隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 七夕しぐれ
七夕しぐれ
七夕しぐれ
熊谷 達也
七夕しぐれ/熊谷達也
光文社
1680円
評価 ☆☆☆☆☆
私が仙台のO町にに引っ越したのは、
小学5年生学校に進学した春桜だった。
セピア色の記憶は、きらきらした七夕飾りとともに蘇る。
記憶の中できらめく七夕飾りを見上げるのは、
私とナオミとユキヒロ、そして安子ねえと沼倉のおんちゃん。
僕は決してあの日々を忘れない・・・。



(感想)
このお話の時代設定は現代ではなく、
今から数十年前、ちょうど「巨人の星野球」のアニメテレビがリアルタイムで放映していた頃。

住んでいる地域や先祖の暮らしぶりから、
差別を受けている友人を目の当たりにした少年。
差別問題を子供の目から見つめた、小さなヒーローの物語ですぴかぴか

私が子供のころもちょっとしたいじめはあった。
けどそれは「家が古い」とか「天パだ」とかそういう次元の話。
しかしこの本の中に描かれるものはもっと根深い。
「いじめ」を超えた「差別」だ。
住む環境や自分のルーツを否定され、
子供同士だけでなく、
この本の中の教師たちがそうであるように
大人は目をそらしたい、むしろかかわりたくない問題。

それにしても生徒に平等であるはずの教師までもが、
この問題を必死に隠蔽しようとするほど
当時はタブーな問題だったのだろうか。

私の住むところではまったく聞かないけど、
今でも根深く同和問題が残っている地域があるらしい。
彼らは結婚や就職の際に差別を受け、あたりまえな社会生活が送れないでいる。
今の日本にはあってはならない問題だと思います。

生まれてしまった環境と血筋から来る問題を描いた作品でありながら、
子供たちの親の影が少ないのが作品としては少々ギモンが残る。
でも安子ねえと沼倉のおっちゃんが十分にその役目を担ってるし、
これはあくまで子供たちの物語だからこれでいいのかもラッキー

差別とはなんなのか・・・真剣に考える機会を与えてくれる本でした。
子供たちの行動力を尊敬する。
大人も彼らを見習っていかねば!!

本文の最後の一行に注目猫2
この一行が物語ることに淡い期待を抱いて待ってますよ、熊谷さん。

最近読んだ中ではナンバー1に面白かったラッキー
強く強く引き込まれました。



●この本を好きな人におすすめなのは・・・
箕作り弥平商伝記/熊谷達也
| comments(4) | trackbacks(0) | 10:57 | category:    熊谷達也 |
# モノレールねこ
モノレールねこ
モノレールねこ
加納 朋子
モノレールねこ/加納朋子
文藝春秋
1600円
評価 ☆☆☆☆☆
そのねこ猫はまるで自分の家家のように、
僕の家の縁側でくつろいでいる。
ある日、ねこが首輪をつけてやってきた。
もしかしてどこかの家の飼いねこだったのか!?
そこで僕はねこの首輪に飼い主宛ての手紙メールをはさんでみた・・・。




(感想)
大好きラブ

これまでの加納朋子さんの本読書といえば、
日常の中のさりげないミステリーを綴った物が浮かぶけど、
この本はそれよりも〜っと日常!
つまり「家族」の過去や秘密を描く作品です。

8つの短編の中でいちばん好きなのは表題作の「モノレールねこ」猫
不細工なねこの首輪がつなぐ不思議な文通メール
なんとなーく結末が読めちゃうんだけど、
かわいくってあったかいるんるん

この本を小さい子供子供に読み聞かせてあげたいです。
繰り返し読んであげたらきっと動物犬に優しく、
心の美しい子供になるのは間違いありませんぴかぴか

読後にさわやかな気持ちが残ります。
ずっと大切にしたい本に出会いましたニコニコ

ふてぶてしいねこ(そしてパズル!)の表紙も、
読んだ後に改めて見ると味わい深いものがあります。
すごくいい表紙ですよね(^O^)ムード
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:54 | category:    加納朋子 |
# はじめての文学  村上龍
はじめての文学 村上龍
はじめての文学 村上龍
村上 龍
はじめての文学 村上龍/村上龍
文藝春秋
1300円
評価 ☆☆☆
私は作家になる前、文学以外からは決して得ることのできないものを
文学に求めていた。
それは果てしない「精神の自由」だ・・・・・。
文学の入り口に立つ若い読者のために、
著者自身が用意したスペシャル・アンソロジー。
小説はこんなに面白い。
若い人へ・・・龍からのメッセージ。



(感想)
「はじめての文学シリーズ」の現代日本文学を代表する12名の作家の中で
唯一、一冊も読んだことのない人が村上龍さんでしたたらーっ

幼いころから活字中毒という難病におかされていた私ですが
なぜかこの人の本読書は読む機会がなく、
むしろ「ここまできたら絶対読まねぇパンチ」と無意味かつ意識的に避け、
依怙地になってたようなとこもある(汗汗

そこへこのシリーズですよ。
いい機会を与えてくれたものです拍手

収録作それぞれがどれもまったく違うカラーを持っていて、
この一冊じゃ村上龍という人の顔をつかめないムニョムニョ

この人の本を何冊も読んでいる夫に聞いたところによると、
夫自身が好きな作品はほとんど収録されていないということなので、
この一冊で村上龍に対する判断を固めてしまわない方がいいみたいですね。

しかし、全編通して感じたことは、
今の日本の現状に警笛を鳴らしている、ということ。

誰もが知っている日本の有名な昔話をモチーフにした2作も
親しみやすさというベールをかぶりながら、実は確信的なことを厳しくついている。

【鶴の恩返し】でツウを幸せにできなかった若者は
「おれとツウはお互いに愛し合っていたのに、
 理解することができないまま、別れることになってしまったのです。
 おれはツウを幸せにしたかったし、
 ツウはおれのために布をつくってくれたのに」と言いますが、
それに対して偉い人は
「おまえに高い技術や、深い知識がなかった、というだけのことだ。
 おまえは無知で貧しかった。それだけだ。  
 理解できなかったとか、幸せにしたかったとか、
 そんなことは何の関係もない。 
 幸せにしたいという気持ちだけで、
 ほかの人を幸せにできる時代は、とっくに終わってるんだ。」


これがすごーく痛かったですたらーっ

特に印象深いのはやはり「希望の国のエクソダス」。
本来は長編である作品を最初の3章だけ収録していますが、
なんともまぁ気になる部分で切ってあって、続きが気になって仕方ない(-_-;)
とりあえずこの長編を読むことからはじめ、
徐々に龍ワールドを体験していこうと思います。
| comments(0) | trackbacks(1) | 12:30 | category:    村上龍 |
# 使命と魂のリミット
使命と魂のリミット
使命と魂のリミット
東野 圭吾
使命と魂のリミット/東野圭吾
新潮社
1680円
評価 ☆☆☆☆
夕紀の父親は大動脈瘤の手術中に帰らぬ人となった。
お父さんみたいな人を助ける・・・そんな思いから心臓血管外科医病院を目指す夕紀だが、
彼女にはもう一つ、誰にも言えない「医者になる理由」があった。
ある日、夕紀の運命を変える大きな手術の最中に
前代未聞のトラブルが起こる!



(感想)
作品の大きなテーマは「使命」。

人間は誰しも
その人しか果たせない使命というものを持っている。

警察官の使命は市民の安全を守ることであり、
お笑い芸人の使命は人を楽しませて笑わせることであるように、
それぞれ一人一人がか必ず役割を持ち、この世に存在している。
それを全うすることが「かっこいい生き方」。

使命を放棄することは、
今まで生きてきた意味を失うことでもある。

しかし人間は完ぺきではない。
人としての感情(魂)が、使命を全うすることを拒むこともある。
そんな葛藤を打ち破って使命に突き進む人々は美しく輝いていた。

特に同じ女性として、
看護師病院の望がここまでの強さを見せたことには
自分の「使命」を知っている人間の強さを感じましたニコニコ

期待していた大どんでん返しがなかった分、若干物足りない。
絶対何か秘密や裏がありそうなアヤシイ人物に
結局何もなかったことで肩透かしをくらった感じ。

しかしそうでなければ、この作品の主題はなりたたない。
彼に少しでも疑いを持ってしまった私や夕紀は
人としてまだ未熟だったということだと思う。

読後感はサイコーに良かった楽しい
自分の使命はなんなのだろう
読者一人一人自分に問うことになるでしょう。
ミステリーではなく、人間ドラマとして読みたい作品です。
| comments(2) | trackbacks(1) | 00:44 | category:    東野圭吾 |
# 優しい音楽
優しい音楽
優しい音楽
瀬尾 まいこ
優しい音楽/瀬尾まいこ
双葉社

評価 ☆☆☆☆
受けとめきれない現実。止まってしまった時間―。
だけど少しだけ、がんばればいい。
きっとまた、スタートできる。
家族、恋人たちの温かなつながりが心にまっすぐ届いて、じんとしみわたる。
軽やかな希望に満ちた3編を収録。




(感想)
人との出会いから生まれる、
3つのゆるやかなお話が収録されています。
肩肘張らずにのんびりと優しい気持ちにひたれる瀬尾さんの作品は
いつ読んでも心が和みますぴかぴか

どのお話も普通なら怒り出してしまうような展開がまっているのですが、
そうはならずに事態は穏やかに流れ、
とても気持ちのいいラストを迎えます。

特に印象に残ったのは「タイムラグ」で8歳の女の子・佐菜ちゃんが使う
ポカリする”という表現。
心にぽっかりと穴が開いてしまうような気持ちをいうのですが、
この言葉の力の抜け加減がいかにも瀬尾さんらしいし、
これを子供に言わせるといううまさに脱帽してしまいました。
| comments(4) | trackbacks(1) | 13:06 | category:    瀬尾まいこ |
# 魔法飛行
魔法飛行
魔法飛行
加納 朋子
魔法飛行/加納朋子
東京創元社
1680円
評価 ☆☆☆
文章修業鉛筆2を始めた駒子が近況報告のように綴る物語は、
謎めいた雰囲気に満ちている。
ややあって届く返信には、物語が投げかける謎に対する明快な答えがぴかぴか
デビュー作『ななつのこ』に続く会心の連作長編ミステリ。



(感想)
「ななつのこ」「魔法飛行」「スぺース」と続く入江駒子シリーズ。
これは第2作目にあたる作品です。

1作目で瀬尾さんと知り合った駒子が、
瀬尾さんのすすめで物語を書く練習鉛筆2をはじめます。
これはその駒子の書いた物語を軸にした小説です。

連作短編の形を取り、それぞれの章で疑問として残った事柄が
最後にすべて鮮やかに組み合わされます。
解くことのできなかったパズルが
一気に何問もスルスルと解けてしまったような見事な爽快感ニコニコ
この大フィナーレの気持ちの良さ!
加納朋子さんの作品は
いつも読者を絶対に不快にさせない気持ちのいいものがあります。

駒子にずっと届いていた差出人不明の手紙メール
これはすべてがわかった後にもう一度読み返すことによってさらに意味を増してくる。
この手紙の部分だけはぜひ2度読みしてくださいラッキー



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
ななつのこ/加納朋子
スぺース/加納朋子
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:58 | category:    加納朋子 |
# ふたたびの虹
ふたたびの虹―推理小説
ふたたびの虹―推理小説
柴田 よしき
ふたたびの虹/柴田 よしき
祥伝社
1785円
評価 ☆☆☆☆☆
旬の素材を扱う小粋な小料理屋「ばんざい屋」。
オフィス街ビルという土地柄、
独身のサラリーマンやOLに密かな人気があったが、
女将の吉永には他人に明かせない過去が…。
女将を取り巻く人々との心の触れ合いを描く。



(感想)
物語の舞台は美人女将が一人で切り盛りする、
あたたかくこじんまりとした料理店「ばんざい屋」。

この店の常連客の日常に起こるミステリーと恋愛模様を描き、
ミステリーとしても恋愛小説としても楽しめるのが美味しい一冊ですムード

はじめはあくまで常連客のミステリーが本線となるのですが、
ごく序盤で女将の過去になにかあることに気づきます。
伏線としてその過去が小出しにわかるその過程がドキドキラブ期待感でたまらない!
後半は一気に女将の秘密に迫っていく展開のうまさ!
ページを進む手が止められませんでした。

料理ディナーと女将の趣味であるブロガント(骨董の一種)についての描写も細かく、
魅力的に描かれています。
それが非常に食欲と興味をそそる猫2

「ばんざい屋」の雰囲気も素敵です。
常連客がこのお店に来たくなる気持ちもよくわかりました。
このお店に行ってみたいな〜。
お店の雰囲気の良さが作品全体に反映され、
読んでいて心地のよい本でした。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:48 | category:    柴田よしき |
# 袋小路の男
袋小路の男
袋小路の男
絲山 秋子
袋小路の男/絲山秋子
講談社
1365円
評価 ☆☆☆
「あなた」とは指一本触れないままの12年間。
袋小路に住む男にひたすら片思いを続ける女を描いた究極の純愛小説。
川端康成文学賞受賞の表題作を含む3篇を収録した短篇集。



(感想)
この本読書の中にこんな一節がある。

≪あなたは好きな人と一夜を共にして別れるか、何もないまま毎日会い続けるか≫

恋をしたら、その人と体の関係を含めた恋愛をしたいと思うのが自然だけれど、
ごくまれにそう思わない恋ハート大小をすることがある。
セックスという行為でその人を汚すことをせず、
その人と二人で歩く足未来よりも、
今のこの微妙な距離感をずっと保ちながら、
永遠にそばにいたいと思うような・・・。

二人の関係は、友情とも恋愛ともいえない。
言葉では言い表せない二人にしかわからない関係。
この12年、それぞれにパートナーがいた時期もあったけど、
お互いの中で常に特別な存在として位置していたのは恋人ではなく誰・・・!?

友情と恋愛の間にある袋小路に迷い込んでしまった男と女。
ここから抜け出すのが二人にとって幸福なのか、
それは人それぞれ受け止め方は違いますが、
私はこんな愛し方もかっこいいなと思いました。
| comments(0) | trackbacks(1) | 12:37 | category:    絲山秋子 |
# ほんじょの虫干。
ほんじょの虫干。
ほんじょの虫干。
本上 まなみ
ほんじょの虫干。/本上まなみ
新潮文庫
500円
評価 ☆☆☆
女優として以上にエッセリストとしての評判も高い
本上まなみの自由気ままな本読書のエッセイおはな
太陽おてんきが一杯でご飯もおいしいギリシア旅行記は、
プライベート写真カメラや、自筆の可愛いイラストがたっぷり入っていまするんるん
それから、思わず顔がほころぶ自作の短歌もねぴかぴか



(感想)
本上まなみさんの着眼点と感性が好きで、
彼女の本はいつも楽しみに読んでいますニコニコ

この本は前半はギリシア旅行記の「ギリシアで虫干。」
後半が本にまつわるエッセイ「ほんじょの虫干。」という2部構成。

「ギリシアで虫干。」は写真が豊富で、食べ物や動物猫の話題が多。
へもへものんびりしたほんじょ流の旅の楽しみ方は読んでいて楽しい♪るんるん

けど、ほんじょさんの本を他にも読んでいる私としては
「ほんじょの虫干。」はちょっと期待はずれあせあせ
読書の参考になるような本の紹介エッセイかと思いきや、
取り上げられてるのは絵本や料理本、写真集、
日本の名作に入るような域の作品なんですよね〜。
急に関西弁になったり、文体が変わるのは愛嬌なんだろうけど、
少々読みにくい印象も残り、
正直、これはほんじょさんの他の本に比べると落ちる気がします下向き

しかし!解説が中島らもさんというのも今となっては貴重です。
ほんじょさんへの愛ラブがビンビン伝わる魂のこもった解説でした。



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
ほんじょの鉛筆日和。/本上まなみ
ほんじょの天日干し。/本上まなみ
ほんじょの眼鏡日和。/本上まなみ
| comments(0) | trackbacks(1) | 12:24 | category:    本上まなみ |
# 黒笑小説
黒笑小説
黒笑小説
東野 圭吾
黒笑小説/東野圭吾
集英社
1680円
評価 ☆☆☆
丸い物がすべて巨乳に見えるようになって…「巨乳妄想症候群」。
メル友に会うため写真と実物の差を埋めようとする女…「奇跡の一枚」。
他、文壇事情など全13編の猛毒爆笑な黒い短編集。



(感想)
シリアスな東野作品しか読んだことがなかったので新鮮で!
「黒笑小説」ってタイトル好きだわ猫2
笑うに笑えないブラックな短編集でしたたらーっ

文壇読書の裏事情を描いたいくつかの短編は
出版社の方でも冷や汗モノ汗だったと思いますが、
それでも出版に踏み切った集英社さんに拍手拍手

中でも
感性の古くなったベテラン作家を切るべく、
感性を見極める偽の“新人賞選考会”を開く「選考会」と、
次々とアニメキャラクターの玩具が売り出され、
すべてを買わざるを得ない状況に追い込まれていく「臨界家族」は
確かに“黒笑”してしまいました。
「線香花火」のタイトルのうまさも光ります。

ただし・・・
おふざけが過ぎているというか、暴走気味なものがあったことも確か汗
「インポグラ」「モテモテ・スプレー」あたりは別の意味での“黒笑”・・・。
良くも悪くも黒笑させる・・・これって狙ってるんでしょうか?
| comments(0) | trackbacks(1) | 12:12 | category:    東野圭吾 |
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