# グラデーション
2007.12.26 Wednesday
グラデーション
永井 するみ
JUGEMテーマ:読書
●グラデーション/永井するみ
●光文社
●1680円
●評価 ☆☆☆☆
一つ一つ、迷ったらいい。
歩き続けていれば、日々は色濃くなってゆくものだから
14歳、16歳、17歳、18歳、19歳、20歳、22歳、23歳・・・。
ある女の子の進学や恋愛、就職の悩み……
誰にでも訪れる当たり前のような出来事を自分らしく受け止め、
大人の入り口に立つまでを丁寧に辿る、心地よい成長小説。
(感想)
主人公の真紀は地味で平凡な女の子。
クラスメイトの女の子達がきゃあきゃあ盛り上がる
男の子の話題やゴシップめいた噂話は苦手。
そんな自分がひどくお堅い、
陰気な人間のような気がしてひそかに自己嫌悪に陥る・・・そんな子。
おおよそ主人公には向いてないタイプの真紀ですが、
私には強く共感できる部分が多く、愛すべき主人公でした(笑)
真紀のような子を見てくれている男の子がちゃんといること、
真紀の良さをすぐに見抜いてくれる同級生がいることを嬉しく感じ、
なんだか私自身が真紀になったかのように
すごくリアルに感情移入できたんですよね
中学・高校・大学で真紀と仲良くなる女の子たちにも
それぞれに愛すべき点があって、
いつしか彼女たちのことも大好きになってました。
彼女たちとの関係、母や姉との関係・・・
女性なら必ずどこかで懐かしさを感じ取るアンテナが反応しちゃうはず。
女性向けの作品といえるのかな。
クラスの気の合わない女の子たちとの付き合いがうっとおしいとか、
友達に彼氏ができたことにプレッシャーを感じたりとか、
10代のころはそんなことが大きな大きな悩みだった。
そんな時代を懐かしく思い出してしまいました。
どの章もスパッと完結しているわけでなく、
どこか尻切れで物足りなさを感じてしまうように唐突に締めくくられます。
でも、読了した今になって思うと、
その作為的な書き方はとても意味のあることに思える。
真紀の人生は文章に描かれてない部分でも存在していて、
ここに描かれているのは
彼女の人生のほんと些細なエピソードにすぎないと感じさせるのに効果的。
より強く、彼女をリアルに感じさせます。
真紀は高校で美術の楽しさに触れ、
その方面の学校へ進むことになるのですが、
そうでなくてもこの「グラデーション」ってタイトルはいいなぁ
迷い、傷つきながらも、
どんどん自分という色を濃くしていく・・・だから「グラデーション」。
少しづつ自分色に色づいていく等身大の主人公が瑞々しい。
大きなドラマはないけど、
自分の近くにもいそうな誰かの青春をのぞき見るような心地よい作品でした。