隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# ピュア・ラブ〈2〉 恋情篇
ピュア・ラブ〈2〉恋情篇
ピュア・ラブ〈2〉恋情篇
宮内 婦貴子
ピュア・ラブ〈2〉 恋情篇/宮内婦貴子
毎日新聞社
1500円
評価 ☆☆☆
小学校教師・木里子と禅寺の修行僧・陽春。
純愛を貫くふたりの涙と感動のラブストーリーが人気を呼んだ
ヒットテレビドラマテレビのノベライズ。
「紅糸篇」に次ぐ第2弾。
木里子の白血病が再発病院
陽春は再びドナーとなるが…。



(感想)
TBSの昼ドラテレビとして放送され、
大人気を博した同名ドラマの小説版・第2弾です。

ドラマ版を観ていた方のためにこの本の内容を説明すると、
何も告げずに修行に出てしまった陽春に会うために、
木里子が箱根のお寺まで行くエピソードからはじまります。
そしてラストはあの二人でイルカを見に行くシーン。
第2弾ではここまでが描かれています。

白血病を患う美貌の小学校教師・木里子と修行中の雲水・陽春の純愛ニコニコ

そこにあるのは打算など微塵もない、純粋な思いだけ。
無駄な思いはまったく存在しないこんな愛は、
私たちの生きる現代にはなかなか存在しないから、
私たちは憧れるような気持ちでこの作品にひかれているのかもしれません。

しかし愛だけでなく、細かい部分にも魅了のある作品です。

特に禅の心
陽春さんや老師様が語る、
仏教に関わるちょっといい話は本当にためになるし、
お寺で食べている精進の料理や、
陽春さんが木里子に持ってくる地味だけど心のこもった食べ物の数々は
「食」というもののありがたさと偉大さを教えてくれます。

この作品には、
今、日本で見直されてきているものがすべて詰まっているのです。
韓国のドラマに代表されるような「純愛」。
生き方や食のスタイルとして注目される「スローライフ」「スローフード」。
それらが流行に便乗した描き方ではなく、
あくまで自然に詰め込まれている。
そのへんも人気の理由と言えるでしょうね嬉しい

しかし、忍さんと戸ノ山さんのテンポのよいやり取りや、
陽春の厳かな身のこなしなどを映像で知っている方は
小説では伝えきれないドラマ版の良さを改めて感じるはず!!

ドラマを観ていない人も第1弾から読めば、
十分に面白い作品だと思います。
でも小説版を少しでも気に入ってもらえたら絶対にドラマ版も観て欲しいですウィンク


●この本を好きな人におすすめなのは・・・
ピュア・ラブ/絲糸篇
ピュア・ラブ/飛翔篇

どちらも宮内婦貴子さん。
3部作で完結です。
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# 青空感傷ツアー
青空感傷ツアー
青空感傷ツアー
柴崎 友香
青空感傷ツアー/柴崎友香
河出書房新社
1365円
評価 ☆☆
失業中で面食いで僻みっぽくて優柔不断な主人公・芽衣。
芽衣に“自分が接している世界にこんなきれいな子が実際にいることに感動した”と言わしめた究極の美女・音生。
失業女(芽衣)と失恋女(音生)の傷心旅行物語。



(感想)
ちょっとした友人に過ぎなかった二人が3年ぶりに再会し、
音生に振り回される形でトルコ・四国・沖縄と旅飛行機をするのなかで、
二人が次第に親友になっていく過程を描いています。

誰もがふりむく美人で、わがままに思えるほどに素直な音生。
一見、同性に嫌われそうなタイプだけど
いつしか音生にたまらなくひかれている自分に気づきました。

しかし、音生・・・
このキャラクターだけに頼っている作品なんですよね。
正直、話の流れとしては面白いものではなく、
読者も芽衣と一緒に音生に振り回される・・・それが心地よいだけ汗
読後に何も残っていない。
まさに「音生ありき」な作品でした。


●この本が好きな人におすすめなのは・・・
逃亡くそたわけ/絲山秋子
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:40 | category:    柴崎友香 |
# ふしぎな図書館
ふしぎな図書館
ふしぎな図書館
村上 春樹
ふしぎな図書館/村上春樹
講談社
1500円
評価 ☆☆☆
村上春樹と佐々木マキが贈る大人のためのストーリーるんるん
そして魅力溢れるいらすとアート
ぼくは「図書館」から脱出できるのだろうか?
あの懐かしい“羊男”も大活躍!!




(感想)
佐々木マキさんのイラストがふんだんに使われた小さな小さな本ぴかぴか

30分もあれば軽く読めてしまうお手軽さもあり、
人に勧めたり、
プレゼントプレゼントするのに適していると思います。

こんな小さな本にも村上春樹さんらしさがたっぷり詰まってるニコニコ
ふと感じる寂しさ、
何かを追い探し求める冒険心、
そして・・・美味しそうな食べ物ディナー

羊男のドーナツがあまりにも美味しそうで、
雑誌に載っていた≪ドーナツの作り方≫というページを
すぐに確認してしまった私(笑)

子供はこのお話を怖いと思うかな?
でも、ファンタジックな要素もありますよね。
いろんなエッセンスが詰まった村上春樹さんの小さな魔法ウィンク
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:55 | category:    村上春樹 |
# ナラタージュ
ナラタージュ
ナラタージュ
島本 理生
ナラタージュ/島本理生
角川書店
1470円
評価 ☆☆☆☆☆
壊れるまでに張りつめた気持ち。
そらすこともできない二十歳の恋ラブ
大学二年の春桜
片思いし続けていた葉山先生から電話がかかってくる。
泉はときめくと同時に、
卒業前に打ち明けられた先生の過去の秘密を思い出す・・・。



(感想)
これまでの島本理生の作品を読んで、
文章は若手女性作家の中ではダントツにうまいけど、
まだまだ人生経験(恋愛経験)が足りないと思っていました。
もっと多くの人に触れ、恋ラブをたくさんすればきっとこの人の糧になると。
そんな成長を感じさせてくれる本がいつかは読めるだろう・・・と。

しかし、長い目で待つつもりが
こんなに早くここまでの作品を書いてくるとは予想外でしたびっくり

たしかに男性の描き方はまだ幼い。
葉山先生の人物像を見ていると、
作者はまだ大人の男性をよく知らないんだろうなとわかる。
けど、そんなことはあまり気にならないほど夢中になった。
途中、何度も涙あせあせが止まらなくなり、
最後は嗚咽を漏らしてしまうほど泣けました泣き顔

結末はもちろん悲しい。
けど、さりげない描写や恋をする気持ちの描き方が
美しく繊細で、それだけで涙を誘うんです。

二人はそれが運命の恋だとわかっていながらも、先には進まない。
“教師と生徒だから”なんて理屈、
この二人の絆にかかったらあまりにも陳腐で、
魂で惹かれあうって、きっとこういうことだと知りました。

そばにいることが、すべてじゃない。
離れていても、心の中でずっと大事に思う、
そんな恋もあるんですね。

たった一度の運命の恋。
離れても薄れることのない記憶。
運命の人・・・だからといって、必ずしも結ばれるとは限らない。
離れることもまた、運命。

島本理生さん、本当にうまくなりました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:45 | category:    島本理生 |
# 空白の叫び(下)
空白の叫び 下
空白の叫び 下
貫井 徳郎
空白の叫び(上)/貫井徳郎
小学館
1785円
評価 ☆☆☆☆
少年院を退院した彼らはそれぞれ自分の生活を取り戻そうとするが、
社会の目は当然冷たく、徐々に行き場をなくしていく。
わずか10ヶ月の院生活で彼らはまったく更正していない。
自らの犯した殺人を悔い改めることはない。
そして、そんな再び3人が出会う日がくる。
新たな犯罪の予感を感じながら・・・。



(感想)
下巻は少年を出た3人が、社会でなかなか受け入れられず、
またもや新たな犯罪に手を染めてしまうまでを描いています。

一度罪を犯してしまった人間に対して
社会が冷たいのは当然のことで、
彼らは普通の人以上の頑張りが必要となる。
そこを理解せず、社会に反発するように新たな犯罪に手を染める少年達。

あまりに幼い発想。
幼い故に分別が付かず、犯罪に手を染めてしまった少年達は
理解力がないのだから、更正にも時間がかかるはず。
そのへんが今の日本は甘い。

要は少年を更生させるって、心や体に覚えこませるのではなく、
人対人で真摯に向き合ってくれる大人の存在が必要なのかもしれない。

葛城と神原の関係の件はいかにも作られた感があったけど、
被害者の父が久藤に語った真実にはハッとさせられる繋がりがあり、
久藤が更正への道を歩む道しるべとして
うまくつながっていると思いました。

少年達の心の叫びは最後の最後まで鳴り止むことなく、
結局3人に欠けていたものは、
注がれることのなかった愛情なのかもしれません。



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
空白の叫び(上)/貫井徳郎
さまよう刃/東野圭吾
天使のナイフ/雫井脩介

| comments(6) | trackbacks(0) | 11:54 | category:    貫井徳郎 |
# 空白の叫び(上)
空白の叫び 上
空白の叫び 上
貫井 徳郎
空白の叫び(上)/貫井徳郎
小学館
1785円
評価 ☆☆☆☆
久藤は自分の容姿や頭脳が凡庸なことを嫌悪している。
頭脳明晰、経済的にも容姿にも恵まれている葛城は、
決して奢ることもなく常に冷静で淡々としている。
神原は両親との縁が薄く、自分の境遇を不公平と感じている。
3人は普通の中学生だった。
なのに、なぜ殺人者になったのか・・・。
少年犯罪を少年達の視点で描くクライムノベル。



(感想)
第一部は3人の少年が殺人を犯すまでの経緯、
そして二部は読むに耐え難い過酷な少年院生活を描きます。

少年達を突き動かしたのは「敗北感」や「絶望感」だった。
自分という「個(または自分の愛するもの)」を
激しく踏みにじられた瞬間の爆発どんっ
彼らはまだ幼く、傷つくことや負けることに慣れていない。
経験したことのないショックが、怒りへ直結する。

少年院の生活においてもそう。
分別の付かない子供の集まりだから、抑制が効かない。
人としての境界線を越えることに、
罪悪感も恐怖も持ち得ない愚かさはまさに幼さと同類。

しかし、少年院に入る少年達の心の汚れも問題だけど、
理穂の汚れのなさも現在人の私達には脅威である。
まるで水と油のような久藤と理穂がが分かり合えるはずもなく、
破滅へ進むしか道がないのは、わかる気がした。

第二部を読むのは途中でリタイアしたくなるほどつらい。
読むのには覚悟が必要です。



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
空白の叫び(下)/貫井徳郎
さまよう刃/東野圭吾
天使のナイフ/雫井脩介
| comments(2) | trackbacks(0) | 11:23 | category:    貫井徳郎 |
# からくりからくさ
からくりからくさ
からくりからくさ
梨木 香歩
からくりからくさ/梨木香歩
新潮文庫
620円
評価 ☆☆☆☆☆
祖母が遺した古い家家に女で私たちは共同生活を始めた。
糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草よつばのクローバーが食卓にのる。
静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。
心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして・・・。
生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。



(感想)
とても美しい小説

ラストでは悲しみや感動とは違う、
今まで味わったことのないような素敵な涙がこぼれましたポロリ
いい出会いをしたような気がします。

日本的な古い家で若い女性たちが共同生活をします。
染色の修行をする蓉子、
鍼灸の勉強中の外国人・マーガレット、
美大生で織物の研究をしている紀久と与希子。
そして、その家のもう一人の家族が古い人形のりかさん・・・。
この4人と1人が織り成す物語は感銘を受けることばかりでした。

野に咲く植物チューリップに自然に目を向けられる心の余裕と優しさ、
自分のアイデンティティーを受け入れ、先祖を重んじる心、
古くから伝わる手仕事の伝統を敬う心、
忘れたくない素敵な心に溢れている作品。
彼女達の生活スタイルは私の理想とする形にも近いことから、
より親近感を覚えたというのもあると思います。

この本を素敵だと思える気持ち、大切にしたいです


●この本を好きな人におすすめなのは・・・
りかさん/梨木香歩
| comments(4) | trackbacks(0) | 12:59 | category:    梨木香歩 |
# 逃亡くそたわけ
逃亡くそたわけ
逃亡くそたわけ
絲山秋子
逃亡くそたわけ/絲山秋子
中央公論新社
1365円
評価 ☆☆
21歳の夏おてんきは一度しか来ない。
だからあたしは逃げ出すことにした。
軽い気持ちの自殺未遂がばれて、入院させられた病院病院から・・・。
旅の道連れは24歳の茶髪で気弱な会社員。
すぐに「帰ろう」と主張する彼を脅して車車を出させた。
東へ・・・そして南へ・・・暑い夏の物語。



(感想)
精神病院病院を脱走し、いくつかの犯罪を犯しながら
九州を南下していくハイペースな2人の夏の逃避行車

面白いかそうじゃないか以前に、
読む人を選ぶ作品だな、というのが率直な感想。

ご当地ネタがとにかく目立ちます!
そんなわけで東北人ゆきの私はイマイチのれませんでした下向き

まず方言がわからない。
よって理解できない部分がある。
これは私にしてみれば面白さ半減パンチ

けど、病気や失恋といった暗い辛いことを
ギャグで笑い飛ばし明るさに変える・・・
このポップで豪快な勢いには生き生きとした生命力に溢れていて、
若い人にはウケる
だろうし、
名古屋と九州の人には身近な話題も多く楽しめるとは思いまするんるん


●この本を好きな人におすすめなのは・・・
青空感傷ツアー/柴崎友香
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:48 | category:    絲山秋子 |
# 人生の楽園 新しい生き方の提案
人生の楽園―新しい生き方の提案
人生の楽園―新しい生き方の提案
人生の楽園―新しい生き方の提案/テレビ朝日「人生の楽園」(編)
講談社
1680円
評価 ☆☆☆
あなたもできる自分の夢を実現する生き方。
テレビ朝日系列テレビで毎週土曜夜6時から大好評放映中の人気番組を単行本化。
自分の好きなことに没頭しながら、
第二の人生を送る7組の夫婦の羨むべき暮らしぶりを紹介。



(感想)
この番組は自分の夢を実現して、
楽しく実りのある第2の人生を送っている方達にスポットを当てた番組で、
毎週1家族が紹介されています。

夢の実現・・・
それに必要なのは時間でもお金でもなく“行動力”なのではないでしょうか。
この本を読んでそれを強く感じました。
読んでいるだけで読者さん自身のそれぞれの夢も
どんどん膨らんでくる本だと思いますぴかぴか

でもやはり本家のテレビ版の方が楽しいたらーっ
テレビテレビだと、
夢を実現した人の幸せそうな笑顔や
実現させた夢の“形”も映像として見ることができるので、
より伝わるものが大きいのは事実だと思います



●この本を好きな人におすすめなのは・・・
DASH村からワシが伝えたかったこと 三瓶明雄の知恵/三瓶明雄、太田空真
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:38 | category: 作家名 た行 |
# 聖者は海に還る
聖者は海に還る
聖者は海に還る
山田 宗樹
聖者は海に還る/山田宗樹
幻冬舎

評価 ☆☆☆
生徒が教師を射殺し自殺したどんっ
衝撃的な事件があった学校学校に招かれたカウンセラー。
心の専門家は平穏をもたらすはずだったが……。
“心の救済”の意義とそこに隠された危険性を問う
衝撃作、書き下ろし!



(感想)
いやー、怖い小説でしたたらーっ
催眠療法で人の狂気を封印してしまうというのは、
犯罪を防ぐという面ではアリだとは思います。
心の奥底に抱える自己を吐き出す場として、
カウンセリングを利用するのもいいでしょう。

けど、生徒の事件のショックが成績にも影響している中、
カウンセリングを受けた生徒は成績が落ちていないという事実に気づいた教師達が
生徒全員になかば強制的にカウンセリング室をすすめる姿は明らかにいきすぎであり、
寒気すら感じましたひやひや

いい学校に入ること、いい会社に入ること。
それは確かに大事なことかもしれません。
学校側にとっては何人の生徒を東大に入れるかは
とてもとても大きな問題なのはわかります。
しかしそれにばかり気を取られ、
生徒一人一人の人格や人間らしい感情の育成に目を向けないことは
何か違っている気がします。
その事実に気がついている教師が少ないということも、
小説の中のこととは思いながらも戦慄しました。

悩みを自分で乗り越える、または仲間と支えあいながら乗り越える、
この経験は大事ですよね?
そんなことを考えさせられ、
この小説はカウンセリングのあり方を考えながらも
現代の教育問題にも目を向けることのできる2面的に面白い作品
でした。

それにしても「嫌われ松子の一生」を読んだときもそうでしたが、
山田宗樹さんの本は時間を忘れて、黙々と中毒的に読めます。
この本も一気に読んでしまいました!!
不思議な作家です。
| comments(0) | trackbacks(0) | 12:29 | category:    山田宗樹 |
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