隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# ありがとう、さようなら
ありがとう、さようなら (ダ・ヴィンチブックス)
ありがとう、さようなら (ダ・ヴィンチブックス)
瀬尾まいこ
ありがとう、さようなら /瀬尾まいこ
メディアファクトリー
1260円
評価 ☆☆☆☆
ついこのあいだ、3年生を送り出して胸を痛めていた私は、
今は1年生の担任となり、また胸をはずませている。
本当に学校というところは「ありがとう」と「さようなら」が
目まぐるしく襲ってくる場所。
辞めたくなることもあるけど、
それ以上に感動がいっぱいの学校生活学校
現役の中学教師でもある瀬尾まいこのエッセイ集。



(感想)
ダヴィンチで連載していたエッセイの単行本化。
作家であり、現役の中学教師でもある著者が学校生活を綴っています。
3,4ページ程度のエッセイが40編くらいのっていて、
ずっしりとした読み応えはないけど、あったか〜い気持ちになりましたニコニコ

学校の先生は中学生にとって家族の次に身近な存在です。
とにかくこの世代の子たちって、
背伸びをしたくて敏感で扱いにくそうに思えるけど、
先生のファッションTシャツや恋愛ラブにやたらとつっこんでくるし、
性的な話題には異常に反応たりして案外かわいいぴかぴか
日頃、ニュースで話題になるような反抗的でねじ曲った学生はほんの一握りで、
実はほとんどの子がキラキラとした学生生活を送ってるんですね。

驚いたのは「ある日、生徒会長のS君とけんかをした。」という記述。
教師と生徒の間に「けんか」!?
教師が生徒をしかったとか、
生徒が反抗的な態度を取ったとかじゃなくあくまで「けんか」。
決して対等な関係ではない両者のいざこざを「けんか」と言ってしまうことで、
瀬尾先生の生徒に対する目線は決して教師としてのものだけじゃないっていうのがわかる。
時に教師、時に姉、時に友達・・・。
教師である前に、先生も一人の人間であるということを
学生時代の私はまったく考えたこともなかったように思います。

おそらくここには書けないような
おだやかじゃないエピソードも学校にはたくさんたくさんあるでしょう。
でも、瀬尾先生はここに書かれたような
楽しく幸せな出来事があるからこの仕事が大好きで、
瀬尾先生が生徒を愛していること、
また生徒が瀬尾先生を慕っていることははっきり伝わってくる。
彼女の小説は本当に好きだし、
できればもっと早いペースで書いてほしいのだけど、
教師の仕事も大切にしてほしいな〜。

それにしても、生徒の名前はイニシャル表記になっているものの、
読む人が読めば誰の話なのかすぐわかってしまいます。
そういうことが生徒的に保護者的にオッケーなのか疑問だけど、
悪い書かれ方はしてないからオッケーなのかな?
私、余計な心配してますか?
でも、見方を変えれば生徒にこんな素敵なプレゼントプレゼントを贈ることのできる先生もいないよなぁ。
生徒たちはどう感じているんでしょうね。
| comments(4) | trackbacks(0) | 12:31 | category:    瀬尾まいこ |
# 朝顔はまだ咲かない
朝顔はまだ咲かない―小夏と秋の絵日記
朝顔はまだ咲かない―小夏と秋の絵日記
柴田 よしき
朝顔はまだ咲かない―小夏と秋の絵日記/柴田よしき
東京創元社
1575円
評価 ☆☆☆
高校生の頃にひきこもりになったあたし、鏡田小夏。
あたしを訪ねてくるのは、親友の秋だけ。
秋はイマドキの女の子で、恋の一部始終を報告しにやってくる。
でもね秋、ひきこもりのあたしだって
恋や将来に悩みがあるんだよ。
そんな2人の女の子が遭遇した7つの不思議な出来事を描く連作ミステリー。




(感想)
主人公の小夏は19歳のひきこもりの女の子。
ひきこもりと聞くと、なんとなく暗いイメージを抱いてしまうけど
軽く読めてむしろ明るさのある連作集でした。

ミステリーとしての面白さはそう高いものではない。
読者を置いてけぼりにするような章もあるにはある。

でも小夏と秋、そして彼女たちを取り巻く人々の雰囲気が良い。
だからサクサクと読めてしまうんです。
小夏はひきこもりということをのぞけばいたって普通の女の子。
秋もイマドキの子に見えてマジメでかたい面がある。
この2人、なんか応援したくなっちゃうんですよねラッキー

少しづつ、ひきこもりの生活から抜け出して
成長していく主人公に光を感じ、
もう少し彼女たちの今後を見守りたいような気持ちになりました。
実際、どうして学校では特別に仲が良いわけではなかったのに、
小夏が学校に来なくなって秋がここまで小夏にかかわるようになったのか、とか
秋の気持ちにわからない部分がある。
ぜひ、この2人の物語をもっと書いてほしいですぴかぴか
| comments(2) | trackbacks(2) | 12:35 | category:    柴田よしき |
# 有頂天家族
有頂天家族
有頂天家族
森見 登美彦
有頂天家族/森見登美彦
幻冬舎
1575円
評価 ☆☆☆☆☆
我らの父は偉大なるその血を、律儀に4つに分けた。
長兄には責任感だけ、次兄は陽気な性格だけ、
三兄の私は阿呆ぶりだけ、末の弟は純真さだけ。
てんでバラバラの4人をつなぐのは母の海よりも深い愛と、
偉大なる父とのサヨナラ・・・。
父の死からすっかり落ちぶれた4兄弟・・・しかも彼らは狸!
京都を舞台に、一族の誇りをかけた青春ファンタジー。




(感想)
面白かった〜ニコニコ

人間・天狗・狸が暮らす街・京都が舞台。
京都という地の持つ奥ゆかしく味わいのある風景が
この3つの種族が共存する不思議さと見事にマッチしています。

はじめは相変わらずのモリミー節のバカバカしさに
呆れつつも楽しく読んでいたのですが、
父の死の真相がわかるにつれて怒涛の展開に!
いちいち驚きの声をあげ、
愛すべき毛玉たちに声援を送りながら熱い気持ちで読みました。

奥ゆかしさ・バカバカしさ・妖艶さ、この3つの絶妙なバランス感。
そして主人公がかわいい狸だっていう力の抜け具合。
バカバカしさをしっかり保ちながらも感動させてくれるから凄い。

登場人物の鮮やかな個性も魅力☆
4兄弟、悪の双子金閣・銀閣、赤玉先生、弁天、海星・・・みんな大好きぴかぴか
悪役すらも、そのおバカぶりを愛せてしまうのです猫2

達磨・偽電気ブランバーなど
他の作品にも出てくるアイテムが効果的に使われてるのもファンには嬉しいおはな
モリミーファンのはしくれとして、
いつか私も偽電気ブランを飲んでみたいものですウィンク

巻末では第二部の始動が大きく予告されてあり、
今後も毛玉4兄弟の活躍から目が離せません。
| comments(4) | trackbacks(3) | 11:57 | category:    森見登美彦 |
# ドロップス
ドロップス
ドロップス
永井 するみ
ドロップス/永井するみ
講談社
1575円
評価 ☆☆☆
やりがいのある仕事と家庭を持ち、
他人から見れば幸せに見える結婚生活を送るフリー編集者。
高校の同級生に言い寄られる、バツイチ子持ち美女。
奔放な恋愛をしてるように見えて、
実は10歳も年下のピアニストが気になるシングルマザーのソプラノ歌手。
かつての略奪愛を経て、夫と静かに暮らすホール経営者。
4人の女、それぞれの仕事と恋。



(感想)
ある音楽ホールムードを中心として、
4人の女性の不安と不満に満ちた日常を描きます。
各章ごとに、4人のうちの誰かが主人公となる連作タイプのお話です。

やりがいのある仕事だったり、独身の気楽さだったり、
幸福に見える家庭であったり・・・
4人はそれぞれ他人から≪羨ましがられるもの≫を持っています。
でも本人は人には見えない部分で悩んでて、満たされていない。
自分のもっていないものこそ欲しい。
愛されるだけじゃなくて、愛したい。
恋愛ラブ・仕事ビル・結婚指輪・子育て赤ちゃん
一通りの経験をした30代だからこそ見えてくる迷いが見事に描かれています。

いろんな形の幸福があって、
いろんな考え方があって、だからズレも生じてくる。
夫婦であれ、親子であれ、まったく別の人間なのだから
どこかで折り合いをつけて生きていかなければならないってことだね。

女性心理の描写のうまさにはドキッとします。
言い当てられたようなバツの悪〜いかんじ?
「同窓会は今の自分に自信の持てる者だけが参加するもの」なんて
きっついこと言うな〜と思うけどわかるひやひや
夏香と遼子の行った同窓会にはバツイチの女性は遼子しか来ていなかったけど、
たしかに実際にこの夏にあった私たちの同窓会にも、
バツイチの子は一人も来てなかった(市内に残ってる子ですら何人かいるはずなのに)

これで男側の思惑も描かれていればひと味違ったのかも。
ぜひぜひこれの男性バージョンを読んでみたいな猫2

各章、ちょっとスッキリしない締め方ではあったんだけど、
最後の最後で4人すべての悩みがうまく解決できたようで嬉しい
ラストはキレイにおさまってたと思います。

それにしても、この装丁のダサさはなにーっひやひや
色の配色といい、ハートとクローバーといいあせあせ
稀に見るダサさゆえに書店で目立っちゃうような恐るべきデザインですねモゴモゴ



●この本が好きな人におすすめなのは
いつか記憶からこぼれ落ちるとしても/江國香織
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:35 | category:    永井するみ |
# 悪人
悪人
悪人
吉田 修一
悪人/吉田修一
朝日新聞社
1890円
評価 ☆☆☆☆
携帯サイト携帯で知り合った女性を殺害した一人の男。
彼はその直後に別の女性と出会い、共に逃避行車に及ぶ。
二人は互いの姿に何を見たのか?
どうしてあと少しだけ早く出会えなかったのか。
残された人々の思い、そして揺れ動く二人の純愛劇。



(感想)
事件にかかわった人は全員、孤独を抱えている。
寂しいから、誰かを求める。
寂しいから、虚勢を張る。
寂しいから、嘘をつく。

純粋であればあるほど深みにはまっていく。
出会いはどうであれ、2人は恥じることなどない真剣な恋をしていた。
事件の幕が閉じ、最後の数ページはあまりにも悲しく、
離れた2人の今の思い込みが辛い。
光代のそばに寄り添って、
「あなたのあの恋は思い上がりでも遊びでもない」と言ってあげたい。
言いようのないもどかしさが残ります。

主人公(語り手)がいるわけでなく、
関係者のさまざまな証言がはさまれ、
いろんな視点から描かれることによって個々の感情が手に取るようにわかります。
420ページと読み応えのあるボリュームも苦になりません。
はじめに容疑者として警察に追われる人物がいるけど、
でも読者は犯人が彼じゃないことには気づいてる。
ならば、彼が事件とどう絡んでいるのか・・・
隠れた真実が知りたくて夢中で読みました。

「悪人」とは誰なのか。
私はその言葉が指してあるであろう人物を「悪人」とは言い切れない。
そして犯罪を犯したその罪の重さではなく、
人間として最も「悪人」なのは誰かとも考え・・・。
あまりにも深く重いタイトルをどう解釈すべきか悩むところです。
| comments(13) | trackbacks(2) | 09:39 | category:    吉田修一 |
# この人と結婚するかも
この人と結婚するかも
この人と結婚するかも
中島 たい子
この人と結婚するかも/中島たい子
集英社
1260円
評価 ☆☆☆
ある時は美大アートの学食ディナーで話しかけてきた男。
ある時は仕事で知りあったTVディレクタ−テレビ
ある時はスーパーで自分と同じ食材に手にした男。
「この人と結婚するかもしれない」、直感でそう思った。
でもいつもカン違い汗
もしかしたら私、一生結婚できないかも!?
そんな日々、英会話教室で出会った男性・・・もしかしてこの人が?



(感想)
恋人のいないカン違い女を描く「この人と結婚するかも」。
また、同じように恋人のいないカン違い男を描く「ケイタリング・ドライブ」の二編を収録。

「この人と結婚するかも!?」「この人と付き合うかも揺れるハート」なんて思い込みは
誰でも一度は経験したことがあるはず。
2人に独身時代の自分の姿を重ねてしまい、
苦笑してしまうようなかわいらしい作品でした。

どちらの主人公も勘違いや妄想に走りすぎて、
なかなか現実的な恋に至りません。
でもねぇ、無事に恋愛をして結婚できた私だから言えるのかもしれないけど、
こんな勘違いや妄想も恋愛の面白さじゃないのかなー。

「この人が結婚するかも」の主人公は
健康食品やセルフで簡単に済ませられる外食をとることが多く、
≪食≫の楽しさにまったく意味を持たせない(そのことに気づきもしない)生活を送っている。
そのへんの感覚が薄いのにも、
彼女が恋のできない理由がなんとなーく見え隠れしてて上手いですよね。

これまで中島たい子さんといえば、
20〜30代の女性が興味を持つ身近なテーマを上手に書いてきた人だけど、
今回は男性が主人公のお話もアリ。
読み始めたばかりの段階では裏切られたような気がしてしまったけど、
この男性の気持ちもリアルに書けている。
でもやっぱりこの人には私たちの世代の女性のリアルを描く
女性の味方」であってほしいなぁ。
| comments(4) | trackbacks(1) | 10:15 | category:    中島たい子 |
# まぼろしハワイ
まぼろしハワイ
まぼろしハワイ
よしもと ばなな
まぼろしハワイ/よしもとばなな
幻冬舎
1575円
評価 ☆☆☆☆
フラダンサーのあざみさんと、私。
あざみさんは私の義理のお母さんで、
私たちは大好きなパパを失ったばかり。
2人で愛したパパの記憶を抱え、私たちはハワイへ旅立った飛行機



(感想)
3つの物語を綴る短編集。
3つとも「ハワイ」と「家族(どこか普通と違うんだけど、でも絆はとても強い家族)」の物語です。

よしもとばななさんは美しいものを表現するのが抜群にうまい。
それは目に見えるものだけでなく、
人のあたたかさや、心の美しい人が発する内面の輝きまですべて。
作品を読んだだけで、彼女が何を大切にしているのかが明確にわかる。
これに限らず、彼女の作品はすべて彼女の溢れんばかりの愛に満ちているおはな

収録作の中でいちばん好きなのは「鏡の月月の下で」。
私は人と密接に付き合うのが苦手で、
こういう人との付き合い方・距離の取り方には本当に憧れる。
うーん、魂での交流とでもいうのでしょうか?
その人といた時間の長さとかじゃなく、
出会った瞬間に「この人とは分かり合える」っピンとくるような。
そういう相手とはいつもベッタリじゃなくてもいい。
魂でつながってるから、一緒にいる必要がない。
こういう出会いは偶然じゃなく、必然。
この奇跡を私は信じたい。

忘れがちだけど、
「踊る」って神様に奉納したり、
お祝いをするためだったり、神聖なことなんですよね。
フラの場合は一つ一つの振りにきちんと意味があり、
言い方を変えれば万国共通の言語でも言える。
単に楽しむためのものじゃない。踊りの魅力と意味を再確認☆

最後にこの本の中で特に好きな個所を抜き出しておきます。

 「自分の願望なんて、
   自分の願望の幅にすぎないんだから、ちっとも面白くない。」

 「じゃあ、いつも意外なことが起きるように願って
   忘れてしまえばいいじゃない?」
 
 「それも予想がつく幅に過ぎないってことにならない?」

 「それでも少しづつ振幅が大きくなっていくかも。」
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:00 | category:    よしもとばなな |
# チーム・バチスタの栄光
チーム・バチスタの栄光
チーム・バチスタの栄光
海堂 尊
チーム・バチスタの栄光/海堂尊
宝島社
1680円
評価 ☆☆☆☆
桐生恭一率いるバチスタ手術の専門チーム「チーム・バチスタ」は
成功率100%を誇り、その勇名をとどろかせている。
ところが原因不明の術中死が3件続けて発生どんっ
メディアが注目する大きな手術を控えていることもあり、
重なる事態に危機感を抱いた病院長は神経内科教室の万年講師・田口公平に
内部調査を依頼するが・・・。
医療過誤か、殺人か。
栄光のチーム・バチスタの裏側に隠された真実とは。



(感想)
国内の計25社以上の主要映画会社カチンコ
テレビ局テレビが映像化権を求めて争奪戦を繰り広げたミステリー小説読書
映画化されるというニュースをやっていたので、
どんなものかと読んでみました。

「原因不明の術中死の謎をさぐる」という重いテーマでありながら、
なぜかコミカルな要素も感じさせるのはひとえにキャラクターの魅力にあります。
一人一人の描き分けが鮮やかです。
これは確かに映像向きですね〜ラッキー

前半は術中死の謎をさぐる田口の調査がメインですが、
厚生労働省の役人・白鳥が登場すると物語はガラッと雰囲気を変えます。
なんとこの白鳥さん、あの伊良部先生(奥田英朗さんの「空中ブランコ」などに登場する医師)もまっさおの変人ひやひや
彼のおかげでいきなり雰囲気がマンガチックになり、
ここから読み進めるペースも一気にはやまる。
なんだこの白鳥の恐るべき吸引力は・・・。
重いテーマを扱ってるのにこの軽さはなに!?

でもそれだけじゃなく、
後半で術中死の原因がはっきりすると、
現在の医療病院の抱える問題にもリアルにぶち当る。
読者を引っ張る力があり、二つの顔を持つ作品!

・・・しかし真相がわかってから物語が幕を閉じるまでがムダに長く、
間延びしてるように思えるのだけが残念(>_<) 汗

ところで、
映画では田口役がなぜか竹内結子なんですよねたらーっ
原作での田口は41歳の男性なんだけどな汗
でも白鳥は絶対に阿部寛しかいないでしょ!と思って調べてみたら
ホントに阿部さんがキャスティングされてるじゃんびっくり
阿部さんの白鳥、楽しみだなぁ猫2



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
ナイチンゲールの沈黙/海堂尊
| comments(28) | trackbacks(1) | 12:59 | category:    海堂尊 |
# がらくた
がらくた
がらくた
江國 香織
がらくた/江國香織
新潮社
1575円
評価 ☆☆☆
中年の女性・柊子とその母親。
15歳の少女・美海と建築家の父親。
海外のリゾート地船で二組の家族は出会った。
やがて東京へ戻っても二組の交流は続くが、
二人を主人公にねじれながも意表を突く人間関係。
家族とは?夫婦とは?恋人とは?その関係性に当たり前の形なんてない。
情感の揺さぶられる長編小説。



(感想)
「スイートリトルライズ」や「赤い長靴」でも感じたけど、
どうも江國さんの描く夫婦の形には違和感を感じる[:ふぅ〜ん:]

愛し合っているのに、お互いが他の異性と寝ることも容認する。
愛してくれるのも、そばにいるのも、
そして自分を傷つけてくれるのも夫じゃなきゃイヤ。
でも傷ついた心は決して見せてはならない。
クールでいようと無理をしているような柊子さんの姿が私には不気味に映る。

一方、ミミちゃんの両親は自分のことに夢中。
彼女もそのさびしさを誰かに不自然に依存することで埋めようとする。

実際の話、どんな手段を使ってでもタレントになりたいくらいの
野心を持ってる女の子相手ならまだしも、
40代のテレビテレビ関係者が「モテ男の代名詞」みたいに描かれてるのがダサいたらーっ
ある書評で「江國さんの感覚自体が古くなってるのでは?」みたいな意見もあったけど
それもうなづけちゃうよなぁひやひや

夫婦がいきつけの店を2人で訪れた際のエピソードにはすさまじく恐怖を感じた。
横に夫がいることも忘れて、
妻はその店の板前の逞しい肉体に見惚れてしまう。
それに対して夫が下した「罰」・・・こんな夫婦いるのだろうか?
とにかく妻に対しても、ミミちゃんに対しても、
他の愛人に対しても、この原って男はサイテーちっどんっ

江國さんの作品に出てくる人たちはみんな都会的で、経済的にも恵まれている。
なんだか私とは別の次元に生きてるみたい。
根本的なところから分かり合えない。遠くに遠くに感じるあせあせ

江國さんは果たして家族とどのような関係を築いているのだろう。
作品を理解する意味でも興味がある。




●この本が好きな人におすすめなのは・・・
赤い長靴/江國 香織
スイートリトルライズ/江國 香織
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:39 | category:    江國香織 |
# 箕作り弥平商伝記
箕作り弥平商伝記
箕作り弥平商伝記
熊谷 達也
箕作り弥平商伝記/熊谷達也
講談社
1785円
評価 ☆☆☆☆
舞台は大正末の騒乱期。
箕作りの職人・弥平は販路拡大のため秋田から関東平野を目指す。
集落ひとつ丸ごと箕作りをして暮らしを立てている村で生まれ育った弥平は、
関東では箕を作るのは身分の低い者の仕事とされていて
差別の対象となっていることを知り愕然とする。
はじめての土地で理不尽な差別を受けながらも闘い、恋をし、
職人として、行商人として、そして一人の男として成長する若者の姿を描く。




(感想)
主人公の弥平は生まれつき足足に不自由があります。
でも弥平は腕のいい箕職人です。
足のハンディは箕作りにはまったく影響しないし、
彼はこの仕事にも自分の技術にも高い誇りを持っています。
しかしその揺るがない誇りである「箕作り」が、
ある地区では差別されるべき職業だった・・・。
足の不自由に重ね、もう一つの差別が弥平を襲います。

恋をした少女が箕職人の娘で、
差別によって受けた心の傷を抱えているというのは単なるオマケにすぎない。
これはまさに弥平の≪誇り≫を守るための闘い。
自分自身を肯定するための闘いだからこそ、
差別に立ち向かう弥平の姿はまぶしい。
さわやかで読後感が良く、弥平の前向きな生命力にあふれた作品でした。

熊谷達也さんは「七夕しぐれ」でも差別問題を取り上げていたはず。
彼はどうしてこの問題にこだわるのか・・・
そこに理由があるのなら知りたいです。



●この本を好きな人におすすめなのは・・・
七夕しぐれ/熊谷達也
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:49 | category:    熊谷達也 |
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