# アルゼンチンババア
2007.03.21 Wednesday
アルゼンチンババア
よしもと ばなな
●アルゼンチンババア/よしもとばなな
●幻冬舎文庫
●520円
●評価 ☆☆☆☆
街はずれの廃屋みたいなビルに住む、
変わり者で有名な「アルゼンチンババア」。
母が死んでしばらくして、
みつこは父がアルゼンチンババアと付き合っているという
とんでもない噂を耳にする
思い切ってアルゼンチンビルを訪ねたみつこが目にした
風変りで不潔だけれど愛しい光景・・・。
悲しみの先にある、真の幸福とは
(感想)
「本当の幸福」って何かを考えさせてくれる本でした。
それは他人の目や意見を気にしない、自分だけのもの。
アルゼンチンババアの生き方がそれを教えてくれたように思います。
「大切な物や人に囲まれて、自分流に生きること」
これに勝る幸福なんてないのかもしれない
愛着のある道具の使い方一つにしたっていろんな愛の示し方がある。
清潔を保ち、汚さないように厳重に使うことも一つの愛し方ではあるけれど、
アルゼンチンババアのように、
ボロボロでみすぼらしくなっても肌身離さず使い込むのだって愛だ。
ただ優しくて気のいいおばさんの話ってだけじゃつまんない
「アルゼンチンババア」なんて一度聞いたら忘れられないニックネームに
強烈な個性をスパイスに加えるあたり
やっぱりよしもとばななさんのセンスには脱帽です。
ばなな作品ではすっかりおなじみの
奈良美智さんの表紙・挿絵もやわらかく温かかくて、
この作品の持つ力をさらに強固なものにするエッセンスのよう
紙質も通常の文庫本よりも厚めで、
「ずっと愛していきたい特別な本」としての演出もバッチリ
ばななさんの本ってこういう演出も凝っているから好き
このへんも、よしもとばななを特別な作家として愛する女性が多い理由ですよね
映画版では鈴木京香さんがアルゼンチンババアの役をやってるらしいので、
鈴木さんのイメージで読んでしまいましたが、
本文中の設定ではアルゼンチンババアはみつこと知り合った時点で
50歳ということになっている。
映画版キャストの話を聞かなければまったく違うイメージで読めたんだろうなぁ
それを考えてしまうと、もっと早く読んでおけばよかったと小さく後悔