# 七夕しぐれ
2007.02.27 Tuesday
七夕しぐれ
熊谷 達也
●七夕しぐれ/熊谷達也
●光文社
●1680円
●評価 ☆☆☆☆☆
私が仙台のO町にに引っ越したのは、
小学5年生に進学した春だった。
セピア色の記憶は、きらきらした七夕飾りとともに蘇る。
記憶の中できらめく七夕飾りを見上げるのは、
私とナオミとユキヒロ、そして安子ねえと沼倉のおんちゃん。
僕は決してあの日々を忘れない・・・。
(感想)
このお話の時代設定は現代ではなく、
今から数十年前、ちょうど「巨人の星」のアニメがリアルタイムで放映していた頃。
住んでいる地域や先祖の暮らしぶりから、
差別を受けている友人を目の当たりにした少年。
差別問題を子供の目から見つめた、小さなヒーローの物語です
私が子供のころもちょっとしたいじめはあった。
けどそれは「家が古い」とか「天パだ」とかそういう次元の話。
しかしこの本の中に描かれるものはもっと根深い。
「いじめ」を超えた「差別」だ。
住む環境や自分のルーツを否定され、
子供同士だけでなく、
この本の中の教師たちがそうであるように
大人は目をそらしたい、むしろかかわりたくない問題。
それにしても生徒に平等であるはずの教師までもが、
この問題を必死に隠蔽しようとするほど
当時はタブーな問題だったのだろうか。
私の住むところではまったく聞かないけど、
今でも根深く同和問題が残っている地域があるらしい。
彼らは結婚や就職の際に差別を受け、あたりまえな社会生活が送れないでいる。
今の日本にはあってはならない問題だと思います。
生まれてしまった環境と血筋から来る問題を描いた作品でありながら、
子供たちの親の影が少ないのが作品としては少々ギモンが残る。
でも安子ねえと沼倉のおっちゃんが十分にその役目を担ってるし、
これはあくまで子供たちの物語だからこれでいいのかも
差別とはなんなのか・・・真剣に考える機会を与えてくれる本でした。
子供たちの行動力を尊敬する。
大人も彼らを見習っていかねば
本文の最後の一行に注目
この一行が物語ることに淡い期待を抱いて待ってますよ、熊谷さん。
最近読んだ中ではナンバー1に面白かった
強く強く引き込まれました。
●この本を好きな人におすすめなのは・・・
箕作り弥平商伝記/熊谷達也