# 静子の日常
2009.10.05 Monday
宇陀川静子、75歳。
息子夫婦(愛一郎・薫子)が同居するために借りてくれた一軒家に、
彼らと孫のるかとの4人で暮らしている。
週に2回は水泳を習うためにフィットネスクラブに通い、
「可愛らしいおばあさん」だからすぐにみんなの人気者になった。
でも、この人、たんなる可愛らしいおばあさんじゃおさまらない
何かに過剰すぎて、反対に何かが決定的に足りなくもあるこの世の中で、
毎日のように出くわす“ばかげた”事象を決して見過ごさない。
このバランスの悪い現代での、静子なりの決着のつけ方とは・・・。
(感想)
読み始めて2,3ページですぐに“私の好きそうなにおいがする”と感じましたが、
最初のイメージ通り、私好みの作品でした
75歳の可愛らしいおばあちゃん・静子さんは、ポジティブで行動的。
自分を「もう年だから・・・」なんてまったく考えることもなく、
どんどん若い人の輪に入っていく(というか、自然に若い人たちが歩み寄ってくる)。
こんなおばあちゃんになりたいと思ってしまうような理想的なお年寄りなのです。
何も知らないふりをして、でも物事はしっかりと見ている。
この年になると若い人の言うことに流されがちだけど、自分の考えはちゃんと持っている。
しかも、家族や若い仲間の人生がいい方向へ向かうように、
本人に気づかれようにさりげなく軌道修正のサポートをしてくれるような人。
でしゃばらず、見返りを持たない、「私がしてあげたのよ」的な意識すらない・・・。
この年齢になれば人生の紆余曲折を味わって物事を達観できるようになっているでしょう。
その時に自分に残っているものが、こんな優しさとさりげなさだったらいいなぁ。
ああ、こんな年の取り方がしたい
自分の思い通りにいかないことを拒絶したり、イヤイヤ思いながら妥協するよりは、
静子さんのように折り合いをつけてしまう方がいい。
がまんしなければならないから、その環境でも楽しめる要素を自分で見つけてしまおう。
案外、このくらいのペースで生きる方がラクなのかもしれませんよね
ちっぽけだけど、これこそが私自身の人生。
その愛おしさ・かけがえのなさをしみじみを感じさせてくれる本です。
ほっこりいい時間を過ごさせてもらいました