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# 秋の牢獄
2007.11.21 Wednesday
秋の牢獄
恒川 光太郎
●秋の牢獄/恒川光太郎
●角川書店
●1470円
●評価 ☆☆☆☆☆
11月7日、水曜日。
女子大生の藍は、秋のその一日を何度も繰り返している。
毎日同じ講義が繰り返され、友人は何度も同じ話をする。
明くる日も、また明くる日も・・・。
彼女は何のためにこの日を繰り返しているのか。
この日々に終わりは訪れるのだろうか。
終わりの見えない絶望を描く3編の作品集。
(感想)
普段通りの日常生活を送っていたはずの主人公たち。
しかし、自分でも知らないうちに異国の扉を開けてしまっていて・・・。
ある日を境に「閉じ込められてしまった」人たちを描きます。
逃げられない人々ははじめは絶望するものの、やがては順応していく。
その変化の様子が淡々と淡白に描かれていくので余計に怖いです。
特に表題作の「秋の牢獄」では
何度も同じ日を繰り返す主人公が
「この日が体調の悪い日や、肉親の葬式のある悲しい日でなくてよかった」と
感謝すら感じるようになります。
違和感、恐怖、絶望・・・その先に残された感情。
≪いろいろあったが悪い日ではなかった。≫という
ラストの一文はゾッとするほど強烈でした。
恒川さんは読者をここではない世界に連れて行ってくれる。
妖艶で、とぎすまされ、まるで大人のための童話のよう。
もしかしたら私達の生きている空間のすぐ裏側には
こんな世界が存在しているのかも・・・と思えないでもないような不思議な感覚。
読者はこの圧倒的な世界観に飲み込まれ、どっぷりとこの世界に浸れます。
たとえそれが辛く厳しいものだとしても、
「明日」があるって幸せなことなんですね。
●この本が好きな人におすすめなのは・・・
ターン/北村薫
# メタボラ
2007.11.19 Monday
メタボラ
桐野 夏生
●メタボラ/桐野夏生
●朝日新聞社
●2100円
●評価 ☆☆☆☆
舞台は沖縄。
深い森の中を必死に逃げる途中で2人は出会った。
一人は記憶喪失の男。
そしてもう一人は全寮制の職業訓練所のような施設を飛び出してきた昭光。
ニート、請負労働者、ホスト、バックパッカー・・・。
下流社会を漂流し続ける若者たち。
記憶を失くした≪僕≫のゼロからの自分探し。
(感想)
沖縄の政治問題、DV、集団自殺、低賃金で働く外国人労働者、
ニート、ワーキングプア、請負労働社の現状など
現代の日本が抱える様々な問題をたくさん絡めてあり、
グイグイ引っ張られるような吸引力のある作品。
でも、やや詰め込み過ぎな印象もあるかな
そこへ沖縄のうだるような暑さが襲い掛かかり、
ジリジリと焼けつくようで胸やけしそう
中でも私にとって最も印象深かったのは
本土から移住してきた人と、
もともとの沖縄住民との「沖縄」に対する思いの差。
両者とも沖縄を愛しているのに変わりはないのに、
どうしても越えることのできない壁がある。
この温度差を埋めるにはまだまだ長い年月がかかるのでしょうね。
記憶喪失というゼロの状態から自分を見つけていったギンジ。
すべてを思い出した時の葛藤、そして最後の選択・・・。
彼の未来に果たして希望はあるのでしょうか。
このラストには彼のような若者には、
悲しいけど抜け道がない現状がはっきり描かれていると思うのですが・・。
# ロック母
2007.11.15 Thursday
# 夜明けの縁をさ迷う人々
2007.11.12 Monday
夜明けの縁をさ迷う人々
小川 洋子
●夜明けの縁をさ迷う人々/小川洋子
●角川書店
●1365円
●評価 ☆☆☆
僕が流し打ちの腕を上げたのは
三塁側ファールグランドでいつお逆立ちの練習をしていた
曲芸師のおかげだった。
思いきりバットを振って、強いライナーが三塁側に飛んで、
もし曲芸師さんに当たったら・・・。
曲芸師と少年の交流を描く「曲芸と野球」他、
どこか奇妙ですこし哀しい人々を、
手のひらですくうように描いた珠玉の作品集。
(感想)
9編の短編集です。
どんどん読み進めたくなるような面白さはありません。
でも、情景を思い浮かべると不思議な美しさがあります。
少年たちが野球をする側で、
椅子を互い違いにいくつも組み合わせて練習をする曲芸師。
エレベーターボーイとしての職務を果たすのに
ぴったりなサイズで体の成長が止まってしまったエレベーターボーイ。
一言でいうと「絵になる」短編集です。
小説を楽しむってこと以外に、
ちょっと風変りな絵画展を鑑賞するような味わいがあるのです。
ただ美しいとか怖いんじゃなく、
ブラックユーモアのようなスパイスの効いた恐怖とでもいうのでしょうか。
小川洋子さんならではのシュール感。
独特の空気が不気味で、でもどっか面白みもあって・・・。
夜明けの縁・・・ギリギリの境界線を漂うような不思議な感覚に酔えました。
# 八日目の蝉
2007.11.07 Wednesday
# 卵のふわふわ
2007.11.03 Saturday
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