隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 自転車少年記
自転車少年記
自転車少年記
竹内 真
自転車少年期/竹内真
新潮社
1995円
評価 ☆☆☆☆☆
銀色に輝く翼を手に入れた昇平と草太は、冒険をした。
レースで汗を流した。もちろん素敵な恋もした。
自転車自転車のスピードで、少年は大人へと成長する。

(感想)
自信を持って人にすすめられる本に出会えました。

読んでいてこんなにすがすがしい気持ちになれた本は久しぶりです楽しい
成長小説はたくさん読んできたけど、
「自転車自転車」というアイテムにこだわった点が何より見事でした。

昇平と草太の出会いは4歳の時。
補助輪なしでの自転車乗りの練習をしていた昇平が、
坂道の猛スピードで草太の家の生垣に突っ込んだ日から、
29歳になり300キロの自転車ラリーに出るまでの25年間を描いているのですが、
二人の人生の節目には必ず自転車があるのです。

同級生たちに差をつけるために坂道で怖がらずに自転車に乗るための特訓をしたこと、
海まで何時間もかけてサイクリングしたこと、
高校で自分たちで自転車部を発足したこと、
東京で暮らし始めるために東京まで自転車上京したこと・・・
二人の青春にはいつも自転車がある。
自転車によって人間関係も開かれた。
好きなものでつながっている人々の連帯感ってやはりすごいですよねぴかぴか

忘れてならないのが、二人と中学校で出会う伸男。
この作品の3人めの主人公。第3の男。
自転車屋のおじさんを持つ彼は、二人の自転車のメンテを手掛けます。
この作品においても重要な存在です。
後半に唯一、彼をメインに描く章があるのですが、
そこから最後まで私の涙腺は開きっぱなしでした悲しい

ラストの連帯感は爽快!!

「悲しい」とか「かわいそう」ではなく、「感動」で泣ける小説でした。



●この本が好きな人におすすめなのは・・・
自転車少年記 あの風の中へ/竹内真

「自転車少年記」では描かれなかった少年達のその後や、
昇平の息子が自転車少年自転車になっていく過程が描かれていますウィンク
| comments(2) | trackbacks(0) | 11:32 | category:    竹内真 |
# 私が嫌いな10の言葉
私の嫌いな10の言葉
私の嫌いな10の言葉
中島 義道
私の嫌いな10の言葉/中島義道
新潮文庫
420円
評価 ☆☆☆☆
相手の気持ちを考えろよ!
人間は一人で生きてるんじゃない!
おまえのためを思って言ってるんだぞ!
もっと素直になれよ!
こんなもっともらしい言葉をのたまう大人が、
吐き気がするほど嫌いだどんっ
精神のマイノリティに放つ反日本人論。

(感想)
中島さんが忌み嫌う10の言葉について、嫌いな理由を改めて探求してみる本。
人間関係を円滑に進めていくためも社会での暗黙のルールも
中島さんにはまったく通用しない。
これこそが彼がこの日本を「生きにくい」と感じてしまう確固たる理由に間違いないんだけど、
依怙地に自分のスタイルを貫く姿勢が彼のいいところラッキー

むちゃくちゃなことを言っているように思えるけど、的は得ている。
間違ったことは言っていない人なんです。
その姿に読者は爽快感を感じるのかもしれない。
いや、尊敬の念すら覚えてるかもしれない。

自分の身の回りに中島義道のような人間がいたらさぞ迷惑だろう。
けど、彼の本を読んでいる分には、私たちに何の実害もない(笑)
だからこそこの本は痛快。
あくまで傍観者としてのぞいて見るような感覚で読んでみましょうよ。
少なくとも私は共感できました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:17 | category:    中島義道 |
# 太陽の塔
太陽の塔
太陽の塔
森見 登美彦
太陽の塔/森見登美彦
新潮社
1365円
評価 ☆☆☆
京大5回生の森本は「研究」と称して自分を振った女の子の後を日々つけ回していた。
男臭い妄想の世界にどっぷりとつかった彼は、
カップルを憎悪する女っ気のない友人たちとクリスマスツリー打倒を目指しておかしな計画を立てるのだが…。

(感想)
ばかばかしい、男臭い、むさ苦しい・・・・そんな批評がこの作品には褒め言葉になってしまう。
本にも書いてあるんだけれど、
本当に「読了したあかつきには、体臭が人一倍濃くなっているだろう」、まさにそんな作品でした。

でも、その男臭さが女の私にもまったく不快に感じられない不思議・・・汗

京都大学の男子学生・森本が主人公。
森本は自分を振った後輩の女の子をつけまわすことを日常としている。
彼と友人たちはカップルを憎悪し、
クリスマスツリーを呪う「イケてない」大学生(というか、全員変人)。
そんなかれらの異常な青春小説(さわやかな汗の似合う青春ではないが)。

おもしろいのはストーリーより表現力・言葉の選び方楽しい

登場人物たちに難しい言葉をあえて使わせることによって、
彼らの変態はぐ〜っと増しています。

どの登場人物も個性的で、変人。
キャラクター設定がまるでアニメテレビか映画カチンコのよう。
この辺が若い男性のデビュー作らしい!

舞台が京大なので、京大の学生さんにはぜひ読んでほしいですね。
京都の土地勘がある人にもおすすめです。

●この本が好きな人におすすめなのは・・・
砂漠/伊坂幸太郎
| comments(2) | trackbacks(1) | 11:07 | category:    森見登美彦 |
# 赤線跡を歩く
赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて
赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて
木村 聡
赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて/木村聡
ちくま文庫
998円
評価 ☆☆☆
公娼制度の廃止に伴い、戦後間もない頃から形成された赤線地帯。
時代の流れとともに現在は旅館やアパートなどに用途を変えて生き残ってきたそれらの建物も、危機的な状況を迎えている。
そのわずかに残った街並みを写真と文で貴重な写真集カメラ

(感想)
すべてのページに写真カメラが載っています。
しかもその半分くらいはカラーぴかぴかです。

現代の建築物にはなかなか見られないステンドグラスやタイル使いの建物をはじめ、
建築関する貴重な資料ともいえる味わい深い素敵な本。
主に東京都内、関東近辺の建物が中心なので、
関東に住んでいる方はこれをガイドブック代わりにして、
古き時代を訪ねるお散歩なんかをしてみてはどうでしょうか?
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:57 | category: 作家名 か行 |
# 涙
涙

乃南 アサ
涙/乃南アサ
幻冬舎

評価 ☆☆☆
昭和39年東京オリンピックジョギング前夜。
一方的な別離の電話電話を最後に、
挙式を翌日に控えた萄子の前から婚約者・勝が姿を消した。
刑事銃である勝にある凄惨な殺人事件の嫌疑がかけられ、
萄子は勝を探し出そうとするが・・・。

(感想)
一気に読ませるテンポのある作品ではありました。

しかし、タイトルの「涙」、この意味を考えてみる。
誰の「涙」なのか、誰のための「涙」なのかわからない・・・・あせあせ

少なくとも私は萄子のためには泣けない。
確かに彼女は不幸かもしれない。
でも、洋子やルミだってこれと同じ厚さの本に出来るほど不幸だった
(この言い方、すこしおかしいかもしれないけど)
なにも特別に萄子だけが不幸なわけではないと思うんですよね〜。

萄子がお嬢様王冠2で、働いてもいないのに勝を探すためにたくさんのお金を使って日本全国を駆け回るのをみると、
まだこの人はすべてを失ったわけではないと思えて仕方ない。
(単に私のお金持ちに対する嫉妬だろうかたらーっ

人一倍、正義感の強い刑事だった勝が
逃げなければいけない真実の理由がわかったときは、胸が痛くなったけど・・・。

●この本が好きな人におすすめなのは・・・
観覧車 恋愛ミステリー/柴田よしき
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:49 | category:    乃南アサ |
# チグリスとユーフラテス
チグリスとユーフラテス
チグリスとユーフラテス
新井 素子
チグリスとユーフラテス/新井素子
集英社
1890円
評価 ☆☆☆☆
宇宙暦363年。
惑星ナインに移住した人類は原因不明の人口減少をたどり、
最後の子供・ルナがたったひとりナインに取り残される。
「生きること」の意味を問う超大作。

(感想)
人生の意味」という壮大なテーマを、
はるか彼方の惑星・ナインを舞台に問い掛けるSF長編。

まず、この文体に苦手意識[:ふぅ〜ん:]を持ってしまう人は多いと思いますが、
この砕けた調子の文体に似合わずテーマは大きく深いので
こらえて最後まで読んでくださいね(笑グッド

「生きていく意味」を彼女たちは必死に探した。

最後の子供として生まれたルナはナインの絶望の象徴でもあったのかもしれない。
読者もはじめからナインが滅び行くことはわかった上で読み進めていくのだけれど、
レイディ・アカリが目覚めたことによってルナの人生は思わぬほうに進んでいく。
一個人の「生きる意味」ではなく、
よりスケールの大きいこの惑星全体の意味をも作り出していく二人。
まさかこの作品の最後に感じるのが「絶望」ではなく
希望」だったとはまったく想像できなかったです。

女としても、職業人としても、とにかく読み応えのあり、
いろんな意味でインパクトのある作品でした嬉しい

ただし、もうちょっと余韻に浸りたかったのに、このあとがきはどうなんだ?
一気に現実に引き戻されてしまうので、
これから読む人はあとがきは少し時間を置いてから読んだほうがいいかもしれませんたらーっ

●この本を好きな人におすすめなのは・・・
終末のフール/伊坂幸太郎
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:39 | category:    新井素子 |
# Good Luck
Good Luck
Good Luck
アレックス・ロビラ, フェルナンド・トリアス・デ・ペス, 田内 志文
Good Luck/アレックス・ロビラ, フェルナンド・トリアス・デ・ペス, 田内 志文
ポプラ社
1000円
評価 ☆☆☆
それは五十四年ぶりの運命の再会だった―。
公園のベンチで幼なじみのジムと隣り合わせたマックスは、
仕事も財産もすべてを失い変わり果てた友人に、
祖父から聞かされた「魅惑の森」の物語をかたった。
奇蹟のラストへ、七日間の旅が始まる。

(感想)
昔話の正直じいさんと意地悪じいさんを思い出します。
こういったテーマは日本では、
昔話としてたくさんあると思うので新鮮味はまったく感じない。
子供向けの本ならまだしも大人が読む本のテーマとしてはどうかと思う。

この本が伝えたいことは今更言われなくてもみんなもうわかっているからパー
(考え方や実行に表せるかは別として)

ポプラ社は子供子供向けの本読書に定評のある会社だし、
このテーマで子供向けの良質な作品なら作るべきだと思う。

たしかにいいことは言ってる。
けど、批判するわけじゃないけど、この本から新しい発見はない。
とりあえず各章の最後にその章での教訓のようなものが短くまとめてあるので、
そこだけ読んでいってもいいかもしれません。
それ読んだだけでこの本のいいたいことはすべて通じると思いますよつばのクローバー
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:28 | category: 作家名 ら行 |
# 反乱のボヤージュ
反乱のボヤージュ
反乱のボヤージュ
野沢 尚
反乱のボヤージュ/野沢尚
集英社
1680円
評価 ☆☆☆☆☆
薫平・19歳は首都大の寮生。
その弦巻寮が廃寮に!?
存続のため戦う寮生と、舎監・名倉。
団塊の世代とそのジュニアたちの断絶と交流。

(感想)
亡くなったというニュースを聞いて手にしてみた記憶があります。
「眠れる森」「青い鳥」等の傑作を生んだドラマの脚本家というイメージが強いけど、
これを読んで、改めて惜しい人を亡くしたんだと感じました。

ドラマ化を想定して書かれたようにキャラクターの設定が見事!
舎監の名倉が見せる父親の面影や学生たちの友情、
そして信頼関係、淡い恋愛、犯罪、いろいろな面から考えさせられます。
そして何よりこの世代の若者故の葛藤や悩みがうまく描かれています。

●この本を好きな人におすすめなのは・・・
砂漠/伊坂幸太郎
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:41 | category: 作家名 な行 |
# 雑貨をつくる仕事
雑貨をつくる仕事
雑貨をつくる仕事
瀧 清子
雑貨をつくる仕事/瀧清子
主婦の友社

評価 ☆☆☆
ものをつくることを天職とし、作品づくりに打ち込むアーティスト。
雑貨ショップ経営と両立させ、つくることと売ることを結びつけている人。
創作からプロデュースまでこなしマルチに活躍する人。
企業のなかでものを生み出す人…。
身近なものをつくる多様な雑貨アーティストを紹介。
アーティスト作品歓迎の全国ショップガイドなど役立つ情報も満載。

(感想)
私は以前、全国展開している雑貨ショップの販売スタッフをやってました。
仕事内容は仕入れと販売です。
結婚退職したけど、やはり雑貨がスキ揺れるハートです。
この本を読んで改めて「私は雑貨の仕事が好きだ」と感じました。

一言で「雑貨の仕事」といってもいろんな道がありました。
どんな学校を出て、どんなプロセスを経て
今の彼女たちがあるのかがわかりやすい言葉で書いてあり、とても参考になります。
私のように主婦の余暇を利用してやりたいなんて考えは甘い!
「そういう人とは取引していない」と憧れのショップオーナーはおっしゃってました。
そして自分の創作能力も考えてみると、
やはり私はアーティストより仕入れて販売する方が向いているとわかりました。

雑貨の世界はかわいらしさに憧れる若い女の子は多いと思います。
けど、たとえば販売だけ見ても、
陳列や仕入れは意味肉体労働ともいえる過酷な仕事です。
現実をしっかりと見て、将来を決めるためにこの本をぜひ参考にしてくださいウィンク

ひとつ残念なのは、雑貨好きの読む本なのにカラー写真カメラがないことですね。
ハイジの藤永さんのファンなので作品がカラーで見れないことが残念あせあせ
だから星は3つです。
カラーだったら5つだったのに泣き顔

●この本を好きな人におすすめなのは・・・
スローワーク、はじめました/谷田俊太郎
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:25 | category: 作家名 た行 |
# 毎日一人はおもしろい人がいる
毎日一人はおもしろい人がいる
毎日一人はおもしろい人がいる
中野 翠
毎日一人はおもしろい人がいる/中野翠
講談社

評価 ☆☆☆
良い人も悪い人も人間大好き嬉しい
中野翠が選んだ衝撃・笑撃な人々まるごと1年分366人の面白話が一挙炸裂!
1日1回驚いて(感動して!)1日1人俎上にのせて料理する。
辛口かつ軽妙なタッチで新鮮ネタを直送する“中野節”まるごと1年分の面白話!

(感想)
2001年1月1日から12月31日までの365日間の日記。
日記といっても、その日にテレビや映画で見た有名人・街で見かけた人・新聞でみた記事・・・など、
著者が「おもしろいなぁ〜」と思った人について語っている変わった日記。
時にはイラスト鉛筆2も付いています。

この人、とにかく着眼点がおもしろいぴかぴか
おもしろいことをみつけるアンテナの感度がいい。
特に新聞で見つけた記事は笑うに笑えない珍事揃いです。

映画カチンコや本読書の話も多いので、
観てみたい・読んでみたいと思わせるものもいくつかありました。
ちょっとした映画と本のガイドにもなってしまっています。

ただし、365日分もあるので誰にでも興味のもてない部分はあって当然あせあせ
私の場合、落語等の古典芸能はどうも苦手・・・。
その分野に触れている日がかなり多かったのが星3つの理由です。

特に私がいちばん好きなのは6月11日の日記だなぁニコニコ
読者さんからのメールメールを紹介したもの。
「自転車自転車に3匹の犬犬犬犬をのせているおじさんを見た」という話です(笑)
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:35 | category: 作家名 な行 |
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