隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# ハイドラ
ハイドラ
ハイドラ
金原 ひとみ
ハイドラ/金原ひとみ
新潮社
1260円
評価 ☆☆☆☆
写真家の専属モデルであり、私生活でも密かに同棲をつづける早希。
だが人形のような無機質さを求める男との暮らしに、次第に蝕まれてゆく。
そんな早希の前にその閉ざされた部屋から彼女を引き出そうとする
翳りのない男が現われるが……。
堕ちてゆく痛みと無垢な愛への希求、自身への冷徹な眼差し。
クールさと瑞々しさを湛えた、新境地を拓く傑作長篇。




(感想)
自分とは絶対合わない。だからこそ気になる。
私にとって金原ひとみってまさにそういう人で、著作は残さず読んでます。
私なら絶対に描けない、
想像すらし得ない物を読ませてくれるんですよね〜。

写真家カメラの専属モデルであり、私生活でも密かに同棲をつづける早希。
人形のような無機質さを求める男との暮らしに次第に蝕まれ、
自己も人間らしさも失っている女の子。

ある日、彼女の前に現れた男性が
光の見える真っ当な世界へ導いてくれようとする。
彼は「食べることハンバーガー」「笑うことわーい」の当たり前さを気付かせてくれ、
明るく笑う早希こそを愛してくれる。

噛んでは吐いてを繰り返し、当たり前の食を営むこともできず
写真家との生活とモデルの仕事にがんじがらめ。
無機質で異様な雰囲気を放ってしまうほど人間らしさを失っている早希。
たとえそれが人として自然な方向であって、進みたい気持ちが小さくあるとしても、
ここまで堕ちてしまうと軌道を修正することは難しいのだろうか?
最後の早希の選択・・・その歪んだ意思の強さに愕然としてしまいます。
戻れない道・・・こんなことに意思の強さを見せてしまう人間の弱さが悲しいあせあせ

金原ひとみの本は新刊が出るたびに
以前より読みやすくなったと感じさせられる。
一般の人が引かないギリギリのボーダーラインを
著者自身がわかってきたということなのかな?
でも、もうそろそろ
これまでとは全く違う世界を描く金原ひとみも見てみたいよたらーっ
| comments(0) | trackbacks(0) | 13:12 | category:    金原ひとみ |
# 塩の街
塩の街
塩の街
有川 浩
塩の街/有川浩
メディアワークス
1680円
評価 ☆☆☆☆☆
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。
塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。
その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。
男の名は秋庭、少女の名は真奈。
静かに暮らす二人の前を、さまざまな人々が行き過ぎる。
あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。
それを見送りながら、二人の中で何かが変わり始めていた……。



(感想)
さっすが、有川浩!
人間が塩化し、世界が崩壊していくというSFチックなストーリーながら
乙女心をギュッとつかむ胸キュンな展開がたまりませんラブ

世界を救うために立ち上がった男は、
世界を救うなんて大層なことを考えていたわけではなく、
ただ好きな女の子を塩害で失うのが怖かった。
この世界に彼女がいるから・・・ただそれだけの理由で男は世界全体を救った。

やばいやばいやばい(>_<)
女はこういうのに弱いんです猫2
難しいことはナシに、このストレートさがたまらないっ!
有川浩さんってこういう女のツボをついてくるのホントにうまい。
2人のやり取りもイチイチドンピシャでズキュンとくる。

自衛隊というゴツイ男の世界を舞台にこんな甘いラブストーリーを書いちゃう。
このギャップがいいんだよね〜。
こういうのにキャーキャー言ってる自分の腐女子加減もこの際許すっイヒヒ

たった一ヶ所しかない挿絵も効いてます(^_^)v
| comments(6) | trackbacks(0) | 11:53 | category:    有川浩 |
# はじめての文学  小川洋子
はじめての文学 小川洋子
はじめての文学 小川洋子
小川 洋子
はじめての文学 小川洋子/小川洋子
文藝春秋
1300円
評価 ☆☆☆
『博士の愛した数式』で一躍多くの読者の心をつかんだ小川洋子。
そのほとんどの著作が翻訳出版されているフランスでも人気は高く、
本書にも収められた「薬指の標本」はフランスで映画化もされているカチンコ
夢か現実か、静かに透き通った迷宮にも似た世界で繰り広げられる不思議な出来事。
小川洋子の世界のエッセンスを味わう短篇五作収録。



(感想)
「冷めない紅茶」
「薬指の標本」
「ギブスを売る人」
「キリコさんの失敗」
「バックストローク」の5編を収録。

たまに味わいたくなるんだよねぇ、小川洋子さんの独特の世界観。

小川洋子さんの世界って一つ一つの描写が繊細で、
指先で優しく触れないと壊れてしまいそう。
まるでレースの薄いカーテン越しにその世界を見ているよう・・・。
フランスなどで人気があるのにもうなずけますニコニコ
日本じゃない、ヨーロッパかどこかのような雰囲気があるんですよねぇおはな

でもその中にわずかに残酷性やエロスも感じ、
もしかしたら本当に書きたいのはこっちなんじゃない?ってほどに
強烈な印象を残します。
なんだかわからないままに終わってしまうんだけど、
それが当然のことのように思えて納得できる。
この人の作品にははっきりとした結末は不要なのではないでしょうか。

本編の中に小川洋子さんを表現したかのような
ちょっと気になる文章があり、思わずうなってしまいました。
(私の勝手なイエージですが汗
興味ある方は探してみてくださいぴかぴか
| comments(0) | trackbacks(3) | 12:36 | category:    小川洋子 |
# 青い鳥
青い鳥
青い鳥
重松 清
青い鳥/重松清
新潮社
1680円
評価 ☆☆☆☆☆
村内先生は中学学校の臨時講師。
先生は言葉がつっかえて、うまくしゃべれない。
だから授業よりもたいせつな、本当に「たいせつなこと」しか言わない。
いじめ、自殺、学級崩壊、児童虐待・・・
吃音の教師を通して、答えの出ない問題に向きあい、
すべての孤独な魂にそっと寄り添う感動作。


(感想)
全編を通して登場するのは吃音のある教師・村内先生。
村内さんは非常勤講師として各学校学校を回り、
心に孤独を抱え、ひとりぼっちでいる生徒のそばに寄り添い、
本当に「たいせつなこと」を教える。

本当にさびしい人はみんなの仲間に入りたいのではなく、
もうひとりの一人ぼっちが欲しい。
村内先生は彼らのそばでもう一人の一人ぼっちになることによって彼らを救う。

孤独・・・この寂しくてたまらない気持を誰もが想像することはできる。
でも「理解する」ことができるのは、本当にこの気持ちを味わったことがある人だけ。
村内先生にはそれができるのだ。
そして村内先生の素晴らしさがわかるのも、ほんの一部の生徒だけ。

いじめの加害者の取るべき責任は
いじめをなくし、いじめのない学校を作ることよりも、
誰かを傷つけたことをずっと忘れずに背負っていくこと。

重松清さんの本は大人になった私達にも本当のことを教えてくれる。
村内先生の言葉は少ないけど、一言一言がイチイチ心に沁み渡るんだニコニコ
「大切なこと」と「正しいこと」は違う。
村内先生のかつての教え子が主人公となる最後の章を読んだとき、
静かな涙がこぼれました。
中学生の頃に重松さんに出会っていたら、
まったく違った学生時代を送ってたような気がするなぁ猫2
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:02 | category:    重松清 |
# 夜は短し歩けよ乙女
夜は短し歩けよ乙女
夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦
夜は短し 歩けよ乙女/森見登美彦
角川書店
1575円
評価 ☆☆☆☆☆
「偶然の」出逢いはこれほどまでに頻発するはずはなく、
我ながらあからさまに怪しいのである。
そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがないのである。
なのに「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を
喉から血が出るほど繰り返す私に彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。
黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。
二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、
そして運命の大転回!
天然キャラ女子に萌える男子の純情ラブ
キュートで奇抜な恋愛小説in京都。



(感想)
森見登美彦さんの面白さ・奇想天外さには以前から大注目してたけど
これはもう最高ぴかぴか
むちゃくちゃキュートで、
愛すべき濃い〜キャラが彩る青春エンタ小説です!!

全編がお祭りのようにワクワクしますわーい
すべてありえない展開で進んでいくのに、
何事もすんなり受け入れられる不思議・・・。
ポップな世界観を構築しながらも、
京都の趣のある風景が見事に生きていて、
まるで古本読書のレトロな香りが紙からほんのり匂ってきそう。
古風な文体もしっくりきます。

個性的なキャラ達もたまらなく魅力的。
樋口さんを「立派な方」と言ってのける黒髪の乙女はもちろんのこと、
その樋口さんとパンツ総番長が大好きですぴかぴか

最後の最後は奇抜さはなく、
これからの2人の恋の発展を予感させるようなさりげない締めくくり。
この静かなラストはまるで読者をこの夢のように楽しい本の世界から
現実に呼びもどしてくれるんです猫2

あまりにも楽しい世界に酔いしれ、
読み終わってしまったことがとても寂しく思えてしまう傑作でした。
大好きわーい今年の年間ベスト10入りは決定ですねっグッド

きっと映像化されると信じていますカチンコ



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
四畳半神話大系/森見登美彦
| comments(12) | trackbacks(2) | 10:10 | category:    森見登美彦 |
# 明日この手を放しても
明日この手を放しても
桂 望実
明日この手を放しても/桂望実
新潮社
1365円
評価 ☆☆☆
19歳で途中失明して夢を失った「可愛く」ない凛子。
自分勝手で「文句ばっかり」の真司。
一番近くにいても誰より遠い兄妹の未来に待っているのは・・・。
家族の愛がぎっしり詰まったハートフルな長編小説。



(感想)
途中失明した19歳の妹と自分勝手な兄。
決して仲の良い兄妹ではなかったけど、
父の失踪によりたった二人だけの家族となってしまい、
歩み寄りながら成長していく物語です。
各章ごとに語り手が兄と妹交互に代わり、1995年〜2006年の2人が描かれます。

失明とか失踪とか重たいものを含んでいるけど、
全体像は明るくハートウォーミング。読みやすかったですラッキー

はじめは仲良くも悪くもないような曖昧な関係だったけど、
悲しみを共有し、助け合うことにより強い絆がうまれる。
特に年月を経た兄の変化がとっても頼もしい。
兄が妹の目になっている様子がとても自然で(特に食事ディナーのシーンなど)
「この2人の姿を2人のご両親にも見せてあげたかった・・・」
と、私までしみじみ感じちゃうほどニコニコ笑。

桂望実さんの作品は明朗でわかりやすいイメージがあるけど、
今作は父の失踪に対する答えがないことでちょっと中途半端あせあせ
でもそのナゾがテーマじゃないから、その点は大目に見てあげてもいいのでは・・・。

それにしても装丁がダサいなしょんぼり汗
現代のデザインじゃないでしょ、これ・・・。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:21 | category:    桂望実 |
# かげろう
かげろう
かげろう
藤堂 志津子
かげろう/藤堂志津子
文藝春秋
1500円
評価 ☆☆☆
愛するひとを失った後、不思議な縁から養子縁組した雪江。
孤独な女が人生を賭けた激しい決断とは!? 
表題作の「かげろう」他、40代の女性の孤独に向き合い、
心の奥に潜む欲望を隈なく描き出す全3作。



(感想)
中編を3作収録していますが、
どれも一人で生きる40代女性女の孤独を描いています。

彼女たちは孤独を埋め合わせるために養子縁組をしたり、
自分の店で住み込みで働く従業員を家族のように気にかけたり、
好きでもない男性と交際したりしています。
本当の意味での家族はいないけれど、それに似たような対象は欲しいのです。

中でも私がいちばん悲しいと思ったのは
三作目の「みちゆき」の主人公・可也子とその友人の悠木。
可也子は交際相手の里村を見下すことで自分を保っている。
悠木は自分をドラマティックで悲劇的な状況に追い込むことを無意識に好む。

これが他の世代を描いたものならこんなにも痛くはなかったはず。
40代ってちょうど人生の後半に入った頃で、
まだまだ何かをやれそうで、でももう諦めも感じちゃうような微妙な時期だと思うんですよ。
そんな諦めるにはまだ早い世代だからこそ、
これからの人生ずっと一緒にいてくれるパートナーも子供もいないって切実だと思う。
やっぱり本当に孤独を埋めてくれるのって、
仕事でも趣味でもなく「人間」でしかない。

自分が40代になった時、
どうありたいかをしみじみ考えさせらました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:08 | category:    藤堂志津子 |
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