の知れた古典的名作をモリミー流に料理してしまったすごーく大胆な試みの本!!


5つとも京大の「腐れ大学生」が主人公。
本編中の5つの話の登場人物などは少しずつリンクしていて、
連作短編集の味わいもあります。
詭弁論部」「図書館警察」など森見ワールドではおなじみのキーワードも多数登場するので、
モリミーファンはニヤリとすることでしょう猫2

名作を下敷きにしているのは間違いないんだけど、
自分の持ち味をこれ以上無理!!ってくらいに詰め込んで、
完全に自分の世界に染め上げてしまってるのはすごいラブ
才能はもちろん、その勇気と潔さもすごい。
やられてしまった歴史的文豪たちもきっと驚いてるでしょうね(笑)

いちばん好きなのは「走れメロス」。
オリジナルになじみがあるし、
モリミー流のバカバカしさがいちばん色濃く出てるのもこれだから。
こんな友情もいいなぁ。
こんなバカな友情を素敵だと思える自分も素敵だなぁ。
最後の踊りの場面では笑い以外にもなーんかこみ上げるものがあった。

今も昔も若者たちの「苦悩」の素って根本的に変わらない。
だから現代の人も古典小説を楽しめるんだニコニコ
小説に限らず、本当にいいものって永遠なんだね。

しっかし・・・。
モリミーを読んでいるおかげで
私の中でもう完全に「京大生 = 変人」っていう公式が生まれてるなぁ汗

☆を4つにしたのは、
私が5つすべてのオリジナルを読んでいるわけではないから。
文学ファンとして恥ずかしいのかもなひやひや
それでも十分面白かったけど、
オリジナルを読んでないとわからない面白さも絶対あったはずでしょ汗
そこを汲み取れなかったことにマイナス1。



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
やっぱりオリジナル版ですよね。
山月記/中島敦
藪の中/芥川龍之介
走れメロス/太宰治
桜の森の満開の下/坂口安吾
百物語/森鴎外
| comments(2) | trackbacks(1) | 13:40 | category:    森見登美彦 |
# 最後の願い
最後の願い
最後の願い
光原 百合
JUGEMテーマ:読書

最後の願い/光原百合
光文社
1890円
評価 ☆☆☆
新しく劇団を作ろうとしている男がいた。
度会恭平。劇団の名は、劇団φ。
度会は納得するメンバーを集めるため、日々人材を探し回っているが、
その過程で次々と謎に遭遇することになり・・・。
日常に潜む謎の奥にある人間ドラマを、優しい眼で描く青春ミステリー。



(感想)
新しい劇団が出来上がっていくまでの物語です。
中心メンバーとなるのは演技力はもちろんのこと頭もキレる2人の男。
彼らは一緒にやって行きたいと思う人たちを訪ねていく。
しかし、その人たちはそれぞれに見過ごしてしまいそうな小さな、
でも「納得のできない不思議」を抱えていて、
2人がその謎を解決しつつ、仲間を増やしていくミステリーです。

全体を通して、面白さの元となる謎そのものには
ハッとするほどの意外性やわかった時の爽快感はあまりない。
でも、ミステリーを読んだ後に残る、
強烈な悪意による不快感は感じず、
むしろやわらかいまなざしを受けたような心地に落ちる。
こんな、心に沁み入るものがあるから光原百合さんって好き!!
後半に進むにつれて全編がつながっていくのがわかるのだけど、
それと並行して一人づつ劇団のメンバーが集まり、
すべてがスルスルと着実に完成していく過程を味わうのは
気持ちの良いものでした。

うーん、でも私が光原百合さんに求めてるものって
眩いほどの輝きぴかぴかと癒しチューリップのような気がします。
「時計を忘れて森へ行こう」のインパクトがどれほど強かったか・・・。
いまだにあれを読んだ時のトキメキが忘れられないのですニコニコ
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:17 | category:    光原百合 |
# ひなのころ
ひなのころ (中公文庫 か 72-1)
ひなのころ (中公文庫 か 72-1)
粕谷 知世
JUGEMテーマ:文庫

ひなのころ/粕谷知世
中公文庫
680円
評価 ☆☆☆☆
ゆうべのことは、おひなさんとわたしだけの秘密なんだね…。
幼いころはお雛様やお人形とも話すことが出来た。
家族は病弱な弟ばかりを心配し、孤独を感じていた幼少時代、
将来が見えず苛立った思春期・・・。
懐かしい風景の中、主人公の風美が経験するちょっと不思議な出来事。
季節のおとないとともに成長する少女と家族を描いた物語。



(感想)
郷田風美という女の子の4歳、11歳、15歳、17歳・・・と綴られる成長物語です。
懐かしさの中にファンタジックな要素も含まれていて、
雰囲気はかなり私の好みでしたニコニコ

夜中に一人でトイレに行くのが怖かったり、
人形と話せるような気がしたり、
壁や床の模様が人や動物の顔に見えたり・・・。
誰もが思い当たるような懐かしいエピソードがちりばめられています。
懐かしい風景も、子供のころの些細な思い出も、
どれも自分にも思い当たることばかり!
四季折々桜の風景や、古き良き田舎の生活の描写が心地よくて、
こういう本を素敵だって思える気持ちは大事にしたいなーと思いました猫2

ウチも弟は子供のころは入院病院が多かったし、
両親も夜の仕事をしていたので、
孤独を感じていたかと言われればそうだったかもしれない。
いつも両親や弟に迷惑や心配をかけないようにと、
もしかしたら他人行儀に見えるかもしれないような生き方をしてきた。
愛されていないわけじゃないのに、
家族に甘えたり、本音でぶつかるのが苦手で、
なんでも自分の中で決着をつけて、諦めてしまうような子。
弟が亡くなるちょっと前に
「どうして姉貴はそんなに親に遠慮ばかりするんだ」と言われたことがあったけど、
本当にそうなの。
だから主人公の風美ちゃんには強く共感できた。
涙が出ちゃうくらいポロリまるで自分を見ているようでしたあせあせ


●この本が好きな人におすすめなのは・・・
 りかさん/梨木香歩
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:52 | category: 作家名 か行 |
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