隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 月島慕情
月島慕情
月島慕情
浅田 次郎
月島慕情/浅田次郎
文藝春秋
1500円
評価 ☆☆☆
三十を過ぎた吉原の女郎・ミノにふってわいた“幸運”。
しんそこ惚れていた客が自分を身請けしてくれることになり、
やっと幸福をつかみかけたのもつかの間、
その幸福の影で不幸になる人がいると知ったミノは・・・。
自分にふさわしい幸せを見つけた彼女の人生の選択とは? 
“感動無限大”短篇集。



(感想)
浅田次郎さんお得意の「ちょっと泣けるポロリいい話」を集めた短編集です。
どのお話もジーンとした余韻を残します。

なかでも表題作の「月島慕情」には熱いものが込み上げてきました。
誰かが幸福になるということは、
その影で涙し、悲しい思いをしている人が必ずいるということ。
その時に人として自分の幸福を選ぶのか、他人の幸福を選ぶのか・・
ここでどちらを選べるのかに人間の資質が見えます。

幸福と不幸は常に背中あわせ。
その罪滅ぼしは、自分の幸福の影で涙した人の分も幸福になることでしか
果たせないのかもしれない(きれいごとかもしれないけどたらーっ

「めぐりあい」で主人公と一緒になることができなかった男性の誠意なんか
まさにそれでしょ。

「あたし、あんたのおかげで、やっとこさ人間になれたよ」という
ミノの言葉の深みに泣けました。
| comments(6) | trackbacks(2) | 11:01 | category:    浅田次郎 |
# 海の底
海の底
海の底
有川 浩
海の底/有川浩
メディアワークス
1680円
評価 ☆☆☆☆☆
横須賀に巨大エビ来襲!
食われる市民を救助するため機動隊が横須賀を駆ける。
孤立した潜水艦『きりしお』に逃げ込んだ少年少女の運命は!?
海の底から来た『奴ら』から、横須賀を守れるか―。



(感想)
おもしろいっ拍手

「巨大エビ来襲!」なんて、トンデモ系びっくりのストーリーですが、
それを受け入れられる人にはたまらない面白さぴかぴか
「ゴジラ」と「ガメラ」とか「モスラ」が好きな私にはドンピシャでした。

展開が早いし、ムダがなくテンポ良く進むので、
この分量のわりにあっという間に読めてしまいます。

著者の有川浩さんは
お名前からして男性だと勘違いしていたのですが女性だったんですね(@_@;)
でもそれを知って納得ニコニコ
ここまで女の私がこの本にのめり込めたのは、
ベタだけど女性が好みそうな恋愛ラブの描き方にあると思います。
そして人物の描き方のうまさ!
中心人物も脇役もいわゆる悪役も生き生きと個性的に描かれていて、
誰もが魅力的ですウィンク
パニック時における人間の心理も、
きれいごとだけじゃなく生々しさと、でも人間らしさも抜かりなくしっかり魅せてくれます。

SFともパニックものとも言い難い魅力に溢れた作品。
ありえない設定だけど、読まず嫌いでパスしちゃうにはもったいない傑作です☆
| comments(1) | trackbacks(0) | 09:23 | category:    有川浩 |
# 大きな熊が来る前に、おやすみ。
大きな熊が来る前に、おやすみ。
大きな熊が来る前に、おやすみ。
島本 理生
大きな熊が来る前に、おやすみ。/島本理生
新潮社
1365円
評価 ☆☆☆☆
徹平と暮らし始めて、もうすぐ半年になる。
だけど手放しで幸せという気分ではあまりなくて、
転覆するかも知れない、そんな気持ちがまとわりついていた――。
新しい恋を始めた3人の女性を主人公に、
人を好きになること、誰かと暮らすことの危うさと幸福感を
みずみずしく描き上げる小説集。



(感想)
新しい恋が始まりそうな予感はあるものの、
それを素直に受け入れることのできない3人の若い女性を描く短編集です。

「大きな熊が来る前に、おやすみ。」の主人公は、
普段は優しい恋人から暴力をふるわれます。
「クロコダイルの午睡」の主人公は、
言葉で自分を傷つける同級生を好きになりかけています。
「猫と君のとなり」の主人公は
まつての恋人から飼い猫猫を虐待された過去を持っています。

読書の内容を知らずに読み始めたので、
まさか島本さんが暴力をテーマに書いたなんて驚きでした。
ちょっとイメージと違いますよねムニョムニョ

地味で、自分を見せることが苦手な女の子たち。
他人から求められ、必要とされることに不慣れだから
愛情を素直に受け入れることができない。
私は男の人にこんな悲しい痛みを与えられたことはないけど、
「クロコダイルの午睡」に出てくる男の子の「悪意のない言葉の暴力」はわかるかも。
何不自由なく育ってきた人って、
こういう無意識な残酷さを持ってることがあるんだよね・・・。
地味な女の子の一人として、彼女たちの心の痛みはわかるような気がしました。

島本理生は地味だけどまじめに生きている女の子の心理を描くのがうまい。
「猫と君のとなり」にはまるで
aikoの「桜の時桜」とか「花風おはな」みたいなキュンとしちゃうような描写があって、
やっぱり好きな作家だな〜と改めて感じたのでしたニコニコ




【余談】
島本理生さんって佐藤友哉さんと結婚したんですね!!
しかも、かなり最近の話。
乙一の本に書いてあった、あの合コンがきっかけなんじゃない!?
知らなかったーどんっ
おめでとうございますっぴかぴか
佐藤友哉さんの本、一度も読んだことないから読んでみないとね猫2
| comments(2) | trackbacks(0) | 08:28 | category:    島本理生 |
# マイ・ホームタウン
マイ・ホームタウン
マイ・ホームタウン
熊谷 達也
マイ・ホームタウン/熊谷達也
小学館
1575円
評価 ☆☆☆
作家として何冊かの著書も出版できるようになった「私」は、
30年ぶりに再開する幼なじみの稔、巌夫、
それにクラスのアイドルだった友子とともにタイムカプセルを掘りおこす。
そこに収められていたのは、とっくに忘れたはずの懐かしい日々ニコニコ
空き家、原っぱ、洞窟、底なし沼、雑木林―心躍った冒険の日々。
著者と同世代(昭和33年生まれ)ならば必ず身に覚えのある「ものがたり」。



(感想)
古き良き時代、子供の本分はまさに遊ぶこと。
野や山を駆け回り、大人が「行ってはいけない」という場所に何よりも興味があり、
そこで河童や座敷童子や不思議な洞窟に遭遇する・・・。
実在した学校を舞台に、懐かしく子供心をくすぐるようなお話です。

表紙の写真は宮城県登米市の小学校学校
実際に熊谷達也さんが通った学校です猫2
現在は国の重要文化財に指定され、教育資料館として一般に公開されてます。
私、なんとここに行ったことありますよー。
卒業生じゃないのに、懐かしい気持ちになる場所です。
あの学校を知っていると、本の中の子供たちの姿がより鮮やかに浮かびます嬉しい

連作短編のスタイルで、
それぞれの章で子供たちが不思議な体験をします。
どの章でも騒動は一応の解決はするのですが、
最後に説明のつかない、言い知れない不思議な余韻を残すのが味わい深いです。

しかし、本のはじめと最後に大人になった現在の彼らも登場し、
その現状があまりに生々しいことで
気持ちが一気に現実に引き戻されてしまいましたあせあせ
なぜ、このような結末にしなければいけないのかがナゾですが、
でもそれでより一層、
子供のころは良かったなーとしみじみさせられるたらーっ
この時代を生きた人でなくても懐かしさを感じる本ですおはな



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
花まんま/朱川湊人
七夕しぐれ/熊谷達也
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:03 | category:    熊谷達也 |
# 夢を与える
夢を与える
夢を与える
綿矢 りさ
夢を与える/綿矢りさ
河出書房新社
1365円
評価 ☆☆☆
チャイルドモデルから芸能界へ。
幼い頃からテレビの中で生きてきた美しくすこやかな少女・夕子は
ある出来事をきっかけにタレントとして大ブレイクし、
一躍、トップアイドルへと踊り出る。
しかし成長する少女の心とからだには
一般の女の子として過ごしたいという欲求もあった・・・。
一人の女の子がスターとなり、転落するまでの軌跡。



(感想)
芥川賞王冠2を受賞し、
一夜にしてスターとなった自分自身を投影してるかのような作品でした。

同時期に注目された同年代の女性作家鉛筆2たちが、
自分の世界観を守りながらも次々と作品を発表している中、
綿矢りさの新作はなかなか世に出ませんでした。
そしてやっとやっと発売されたこの作品は、
驚くべきことにこれまでの2作とはまったく文体が違います。
そして作品のテーマも大きく違う!
自らの経験を交え、身を削るように書いたであろうこの作品は痛々しくもあり、
その一方で彼女の逞しさも感じられる意欲作です。

残念なのはかわいくてみんなに愛されるアイドルである主人公に
読者はきっと心ひかれないこと。
読者自身にも主人公のファンになり、
彼女の成功も成長も挫折もすべて共感したかったのに、
この主人公には(アイドルなのに)読者をひきつけるほどの魅力がないんですよー。
そのへんの甘さが惜しいひやひや

主人公は「みんなに夢を与えたい」と語りますが、
それは本心ではなく、タレントとしてのイメージを考慮した発言。
タレントが欲望のままに自分の人生を生きるとは、
多くのファンを裏切ることでもある。
スキャンダルでファンを裏切り、失った主人公は
取り返しがつかないところにきてやっと「夢を与える」という言葉の重みと真実を知る。
だからこそこのタイトルは重いです。

18歳の女の子に味わわせるにはあまりに残酷な展開で、
後味の悪い結末を用意したあたりには彼女の厳しい覚悟を感じました。
いいポジションに回ってくれそうなキャラクターも活かされてないし、
いくつかの欠点は隠せないけれど
ここまでの変化を見せてきた綿矢りさの挑戦には拍手を送りたい拍手拍手
綿矢りさはまだ未知数だ!!
次は何を見せてくれるのか・・・これからにも期待しています猫2



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
グラビアの夜/林真理子
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:57 | category:    綿矢りさ |
# 夜をゆく飛行機
夜をゆく飛行機
夜をゆく飛行機
角田 光代
夜をゆく飛行機/角田光代
中央公論新社
1575円
評価 ☆☆☆
嫌でも何でもどうしようもない,家族は家族。
うとましいけど憎めない、古ぼけてるから懐かしい。
変わらぬようで変わりゆく谷島酒店一家のアルバム。




(感想)
谷島酒店ビールの家族構成はお父さん、お母さん、4人の娘の6人。
叔母の死、2女の作家デビューなど家族に変化が訪れる様子を、
その変化の波にうまく乗れずにいる4女の視点で描かれる家族小説です。

生まれることがなく死んでしまった弟・ぴょん吉と
心の中で対話することを支えとし、
それを自分の大切な秘密として抱えている4女の里々子。
彼女の空虚感・喪失感が作品にものすごいグレーな空気を漂わせています。

この家の父母は「隠す」こと以外に解決法を知らない
これがねー、ウチの父親とまったく同じなわけですよたらーっ
自分の力ではどうしようもなくなった時にはじめて告白する = 後始末をさせる。
だからそういう共通点で妙に共感できたり、腹が立ったり、
自分の家の話のようで人事じゃなかったですひやひや

娘がある日、作家として大きな賞王冠2をとる。
家族は彼女が文章を書くという才能や趣味があることも知らず、
まさに寝耳に水な出来事なんだけれど、
誰もすぐにその受賞作読書を読んでみようという者がいない。
そんなことありえねーだろー、フツーまっさきに読むだろーと思ったけど、
この父母がウチの父に似てる!!って気づいてみると、
あぁ、読むはずねーなと妙に納得汗

悪いとされることが良い出来事を運んでくることもあれば、
良いと思ったことが不幸への入り口だったりもする。

そして自分の持っているものを数えた方がずっと沢山あって幸せなのに、
なぜか人は持っていない物ばかりを数えてしまう。

たとえ周りから見て、失敗だと思われるようなことでも
進んでみる・変化をしてみるって案外いいもんで、
里々子にもはやくそれのわかる大人になってほしい。
もう少し前を見てごらんと、声をかけてあげたくなるような作品でした。


あ、魚肉ソーセージとキャベツの炒め物って
ポン酢で味付けすると美味いんですね〜わーい
私は醤油でやってました。
今度、ポン酢を試してみます猫2
| comments(0) | trackbacks(0) | 08:36 | category:    角田光代 |
# ズッコケ中年三人組age41
ズッコケ中年三人組age41
ズッコケ中年三人組age41
那須 正幹
ズッコケ中年三人組age41/那須正幹
ポプラ社
1050円
評価 ☆☆☆
ハチベエ、ハカセ、モーちゃんの3人組は今年で41歳。
ある日、花山第二小学校学校でのクラスメートだった新庄則夫から
今、テレビテレビで話題の占い師・鞍掛真智子が
かつてのクラスメートの北里真智子であると知らされる。
そして、その真智子が講演会で久しぶりにこの町に戻ってくるというのだ。
子供の頃、国際的なスパイ組織に追われていた真智子を救った三人組の心は
あの頃と同様にふるえた・・・・。



(感想)
50作目で完結した大人気児童小説読書ズッコケ三人組」シリーズの主人公3人が
中年になったという設定で書かれたのが、
2005年に出た「ズッコケ中年三人組」。
そのあとがきに“10年後には50歳になった三人組の話を書きたい”と書いたところ、
多くの読者から十年も待てない、という声があり、
それならいっそのこと、
毎年一歳ずつ年を取らせてシリーズ化しようということになったようです。
私の読書の原点は間違いなく「ズッコケ三人組」だし、
このシリーズによって本の面白さを知った人は多いと思う。
新たなズッコケシリーズの誕生は
懐かしくもあり、あの頃のドキドキが蘇る嬉しい出来事ではないでしょうか!!

三人の行動力と冒険を
ハラハラドキドキしながら読んだ私たちが大人になったように、
ハチベエ・ハカセ・モーちゃんの三人も大人になりました。
なんと今年で41歳!?だそうです。
今回のお話は、かつてのクラスメートが真智子が人気占い師となり、
彼女のトラブルに巻き込まれる三人を描きます。

しかし中年になった三人が、
あのころのハツラツとした三人のままでいられるはずもなく、
同時に私たちも子供ではなくなった。
やはり、あの頃のままでの設定には無理があり、
児童文学を大人の読み物にしたような中途半端なぎこちなさを感じますたらーっ

しかも最後まで読み進めると、
今回の事件のために三人はどう活躍したのだろうか・・・
ただ泳がせれていただけなのでは・・・ということに気づいてしまい、
三人もただのオヤジになってしまった・・・と妙な切なさがこみあげますあせあせ

また三人の活躍を読めるのは嬉しいです。
でもお互いの成長が邪魔をして、どうしようもない葛藤を感じます。

表紙がシンプルすぎるのもサビシイ。
昔はちゃんと三人のイラストが表紙になってました。
41歳になった彼らをイラストにするのは難しいということなのでしょうか。



●この本が好きな人におすすめなのは・・・・
ズッコケ中年三人組/那須正幹
ズッコケ三人組シリーズ/那須正幹(全50作の児童書です)
| comments(0) | trackbacks(1) | 08:45 | category:    那須正幹 |
# 7月24日通り
7月24日通り
7月24日通り
吉田 修一
7月24日通り/吉田修一
新潮社
1365円
評価 ☆☆☆☆
退屈でしかたのなかった朝のバス通勤バスを何となく楽しめるようになったのは、
まだ行ったこともないポルトガルのリスボンという街の地形が、
自分の住む地方都市とどこか似ていると発見したから。
「丸山神社」を「ジェロニモス修道院」、
「水辺の公園」を「コメルシオ広場」などと言い換えて楽しみ、
夢見るOL・本田小百合。
“間違える”のが不安で、平凡な選択ばかりしてきた私でも
一度くらいはドラマみたいな恋ラブをしてみたい・・・。
間違ってもいいから、この恋を選ぶ。
そう思ったこと、思いたかったこと・・・ありませんか??



(感想)
各章のタイトルが
「モテる男が好き!」
「イヤな女にはなりたくない」
「どちらかといえば聞き役」
「家族関係は良好」
「初体験は19歳」
「タイミングが悪い」
「ときどき少女漫画を読む」
「夜のバスが好き」
「アウトドアは苦手」
「間違えたくない」
と○×方式の自己分析になっています。
これは主人公の弟の恋人が自分がどんな女なのか分析して、
モテない理由を突き止めようとした場面で出てきた10個のキーワード。

あなたは何個あてはまりましたか?(私は6個)

平凡な女は恋愛で冒険をすることができない。
なぜなら、それは「間違える」ことを極端に恐れているから
主人公の小百合もそんな夢を見ているだけの女の子なんだけど、
あることをきっかけに勝負に出ようとします。
これは彼女がそう決意するまでの物語です。

私もどちらかとこのタイプなので、生々しく共感できました。
特に高校時代の彼女に告白してきた男子が、
女子の話題の端にものぼることもない地味な男子であったことに傷つき、
「私はああいう男の子に選ばれるような女なんだ」と思ってしまうところなんか
悲しいくらいに理解できてしまった。

そして一度も情熱的な恋をしたことのない女に、
そういう恋に走ろうとしている人を止める権利はないなんて思っちゃうあたりもあせあせ

自分の平凡さは自分がいちばん理解してるんですよ。
でもそれを認めたく自分も確実に存在する。
そのへんのモヤモヤがわかりすぎるほどわかる。
そして、自分の誇りであったイケメンの弟が、
自分ん似たタイプの平凡な女を選ぼうとしていることに対する、
激しい反対もわかる!

自分の住む街をリスボンだと思いこもうとしているという主人公の設定も、
彼女の性格を表現するのに、うまい設定だと思いましたニコニコ

「もっと幸せになれたはずなのに・・・」と小さな後悔を抱えている
女の子たちに読んでほしい本です。
かわいいお話でした。

(でも私は、この主人公があの日、電車に飛び込まなくても
 もう一つの出会いが実り、幸せになれたような気がするのですが・・・。
 ダメ?私のそんなとこが臆病だってこと?)
| comments(4) | trackbacks(1) | 11:44 | category:    吉田修一 |
# 年に一度、の二人
年に一度、の二人
年に一度、の二人
永井 するみ
年に一度、の二人/永井するみ
講談社
1575円
評価 ☆☆
香港で出会った二組のカップル。
ハッピーバレー競馬場で楽しい時間を過ごし、
「一年後のこの日、ここでまた会おう」と約束するが、
お互いの連絡先は教えあわぬまま・・・。
どちらかが来なければその時はその時でおしまい。それだけの関係。
果たして二人はもう一度、再会することができるのか・・・。




(感想)
永井するみさんというと、
美容やファッション業界など女性にとって興味深い世界をテーマに描いてくれる
作家というイメージでしたが、今回は「競馬場」。
まずはここにう〜ん・・・つまずいてしまいました。

一話目は過去に一度だけ仕事で顔を合わせたことのある男女が、
香港で行われたインテリア家の展示会で再会して急接近していく話。

二話目は香港のホテルの喫茶室ホットコーヒーでの小さなトラブルで出会った若い男女が
成り行きから二人で競馬場へ行くことになり、
女は彼の言葉から自分の可能性に気付かされるという話。

どちらもすごく中途半端な終わり方をしているのですが、
三話目でその二組がなんとなくリンクし、結末に向かうといった構成・・・。

タイトルそのまま、七夕みたいに「年に一度しか会えない男女」の話なんだけど、
情熱的なモノが文章から伝わってこず、
恋愛ものラブにしては淡白で盛り上がりがない本でした[:がく〜:]
七夕のようなロマンティックもまないし、
いまいち世界観にこめり込めない、引き込まれない泣き顔
恋愛小説を読みたい人にはおすすめしませんたらーっ



けど・・・。
自分の夫や恋人が、
自分以外の異性と隠れてコソコソ頻繁に会って浮気してたとかより、
年に一度、決まった日に、しかも海外で会われてたなんて
裏切られた時のショック度はこっちの方が高いような・・・汗
・・・と、なぜか浮気される側に立ってみたら無性に悔しくなりましたあせあせ
| comments(0) | trackbacks(0) | 09:01 | category:    永井するみ |
# なんくるなく、ない―沖縄(ちょっとだけ奄美)旅の日記ほか
なんくるなく、ない―沖縄(ちょっとだけ奄美)旅の日記ほか
なんくるなく、ない―沖縄(ちょっとだけ奄美)旅の日記ほか
よしもと ばなな
なんくるなく、ない―沖縄(ちょっとだけ奄美)旅の日記ほか/よしもとばなな
新潮文庫
620円
評価 ☆☆☆
1999年、はじめて旅した沖縄おてんきに恋をした・・・。
以来、波照間・石垣・奄美大島まで〜〜。
その美しさを感じ、失われつつある日本人の心を思う。
「おじぃ」こと垂見健吾氏の写真カメラと、
ばなな作品ではおなじみの原マスミ氏のイラストアートでおくる旅紀行。



(感想)
仲間たちと旅した沖縄紀行おてんきです。
沖縄周辺の島などの旅話も収録ウィンク

タイトルで「日記」と断ってあるし、
たしかにこれは人(読者)に読ませるための文章というよりは、
あくまでプライベートなばななさん自身と友人たちのための文章だと思います。

そのせいか商売にする文章にしてはテンポがチグハグだし、
他人しか入り込めない独特の雰囲気を感じる。
しかし、生きること・自然・食べることの幸せ・・・といった
ばなな文学おなじみのキーワードはしっかり描かれていて、
ばなな文学の本質からは離れていない。
特にファンには読む価値のある作品だと思います。

こういう一文がありました
「波照間は観光客はいるのだが、観光地ではない。
 そのことを何回も思った。
 住んでいる人たちの生活の営みに、
 ちょっとだけおじゃまする、そういう場所だった。」

そういえば、
私はばななさんみたいなこういう「土地の人に触れ合う旅」ってしたことがない。
私とばななさんじゃあ、「旅」というものに対する根本的な楽しみ方が違うみたい。
そしてどちらの楽しみ方が有意義かというと、
それはもちろんばななさんの旅の方で
私もこういう旅がしてみたいなぁと激しく憧れますニコニコ

沖縄の名前だけ聞いてもなんだかまったく想像できない食べ物たち・・・。
怖いけどたべてみたいラブ
ナナ子さんの店に行ってみたいよ猫2


この価格のわりにうっとりするような写真カメラとイラストアートが豊富なのも魅力です。
| comments(10) | trackbacks(0) | 11:54 | category:    よしもとばなな |
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