JUGEMテーマ:ノンフィクション
● 霊感刑事の告白 / 阿部一男(幻冬舎)
● 個人的な評価 ☆☆
刑事課長には霊感があった!?
見えない存在が発する声に時に苦しめられ、時に捜査を助けられてきた筆者が伝える霊界からのメッセージ。
(感想)
吉本ばななさんの本で紹介されていた本です。
著者は宮城県鳴子町の警察署長さんだった方。
私は温泉好きで、鳴子温泉にはかな〜り通っていた時期があったので親近感が沸き、購入いたしました。
文字が大きく、文章も軽い。読みごたえを感じません。
格言のようなものでページ数を稼ぐ演出もどうかと思います。
本のタイトルが2時間サスペンスドラマにありそうな感じだったので、
霊能力で事件を解決する小説っぽいものをイメージしてたので肩透かしをくらいました。
後半はこの世と霊界の緊密な関係について綴られますが、私としては死後のことや霊界のことなど考える以前に、まずは今回の人生を大事に生きることの方が重要に思えてなりません。
なんだかよくわからない自己啓発やスピリチュアルの要素も感じました。
もう読み返すことはなさそうです。
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JUGEMテーマ:小説全般
● わたしたちに翼はいらない / 寺地はるな(新潮社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている三人。
4歳の娘を育てるシングルマザー――朱音。
朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦――莉子。
マンション管理会社勤務の独身――園田。
いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は、恨みとなり、やがて……。
他人を殺す。自分を殺す。どちらにしても、その一歩を踏み出すのは、意外とたやすい。
それでも「生きる」ために必要な、救済と再生をもたらす、最旬の注目度No.1作家・寺地はるなのサスペンス。
(感想)
これまでの寺地はるなさんにはないブラックさを感じる作品でした。
まず「わたしたちに翼はいらない」というタイトルに消極的なイメージを抱いたけれど、
大きな翼で羽ばたいていくことが正解とはせず、羽ばたけなくても今自分がいるこの場所で地にしっかり足をつけて生きていればいいという落としどころだったので平凡な私にはしっくりきました。
ママ友とか、変な人間関係に苦労させられる今の時代において「友達じゃない」と言い切るのはなかなか勇気のいること。
私もどちらかというと密にかかわる友達関係は苦手で、
でも何かあったら助けたい、幸せを願いたいと思うことくらいの距離感の朱音と莉子の新しい関係性はいいなと思えました。
いじめたほうは簡単に忘れてしまうけど、いじめられた方はずーっと忘れない。
それはわかる、当然だと思う。
だからいじめられた方がその経験を乗り越えて強く生きたとしても、いじめたほうにとってはそんなのどうでもいいことで、なんの復讐にもならない。
これってたしかにそうなんだけどもやっとしますね。
感想が複雑すぎてまとまりません(;´・ω・)
]]>JUGEMテーマ:小説全般
● なれのはて / 加藤シゲアキ(講談社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆☆
ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員・守谷京斗は、異動先で出会った吾妻李久美から、祖母に譲り受けた作者不明の不思議な絵を使って「たった一枚の展覧会」を企画したいと相談を受ける。
しかし、絵の裏には「ISAMU INOMATA」と署名があるだけで画家の素性は一切わからない。
二人が謎の画家の正体を探り始めると、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた業に繋がっていた。
(感想)
第170回直木賞候補作。
加藤シゲアキさん、読むたびに力をつけていると感じます。
ご結婚もされたことだし、もう本気で専業作家になっていいレベル。
こんなに書ける人だってもっと一般に知られるべきです。
無名の画家が書いた一枚の絵から明らかになっていくある家族。
戦時下から現在という長い歴史のなかにおいて、石油採掘・空襲・著作権・発達障害・報道の在り方などあらゆるテーマを折り込みんでますが、だからといって無理な盛り込み方ではなく、すべてしっかりと回収されているのが素晴らしい。
石油や絵の具のどろりとした質感と濃厚な匂いがリアルに漂ってきそうな重厚感があります。
ミステリーでありながら、人間もしっかり描いているし、結末には少し涙ぐんでしまいました。
書きすぎない潔い終わり方が好きです。
ですが・・・☆は5つつけたものの、気になったのはタイトルの「なれのはて」。
あまりに唐突にこの単語がでてきて、急にタイトルの意味が回収されたので、とってつけたような気がして興ざめ感がありました。
いつか必ず直木賞がとれる作家です。今後も注目します。
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JUGEMテーマ:小説全般
● 罪の声 / 塩田武士(講談社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
京都でテーラーを営む曽根俊也。自宅で見つけた古いカセットテープを再生すると、幼いころの自分の声が。
それはかつて、日本を震撼させた脅迫事件に使われた男児の声と、まったく同じものだった。
一方、大日新聞の記者、阿久津英士も、この未解決事件を追い始め--。
圧倒的リアリティで衝撃の「真実」を捉えた傑作。
(感想)
あの「グリコ森永事件」をもとにしたフィクション。
これが真実かもしれない・・・と思ってしまうほどリアリティがありました。
グリコ森永事件当時の私は子供でしたが、事件の内容を詳細に覚えてはいなくてもキツネ目のに対する恐怖は今でも残っています。
この作品をより深く楽しむため、本を読んだ後でもいいので実際の事件の概要を調べてみることをおすすめします。
今では考えられないような大事件です!
ストーリー的には面白いのですが、テンポが良くないように感じていまいち入り込めなかったのが残念。
物語の中心を担う阿久津・曽根の2人に魅力がなかったのもどっぷり入り込めなかった要因かな。
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JUGEMテーマ:小説全般
● 変な絵 / 雨穴(双葉社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
とあるブログに投稿された『風に立つ女の絵』、消えた男児が描いた『灰色に塗りつぶされたマンションの絵』、
山奥で見つかった遺体が残した『震えた線で描かれた山並みの絵』……。
いったい、彼らは何を伝えたかったのか――。
9枚の奇妙な絵に秘められた衝撃の真実とは!? その謎が解けたとき、すべての事件が一つに繋がる!
今、最も注目を集めるホラー作家が描く、戦慄の国民的スケッチ・ミステリー!
(感想)
話題になってるシリーズなので読んでみました。
頭が固い人は真相を見破ることはできないでしょうね・・・。
ちょっと見方を変えてみること、固定観念や思い込みをなくすことが大事。
伏線回収も見事でした。
今までにあまり読んだことのないような斬新な趣向の作品で、話題になるのも納得。
ライト層にウケそうですね。
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JUGEMテーマ:小説全般
● ナイルパーチの女子会 / 柚木麻子(文藝春秋)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
丸の内の大手商社に勤めるやり手のキャリアウーマン・志村栄利子(30歳)。
実家から早朝出勤をし、日々ハードな仕事に勤しむ彼女の密やかな楽しみは、
同い年の人気主婦ブログ『おひょうのダメ奥さん日記』を読むこと。
その「おひょう」こと丸尾翔子は、スーパーの店長の夫と二人で気ままに暮らしているが、
実は家族を捨て出て行った母親と、
実家で傲慢なほど「自分からは何もしない」でいる父親について深い屈託を抱えていた。
偶然にも近所に住んでいた栄利子と翔子はある日カフェで出会い、
翔子が数日間ブログの更新をしなかったことが原因で、二人の関係は思わぬ方向へ進んでゆく……。
女同士の関係の極北を描く、傑作長編小説。
(感想)
この秋冬、「芋けんぴ」を食べることにドハマりしました。
そこで思い出したのがこの作品ww
芋けんぴで人を刺す場面が衝撃的で、ずーっと忘れられない珍場面。
私は芋けんぴなんて途中で折れると思うんだけど、
作中では救急車呼んでくれ!くらいの大騒ぎになるのです。
今回再読しましたが、改めて謎な場面でした・・・いやー、刺さるかね!?
話は変わって、ここからはちゃんとした感想。
美人でキャリアウーマンで何の不自由もないように見える栄利子。
ゆるゆるっとマイペースに生きているように見える翔子。
読んでて何がつらかったかって、
2人とも心の奥底では自分に欠けているもの・手にしたいものが明確にわかっていたから。
他人から見れば満たされているように見える2人がこんなにも熱望し、
正気を見失っていく様は読んでてしんどかったです。
そして私自身、2人に共感できなくもないのが、またつらいところです。
ネットの普及によって、より孤独感を感じてしまうような社会になったのは間違いないし、
人と自分を比べることが増えるのも当然です。
昔はさほど気にしなかったようなことも大きな意味を持つようになった。
なんだかもう、ほんとに世の中が歪んできています。
完璧にホラーですね。
ホラーの芽は日常にあるんだ。気をつけましょー。
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JUGEMテーマ:小説全般
● リカバリー・カバヒコ / 青山美智子(光文社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆☆
5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。
近くの日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあり、
自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。
人呼んで”リカバリー・カバヒコ”。
アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。
(感想)
青山美智子さんって最近、お名前を耳にする機会が多いです。
だけどこれまで読んだ作品はどれも悪くはないんだけど、突き抜けるものがなかった印象。
いまいち今の人気に乗り切れない感がありましたが、
ついにピンとくる青山作品に出会えました!!
本屋大賞にノミネートされているのも納得の素敵な作品です。
結局はカバヒコが何かをしてくれるわけではなく、
かといって誰かが助けてくれるわけでもない。
みんなそれぞれで気がついて、回復していく。
この作品のそんなところが好きです。
色々なことに不安になったり、悪く考えたりしてしまうのは想像力が豊かだから。
人の気持ちや痛みがわかる人だから・・・こんなニュアンスのことが書かれていましたが、
何かと考えすぎてしまう私には救いになる言葉もありがとうございました。
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JUGEMテーマ:ノンフィクション
● 「心」が変われば地球は変わる / 木村秋則(扶桑社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
無農薬・無肥料のリンゴ栽培に挑戦し、
みごと成功させた舞台裏には、何があっても引き裂かれない強い絆で結ばれた
「ソウルメイト」とも言うべき家族や親友たちの存在があった。
これまで口にすることのなかった妻への思いや、
リンゴ畑にあらわれたUFOや龍が教えてくれた不思議なメッセージ、
「生き方」「農業」「食」などについて熱く語った感動作『ソウルメイト』を、待望の文庫化。
(感想)
木村さんのことはよく知っているつもりでしたが、
よく考えてみると著作を読むのがこれがはじめてでした。
この本は奇跡のりんごを実らせるまでの苦労の記録ではありますが、
そのなかでも特に人との関係にスポットを当てた作品のようです。
他とは違う農法にチャレンジしたことで離れていった人が多い中、
家族や友人が木村さんを信じてくれたのは、
木村さんの中に確固たる信念があったからだと思います。
信念が定まっている人は本当に強いです。
そして奥様もそうですが、
同居する義父さんが味方になってくれたのが大きかったのではないでしょうか。
「龍を見た」「UFOに乗った」・・・
この「非現実的に思われる出来事」を素直に受け入れられる木村さんだからこそ、
「無農薬・無肥料でのリンゴ栽培」という夢のような挑戦に成功できたのでしょう。
農業の知識以上に柔軟性のある考え方が成功の秘訣!
あと、常識を疑うことも大事ですね。
大いに学ばせていただきました。
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JUGEMテーマ:エッセイ
● 記憶の歳時記 / 村山由佳(ホーム社)
● 個人的な評価 ☆☆☆
デビュー作『天使の卵』がベストセラーとなり、
南房総・鴨川でのゆたかな自給自足生活。
出奔そして離婚、東京での綱渡りの日々。
常識はずれな軽井沢の家で新たな生活、3度目の結婚──。
そんな村山由佳の大胆な生きざまと、作家としての30年を支えてきたものとは?
季節・猫・モノをキーワードにひもとく、極彩色の記憶たち。
人気作家になって抱えた葛藤、編集者との関係、
20年隠してきたある猫の秘密、過去の恋愛の数々など、
初めて明かすエピソードも満載。滋味あふれるエッセイ集。
(感想)
村山由佳さんの四季を巡るエッセイ集。
なんとまぁ地味なタイトル・・・
好きな作家じゃなきゃきっと手にとらなかったでしょう。
でも、タイトルに似合わず中身は濃い。
現在のことから昔の思い出、家族のこと、猫のこと、
まるで村山さんの人生のすべてをさらけ出すようなエッセイでした。
とにかく・・・人生の波がすごい。
田舎暮らしのことやほんわかしたエピソードもあるけれど、
やはり気になるのは波乱の人生を送っていらっしゃること。
最初の旦那さんとの苦しい生活、
2番目の旦那さんの作った借金・・・苦労されてきたんだなぁ。
でも、こういうこともすべて書いてしまえたのは、
きっと今のパートナーが最高の理解者で、
今の村山さんが幸せだから。
これを最後の恋にして、この人と添い遂げてほしい。
・・・村山さんの作品を多く読んできたファンの願いです。
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JUGEMテーマ:小説全般
● 存在のすべてを / 塩田武士(朝日新聞出版)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
平成3年に発生した誘拐事件から30年。
当時警察担当だった新聞記者の門田は、
旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。
異様な展開を辿った事件の真実を求め再取材を重ねた結果、
ある写実画家の存在が浮かび上がる――。
質感なき時代に「実」を見つめる、著者渾身、圧巻の最新作。
(感想)
誘拐事件の犯人と真実を追う警察小説かと思いきや、
愛情と良心に溢れ、熱いものが胸に迫ってくる家族の物語でした。
クズのような人間がいる一方で、
法を犯してまでも「守りたい」と思う心優しい人間もいる。
彼らがただ一心にこの子の幸せを願う姿に感動しました。
本屋大賞にノミネートされてるようですが、
なんらかの大きな賞を取ったり、実写化されたりして、
今後大きなムーブメントを起こす作品になることは間違いなさそうです。
今までそういう視点で見たことがなかったから驚いたのが、
誘拐事件は殺人や窃盗と違い、「現在進行形」であるということ。
だからこそひとつひとつの判断が重要で、
それによってはもしかしたら最悪の事態を防げるかもしれない可能性もある。
そういう種類の犯罪であるから、刑事などの関係者にも後悔が残りやすい・・・と。
だとすると富岡刑事の気持ちを思うと胸が痛いです。
門田がどんな記事を書くのか、
亮と里穂の関係はどうなっていくのか、
そして事件の真相は・・・・?
その他、大人になった谷口敦之が詐欺事件に関わっていることなど
まだまだ知りたいことがたくさんある。
尻切れのように終わってしまった感は拭えませんが、
そのへんは読者の想像に任せるとか、余韻を残すってことなのかなぁ・・・。
登場人物が多いので、メモを取りながら読むのをおすすめします。
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JUGEMテーマ:小説全般
● ハジケテマザレ / 金原ひとみ(講談社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
コロナで派遣切りにあった「私」は
食い繋ぐためにイタリアンレストラン「フェスティヴィタ」に辿りつく。
ベテランのマナルイコンビ、
超コミュニカティブでパーリ―ピーポーのヤクモ、
大概の欠点ならチャラになるくらいかわいいメイちゃん、
カレーとDJに目覚めたフランス人のブリュノ、
ちょっとうさんくさい岡本くん……バイト仲間との愉快で切実な日々を描いた作品集。
「ウルトラノーマル」なわたしが「ハジケテマザル」、最高のバイト小説!
(感想)
前作の「腹を空かせた勇者ども」に続き、はじける陽キャ全開!
ぶっとび具合がまさかの「腹を〜」超えw
楽しくて明るくて、
金原ひとみさん、この2作で一皮むけた気がします。
単純に陽キャのバイト小説かと思いきや、
生き方や自分の保ち方について考えさせられました。
このクセ強キャラクターたちの中にいることによって、
特に何も個性のない平凡な女の子に見える主人公も
一歩を踏み出す勇気が芽生える。
その「平凡」にこそ価値があり、
自分の可能性を、個性を、信じることができた。
マナルイコンビのナイスアシストに拍手!
元気になれる作品です。
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JUGEMテーマ:小説全般
● 光のとこにいてね / 一穂ミチ(文藝春秋)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆
古びた団地の片隅で、彼女と出会った。
彼女と私は、なにもかもが違った。
着るものも食べるものも住む世界も。
でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。
彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。
ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、
一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。
どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。
運命に導かれ、運命に引き裂かれる
ひとつの愛に惑う二人の、四半世紀の物語。
(感想)
普通なら出会うこともなく、仲良くなるはずもない2人が偶然出会い、
一生意識しあう存在になるお話。
「仲良し!」「友達!」ってわけでもないのに、
なんとなく忘れられなくて心の奥底で共鳴しあったのは、
お互いの闇の部分を感じ取り、共有したからだと思う。
女同士の友情物語よりは深いものがあるけれど、
女同士のキスはなんか違うかなーって感じ。
これがなければもっとシンプルに受け止められたのに・・・。
大人の事情に振り回され、二度離ればなれになった二人だけど、
自分たちが大人になり、自分の道は自分で決められる年齢になった今こそ、
光の当たる場所で離れずに寄り添っていてほしい。
ラストの結珠の暴走はこれまでの結珠のキャラじゃなくて、最っ高に爽快でした。
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JUGEMテーマ:小説全般
● ゴリラ裁判の日 / 須藤古都離(講談社)
● 個人的な評価 ☆☆☆☆☆
カメルーンで生まれたニシローランドゴリラ、名前はローズ。
ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解する。
手話を使って人間と「会話」もできる。
運命に導かれ、ローズはアメリカの動物園で暮らすようになった。
動物園で出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係にもなる。
順風満帆のはずだった――。
しかしその夫が、檻に侵入した4歳の人間の子どもを助けるためにという理由で、銃で殺されてしまう。
なぜ? どうして麻酔銃を使わなかったの?
人間の命を救うために、ゴリラは殺してもいいの?
だめだ、どうしても許せない!
ローズは、夫のために、自分のために、正義のために、人間に対して、裁判で闘いを挑む!
(感想)
本は好きだけど、
面白かった本について誰かに話したり、人にすすめたいとは思わない。
ここで自分の記録のために感想を書いていればそれでいい。
・・・そういうスタンスだった自分が久々に「誰かと語りあいたい!!」と思えた本でした。
人間並みの知能を持ち、手話を使って会話もできるゴリラ・・・
これだけ聞くとトンデモ小説かとおもっちゃいそうだけど、
実は奥が深く、メッセージ性の強い作品。
主人公のゴリラ・ローズへの感情移入もゴリラなのにたやすく、
まるでローズという一人の女性の生き様を見せられているかのように熱いものがあります。
この設定をフィクションとは思えないほどリアルに感じられるのがすごいのです。
昨年、「ヴィーガン革命」という本を読み、
同じ動物でありながら、犬猫は人間に寄り添い愛されて生きる一方で、
牛豚は食用として処分される不平等について考えさせられました。
今年の初めには羽田空港で飛行機事故があり、
ある女優さんが飛行機に搭乗する動物について発した意見が話題になったりもしました。
これらはあくまで「人間 と 動物」として考えさせられた出来事だったけれど、
この作品が私達に投げかける問題提起はその次元を超え、
動物が感情を持ち、会話もできる状況にありながら、
それでも人と動物は平等ではないのか?という話。
動物愛護だとか多様性社会どころの騒ぎじゃあありませんw
ダニエル弁護士の最終弁論の痛快さにしびれ、
ローズの発した言葉に涙が止まりませんでした。
こんな設定、今まで誰も考えられなかった。
一生記憶に残る大傑作です。
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JUGEMテーマ:小説全般
● スモールワールズ / 一穂ミチ(講談社)
● 個人的な評価 ☆☆☆
夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。
「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。
初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。
人知れず手紙を交わしつづける男と女。
向き合うことができなかった父と子。
大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。
誰かの悲しみに寄り添いながら、
愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。
(感想)
連作短編集ではありますが、
各作品にはそれほど深いリンクはなく、ほんの少しすれ違う程度。
ですが、最後の最後のつながりだけは驚きましたw
6つの作品はまったく違うテイストでありながらも、
描かれているものの根本にあるものは同じ。
人と人との間にあるどうしようもなく後ろ暗いもの。
悲しく、痛い。
何が正しくて、間違っているのか。
常識とは何なのか。
一般的に道を外れているようなことであっても、
単純に「善」と「悪」で判断しきれず、読んでてつらい作品が多かったです。
「ネオンテトラ」の着地点には衝撃。
「花うた」はあまりにいっちゃってて、まったく共感できませんでした。
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JUGEMテーマ:小説全般
● オール・ノット / 柚木麻子(講談社)
● 個人的な評価 ☆☆
友達もいない、恋人もいない、将来の希望なんてもっとない。
貧困にあえぐ苦学生の真央が出会ったのは、
かつて栄華を誇った山戸家の生き残り・四葉。
「ちゃんとした人にはたった一回の失敗も許されないなんて、そんなのおかしい」
彼女に託された一つの宝石箱が、真央の人生を変えていく。
柚木麻子流・シスターフッドの新しい現在地!
(感想)
これはもっと長編で大河ロマン的に深く書かれるべき作品なのでは?
ページが進むにつれ、若者の貧困・性的マイノリティ・性犯罪など
現代の社会問題も絡んできて、
このページ数のわりにあまりに内容が幅広い。
無理に短くまとめてしまった感があり、もったいない作品です。
それでなかったら、第一章のテイストを持続したまま
四葉さんと真央の世代を超えた友情物語として描いただけでも
十分面白かったのにと思います。
登場人物たちがとにかくみんな恩知らずで誰ひとり好きになれません。
けど、最後の最後で真央が真珠を他の人に託そうと思ってくれたことだけが唯一の救いでした。
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