隣り近所のココロ・読書編

本の虫・ともみの読書記録です。
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# 死者のための音楽
JUGEMテーマ:小説全般

 死者のための音楽 / 山白朝子

 評価 ☆☆☆☆


山白朝子さんというのは乙一さんの別名義で、
彼は山白朝子の他に中田永一という別名義も持っています(ややこしいねぇ)。

誰に教えてもらったわけでもないのに、子供の頃から唱えることのできたお経。
深い井戸の底に響く水の音。
工場から廃液が勢いよく放出される音。
仏師を仏像を彫る音。
小枝をポキポキと折りながら、巨大な何かが近づいてくる音。
大きな黒い鳥の羽音。
耳の不自由な母が、死の間際に聞いた美しい音楽。
この短編集のキーワードは「音」なのではないかと思う。
静かな音、大きな音、それぞれに違いはあるが、
どの作品にも作品を象徴するような音が存在を無視できません。
読者を煙に巻くような複雑な文章ではなく、簡潔に淡々と綴られる文体。
そこに象徴的な音の存在も重なり、
すんなりとこの不思議な世界へと誘われるような作品集でした。

言葉の選び方が美しいんですよね。
文章のうまさを感じさせるような書き方じゃなく、あくまでさらっとしている。
そこにテクニックを感じます。
別名義で書き分けるというのも、うまいからこそできることなんだろうな。

山白朝子名義の作品は以前に「エムブリヲ奇譚」を読んでいますが、
これは「死者のための音楽」のあとに出版されたもので、
あれに比べると「死者のための音楽」のほうが
乙一らしい切なさやダークさは残っているのではないでしょうか。
特に「鳥とファフロッキーズ現象について」という作品は誰が書いたのか知らずに読んだとしても、乙一だってわかるくらい彼らしい作品です。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:02 | category:    山白朝子 |
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