# 月島慕情
2007.04.27 Friday
月島慕情
浅田 次郎
●月島慕情/浅田次郎
●文藝春秋
●1500円
●評価 ☆☆☆
三十を過ぎた吉原の女郎・ミノにふってわいた“幸運”。
しんそこ惚れていた客が自分を身請けしてくれることになり、
やっと幸福をつかみかけたのもつかの間、
その幸福の影で不幸になる人がいると知ったミノは・・・。
自分にふさわしい幸せを見つけた彼女の人生の選択とは?
“感動無限大”短篇集。
(感想)
浅田次郎さんお得意の「ちょっと泣けるいい話」を集めた短編集です。
どのお話もジーンとした余韻を残します。
なかでも表題作の「月島慕情」には熱いものが込み上げてきました。
誰かが幸福になるということは、
その影で涙し、悲しい思いをしている人が必ずいるということ。
その時に人として自分の幸福を選ぶのか、他人の幸福を選ぶのか・・
ここでどちらを選べるのかに人間の資質が見えます。
幸福と不幸は常に背中あわせ。
その罪滅ぼしは、自分の幸福の影で涙した人の分も幸福になることでしか
果たせないのかもしれない(きれいごとかもしれないけど)
「めぐりあい」で主人公と一緒になることができなかった男性の誠意なんか
まさにそれでしょ。
「あたし、あんたのおかげで、やっとこさ人間になれたよ」という
ミノの言葉の深みに泣けました。